有給休暇は何年で消滅? 労働基準法の時効ルールと計算例、1年で消えるのは違法?

有給休暇は何年で消滅? 労働基準法の時効ルールと計算例、1年で消えるのは違法?

有給休暇がいつの間にか消滅していたという経験はありませんか。有給休暇には時効があり、期限を過ぎると未消化のまま権利が消滅してしまいます。企業としては、従業員の有給休暇が消滅する前に、取得を促進したいところですよね。

本記事では、有給休暇が何年で消滅するのか、具体的なルールや計算例を解説しています。意図しない有給の消滅を防ぐための対策も紹介するので、せっかくの休暇を無駄せず運用するためにお役立てください。

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目次アイコン目次

    有給休暇は何年で消滅する? 労働基準法上のルール

    有給休暇は、付与された日から2年という消滅時効が設けられています(労働基準法第115条)。期間内に取得しなかった場合、権利は消滅し、取得できなくなります。消滅時効は法律で定められたルールであり、企業が独自に短縮することもできません。

    一方で2020年の法改正によって、賃金請求権などは消滅時効が2年から5年(当面は3年)に延長されました。ただし、有給休暇の時効は2年のまま据え置かれています。

    有給休暇の目的が労働者の健康維持やリフレッシュであり、時効の延長が有給休暇取得の妨げになる可能性があるためです。

    有給休暇の消滅時効はあくまで法律で定められた最低基準です。企業が就業規則などで期限を上回るルールを設けることは、従業員にとって有利な変更であるため認められます。

    参照:『労働基準法第115条』e-Gov法令検索

    有給休暇は消滅前に1年間繰り越せる

    有給休暇は消滅前に1年間の繰り越しが可能です。付与された有給休暇が年度内に消化されなかった場合、翌年度まで保有し続けられます。

    2024年4月1日に10日間の有給休暇が付与された場合、2025年3月31日までに取得しなかった日数は2025年度に繰り越されます。ただし、2026年3月31日を過ぎると、繰越分も消滅してしまうため注意が必要です。

    繰り越せる日数に上限はなく、付与された有給休暇が20日であれば、すべてを翌年度に繰り越せます。繰り越し分と新たに付与された分をあわせると、最大で40日間まで保有が可能です。

    企業が法定より多くの有休を付与している場合には、繰り越せる日数が20日を超えることもあります。

    有給休暇の消滅時効はいつから計算する?

    消滅時効の起算日は、有給休暇が付与された日(基準日)です。

    2024年10月1日に10日分の有給休暇が付与された場合、有効期限は2026年9月30日までです。付与と繰越、消滅の流れは以下のとおりです。

    • 2024年10月1日に12日付与
    • 2023年10月1日に付与されて消化しなかった6日を繰越
    有給休暇は何年で消滅? 労働基準法の時効ルールと計算例、1年で消えるのは違法?
    有給休暇は何年で消滅? 労働基準法の時効ルールと計算例、1年で消えるのは違法?
    • 2025年10月1日に14日付与
    • 2024年10月1日に付与されて消化しなかった12日を繰越
    • 2023年10月1日に付与されて消化しなかった2日は消滅
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    付与日が従業員ごとに異なる場合に管理が煩雑になりやすいため、付与日を統一して管理することをおすすめします。従業員数が多い企業では、勤怠管理システムを活用して消化を管理することが一般的です。

    勤怠管理システムを活用すれば、一人ひとりの有休付与日数や付与日、期限を見やすく管理できます。組織全体の取得率の計算も自動化されるため、実務の手間を減らしながら、取得を促す施策を検討できるでしょう。

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    有給休暇はどれくらい消滅している?

    厚生労働省の調査によると、2023年の日本における有給休暇の平均取得率は62.1%でした。法定付与日数の4割近くが、未消化のまま消滅している現状です。日本の有給休暇取得率の低さがわかります。

    参照:『令和5年就労条件総合調査の概況』厚生労働省

    有給休暇の消滅が発生するのは、以下のような原因が考えられます。

    • 業務の忙しさや人員不足
    • 休暇取得をためらわせる職場の雰囲気
    • 有給休暇の消滅日や繰越日数が周知されていない

    状況を改善するためには、企業が積極的に有給休暇の取得を推進する取り組みが求められます。有給休暇の無駄な消滅を防ぐためにも、取得しやすい環境づくりが重要です。

    有給休暇の消滅時効に関して企業が注意したいこと

    有給休暇の消滅時効に関連して、企業が気をつけたいポイントを紹介していきます。

    • 年内に付与された分はすべて翌年に繰り越せる
    • 企業が勝手に時効を短縮するのは違法である
    • 企業が勝手に有給を消化・繰り越しなしは違法である
    • 基本的に繰り越した有給を先に消化する
    • 時間単位年休も繰り越せる

    繰越処理を誤ると、労基署からの是正が入る可能性もあるため、順を追って確認していきましょう。

    年内に付与された分はすべて翌年に繰り越せる

    付与された有給休暇が年度内に消化されなかった場合、翌年度まで繰り越すことが可能です。付与日から2年間は有給休暇を取得する権利が保障されています。繰り越しをしないまま消滅させる運用は労働基準法に反します。労働基準監督署による是正勧告や罰則の対象になるため注意が必要です。

    とくに注意したいのは、有給休暇の繰り越しの事務処理です。勤怠管理の担当者は、従業員一人ひとりの有給付与日や消化状況を管理しなければなりません。

    繰り越し可能な日数を計算したり、取得状況をレポート化したりするには、勤怠管理システムの活用がおすすめです。消化状況が自動で集計され、管理画面上で簡単に確認できるため、集計ミスや事務処理の負担を減らせます。

    有休管理を見える化し、適切に管理するために、自社に適した勤怠管理システムの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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    企業が勝手に時効を短縮するのは違法である

    有給休暇の時効期間は法律で「2年」と定められており、企業が独自に時効期間を短縮することは認められていません。

    たとえば「付与日から1年以内に消化しなければ自動的に失効する」といった規定を設けたとしても、無効と判断されます。労働基準法は労働者を保護するための最低基準であり、下回る規定はすべて違法とみなされます。

    就業規則や労働契約書に記載されている有給休暇の取り扱いが、法令に適合しているかを定期的に確認してもよいでしょう。

    万一、意図せずとも違法な運用が発覚した場合、労働者から訴えられるリスクもあります。有給管理の基本ルールを理解し、適切な管理を継続しましょう。

    勝手に有給を消化・繰り越しなしは違法である

    従業員に無断で有給休暇を消化させたり、未消化分を翌年度に繰り越さなかったりすることも違法です。有給休暇は労働者が本人の意思で取得する権利です。会社側が強制的に消化させるものではありません。

    たとえば、業務の少ない日を理由に「今日は有給休暇扱いにする」と一方的に決定する行為は、労働者の権利を侵害するものです。また、未消化分の繰り越しをせずに消滅させた場合、法令違反となり罰則が科される可能性があります。

    従業員が自発的に有給休暇を取得できる環境を整えるとともに、消化状況を適切に記録し、未消化分があれば翌年度に繰り越す処理を行いましょう。

    基本的に繰り越した有給を先に消化する

    有給休暇には「繰越分」と「新規付与分」があり、どちらを優先的に取得させるかは法律で定められていません。一般的には、消滅期限が近い繰越分から消化する運用がすすめられています。

    繰越分を優先的に消化することで、消滅リスクを減らし、従業員が有給休暇を無駄にしないように配慮できます。従業員にとっても、「どの有給休暇が消滅期限に近いか」を常に意識することは難しいため、企業が繰越分から消化させる仕組みを導入しておくと親切でしょう。

    運用ルールは、就業規則や労働契約書に明記するのが基本です。方針が定まっていないと、労使トラブルを招くおそれもあるため、明文化により現場の混乱を防げます。

    なお、就業規則などに定めることにより、新規付与日数から取得させる運用も可能です。

    時間単位年休も繰り越せる

    時間単位年休制度を導入している企業では、従業員が有給休暇を1時間単位で取得が可能です。時間単位年休に、通常の有給休暇と同様に翌年度に繰り越せます。ただし、時間単位年休の繰り越し可能な日数は法定上限の「5日分」までです。

    たとえば、所定労働時間が1日8時間の従業員が、前年に40時間分を残した場合、40時間は翌年度に繰り越されます。しかし、残りが40時間を超える場合、超過分は繰り越せずに消滅してしまいます。

    時間単位年休は、子どもの送り迎えや通院など、短時間だけ休みたいときに柔軟に対応できる制度です。一方で、取得状況や繰越の管理が煩雑になりやすいため、勤怠管理システムを十分に活用することで運用工数が減らせるでしょう。

    有給休暇の管理工数を減らす|勤怠管理システムOne人事[勤怠]の特長を見る

    消滅後の日を指定できない・消滅後の事後申請は認められない

    有給休暇の消滅後に、従業員が「消滅した有給休暇を取得したい」と事後申請を行ったとしても、企業はこれを認める義務はありません。消滅後の有給休暇には法的な権利が存在しないため、申請を受け入れる必要はありません。

    消滅前に取得しなかった責任は基本的には労働者側にあるとされますが、企業が事前に適切な周知を行っていない場合、労使間でトラブルに発展する可能性があります。こうした問題を未然に防ぐためにも、以下の取り組みが有効です。

    • 消滅期限の事前通知:メールや通知で、「消滅リスクがある日数」を知らせる
    • 定期的な取得推奨:半年に一度など定期的に、有給取得を促す
    • 勤怠管理システムのアラート機能:自動で消滅期限のアラートを出す

    「知らないうちに消滅していた」という従業員をなくすために、企業側も配慮が必要です。

    有給休暇が消滅する前に、買い取るのは違法?

    原則として、有給休暇の買い取りは違法とされています。有給休暇が労働者の心身のリフレッシュを目的としているためです。ただし、次のような場合は例外的に買い取りが認められます。

    • 法定以上の有給休暇が付与されている場合
    • 退職時に残っている有給休暇
    • 消滅時効を迎える未消化分

    いずれも就業規則などに定められていなければ、買い取りは企業の判断に任せられています。

    ▼有給休暇の買取が認められるか・認められないか、詳しくは以下の記事でご確認ください。

    有給休暇の消滅を防ぐ方法

    有給休暇が消滅してしまうのは、従業員にとっても企業にとっても避けたい事態です。有給休暇の取得は、労働者の権利であり、計画的に取得させることは企業の責任でもあります。

    最後に、従業員が有給休暇を確実に取得できるようにするための方法を紹介していきます。

    • 計画的に取得させる
    • 半休や時間休を導入する
    • 取得しやすい雰囲気をつくる
    • 勤怠管理システムで残日数・繰り越し日数を管理する

    企業が効果的な施策や制度の導入、職場環境の整備を実施し、有給休暇の消滅を未然に防ぎましょう。

    計画的に取得させる

    2019年の法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される従業員には、年5日の取得が義務化されました。年5日の取得を確実にする手段の一つが「計画的付与制度」の活用です。従業員の同意を得たうえで、企業が有給休暇を特定の日に割り当てられます。

    計画的な運用により、有給休暇の取り忘れや“気づいたら消滅していたというリスクを回避できます。制度導入には就業規則の定めと労使協定の締結が必要ですが、導入後は運用が安定しやすく、企業側の管理負担も減らせるでしょう。

    半休や時間休を導入する

    1日単位での取得が難しくても、短時間ならというビジネスパーソンも多いでしょう。半休や時間休を導入することで、取得率を向上させることが可能です。

    たとえば、通院や子どもの送り迎え、役所手続きなど、短時間で済む予定にあわせて柔軟に休めるのは、従業員にとって大きなメリットです。取得率とあわせて、従業員満足度の向上にもつながり、働きやすい職場づくり施策としても一定の効果が期待できるでしょう。

    取得しやすい雰囲気をつくる

    制度だけでは、有給休暇の取得は浸透しないかもしれません。休みづらい空気が最大のボトルネックとなっている企業もあるのではないでしょうか。

    上司や管理職が率先して有給休暇を取得し、職場全体で休暇取得を推進する文化を育むことが重要です。休むことが推奨されているという意識が、職場全体に浸透すれば、自然と取得率は上昇していくでしょう。

    勤怠管理システムで残日数・繰り越し日数を管理する

    有給休暇の付与日・消滅日や残日数をアナログな方法で管理するのは、限界があります。管理ミスが違法リスクにつながることもあるため、慎重に対応しなければなりません。

    勤怠管理システムを活用すれば、有給の付与・取得・繰り越しの自動管理が可能です。5日取得していない従業員へのリマインドで、法令対応もサポートしてくれます。効率化とあわせて、コンプライアンス強化にも役立つ手段として検討をおすすめします。

    まとめ|有給休暇の消滅を当たり前にしない

    有給休暇の消滅は、従業員にとっては権利の喪失であり、企業にとっても信頼や法令違反のリスクにつながります。

    取得を前提とした仕組みづくりを進めることで「休める職場」が当たり前になる環境を整えていきましょう。

    労使双方が納得できる方法で、有給休暇を活用できる会社を目指すことが、結果的に健康的な働き方と生産性向上にもつながります。

    有給休暇の管理もサポート|One人事[勤怠]

    One人事[勤怠]は、煩雑な有給休暇の管理をシンプルにする勤怠管理システムです。有休の付与・失効アラートを自動で出すなど、消滅リスクへの事前対応にもお役立ていただけます。年5日の取得義務を確実に果たし、働きやすい職場づくり実現に向けて、有給管理の仕組みを見直してみてはいかがでしょうか。

    One人事[勤怠]の初期費用や気になる操作性については、当サイトより、お気軽にご相談ください。専門のスタッフが貴社の課題をていねいにお聞きしたうえでご案内いたします。 

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