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勤怠における丸めは違法? 労働時間の管理方法などを解説

勤怠の丸めとは、従業員の出勤や退勤時間を一定の基準に合わせて切り上げまたは切り捨てることを指します。従業員の勤怠を丸める場合は、正しい方法で行わなければ違法となるかもしれません。

本記事では、勤怠の丸めの意味や違法にならない処理方法、丸めのメリット・デメリットなどについてわかりやすく解説します。人事領域に携わっている人や経営者は参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

勤怠における丸めは違法? 労働時間の管理方法などを解説
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    勤怠管理とは

    勤怠管理とは、企業が従業員の労働状況について正確に把握することを目的とし、従業員の労働時間や状況を記録することです。企業には、労働基準法および会社の就業規則を遵守しながら、従業員が労働できる環境を整備することが義務付けられています。

    勤怠管理における丸めとは

    勤怠管理における丸めとは、従業員の出勤・退勤時間を一定の基準に合わせて切り上げたり切り捨てたりすることです。

    たとえば切り上げは、始業時刻として8時10分に打刻した場合、15分丸めでは8時15分、30分丸めでは8時30分を終業時刻とします。切り捨ては、8時に出勤したとして処理をします。

    勤怠の丸めは違法となる可能性がある

    給与計算の負担軽減のために、労働時間を丸めて処理を行う場合はよくありますが、正しく運用しなければ違法になるかもしれません。そこで、勤怠の丸め処理における注意点を解説します。

    勤怠管理の原則は1分単位である点に注意

    勤怠の丸めは、労働基準法にのっとって正しく運用しなければ違法行為となる可能性があります。勤怠は、原則として1分単位でカウントしなければなりません。また、労働基準法24条により、賃金は従業員に勤務した時間分の全額を支払わなければならない旨が記されています。

    (賃金の支払)
    第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

    引用:『労働基準法』e-Gov法令検索

    従業員が働いた対価を支払わない丸めは労働基準法違反となるため、勤怠の丸めには注意が必要です。

    違法にならない丸め処理

    勤怠の丸めは基本的に違法ですが、場合によっては違法にならないケースも考えられます。想定される違法にならない丸め処理は、以下の通りです。

    1.1時間当たりの賃金や割増賃金に円未満の端数が生じた場合

    1時間当たりの賃金や割増賃金の額に、円未満の端数が出た場合は、0.5円未満の端数を切り捨て、0.5円以上1円未満の端数を1円に切り上げることが認められています。

    たとえば、月給250,000円、月の所定労働時間数が158時間である場合、1時間当たりの賃金は、1,582.278…円です。

    このとき円未満の端数を切り捨てて、1時間当たりの賃金を1,582円と計算します。

    2.1か月における割増賃金の総額に、1円未満の端数が生じた場合

    1か月間における残業や休日労働、深夜労働などの割増賃金の合計額に、1円未満の端数が生じた場合には、1と同様の方法で処理することが認められています。

    たとえば、1時間当たりの賃金が1,582円である従業員が、時間外労働を1か月で20.25時間行った場合、1,582円×20.25時間×125%=40,044.375円です。

    このとき円未満の端数を切り捨て、40,044円と計算します。

    3.1か月の賃金支払い額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額)に100円未満の端数が生じた場合

    1か月分の賃金の支払い額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額)に100円未満の端数が生じた場合は、50円未満の端数を切り捨て、50円以上の端数を100円に切り上げて支払うことが認められています。

    参照:『賃金計算の端数の取扱い』厚生労働省

    勤怠の丸めを行うメリット

    勤怠の丸めを行うことは、管理側・従業員側双方にとってメリットがあります。

    給与計算を効率的に行える

    勤怠の丸めを行うメリットの1つめは、給与計算の負担軽減につながることです。始業時間と終業時間を丸め処理することにより、給与の計算工程が減り、効率的に業務を進められます。

    15分単位での丸め処理をした場合、出勤時刻9時00分、退勤時刻18時15分など計算しやすい数字となります。従業員が多ければ多いほど担当者の負担の軽減が実感されやすいでしょう。ただし、7時間15分の労働時間を7時間とするような、労働者の不利になるような丸め処理は許されません。

    従業員の打刻が楽になる

    丸めを行うメリットの2つめは、従業員の出勤および退勤時のタイムカードの打刻が楽になる点です。勤怠の丸めを行うと、従業員が「ぴったりの時間で正確に打刻しなければならない」とのプレッシャーから開放されるため、従業員のストレス軽減の観点からも丸めは有効であるといえるでしょう。

    勤怠の丸めを行うデメリット

    勤怠の丸めにはメリットがある一方、デメリットも存在します。

    違法になる可能性がある

    勤怠の丸めは、正しく運用しなければ労働基準法違反となる可能性があります。特に、労働時間が実際の労働時間よりも短くなってしまう運用はトラブルを招くため、避けなければなりません。

    原則的には1分単位で賃金を支払う必要があるため、従業員にとって不利になる丸め処理は行わないよう注意しましょう。

    運用が難しい

    働き方の多様化に対応しなければならないため、丸めの運用が難しくなっているというのもデメリットとして考えられます。

    従業員が始業時間や終業時間を自由に選択できるフレックスタイム制やテレワークなどに合わせて丸め処理をする場合、作業が複雑化してしまう点が運用上のデメリットであるといえます。

    勤怠の丸めを設定する際の注意点

    勤怠の丸めを行う際には、注意すべき点があります。気づかぬうちに労働基準法に違反することがないよう、特に以下の点に注意して運用しましょう。

    残業時間は30分ごとに丸める

    丸めをする場合、1日単位で30分未満の切り捨てを行うことは違法です。

    しかし、月の総残業時間については、30分未満を0分に切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることが行政通達の例外規定によって認められています。そのため、月の総残業時間については、30分単位での切り捨てと四捨五入の処理が必要です。

    遅刻の切り上げをしない

    遅刻時間の切り上げは、労働時間が実際の労働時間よりも短くなってしまい、労働基準法違反となるため注意が必要です。たとえば、5分の遅刻を丸めて30分の遅刻と扱うと、従業員の勤務時間を25分少なくしたことになります。

    遅刻のペナルティとして減給するときは、労働基準法91条にのっとって罰則を科す必要があることに留意しましょう。

    勤怠の丸めに関する具体例

    これまで勤怠を違法に丸め、未払い賃金の支払を行った企業の事例が過去にいくつか存在します。そのうち2つの事例をご紹介します。

    大手飲食チェーンの事例

    2022年に大手飲食チェーンがこれまでに切り捨ててきた、5分未満の労働時間分の賃金を過去2年分にわたって支払うことを決定しました。過去2年分、約9万人への未払い賃金の支払いは、約16〜17億円にのぼり、社会に大きな衝撃を与えました。

    これは行政指導が入ったことを理由に発生したわけではなく、自主的にルールを変更し対象者に支払いをした事例です。

    医療法人の事例

    2つめの事例は、残業時間について15分未満の時間を切り捨てて給与計算をしていた、医療法人A病院の事例です。A病院に勤務する医師が、切り捨てられた労働時間に相当する未払い賃金を請求する訴訟を起こし、裁判の結果、裁判所は病院側に対して未払い残業代の支払いを命じました。

    まとめ 

    勤怠の丸めは、給与計算の手間を軽減できるため導入している企業は多いものの、運用に注意しなければ法律違反となり、トラブルに発展してしまう可能性もあります。

    人事労務担当者は、従業員の勤怠を適正に管理するためにも、運用ルールを整備し、勤怠管理システムの見直しも視野に入れてみてください。

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