時短勤務における休憩付与の考え方や注意点を解説

育児や介護による時短勤務制度が広がるなか、休憩の取り扱いに不安はありませんか。労働時間が6時間を1分でも超えると、企業は労働者に休憩を与える義務が生じます。ただし時短勤務者は、終業時刻が多少ずれ込む可能性もあり、対応に迷うこともあるかもしれません。
本記事では、時短勤務における休憩の考え方を法的な観点と注意点を交えて解説します。人事・労務の担当者の方は、制度運用の見直しや社内ルールの整備にぜひご活用ください。
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目次

時短勤務時の休憩時間の取り扱い
時短勤務者であっても、休憩時間の取り扱いは原則として通常の従業員と同じです。労働時間に応じて、労働基準法に基づく休憩時間を付与する必要があります。
所定労働時間 | 休憩時間 |
---|---|
6時間以下 | 規定なし(与えなくてもよい) |
6時間を超えて8時間以下 | 45分以上 |
8時間を超える | 1時間以上 |
とくに注意したいのは、所定労働時間がちょうど6時間の時短勤務社員です。規定に沿えば、休憩は不要に思えますよね。しかし、実際の業務状況によっては、終了時刻が数分ずれ込む状況も少なくないでしょう。
時短勤務の従業員の労働時間が、6時間を1分でも超えたら、企業は45分の休憩を与えなければなりません。たとえば会議が延長するなど、少しでも6時間超えが予想されるのであれば、45分の休憩を確保するようにしましょう。
勤怠管理システム上で、所定労働時間を「6時間ちょうど」で登録している場合は、実際の労働時間と乖離(かいり)がないか管理することが重要です。

時短勤務における休憩時間の注意点
時短勤務者の労働時間が6時間を超える場合、企業には法定の休憩時間を付与する義務があります。しかし現場では「想定よりも勤務時間が延びた」「休憩の付与が不適切だった」といった理由で、知らぬ間に労働基準法に違反してしまっているケースが発生しないともいえません。
以下では、企業がとくに注意したい5つのポイントを紹介します。
- 従業員が希望しなくても、法定の休憩を与える
- 休憩時間は勤務時間の途中で与えなければならない
- 6時間未満の時短勤務者にも休憩の付与を検討する
- 休憩と育児時間は異なる
- 休憩時間は分割付与できる
従業員が希望しなくても、法定の休憩を与える
時短勤務の従業員から希望がなくても、企業は所定労働時間に応じて休憩を与えなければなりません。「6時間を超えたけれど、今日は休憩はいりません」と従業員が申し出たとしても、45分の休憩を与える必要があります。休憩時間の付与は、労働基準法で定められた企業の義務です。6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を、労働時間に応じて必ず付与しましょう。
休憩時間は勤務時間の途中で与えなければならない
時短勤務者の休憩時間も、「労働時間の途中で与える」ことが労働基準法で定められています(途中付与の原則)。休憩は、従業員の疲れを取り、労働災害などを防ぐためにあります。
たとえば、所定労働時間が6時間の従業員に、万が一業務が延長して6時間を超えそうな場合、「終業間際に急いで45分休憩を取らせる」といった対応は不適切です。あらかじめ「途中の時間帯に休憩を確保しておく」ことが、企業のリスク回避につながります。
6時間未満の時短勤務者にも休憩の付与を検討する
所定労働時間が6時間の時短勤務者は、あらかじめ休憩時間を設定しておくことも一つの方法です。打ち合わせの延長で、定時を過ぎてしまうことはめずらしくありません。6時間を1分でも超えると法的には休憩を途中で与える必要が出てきます。休憩の途中付与の原則により、終業間際にあわてて休憩を与えられないため、対策が必要です。
たとえ所定労働時間が6時間未満であっても、勤怠管理システム上で45分以上の休憩を設定しておけば、労働時間の超過に対応でき、労務リスクを減らせます。
休憩時間は分割付与できる
時短勤務者の労働時間が結果的に6時間を超えてしまうリスクを踏まえ、休憩時間を分割して柔軟に付与する方法もあります。
労働基準法上、休憩時間は分割付与が認められています。たとえば、45分の休憩を「30分+15分」などに分けて与えることは可能です。
ただし、1回あたりの時間が極端に短いと、十分な休息が確保できないと判断される場合があります。時短勤務者の休憩を分割する際は、従業員が心身をリセットできる程度のまとまった時間を確保することが重要です。
休憩と育児時間は異なる
時短勤務者が「育児時間を取っているから休憩はいらない」と判断するのは誤りです。1歳未満の子どもを育てる女性従業員には、1日2回、各回30分以上の育児時間の取得が労働基準法で認められています(ただし、1日の勤務時間が4時間以下の場合は、1日1回30分で足りるとされています)。育児時間は「休憩」とは別の制度であり、企業は本人から要望があった場合、必ず取得させなければなりません。休憩と育児時間を混同しないように注意しましょう。
参照:『育児中の女性労働者への配慮』働く女性の心とからだの応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート(厚生労働省)
時短勤務とは
時短勤務制度とは、育児や介護など家庭の事情を抱える従業員が、通常よりも短い所定労働時間で働ける制度です。育児・介護休業法により法的に位置づけられています。
たとえば育児の場合、3歳未満の子どもを育てる従業員が希望したら、企業には制度を利用させる義務があります。
子どもが3歳以降の場合でも、企業には可能な範囲で配慮する「努力義務」が課されています。企業としては、柔軟な働き方の整備が求められる時代背景も踏まえ、3歳以降も時短勤務を希望する従業員に対し、前向きに検討する姿勢が重要といえるでしょう。
時短勤務を拒否すると違法
対象となる従業員から時短勤務の申し出があった場合、企業は一方的に拒否することは認められていません。育児・介護休業法には罰則規定こそありませんが、時短勤務を認めないのは原則法令違反です。労働基準監督署からの助言や指導、勧告の対象になります。
さらに企業が虚偽の報告をした場合は、企業名が公表されたり最大20万円の過料を徴収されたりするなど、厳しい対応がなされます。
就業規則に制度の記載があるかどうかは関係なく、法的義務のため、申し出があったら利用させなければなりません。企業の人事担当者は、法令に基づいた適正な対応を徹底しましょう。
時短勤務の条件
時短勤務制度について、育児・介護それぞれのケースにおける適用条件を整理します。
育児による時短勤務 | 介護による時短勤務 | |
---|---|---|
対象となる従業員 | 3歳未満の子を養育する従業員 | 要介護状態にある家族を介護する従業員 |
対象となる家族 | 子ども(3歳未満) | 配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、義父母、兄弟姉妹、孫 |
利用可能な期間 | 子が3歳になるまで(企業の独自制度により延長可) | 1人の家族につき連続する3年以内で2回以上の利用可 |
育児による時短勤務
次のすべてを満たす従業員には、育児による時短勤務制度を適用させなければなりません。
- 3歳未満の子どもを育てている
- 所定労働時間が1日6時間以上である
- 日雇いの雇用でない
- 適用期間中に育児休業を取得していない
- 労使協定により定められた適用除外者ではない
企業は該当する従業員から申し出があったら誠実に対応する必要があります。
参照:『Ⅳ 育児・介護休業等に関する労使協定の例』厚生労働省
介護による時短勤務
介護の時短勤務制度は、要介護状態の家族がいる従業員が対象です。具体的には、次のような家族を介護している場合に利用できます。
- 配偶者 (事実婚を含む)
- 両親
- 子ども
- 配偶者の両親
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
また、育児と同様に日雇い労働者除外や、労使協定によって合理的な除外規定を設けることが認められています。
介護の時短勤務は対象家族1人につき、連続する3年以内で2回以上の利用が可能です。
参照:『育児・介護休業法の概要』東京都産業労働局
参照:『短時間勤務等の措置について|介護休業制度』厚生労働省
時短勤務制度が設けられた背景
時短勤務制度は、仕事と家庭の両立を支援するために整備された制度です。背景には少子高齢化の進行や、出産・育児・介護などによりキャリアを中断せざるを得ない人が多いという日本の社会状況があります。
かつては、出産や育児をきっかけに女性が退職することも少なくありませんでした。しかし、働きながら家庭を支える世帯が増えるにつれ、家庭と仕事を両立できる職場環境の整備が急務となっています。
働く人の育児を取り巻く環境の変化を受けて、1991年に「育児・介護休業法」が制定されます。当初の時短勤務は1歳未満の子どもを育てる従業員が対象でしたが、より柔軟な働き方を可能にするため、段階的に対象が拡充されてきました。
参照:『育児・介護休業法のあらまし』厚生労働省
参照:『休憩 よくある質問と答え8 』厚生労働省愛媛労働局
参照:『労働基準部 監督課 労働基準法の概要 労働時間』静岡労働局

まとめ
時短勤務者であっても、休憩時間の取り扱いは通常の従業員と同様に、労働基準法のルールに沿って適切に管理する必要があります。
とくに「6時間ちょうど」の勤務では、数分の延長によって法定休憩の義務が発生することもあるため、注意が必要です。あらかじめ休憩を確保しておくなど、現実的な運用を検討してもよいでしょう。
企業の人事労務担当者は、制度の目的と法的要件を正しく理解し、トラブルを未然に防ぐための勤怠管理体制を整えていきましょう。
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