半休とは何時間? 時間単位有給との違いや休憩・残業の取り扱いを解説

半休とは何時間? 時間単位有給との違いや休憩・残業の取り扱いを解説

半休(半日休暇)は、短時間の通院や家庭の用事など、ちょっとした予定に対応しやすい制度として多くの企業で導入されています。従業員にとっては全日休暇を消費せずに柔軟に働けるメリットがあり、企業側にとっても有給休暇の取得促進や満足度向上につながる制度です。

しかし、半休は法律で明確に定義されているわけではないため、以下のような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

  • 何時間から半休になるのか
  • 午前と午後で時間が違うのはよいのか
  • 午前休では、残業代が出ないのか
  • 半休と時間単位有給との違いがよくわからない

本記事では、半休の基本ルールや時間の考え方、時間有給との違い、休憩や残業の取り扱いまでを紹介します。人事担当者が制度の設計や運用で困らないために知っておきたいポイントをわかりやすく解説しますので参考にしてください。

目次アイコン目次

    半休(半日休暇)とは? よくある半休の理由は?

    半休(半日休暇)とは、有給休暇を半日単位で取得することを指します。1日分の休暇を消化せずに済むため、短時間の私用や急な予定にも対応しやすく、比較的利用頻度が高い制度といえます。主な半休の取得理由は以下のとおりです。

    • 午前中に通院・健康診断を受けたい
    • 午後から子どもの学校行事(授業参観・三者面談など)に参加したい
    • 役所・銀行など平日日中にしかできない手続きを済ませたい
    • 家族の送迎や介護のために一部の時間だけ仕事を離れたい
    • 午後から遠方への帰省や旅行に出発したい
    • 午前中に集中して仕事を終えたあと、午後はリフレッシュしたい

    「1日休むほどではないが、数時間だけ離れたい」という従業員のニーズに対応できるのが半休制度の特徴です。企業にとっても、有給休暇の取得促進や従業員満足度の向上といったメリットがあります。

    半休は労働基準法に規定がある?

    半休は多くの企業で導入が進んでいますが、法律で明確に定義された制度ではありません。

    労働基準法では、有給休暇(年次有給休暇)は、1日単位での取得が基本です。しかし、厚生労働省の通達により、就業規則に規程されていれば、半日単位での取得も認められています。つまり、会社の裁量でルールを整備すれば、半休制度の導入が可能です。

    注意したいのは、労働者の有休取得の権利を不当に制限しないことです。制度を導入するには、以下のような準備が必要です。

    • 就業規則に半休制度を明記する
    • 制度設計の内容を従業員に周知する

    以上の手続きを経ることで、半休制度は適切に運用できるようになります。

    半休は何時間に設定する? 時間計算の考え方

    具体的に何時から何時までを半休の時間に設定すればよいのでしょうか。

    半休は法律上で明確な時間の定義がないため、就業規則に基づいて企業が独自に定めることになります。実務上よく採用されている2つの分け方と、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。

    • 午前と午後で分ける
    • 所定労働時間を半分に分ける

    午前と午後で時間で分ける

    1日の勤務時間を昼休憩を境目に午前と午後に分け、それぞれを半休として扱う方法です。多くの企業で採用されており、シンプルな運用が可能となります。午前と午後の時間数が異なっても問題ありません。

    例として、所定労働時間が9:00~18:00(休憩1時間を含む)、休憩時間が12:00~13:00の場合、午前半休は9:00~12:00、午後半休は13:00~18:00と設定されます。

    メリットデメリット
    ・直感的に理解しやすい・従業員への説明がしやすい・勤怠管理システムに設定しやすい
    ・午前と午後の労働時間に差がある場合、不公平に感じられる場合がある

    半休の時間数が午前と午後で異なる場合、就業規則で時間区分を明文化する必要があります。

    所定労働時間を半分に分ける方法もある

    公平性を重視する場合は、1日の所定労働時間を正確に半分にして、前半・後半に分ける半休の設定方法があります。

    例として、所定労働時間が9:00~18:00(休憩1時間を含む)の場合、午前半休が9:00~13:00、午後半休が13:00~17:00で4時間ずつとなります。

    メリットデメリット
    ・前半と後半の労働時間が均等で、従業員の不公平感を減らせる・勤怠管理システムの設定変更に少し手間がかかる可能性がある・休憩時間と重なる場合は調整が必要になる

    所定労働時間をちょうど2分割した場合、実際の休憩時間と重なってしまうこともあるため、休憩時間の扱いには注意しましょう。

    半休の時間は、自社の業務内容や勤務体系に応じて、最適な分け方を選びます。ルール変更や導入にともない、従業員が新しい制度を正しく理解できるように周知する必要もあります。

    半休と時間有給の違い

    半休と時間有給(時間単位年休)は、いずれも1日未満で有給休暇を取得できる制度です。

    似た制度に思えますが、日数制限の有無に明確な違いがあります。制度の特徴と両者の違い、実務での使い分けポイントを解説します。

    時間有給は法定に基づく制度

    法律に規定がない半休(半日休暇)に対して、時間有給(時間単位年休)は、2010年の労働基準法改正で導入された制度です。1時間単位で有給休暇を取得でき、より柔軟な働き方への対応を目的としています。年間5日分(40時間分)までの上限が設定されている点も、半休とは大きく異なります。また、労働者の申請でのみ取得が可能で、企業側が時季を指定することはできません。導入には労使協定の締結も必要です。

    半休と時間有給の比較表

    半日単位で有給を取得させる半日休暇と、時間単位有給休暇の違いをまとめると、以下のとおりです。

    半休(半日休暇)時間有給(時間単位年休)
    法的根拠労基法には規定なし(厚生労働省の通達により認められている、企業の裁量により運用される)労働基準法で明記された法定制度
    導入条件就業規則への記載労使協定の締結+就業規則の記載
    取得単位半日単位(午前・午後など)1時間単位
    年間の上限

    制限なし年5日分まで
    時季指定での取得可能(年5日義務の対象)不可(本人の申し出のみ有効)

    半休制度も時間有給制度も、具体的な時間数などを就業規則に明記する手続きが必要です。

    半休と時間有給の使い分けの例

    半休と時間有給は、予定にあわせて使い分けられるとよいでしょう。

    午前中に3時間通院する場合=半休が最適
    1時間だけ薬を買いに外出したい場合=時間有給が最適

    会社としては、制度の違いを就業規則で明確にし、従業員が迷わず使い分けられるように周知することが大切です。

    また以下のような柔軟な活用方法も、制度設計の選択肢として検討してもよいでしょう。

    • 当初は時間有給で申請していたが、病院の待ち時間が延びて半日休むことになった場合
    • 午前に半休を取得し、午後にさらに1時間の私用がある場合

    半休と時間有給を切り替えたり併用できたりすると、利便性が上がります。

    半休の日の休憩と残業の取り扱いについて

    半休では、休憩時間や残業時間をどのように扱うべきか、疑問に思う方もいますよね。従業員が半休を取得した日も、労働基準法に規定されている休憩時間や残業時間のルールが例外なく適用されます。

    「何時間から休憩が必要か」「残業代はいつから発生するのか」といった点は、労働時間管理の基本となるため、半休日を想定しながら確認していきましょう。

    休憩の取り扱い

    労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は60分以上の休憩を与える企業の義務が規定されています。

    半休を取得した従業員に対して、ルールに変わりはありません。午前半休の場合、午後の実労働時間が6時間を超えれば、45分以上の休憩を与える必要があります。

    所定労働時間9:00〜18:00(休憩12:00〜13:00)を例として、休憩時間の付与目安は以下のとおりです。

    労働時間休憩の目安
    14:00〜19:00(実働5時間)休憩なしでも可
    14:00〜21:00(実働7時間)45分以上の休憩が必要
    14:00〜23:00(実働8時間超)60分以上の休憩が必要

    労働時間が6時間未満であれば、休憩を付与する義務はありません。ただし、労働時間が6時間を超えてしまうと休憩時間の取得が必要となるため、半休の日は残業を禁止するなどのルールを独自に定めてもよいでしょう。

    ▼休憩時間の取り扱いを知るには、以下の記事をご確認ください。

    残業の取り扱い

    半休の日は基本的に残業をさせないよう、適切に労働時間を管理することが望ましいでしょう。しかし、業務上やむを得ず時間外労働が発生した場合は、割増賃金を支払う必要があります。

    労働基準法に規定されている、1日の労働時間は8時間が上限です。従業員が半休を取得した日も8時間を超えた時点で時間外労働となり、通常の賃金に加えて1.25倍の割増率を適用しなければなりません。

    半休の日が残業とみなされるケースとしては、午前休の取得後に午後からの勤務で8時間以上労働したケースなどがあります。

    割増賃金が発生するのは、1日の実労働時間が8時間を超えているケースです。所定労働時間が9:00〜18:00(休憩12:00〜13:00)、午前休が9:00〜12:00の場合、13:00から22:00まで働いたような場合が該当します。

    このケースでは、1時間以上の休憩付与も必要です。また、退社時間が22時を超えると、時間外労働手当に加えて深夜割手当も加算しなければならないため、給与計算では注意しましょう。

    従業員の勤怠実績を正しく把握するため、実労働時間は正確に記録するようにしましょう。

    ▼割増賃金の取り扱いを知るには、以下の記事をご確認ください。

    半休制度を導入するメリット・デメリット

    半休制度は、柔軟な働き方を実現するための手段です。一方で管理の煩雑さや不公平感といった課題もあります。制度導入前にメリット・デメリットを把握することで、現場にあわせたルール設計に役立つため、確認していきます。

    メリット

    半休は、従業員のワークライフバランスを支え、柔軟な働き方を実現する制度です。全日休暇では、従業員がもったいないと感じる場面でも気軽に休暇を取得できます。柔軟な制度があることで有給取得率の向上にもつながり、労働基準法で義務化されている年間5日以上の取得を促進できるでしょう。働きやすい職場となることで従業員満足度が高まり、定着率向上や採用力の強化にも効果が期待できます。

    デメリット

    半日単位での休暇管理は、1日単位よりも勤怠管理や給与計算が煩雑になることがあります。午前と午後で労働時間が異なる運用は不公平感が生まれる可能性もあるため、制度は慎重に設計しなければなりません。また、繁忙期などに半休が集中すると、業務負担が一部の従業員に偏るおそれもあります。

    半休に限らず有給休暇を取得しやすい環境を整えるには、業務量の調整や人員配置の最適化が必要になるでしょう。

    ▼有給休暇の取得率を向上させたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

    半休制度を導入する手順

    半休制度は以下の3ステップで導入を進めていきます。

    • ルールを決めて就業規則を変更する
    • 従業員に周知する
    • 運用を開始する

    以下で導入前後のステップを明確にしておきましょう。

    1.ルールを決めて就業規則に変更する

    半休制度は法律で定められたものではないため、企業ごとに運用ルールを定める必要があります。トラブルや不公平感を防ぐためには対象者や取得条件、時間帯の区分、申請方法をあらかじめ明文化しておきましょう。

    【規定項目】

    • 半日の区分(例:午前休=9:00〜13:00、午後休=14:00〜18:00)
    • 対象者の範囲(例:短時間勤務者は対象外 など)
    • 取得の回数制限
    • 申請方法と締切
    • 申請の提出先

    公平性を保つためには、従業員の多様な勤務形態を考慮しながらルールを設計する必要があります。規定したら就業規則に記載しましょう。

    ▼就業規則の変更手続きを詳しく知るには以下の記事をご確認ください。

    2.従業員に周知する

    半休のルールが決まって正式に運用を開始する際は、制度の存在や使い方を全従業員にわかりやすく周知します。とくに半休制度は法律上の定義がなく、導入に従業員の同意までは必要ないため、認識に相違があるとトラブルに発展しかねません。混乱を防ぐためにも、制度内容をまとめた説明資料を作成し、誰でも理解できる方法で伝えることが大切です。

    【周知方法の例】

    • 社内メールでの案内
    • 勤務管理システムへの掲載
    • 人事部による説明会・部署単位のレクチャー
    • よくある質問(FAQ)などの文書化

    制度が有効に活用されるよう、形式的な周知にとどまらないように工夫しましょう。

    3.運用を開始する

    半休制度を開始したら申請から承認、記録までがスムーズに行えるように勤怠管理の体制を整えます。勤怠管理システムを活用すれば、申請内容の確認や休暇残数の管理も効率化できます。運用開始後は、実際の活用例を参考に定期的に見直し、従業員の声を取り入れて制度改善につなげることも大切です。

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    半休制度を導入する際は、就業規則への明記や労働基準法の遵守が必要です。また、特殊な勤務形態では運用が難しい場合があるため、制度設計時に注意が必要です。

    半休制度を運用するには、その内容を就業規則に明記し、労働基準監督署に届け出る必要があります。これにより、制度の透明性が確保されるだけでなく、法的トラブルを未然に防ぐことができます。

    半休制度を導入する際の注意点

    最後に半休制度を新たに導入する際の注意点を確認しておきます。

    • 就業規則には漏れなく明記する
    • 従業員の不利益になるようなルールを設定しない

    以上の注意点を踏まえて、導入について検討してみることをおすすめします。

    就業規則には漏れなく明記する

    半休制度は法律で定められた制度ではなく、企業が任意で設けるものです。そのため、導入する際は就業規則や社内規定に制度の内容を漏れなく明記しなければなりません。明文化すると労務トラブル防止に役立ちます。従業員が10人以上の事業場では、就業規則の変更を労働基準監督署に届け出る必要があります。

    ▼就業規則の変更手続きを詳しく知るには以下の記事をご確認ください。

    従業員の不利益になるようなルールを設定しない

    半休制度を導入する場合でも、年次有給休暇の一部として扱う以上、労働基準法に基づき、不利益な取り扱いは禁止されます。たとえば以下のような運用は違法とみなされます。

    • 半休を申請しているにもかかわらず、会社側の判断で1日休に変更し、年休1日分を消化させる
    • 半休を取得した従業員に対して、賃金や賞与でマイナス評価をする
    • 半休取得を理由に、昇進・昇格で差をつける

    取得しやすさと公平な取り扱いに配慮して制度を設計しましょう。

    まとめ|半休制度を設計し、有給取得率の向上へ

    半休制度は、従業員の「1日分の有給休暇を使うほどではないが、数時間だけ仕事を離れたい」というニーズに応える制度です。制度が積極的に活用されることで、個人のワークライフバランスの推進や有給休暇の取得率向上につながります。

    半休制度の導入には就業規則への明記、時間区分の明確化、休憩・残業の適切な管理が欠かせません。制度設計では、従業員の働きやすさと、企業の管理のしやすさを両立できる設計がポイントとなります。時間有給との違いも整理し、従業員が迷わず使えるようていねいに周知しましょう。

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