残業許可制のメリットと注意点|無駄な残業を防ぐ対策を解説
残業許可制とは、従業員が残業をするにあたって事前に許可や承認を得る社内ルールのことです。残業許可制は、実際は業務を進めていないのに、社内に長時間残って過ごす「ダラダラ残業」を防ぐ有効な対策といえます。
本記事では、残業許可制のメリットと注意点について詳しく解説します。また、無駄な残業を防ぐための具体的な対策も紹介しますので、残業削減に取り組む担当者はお役立てください。
残業許可制とは
残業許可制とは、従業員が残業をする場合に、あらかじめ申請して上司や人事、企業の承認を得なければならないと定める社内規則です。「残業申請制」とも呼ばれています。
残業許可制を採用している企業では、残業申請書や残業承認書を用いて、残業中に進める業務内容や必要な残業時間を申告・申請する必要があります。申請書をもとに上司や責任者から許可が下りた場合のみ、残業が認められるのです。
残業許可なしで残業したらどうなる?
残業許可制では、承認されなければ従業員は残業できません。許可なしで残業をした場合、労働時間にカウントされず、残業代も支払われない可能性があります。
許可のない残業であっても、黙示の許可や残業命令があったと判断される場合は、残業代の支払いが必要です。
残業許可制を運用する際は、残業を前提とした業務量を、従業員に課していないかどうか、配慮することが大切です。
残業許可制を導入するメリット
残業許可制を導入するメリットについて、3つ取り上げて詳しく解説します。
- 残業時間を把握・管理できる
- 不要な残業を減らして、労働生産性を高められる
- 従業員のメンタルヘルスの負担を軽減できる
残業時間を把握・管理できる
残業許可制を導入すると、残業申請のやり取りや会社が許可した残業時間が記録として残ります。記録された内容をもとに、従業員の残業時間を把握・管理することが可能です。
<!– 残業管理 –>
不要な残業を減らして、労働生産性を高められる
残業許可制を導入すれば、従業員が残業申請をした際に会社側が本当に必要かどうかを判断でき、無駄な残業の抑制につながります。不要な残業を減らすことが、社内全体の業務効率や生産性の向上にもつながるでしょう。
従業員のメンタルヘルスの負担を軽減できる
政府が推進する働き方改革によって、従業員のワークライフバランスが重要視されるようになりました。ワークライフバランスの実現は、心身の負担を軽減することにつながります。
残業許可制の導入により、従業員の長時間労働を抑制し、心身の健康を維持しやすくなるでしょう。
残業許可制を導入するデメリット
残業許可制の導入にはメリットがある一方、デメリットもあります。主なデメリットを3つ紹介します。
適切に運用しなければ形式だけになる
業務生産性の向上や従業員の負担軽減を目的に残業許可制を導入しても、適切に運用されなければ効果は期待できません。チェック体制が不十分で、審査基準も明確でないと、形だけの制度になってしまう恐れがあります。
「申請する」「承認する」だけの形式的なワークフローに終わらないよう、明確なルールに基づいて厳格に運用していきましょう。
従業員が残業をためらう
残業許可制を導入し、残業条件を厳しくして申請手続きを複雑にしすぎると、従業員が残業をためらうようになってしまいます。残業が必要な業務量や緊急性が高い状況でも、申請の手間から残業をあきらめてしまうかもしれません。
残業許可制を導入する際は、残業を認める条件や申請手続きについて、従業員の実情を考慮し、慎重に決めることが重要です。
勤怠意欲が低下し、離職につながる恐れがある
残業許可制を導入して従来よりも残業しにくくなると、従業員の中には残業以外の方法で業務をカバーしようとする人が出てくるでしょう。その結果、早出残業や持ち帰り残業などが常態化する恐れがあります。
残業代が発生しないにもかかわらず、実質的な長時間労働が増えることで、従業員の心身にストレスがかかり、勤怠意欲の低下や離職につながるリスクが懸念されます。
残業許可制を導入する手順
残業許可制を導入するにあたって手順を詳しく解説します。ポイントは以下の5点です。
- 残業許可制の申請ルートを設定する
- 承認基準を設定する
- 所属長などに残業許可制について周知する
- 従業員に対して残業許可制について周知する
- 就業規則に追記する
残業許可制の申請ルートを設定する
残業許可制を導入する際は、まず申請ルートを明確に設定します。従業員自身が申請するのか、それとも上司の申請によってのみ、残業を許可するのか、具体的な流れを決める必要があります。
承認基準を設定する
残業許可制において「どのような理由で残業の申請を認めるか」という承認基準について、社内で話し合いましょう。承認者によって対応に差が生じないよう、残業を認める理由を具体的に定めることが大切です。
残業許可制の承認基準を定めると同時に、申請書類の準備も進めます。労務トラブルを避けるために口頭ではなく、書面やWeb(オンライン)で申請できるようにしておくと運用の助けとなります。
従業員が制度を利用しやすいように、残業理由や予定時間、実際に残業した時間を記載する「残業申請書」や「残業承認書」などの書式を作成しましょう。
所属長などに残業許可制について周知する
所属長や部署の担当者に対して勉強会や研修会などを実施し、残業許可制について周知しましょう。事前に知らせておかないと、制度を導入したときに適切に運用できない恐れがあります。
どのようなルールに基づいて残業許可制を運用していくかを明確にしておくと、スムーズに周知できるでしょう。
従業員に対して残業許可制について周知する
所属長や部署の担当者の理解を得たら、従業員に対しても残業許可制について周知する必要があります。残業するためにはどのような手続きが必要か、いつから残業許可制の運用を開始するかなどを具体的に説明することが大切です。
従業員が戸惑って実際の運用に支障をきたさないように、マニュアルや資料を活用して、残業許可制の内容をわかりやすく伝えましょう。
就業規則に追記する
残業許可制に関する社内のルールは、就業規則に記載してはじめて認められます。そのため、就業規則に残業許可制を採用する旨や残業許可制の内容、申請方法などを具体的に定めなければなりません。
また、就業規則は作成するだけでなく、従業員に対して周知しなければ労働契約上の根拠として認められません。つまり、残業許可制を導入するためには、就業規則に追記したうえで、従業員へ事前に周知する必要があります。
従業員への周知方法については、労働基準法施行規則第52条の2で次のように定められています。
残業許可制に関する社内ルールは、就業規則に記載してはじめて正式に認められます。そのため、残業許可制を採用する旨や具体的な内容、申請方法などを就業規則に明確に定める必要があります。
また、就業規則への追記だけでなく、従業員に対して周知しなければ、労働契約上の根拠として認められません。従業員に対して事前に周知することが大切です。
従業員への周知方法については、労働基準法施行規則第52条の2で以下のように定められています。
- 各作業場の見やすい場所に掲示する、または備えつける
- 書面を従業員に配布する
- 従業員が内容を常時確認できる電子機器(パソコンやタブレットなど)を設置する
すべての従業員が就業規則の変更内容を把握できるように周知しましょう。
残業許可制を適切に運用するためのポイント
残業許可制を導入し、適切に運用していくためのポイントを3つ取り上げて解説します。
- 申請手続きから承認までの流れや仕組みを整備する
- 管理職を対象にした教育を実施する
- 従業員の勤怠管理を徹底する
申請手続きから承認までの流れや仕組みを整備する
残業許可制を導入しても、適切に運用されなければ適切な勤怠管理はできません。円滑に運用するためには、申請手続きから承認までのフローを明確にし、制度が形だけにならないように仕組みを整えることが重要です。
残業許可の手続きが煩雑にならないか、簡潔でわかりやすい運用方法かを確認し、マニュアルや資料を作成しましょう。
また、社内全体で残業許可制の理解を深める配慮も必要です。運用する中で申請や承認に不備があれば、早期に指摘し、申請による残業許可を徹底しましょう。
管理職を対象にした教育を実施する
残業許可制を適切に運用するためには、従業員への周知徹底はもちろん、残業を承認する立場である管理職への教育が不可欠です。マニュアルや資料を作成するだけでなく、管理職を対象とした研修や勉強会を実施し、制度の理解を深める機会を設けましょう。
管理職が残業許可制の仕組みやルールを理解することで、業務の効率化や残業時間の削減、業務内容の改善につながる可能性があります。
従業員の勤怠管理を徹底する
残業許可制の導入は、従業員だけでなく、申請を許可する管理職や残業時間を管理する人事担当者にも負担をかける可能性があります。
残業許可を紙で申請する場合は、手書きの書類とタイムカードなどの実際の勤怠データと照合しながら、時間を確認しなければなりません。申請書類の提出が不十分であれば、正確な集計ができないこともあります。
残業許可制をスムーズに運用し、従業員や管理職の負担を軽減するためには、勤怠管理システムの導入も一案です。システムを活用すれば、パソコンやスマートフォンから簡単に申請・承認作業ができ、労働時間の集計も自動化されるため、手続きや管理の手間が大幅に削減できます。
残業許可制を運用には勤怠管理システムの活用も(まとめ)
残業許可制とは、従業員が残業する場合に上司や所属長へ申請し、承認を得ることを義務づける社内制度です。導入により、残業時間を把握して人件費などの予実管理がしやすくなり、労働生産性の向上や個人のストレス軽減も期待できます。
残業許可制を適切に運用するためには、自社の実態や就業規則に合ったルールを設定し、運用のしやすさにも配慮することが大切です。従業員の勤務形態も踏まえ、より働きやすい環境を整備しましょう。
また、残業許可制を導入する場合は、勤怠管理システムの活用も検討してみてはいかがでしょうか。従業員や管理職の負担を最小限に抑え、残業許可制を正しく運用していくことにつながるでしょう。
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