勤怠における丸めは違法? 労働時間の管理方法などを解説

事務負担を軽減するため、勤怠の丸め(まるめ)処理をしている企業は少なくありません。しかし、法律の規定を理解しないまま丸め処理を行っていると、違法性を問われるリスクがあります。
本記事では、勤怠管理の丸め処理に関する法的ルールについて詳しく解説します。違法性を問われるケース・問われないケースや、丸め処理を行う場合のポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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目次
勤怠管理の丸め(まるめ)処理とは
勤怠管理の「丸め(まるめ)処理」とは、出退勤時間を一定単位で切り捨てたり、切り上げたりする処理のことです。
具体的な処理方法は企業により異なり、10分単位で管理する場合もあれば、15分単位で管理する場合もあります。そのほか、切り捨てと切り上げのどちらにするのか、始業時刻と終業時刻を両方丸めるのかなど、企業ごとに独自のルールで運用されます。
切り捨ての例・切り上げの例
勤怠の丸め処理の例として、労働時間を15分単位で管理している企業について考えてみましょう。
たとえば従業員の始業時刻が9時12分、終業時刻が18時48分だった場合、15分単位での切り捨て・切り上げを行っている企業では、それぞれ以下のように処理されます。
| 始業時刻(9時12分) | 終業時刻(18時48分) | |
| 15分単位で切り捨てる場合 | 9時00分 | 18時45分 |
| 15分単位で切り上げる場合 | 9時15分 | 19時00分 |
このような勤怠の丸め処理は多くの企業で取り入れられていますが、そもそも労働時間を丸めるのは法的に問題ないのでしょうか。
勤怠管理の丸め処理は原則違法
勤怠管理の丸め処理は原則として違法です。労働基準法第24条に定められた「賃金を全額支払う原則」に反する可能性があるためです。
万一、違法な丸め対応が発覚した場合、未払い賃金として請求される可能性が高いです。
例外的に丸め処理が認められるケースもありますが、誤った方法で運用すると労働基準法違反となり、注意が必要です。
勤怠の丸めが違法となる理由について、根拠や労働時間管理の基本ルールについて、詳しく解説していきます。
労働基準法と丸め処理の関係
労働基準法第24条は、勤怠の丸めが違法とされる根拠となる条文です。条文では、賃金の支払いについて以下のように定められています。
(賃金の支払)第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(中略)② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。
引用:『労働基準法第24条』e-Gov法令検索
賃金は「通貨で」「直接」「全額を」「毎月1回以上」「一定の期日で定めて」支給しなければならないという規定を、賃金支払いの5原則といいます。
勤怠管理の丸め処理が原則違法なのは、5原則のうち「賃金を全額支払う」という法規定に違反する可能性があるためです。
たとえば、退勤時刻18時12分を15分単位で切り捨てて18時00分として扱った場合、記録上の労働時間は本来よりも12分短縮されます。すると、給与支給金額もそれに応じて減額され、全額支給の原則を満たせなくなってしまうのです。
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労働時間は原則1分単位で管理
法律で明文化されているわけではないものの、賃金の全額払いの原則を満たすには、労働時間を1分単位で正確に管理しなければならないと解釈できます。
たとえ1分であっても、労働時間を切り捨てて処理すると、その分の支給額が減額されてしまうためです。
▼労働時間の管理ルールについて詳しく知るには、以下の記事もご確認ください。
違法になる丸め処理の具体例
勤怠の丸め処理の違法性が問われる可能性があるのは、労働時間を切り捨てて処理する場合です。
たとえば、19時2分の退勤を「19時00分」として切り捨てて処理すると、本来よりも労働時間が短縮されることになるため、労働基準法違反となるおそれがあります。
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違法にならない丸め処理はある?
労働時間を丸めて処理するのは、原則的に違法です。しかし、勤怠管理の事務処理を簡略化するために、一定の丸め処理を取り入れている企業は多くあります。
労働基準法は、労働者の権利と生活を守るために制定された法律です。そのため、労働基準法違反となるか否かは、丸め処理によって従業員に不利益を与えるかどうかで判断されます。
つまり、従業員に不利益が生じない丸め処理であれば、許容される可能性があると理解しておきましょう。代表的なのは次の3つのケースです。
- 時間外労働(残業)の端数処理(30分未満切り捨て・30分以上切り上げ)
- 労働時間の切り上げ(本来より長く計算されるので従業員に有利)
- 打刻と実態の乖離を調整する処理(始業前にコーヒーを飲んで待機する時間など)
一部例外を含め、労働時間の丸め処理が認められる例を具体的に紹介します。
1か月における時間外労働の合計に1時間未満の端数がある場合
1か月の時間外労働や休日労働、深夜労働の合計時間に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨てて、それ以上の端数を1時間に切り上げることが認められています。
これは、厚生労働省による行政通達(昭和63年3月14日、基発第150号)が根拠です。給与計算の簡略化と負担軽減のため例外的に認められています。
たとえば、1か月間の時間外労働時間が4時間15分だった場合は、端数の15分を切り捨てて「4時間」として扱っても問題ありません。ただし、30分以上の端数は切り上げて処理する必要があるので、注意しましょう。
1日の労働時間を切り上げた場合
労働時間の「切り上げ」は従業員の不利益にはつながらないため、例外的に勤怠の丸め処理が認められています。
日々の勤怠管理は1分単位で行う必要がありますが、所定の労働時間を超えた15分未満の残業を「15分」に切り上げるといった運用は可能です。
たとえば、19時2分の退勤を15分単位で切り上げて19時15分とすると、企業は本来よりも多くの賃金を支払うことになります。
企業が身銭を切ることで、従業員が損をしない丸め処理であれば問題ありません。
▼残業管理の詳細は、次の記事でご確認ください。
打刻時間と勤務実態に相違がある場合
たとえば以下のケースでは、打刻時間をもとに給与計算を行うと、実態との乖離が生じる可能性があります。
- 始業前に打刻をして、始業までゆっくりコーヒーを飲む
- 終業後に同僚とおしゃべりをしてから、打刻をして帰る
なかには残業代(割増賃金)を受け取るため、わざと退勤時刻を遅らせるという悪質なケースもあります。
しかし、実際のところ全員が始業・終業時刻ぴったりに打刻をするのは難しいものです。多くの人は余裕を持って始業時刻前に出社し、退勤の準備にもある程度時間がかかります。
そこで、あらかじめ「10分未満の端数は丸める」などのルールを設ければ、9時始業で8時55分に出勤打刻をした従業員も9時出勤として扱えて、実態に即した勤怠管理を行いやすくなります。
ただし、始業前・終業後であっても、従業員が労働に従事していた時間については賃金を支払う義務が発生する可能性があるため、趣旨を理解して運用しましょう。
▼出退勤打刻と実際の労働時間に乖離(かいり)はありませんか。労働時間の乖離リスクについて知るには、次の記事をご確認ください。
勤怠管理における丸めのメリット・デメリット
勤怠の丸め処理は、企業と従業員の双方にとってメリットがあります。丸め処理のメリット・デメリットを詳しく解説します。
メリットは給与計算と打刻の簡素化
勤怠の丸め処理について、企業側の最大のメリットは、給与計算の負担が軽減されることです。
たとえば、労働時間を15分単位で処理すれば、打刻時間が「出勤9時00分・退勤18時15分」といった計算しやすい時刻に統一され、集計や給与計算業務が効率化されます。
給与計算は煩雑でミスが許されない業務です。従業員数が多い企業ほどメリットを感じやすいでしょう。
また、従業員にとっても、出退勤時刻に多少の誤差があっても丸めて処理されるので、打刻が容易になるというメリットがあります。「ぴったりの時刻で正確に打刻しなければならない」というプレッシャーから解放され、心理的負担も軽減されるでしょう。
デメリットは法律違反のリスク
勤怠の丸め処理は、適切に運用しなければ労働基準法違反にあたる可能性があります。とくに、実際の労働時間を短縮して扱うような処理は賃金の不払いにつながり、労務トラブルを招きかねません。
従業員に賃金を全額支給するため、労働時間は1分単位で正確に管理するのが基本です。労働時間を丸める場合も、原則を遵守し、従業員の不利益につながるような処理は避けなければなりません。
しかし、不利益な賃金計算を生じさせないためには複雑なルール設計が必要なため、かえって現場に負担がかかる場合もあります。
勤務時間の切り捨て・切り上げ管理のポイント
丸め処理には一定のメリットがある一方で、法律違反のリスクもあります。では、実際に切り捨てや切り上げを運用する場合、どんな点に気をつければよいのでしょうか。
勤怠データの切り捨て・切り上げを行う場合に、おさえておきたい3つの注意点を紹介します。
1.遅刻・早退は正確に記録し控除する
遅刻や早退により労働時間が短くなったぶんについては、賃金を支払う必要がありません。また、遅刻控除や早退控除について法律上の規定はなく、企業が独自に計算ルールを設定できます。
しかし、10分の遅刻を30分に切り上げるといった丸め処理をすると、労働時間を本来よりも短く扱うことになり、労働基準法違反とみなされるおそれがあります。
遅刻・早退の記録は厳密に管理し、給与から正確な金額を控除することが大切です。
2.労働時間は客観的な方法で正確に記録する
労働時間の客観的な把握は、労働安全衛生法によって定められた企業の義務です。厚生労働省のガイドラインによると、始業・終業時刻は原則的に以下のいずれかの方法で管理する必要があります。
(1) 原則的な方法・ 使用者が、自ら現認することにより確認すること・ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること
引用:『労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』厚生労働省
企業は、法律に沿った勤怠管理を徹底するため、管理体制を整備しなければなりません。
やむを得ない場合に限り、従業員の自己申告制による勤怠管理も可能ですが、認められる範囲は限定的です。
▼労働時間の管理義務について詳しく知るには、次の記事をご確認ください。
▼労働時間の管理方法に不安はありませんか。

勤怠ルールについて就業規則で周知する
勤怠の丸め処理に関するルールは就業規則に明記し、従業員に周知しましょう。
丸めの単位や処理の方法について従業員との共通認識を形成しておかないと、労務トラブルに発展するリスクがあります。
丸め処理のルールは、法律に準じた内容にしなければなりません。たとえ就業規則に記載があっても、実際に働いた時間を短縮するルールは認められないので注意しましょう。
勤怠管理の丸め(まるめ)に関するよくある質問
ここまでの本記事のまとめとして、勤怠管理の丸めに関するよくある質問に答えていきます。
勤怠の丸めは違法?
労働時間は1分単位で正しく管理する必要があり、勤怠の丸め処理は原則的に違法です。
ただし、1か月の時間外労働時間や深夜労働時間、休日労働時間における1時間未満の端数処理や従業員の不利益にならない切り上げ処理など、例外的に認められるケースもあります。
勤怠の丸めの設定方法は?
エクセルで勤怠管理を行っている場合は、関数を使うと丸め処理を効率化できます。
また、勤怠管理システムの場合、管理画面から端数処理の設定ができるケースも少なくありません。
勤怠管理システムは法律に準拠したつくりになっているため、適法範囲での丸め処理が、比較的運用しやすい場合が多いです。
エクセルを使った勤怠管理の丸め処理の設定方法
エクセルの関数を使用した丸め処理を知りたい方に向けて、使用関数や設定方法を紹介します。
切り上げは「CEILING関数」を設定
勤怠データの端数を切り上げたい場合は、CEILING関数を使用します。CEILING関数とは、指定された数値を基準値の最も近い倍数に切り上げる関数です。
CEILING関数の数式は、以下のとおりです。
| =CEILING(数値,基準値) |
たとえば、打刻時間を15分単位で切り上げたい場合は、CEILING関数の数値に打刻時間、基準値に15を入力します。
切り捨ては「FLOOR関数」を設定
勤怠データの端数を切り捨てたい場合は、FLOOR関数を使用します。FLOOR関数とは、指定された数値を基準値の最も近い倍数に切り下げる関数です。
FLOOR関数の数式は、以下のとおりです。
| =FLOOR(数値,基準値) |
たとえば、打刻時間を15分単位で切り捨てたい場合は、FLOOR関数の数値に打刻時間、基準値に15を入力します。
▼エクセルでの勤怠管理を行う方法を知るには、次の記事をご確認ください。
丸め設定には勤怠管理システムを活用
勤怠データの丸め処理には、勤怠管理システムを活用すると便利です。
勤怠管理システムのなかには、適法の範囲で丸め設定の機能が搭載されているものがあります。一度設定するだけで打刻時間の丸め処理を自動化できるため、勤怠管理を効率化できます。
複雑な関数の入力や設定も不要なため、属人化しやすい勤怠管理・給与計算業務の標準化が可能です。管理画面から必要な設定をするだけで、自社に適した勤怠管理を実現できます。
機能や仕様は製品によって異なるため、必要な機能を洗い出したうえで、確認しましょう。

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まとめ|勤怠管理の丸めは法令違反に注意
勤怠管理の丸め処理は原則として禁止です。とくに労働時間の切り捨ては、給与計算において便利なようで、労働基準法違反となるリスクがあります。
一方で、労働時間を実際よりも多く扱う処理は、従業員の不利益につながらないため問題ありません。そのほか、1か月単位での時間外労働時間や深夜労働時間など、例外的に端数処理が認められるケースはあると理解しておきましょう。
ただし、あくまで労働時間は1分単位での管理が原則です。短い時間でも積み重なれば大きな差額となり、従業員の不利益となることは否定できません。
関連する法律やガイドラインの内容をしっかりと理解し、法令遵守を徹底できる管理体制を整備しましょう。
