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有給休暇の繰越とは【わかりやすく】計算例や上限日数、仕組みを解説

有給休暇の繰越とは【わかりやすく】計算例や上限日数、仕組みを解説

有給休暇は、従業員に十分な休息を与え、リフレッシュしてもらうための制度です。しかし、実際には有給休暇を消化しきれず、余らせてしまう従業員も多いでしょう。

有給休暇の繰越制度は、そんな余った有給休暇を翌年に持ち越せる制度です。有給休暇の付与日数や残日数は一人ひとり異なるので、労務管理の担当者は従業員ごとに取得状況を把握しておく必要があります。

本記事では、有給休暇の繰越制度の仕組みや計算例、繰越できる上限日数などをわかりやすく解説します。

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    有給休暇の繰越制度とは

    有給休暇の繰越制度とは、使いきれなかった有給休暇を翌年度に持ち越す制度です。

    一定の条件を満たす従業員には、有給休暇が付与されます。しかし「仕事量が多くて休めない」「周囲も取得していないので言い出しづらい」という理由から、実際には使いきれない場合も多いものです。

    そのため、余った有給休暇の繰越が認められています。

    たとえば、2023年4月に付与された有給休暇を使いきれなかった場合、2025年3月末まで持ち越せます。つまり、消化しきれなかった有給休暇は、取得期限を1年間延長できるのです。

    有給休暇付与の仕組みをおさらい

    以下の2つの条件を満たす従業員には、雇用形態にかかわらず有給休暇が付与されます。

    • 雇用から半年間継続して働いている
    • 全労働日のうち8割以上出勤している

    有給休暇の付与日数は、勤続年数や所定労働日数によって変動するため、従業員ごとに異なります。

    フルタイム労働者の付与日数

    所定労働日数が週5日以上、所定労働時間が週30時間以上の場合、勤続年数に応じて以下の日数が付与されます。

    勤続年数6か月1年半2年半3年半4年半5年半6年半以上
    付与日数10日11日12日14日16日18日20日

    出典:『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』厚生労働省

    週5日・30時間の場合、1日の労働時間は6時間であり、多くのフルタイム従業員はこのケースに当てはまるでしょう。

    パートタイム労働者の付与日数

    所定労働日数が週4日以下、所定労働時間が週30時間未満の場合、勤続年数に応じて以下の日数が付与されます。

    週の所定労働日数年間の所定労働日数
    勤続年数
    6か月1年半2年半3年半4年半5年半6年半以上
    付与日数4日169~216日7日8日9日10日12日13日15日
    3日121~168日5日6日6日8日9日10日11日
    2日73~120日3日4日4日5日6日6日7日
    1日48~72日1日2日2日2日3日3日3日

    出典:『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』厚生労働省

    シフト制で働くパートタイム・アルバイト従業員は、このケースに当てはまる場合が多いでしょう。

    雇用形態がパートタイム・アルバイトであっても、週5日以上または週30時間以上働いているなら、フルタイム従業員と同じ日数が付与されるため注意が必要です。

    繰り越した有給休暇が消滅するタイミング(時効)

    有給休暇は付与されてから2年間で消滅します。労働基準法第115条には、従業員から会社への請求権について以下の通り定められています。

    (時効)第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

    引用:『労働基準法』e-Gov法令検索

    つまり、繰り越した有給休暇が消滅するタイミングは、繰越から1年後です。

    たとえば、2023年4月に付与された有給休暇を2024年4月以降に繰り越した場合、繰り越した有給休暇は1年後の2025年3月に期限を迎えます。

    有給休暇を繰り越した場合の上限日数

    有給休暇の繰越日数に上限はなく、余った有給休暇は全日数を繰り越せます。しかし、有給休暇は付与されてから2年間で消滅するので、翌年度に繰り越せる日数は、その年に付与された日数と同じです。

    有給休暇の付与日数は最大年20日(※)なので、有給休暇の繰越の上限日数は、理屈のうえでは20日といえます。もちろん、有給休暇の付与日数は人それぞれ異なるため、年10日付与されている従業員は10日、年16日付与されている従業員は16日が上限日数です。

    ※所定労働日数が週5日以上・所定労働時間が週30時間以上・勤続年数6年半以上の場合

    有給休暇を保有できる最大日数

    有給休暇の期限が2年間であることを踏まえると、有給休暇の保有日数は「前年度から繰り越した日数+今年度に付与された日数」となります。

    有給休暇の付与日数は最大20日なので、保有できる最大日数は「20日+20日=40日」と考えられるでしょう。

    ただし、2019年4月の労働基準法改正によって、年10日以上の有給休暇を付与している従業員に対しては、年5日の有給休暇を取得させることが義務づけられました。前年度からの繰越には、少なくともこの5日分は含まれていないはずなので、事実上の最大保有日数は「(20日-5日)+20日=35日」です。

    なお、有給休暇を保有できる最大日数は、会社の就業規則によっても異なります。

    有給休暇の繰越における計算例

    有給休暇の繰越における具体例をご紹介します。

    今年度の取得日数が前年度繰越分よりも多い場合

    今年度の有給休暇の取得日数が、前年度の繰越分を上回る場合、今年度に発生する繰越分は、以下の式で算出します。

    今年度の付与日数-(今年度の取得日数-前年度の繰越分)

    具体例として、次のケースを考えてみましょう。

    • 前年度繰越分:8日
    • 今年度の付与日数:16日
    • 今年度の取得日数:10日

    この場合、まずは前年度繰越分を消化したうえで、今年度の付与日数から2日分を消化します。そのため「今年度の有給休暇の残日数=翌年度への繰越分」は、以下の通りです。

    16日-(10日-8日)=14日

    今年度の取得日数が前年度繰越分よりも少ない場合

    今年度の有給休暇の取得日数が前年度繰越分を下回る場合、今年度に発生する繰越分は付与日数と同じ日数です。

    今年度の繰越分=今年度の付与日数

    具体例として、次のケースを考えてみましょう。

    • 前年度繰越分:8日
    • 今年度の付与日数:18日
    • 今年度の取得日数:6日

    この場合、今年度に取得した有給休暇は、すべて前年度繰越分でまかなわれます。残りの前年度繰越分は期限を迎えて消滅し、今年度に付与された日数は消化されずに残ります。

    つまり、今年度に付与された18日分が、そのまま翌年の繰越日数となるのです。

    有給休暇の繰越はパートタイムや派遣も適用可

    パートタイムや派遣などの雇用形態に関係なく、今年度の有給休暇が余った場合は、翌年度への繰越が可能です。なお、派遣スタッフの有給休暇は雇用元である人材派遣会社に申請します。

    「2年間の期限」や「5日の取得義務」なども雇用形態に関係なく適用されるため、企業はすべての従業員に対して、有給を取得しやすいような環境を整える必要があります。

    有給休暇の繰越で覚えておきたいこと

    余った有給休暇を繰り越す際は、次のポイントに注意しましょう。

    繰り越した有給休暇から消化するのが原則

    前年度からの繰越がある場合は、繰り越した有給休暇から消化します。前年度繰越分をあとから消化すると余ってしまう可能性が高く、そうなると今年度中に期限を迎えてしまうためです。

    なお、新規付与分から消化するためには、就業規則などで定めることが必要です。

    具体例として、次のケースを考えてみましょう。

    • 前年度繰越分:3日
    • 今年度付与日数:14日
    • 今年度取得日数:8日

    この場合、まずは前年度繰越分の3日が消化され、残りの5日分を今年度の付与日数から消化します。つまり、今年度の残日数は14日-(8日-3日)=9日です。

    40日を超えて有給を保有することもある

    労働基準法で定められているのは、あくまで「少なくとも付与しなければならない日数」です。

    そのため、なかには独自のルールを設定し、法定日数よりも多くの有給休暇を付与している企業もあるでしょう。たとえば、就業規則で定められた付与日数が最大22日なら、最大保有日数は「22日+22日=44日」です。

    ただし、この場合も前年度からの繰越に取得義務のある5日分は含まれていないはずなので、事実上の最大保有日数は39日です。

    有給休暇は次年度1年間繰り越せる

    消化しきれず余った有給休暇は、翌年度に繰り越せます。ただし、有給休暇の期限は付与されてから2年間です。翌年度にも消化しきれなかった有給休暇は、繰越から1年後に失効してしまいます。

    有給休暇は、従業員に十分な休息を与え、心身の健康を守るための制度です。労務管理の担当者としては、できるだけ有給休暇を失効させないよう、従業員に取得を促したいところです。

    有給休暇の消化忘れを防ぐには?

    有給休暇の消化率を高めるなら、以下のような施策を試みましょう。

    計画的付与制度を活用する

    計画的付与制度とは、従業員に計画的に有給休暇を付与する制度です。

    通常、有給休暇は従業員の申請を受けて都度取得させるものですが、日々の業務に追われていると、ついつい有休消化を先延ばしにしてしまうケースが多いでしょう。

    計画的付与制度なら、あらかじめ計画したスケジュールで有給休暇を取得させることができます。

    ただし、計画的付与制度を活用するためには、労使協定の締結が必須です。また、従業員が自由に取得できる有給休暇を5日分残す必要があります。

    参照:『年次有給休暇の計画的付与制度』厚生労働省

    人材配置を最適化する

    多忙を理由に有休消化が進まないなら、人材配置の見直しも検討してみましょう。

    従業員の能力が最大限発揮できるように人材配置を最適化することで、生産性が高まり、日々の業務に余裕が生まれる可能性があります。それぞれのスキルや能力を把握し、適材適所の人材配置を行うことが大切です。

    管理を自動化する

    有休消化を適切に促すためには、従業員一人ひとりの取得状況を正確に把握する必要があります。有給休暇の管理システムを導入すれば、複雑な管理業務を自動化することが可能です。

    繰越日数や残日数をシステムが自動集計して、アラートを出してくれるので、抜け漏れを減らし、より効率的に有給休暇を管理できるでしょう。

    有給休暇を自動で管理するシステム|One人事[勤怠]

    One人事[勤怠]は、有休管理を自動化する勤怠管理システムです。

    従業員一人ひとりの勤続年数や働き方に合わせて付与日数を自動計算し、前年度からの繰越日数を手軽に確認できます。従業員に有給休暇の取得を促すアラート機能も搭載しており、担当者の負担を軽減することが可能です。

    有給休暇の管理を怠ると、企業の社会的な信用が低下するだけでなく、最悪の場合は罰則を科せられる恐れがあります。

    「有休管理が複雑でわかりにくい」「ほかの業務に手いっぱいで、有休管理までこなせない」とお困りの担当者は、ぜひOne人事[勤怠]の導入をご検討ください。

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