表を画像_時短勤務は有給休暇の付与に影響する?日数や賃金の計算方法、時間単位の扱いを解説

時短勤務者も、フルタイムで働く従業員と同様に、当然ながら有給休暇を取得する権利があります。しかし、実務担当としては次のような疑問が出てくるのではないでしょうか。
- 時短勤務でも有給休暇は全日で付与するのか?
- 時間単位の有給休暇の取得は、何時間で1日とカウントするのか?
- 給与計算にどのような影響があるのか?
本記事では、時短勤務における有給休暇の考え方について、付与日数や賃金計算の方法を解説します。人事・労務の担当者の方は、制度運用の見直しや社内ルールの整備にぜひご活用ください。
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目次

時短勤務は有給休暇の付与に影響する?
時短勤務をする従業員も、有給休暇の付与対象です。有給休暇の付与ルールは、時短勤務と通常のフルタイム従業員で変わりありません。
ただし、時短勤務の背景には育児や介護といった個別事情があり、実際の付与日数や取得の単位、賃金計算については、少し注意が必要です。
まずは、時短勤務がどのような制度なのかを整理しておきましょう。
時短勤務制度とは
時短勤務とは、育児や介護を理由に労働者が勤務時間を短縮して働ける制度です。とくに育児による時短勤務については、育児・介護休業法により、子どもが3歳になるまでは制度を適用させなければなりません。一般的に、通常の所定労働時間が8時間の場合、6時間まで短縮するケースが多く見られます。
法律上の義務は「3歳未満の子どもを育てる従業員」に対してですが、3歳以上の子どもを育てる従業員については努力義務とされており、企業ごとの判断に任されています。
時短勤務者は残業免除も認められる
育児介護休業法では、時短勤務者に対して、残業免除の権利も認めています。3歳に満たない子どもを育てる育児の時短勤務者から申し出があった場合、企業は希望を拒否できません。ただし、時短勤務者に対して、一律で残業を禁止しているわけではありません。本人が了承していれば時短勤務者でも残業させることは可能です。

時短勤務者の有給付与日数の考え方
時短勤務の従業員にも、原則としてフルタイムの従業員と同様に年次有給休暇が付与されます。ただし、勤務日数や労働時間によって、付与される日数の計算方法が異なる場合があります。
まずは、有給休暇を付与するための基本的な条件を確認しましょう。
時短勤務者に対する有給休暇付与の条件
時短勤務かどうかにかかわらず、年次有給休暇は以下の条件を満たした従業員に付与されます。
- 雇い入れから6か月を経過している
- 1年間における全労働日の出勤率が8割以上である
2つの条件は正社員・時短勤務者・パート・アルバイトで共通です。この条件を満たせば、法的に有給休暇を付与する義務が発生します。ただし、法定条件は最低限の付与日数を定めたものです。従業員にとって有利な条件で特別に付与することも認められています。
時短勤務者については育児・介護の事情を踏まえて、社内規程で柔軟に対応している企業もあります。
週5日勤務なら通常日数を付与
「時短勤務だから有給が少なくなるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、基本的に判断基準は、週の勤務日数(または年間の所定労働日数)です。
時短勤務であっても週5日勤務していれば、以下のとおり、通常勤務者と同じ日数を付与する必要があります。
年次有給休暇の基本付与日数 | ||||
---|---|---|---|---|
勤務年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 |
有給休暇は勤続年数に応じて、段階的に付与日数が増える仕組みです。勤続6年半以降は、毎年20日ずつ付与されます。
週5日勤務の時短勤務者には、表の付与日数をそのまま適用して問題ありません。
週4日以下30時間未満の勤務では比例付与
時短勤務者が、週4日以下30時間未満の場合は、有給休暇の比例付与の対象になります。比例付与とは、週の勤務日数(または年間の所定労働日数)に応じて、有給休暇の日数が段階的に決められている仕組みです。以下の比例付与表は、厚生労働省が示す基準に基づいています。
所定労働日数 | 勤務年数 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
週 | 年 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年 | |
4日 | 169~216日 | 付与日数 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
時短勤務者は週の労働時間が短くなりますが、「週4日勤務・入社半年」であれば、1日6時間でも7時間でも、付与される有給休暇は7日です。
時短勤務者の有給休暇は「勤務日数で決まる」という点を理解して、適切に付与しましょう。
有給休暇は時短勤務のパートやアルバイト対象
有給休暇の取得は、時短勤務のパートやアルバイトにも認められた権利です。正社員でなくても、所定の条件を満たしていれば、必ず付与する必要があります。
有給休暇は「週5日以上・所定労働時間週30時間以上」であれば、通常の有給休暇が付与されます。パートやアルバイトは週3日や週4日であることがめずらしくありません。通常の有給休暇基準を下回る場合は、比例付与が適用されます。
有給休暇の付与判断は、正社員かどうかではなく、「勤務日数と時間」に基づきます。
パート・アルバイト・契約社員などの雇用形態に関係なく、実際の勤務状況をもとに対応しましょう。
参照:『育児・介護休業制度ガイドブック』厚生労働省香川労働局雇用均等室
参照:『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』厚生労働省
時短勤務者の有給休暇の賃金決定方法
時短勤務者が有給休暇を取得した場合、賃金は通常の勤務と同じように支払う必要があります。有給休暇を取得した際の賃金を計算する方法は、次の3つの方法があります。
計算方法 | |
---|---|
平均賃金で計算する方法 | ・原則直近3か月の賃金総額を3か月の休日を含めた日数で割って計算 ・最低保証額が設けられており、平均賃金と最低保証額で高い方を有給賃金として決定 |
所定労働時間分で計算する方法 | ・所定労働時間分を働いたときの賃金で計算 ・通常出勤したとみなせるので、計算しやすい |
標準報酬日額で計算する方法 | ・労使協定を結ぶ必要がある ・簡単に計算できる |
どの計算方法を採用するかは、就業規則または労使協定に明記しておく必要があります。標準報酬日額方式を用いる場合は、労使間の合意が必要な点に注意しましょう。時短勤務に限らず、有給を取得した日は通常勤務とみなされるため、適正な賃金の支払いが必要です。
時短勤務者の給与計算の方法
時短勤務制度を利用している従業員の給与は、「ノーワーク・ノーペイの原則」により、短縮労働時間に応じて減額が認められています。ただし、あくまでも「労働時間に見合った支給」が基本です。時短勤務だからといって、必要以上に給与を減額すると法律違反となるおそれもあるため注意しましょう。
一般的な時短勤務時の給与の計算式の例 |
---|
基本給×時短勤務の所定労働時間÷通常の所定労働時間 |
通常の所定労働時間が1日8時間の従業員が、時短勤務により6時間勤務となった場合、
勤務時間は 25%短縮されます。そのため、給与も基本給の75%相当額となるのが妥当です。たとえば基本給が月24万円の場合は、月18万円に調整されます。給与計算の担当者は、給与明細にも減額の根拠が示せるようにしておきましょう。
時短勤務者の賞与の計算方法
賞与については企業の就業規則や評価制度によって計算方法が異なります。必ずしも時短勤務だからといって一律に減額されるとは限りません。
賞与が基本給に連動する場合、時短勤務者は減額される可能性があります。業績・評価に連動する場合は、勤務時間と切り離して支給される企業もあるでしょう。
時短勤務者の賞与の減額が「合理的な基準に基づくもの」でなければ、法律違反にあたるおそれもあるため、支給ルールを明確にすることが大切です。
ノーワーク・ノーペイの原則
ノーワーク・ノーペイの原則とは、「労働の提供がなければ企業は賃金を支払う義務はない」というルールであり、給与計算の前提となる考え方です。従業員の給与は労働の対価として支払われるため、時短勤務では当然、通常の勤務よりも賃金が少なくなります。
参照:『民法第624条』e-Gov法令検索
参照:『第5章賃金』農林水産省
時短勤務者の有給休暇取得で押さえておきたいポイント
時短勤務者にも有給休暇を付与することは法律上の義務です。実際には「賃金の扱い」や「フルタイム従業員との公平性」に悩む場面もあるでしょう。たとえば、以下のような疑問はありませんか。
- 時短勤務者の有給休暇は、何時間分の賃金を払うべきか
- フルタイム社員との公平性はどう担保するのか
- 時間単位の希望にどう対応したらよいか
以上のような疑問を解決しながら、時短勤務者に有給休暇を付与する際に、とくに注意したい3つのポイントを解説していきます。
有給休暇取得日の賃金は実態に応じて計算
時短勤務者が有給休暇を取得する際の賃金は、本人の所定労働時間をもとに計算するのが一般的です。1日6時間勤務であれば、有給を取った日も6時間分の賃金を支払います。
時短勤務者の不利益にならないのであれば、法律上は「時短前の所定労働時間」で支払うことも可能です。しかし、実際に働いている時間と乖離があると、フルタイム従業員から不公平感が生じる可能性があるため、慎重に検討しましょう。
時間単位有休は所定労働時間に応じて計算
時短勤務者から「半日だけ休みたい」「1時間だけ有給を使いたい」といった要望が出ることもあるでしょう。時短勤務者であっても、有給休暇は1日単位だけでなく、半日単位や時間単位での取得が可能です。
ただし、半日や時間単位の定義は、本人の所定労働時間をもとに設定する必要があります。
1日の所定労働時間が6時間の従業員であれば、半日は3時間、時間単位は年間30時間までという扱いになります。
例:所定労働時間が6時間の場合 | |
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半日 | 3時間 |
時間単位 | 30時間/年(6時間 × 5日) ※時間単位年休は「年5日分まで」と法律で定められているため。 |
企業が時短勤務者に対して半日・時間単位での有休取得を認める場合も、勤務実態に応じた運用が求められます。定義やルールを明確にし、混乱のないように整備しましょう。
▼時間単位の有給休暇について詳しく知るには、以下の記事をご確認ください。
▼半休について詳しく知るには、以下の記事をご確認ください。
時短勤務の有給休暇について就業規則に規定
時短勤務の有給休暇の運用において、賃金の決定方法などをあらかじめ就業規則に明記しておくことが大切です。フルタイム勤務者と異なる取り扱いがある場合は、「不利益取り扱いではない」ことを説明できるように準備しておきましょう。
制度上は問題なくても、現場での誤解や従業員の不満につながるケースは少なくありません。とくに「基準となる所定労働時間」や「時間単位の扱い」は、運用方針が明確でないと判断が分かれる可能性があります。
トラブルや認識の相違を防ぐためにも、制度を整備して規則に記載したうえで、従業員にわかりやすく周知することで、理解と納得感を高めましょう。

まとめ
時短勤務者も、通常の従業員と同様に有給休暇を取得する権利があります。付与日数は「週の所定労働日数」に応じて決まり、週5日勤務であれば通常どおり、週4日以下や30時間未満の勤務であれば比例付与の対象です。
時短勤務者だからといって、有給休暇を付与しなかったり、賃金を減額したりすることは禁止されています。労働基準法に違反するおそれがあるため注意が必要です。
制度を適切に運用するためには、時短勤務者について有給休暇の取得方法や単位、比例付与のルールを就業規則に明記しておくことが重要です。ルールを整え、時短勤務者が安心して活躍できる環境づくりは、企業の活性化にもつながります。
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