時短勤務は何歳まで? 法的義務年齢と企業によって異なるルール、就業規則の規定方法も解説

時短勤務は何歳まで? 法的義務年齢と企業によって異なるルール、就業規則の規定方法も解説

子どもがもうすぐ3歳。「時短勤務は何歳までとれる?」と疑問に思っていませんか。

育児と仕事の両立を支える「時短勤務制度」は、法的に保障されている反面、企業によって運用ルールが異なります。とくに「いつまで使えるのか」「給付金はもらえるのか」と感じている方もいるでしょう。

本記事では、以下の疑問を解決します。

  • 時短勤務は法律上いつまで使える?
  • 3歳以降も継続できるの?小1の壁とは?
  • 給付金(育児時短就業給付金)は何歳まで支給?
  • 自社の制度をどう見直すべき?

制度の基本から運用実態、注意点まで解説するので、働く親も人事担当者も、ぜひお役立てください。

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目次アイコン目次

    時短勤務とは育児・介護との両立を支援する制度

    時短勤務とは、育児や介護をする労働者が勤務時間を短縮して働ける制度です。正式名称を「短時間勤務制度」といいます。たとえば、所定労働時間が1日8時間の子育て社員が、6時間勤務に切り替えて働くといったケースです。

    法律の要件を満たせば、正社員だけでなく、非正規雇用(パート・契約社員)も対象です。

    育児・介護休業法に定められた水準よりも手厚い内容で制度を運用している企業もあり、就業規則によって運用期間やルールが異なる点に注意が必要です。

    参照:『育児・介護休業法の概要』東京都産業労働局

    時短勤務の法的根拠

    時短勤務制度は、「育児・介護休業法」に基づいて、企業に導入が義務づけられています。対象は3歳未満の子どもを育てる従業員です。3歳以降は、努力義務であるため、企業の裁量に任されています。

    2025年4月の法改正

    育児・介護休業法が改正され、2025年4月1日からは時短勤務に関する新たなルールが加わりました。

    従来からあった「時短勤務を提供できない場合の代替措置」に、新たにテレワークが追加されています。

    何らかの理由で時短勤務が難しい場合は、以下のいずれかの導入が企業に求められています。

    • 育児休業に関する制度に準ずる措置
    • 始業時刻を変更するなどの措置(フレックスタイムや時差出勤、保育施設の設置など)
    • テレワークなどの措置

    法改正により、企業はより柔軟な働き方の選択肢を用意することが義務化されたといえます。制度が形骸化している企業にとっては、職場環境の改善を見直す機会となるでしょう。

    参照:『育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説』厚生労働省

    政府が環境整備を推奨

    厚生労働省は、育児中の従業員が仕事と家庭を両立しやすい環境構築を企業の努力義務と位置づけています。政府の方針は、2025年の法改正の内容として実際に反映されています。

    働きやすさを支援する制度の整備は、従業員にとっての安心材料であると同時に、企業にとっても「優秀な人材の定着」や「人的資本経営」の観点から無視できない施策です。

    参照:『育児介護休業法第23条』e-Gov法令検索
    参照:『育児・介護休業法について』厚生労働省

    時短勤務を拒否すると違法

    3歳未満の子どもを育てる従業員から、時短勤務の申し出があった場合、企業は基本的に断れません。例外的に拒否できる労使協定による適用除外のケースを除き、育児介護休業法に違反する行為とみなされます。

    仮に時短勤務制度について、就業規則に定めていなかったとしても拒否は不可能です。制度を知らずに拒否すると、労働基準監督署から是正勧告を受けることになります。是正勧告に応じなければ、企業名の公表や過料の対象になるため注意しましょう。

    時短勤務は何歳まで取得できるか

    時短勤務は子どもが何歳になるまで取得できるのでしょうか。

    法律上の時短勤務の義務は「3歳未満まで」です。ただし、ここまで紹介してきたように、3歳以上でも制度を継続できるかどうかは、企業の就業規則次第です。

    以下で詳しく見ていきましょう。

    法律上の規定では「3歳未満」までが義務

    育児介護休業法により、3歳未満の子どもを養育している従業員が希望する際は、時短勤務制度を利用させなければなりません。そのため、3歳になるまでの子どもを育てる従業員は希望を出せば時短勤務が保証されます。

    育児・介護休業法では、3歳未満の子を養育する従業員が希望すれば、企業は短時間勤務制度を導入しなければならないと定められています。

    つまり、3歳の誕生日を迎える前日までの期間は、企業は時短勤務を利用させなければなりません。 就業規則に明記されていなくても、申し出があれば対応するのは企業の義務です。

    参照:『育児介護休業法第23条1項』e-Gov法令検索

    3歳以降は「企業の判断」だが、継続の例は多い

    3歳を超えたあとは、企業側に時短勤務制度を提供する義務はありません。しかし、国は制度の継続を努力義務と位置づけており、実際には多くの企業が独自に延長しています。

    時短勤務を3歳以降も続けられるかどうかは、企業の就業規則に定められているか次第です。とくに最近では、共働き世帯の増加や「小1の壁」への対応から、小学校入学以降も使える企業が少なくありません。

    小1または小4の前で終わる企業が多い

    3歳以降も時短勤務制度を設ける企業では、取得期限を小学校に入学するまでや、小学校3〜4年生までと定めている例もあります。とくに就学前までとしている企業が多いため、いわゆる「小1の壁」という課題を抱える従業員があらわれています。

    小1の壁とは

    「小1の壁」とは、子どもが小学校に入学したことで、保育園に比べて預かり時間が短くなり、仕事との両立が難しくなる状態です。

    • 学童保育の終了時間が早い
    • 夏休みなど長期休暇
    • 学校行事への参加
    • PTA活動や保護者会

    「小1の壁」を越えるために、小学校入学以降も時短勤務制度を整備することは、実務上、意義があるといえるでしょう。

    参照:『「小1の壁」って何? 子どもの教育と地域社会を創るのは親の重要な役割(令和3年5月1日)』杉並区

    時短勤務の取得に関するデータ

    時短勤務制度は広く導入されていますが、実際にどれくらいの従業員が利用しているのか気になる方も多くいるでしょう。厚生労働省が委託したアンケート調査の結果を紹介します。

    正社員・職員の時短勤務利用状況

    「育児のための時短勤務制度を導入しており、実際に利用者がいる」と回答した企業の割合は、全体の54.1%です。なかでも、従業員数300人超の企業では84%以上が「利用者あり」と回答しています。

    企業規模が大きいほど、制度の整備や利用実績が進んでいる傾向が見られます。

    契約社員・パート・アルバイトなど非正規雇用の場合

    正社員以外の雇用形態においては、時短勤務制度の利用が進んでいません。非正規雇用において「利用者がいない」と回答した企業は全体の71.7%です。従業員数1,000人超の企業でも、利用率は44.7%にとどまります。

    制度は整っていても、雇用形態によっては、使われていない現状があることがわかります。

    とくに非正規雇用者や中小企業では、制度そのものが周知されていなかったり、職場の理解が得られなかったりといった課題が残されているかもしれません。

    参照:『厚生労働省委託事業 令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書 〈企業調査〉』株式会社日本能率協会総合研究所

    時短勤務の条件

    法律上で義務化されている育児のための時短勤務を利用するには、一定の条件を満たさなければなりません。時短勤務制度の条件は以下のとおりです。

    • 本来の勤務が1日6時間以下でない
    • 日雇いの雇用でない
    • 時短勤務制度の適用期間中に育児休業を取得していない
    • 労使協定により定められた適用除外者ではない

    それぞれの条件について、順を追って確認していきましょう。

    本来の勤務が6時間以下でない

    時短勤務制度は、法定労働時間(8時間)を6時間に短縮する制度です。もともとの所定労働時間が6時間以下の場合は、時短勤務の対象外です。

    日雇いの雇用でない

    日雇い雇用契約は、継続して雇用されるわけではないため、時短勤務制度の対象外です。一方で契約社員やパートなどの非正規雇用は対象となるため、混同しないようにしましょう。

    日雇い雇用には、1日の雇用契約だけでなく、30日未満の有期雇用契約として雇用された労働者も含まれます。

    時短勤務制度の適用期間中に育児休業を取得していない

    時短勤務と育児休業は同時に利用できない制度です。そもそも育児休業中は働いていないため、時短勤務の対象にはなりません。育児休業が終了して復職したあとに時短勤務を開始することになります。ただし、育児休業中である従業員の配偶者が時短勤務することは可能です。

    労使協定により定められた適用除外者ではないこと

    従業員が次の条件に該当し、労使協定に定められている場合は、時短勤務の対象外とされます。

    1. 事業主に継続雇用されている期間が1年未満の労働者
    2. 1週間の所定労働日が2日以下の労働者
    3. 業務の性質または実施体制に照らして短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者

    除外する場合は必ず労使協定で明記されていることが条件です。

    3つめ「業務の性質上困難」の場合、企業は代替措置を講じる努力義務がある点に注意しましょう。フレックスタイム制やテレワークの導入で、対象の従業員をフォローすることが求められます。

    参照:『Ⅳ 育児・介護休業等に関する労使協定の例』厚生労働省

    時短勤務は就業規則に規定する

    時短勤務制度は、とくに3歳未満の子どもを育てる従業員にとっては法的に保障された権利です。
    一方で、3歳以降も制度を利用できるようにする場合には、就業規則で明確に記載しましょう。

    以下は、厚生労働省のモデル就業規則をもとにした、規定例の一部です。

    項目例文
    時短勤務の期間【第〇条(適用期間)】育児時短勤務制度を利用する者は、1回につき1年以内の期間で申請可能
    時短勤務の申請期限【第〇条(申請期限)】育児短時間勤務制度の利用を希望する者は、原則開始予定日の1か月前までに指定の書面で申請する

    制度を適切に運用するためには、「誰が・どのような条件で・いつまで利用できるか」を社内規程に定めておく必要があります。

    ほかにも以下の項目を明記しておくと安心です。

    • 対象者の範囲
    • 1日の勤務時間
    • 延長申請の方法
    • 途中変更の可否

    参照:『モデル就業規則』厚生労働省

    時短勤務で企業が注意したいポイント

    時短勤務制度を導入していても、実際の運用に不備があれば、従業員の不満や法的リスクにつながることがあります。以下では、企業がおさえておきたいポイントを6つに分けて解説します。

    従業員の希望を尊重する

    時短勤務制度の対象条件を満たす従業員の希望を尊重しましょう。育児中だからといって「必ず時短勤務をしなければならない」という従業員ばかりではありません。子どもがいてもフルタイムで働きたいと考える従業員もいる可能性があります。

    時短勤務制度は、あくまでも本人の希望に応じて利用できる制度です。フルタイムで働きたいという意向がある従業員に、時短勤務を強制することは避けましょう。

    時短勤務における給与額を説明する

    企業は、時短勤務を取得する従業員に対して、給与が下がることを説明しましょう。

    時短従業員の給与は、勤務時間の短縮に比例して減るのが一般的です。たとえば1日8時間から6時間に短縮すれば、給与はおおよそ75%程度となるでしょう。

    従業員が懸念するような点は、事前に説明し、誤解や不満を防ぐことが大切です。

    フルタイム復帰の申し出には迅速に対応する

    時短勤務からフルタイムへ戻りたいという要望を受けたら、企業はすみやかに対応できる体制を整えておく必要があります。時短従業員がフルタイムに戻ることで、業務調整や配置転換が必要なこともあります。バランスを見直し、移行をサポートしましょう。

    時短勤務中の残業の取り扱いに注意する

    時短勤務は本来、残業を前提とした働き方ではありません。とくに3歳未満の子どもを育てている従業員が、請求をした場合、企業は残業をさせられません。

    ただし、本人が希望し、かつ法定労働時間(1日8時間)以内であれば、延長勤務は可能です。まずは本人の意思を確認したうえで、勤怠管理の体制を整えましょう。

    参照:『育児介護休業法第16条8項』e-Gov法令検索

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    不利益な取扱いは禁止されている

    時短勤務を理由に不利益な扱いをすることは禁止されています。たとえば、以下のような対応は法令違反です。

    • 減給や降格
    • 給与・賞与の不当な減額
    • 雇用契約の変更を強要
    • 望まない配置転換

    時短勤務は法律で定められた従業員の権利です。制度利用を理由に扱いを変えることはできません。

    社会保険料の扱いに注意する

    時短勤務を利用すると、社会保険料の計算にも影響が出ます。勤務時間の変更により、社会保険料の計算基礎となる標準報酬月額が変更される場合があるためです。

    給与が大きく減少した場合、標準報酬月額の随時改定をしなければなりません。健康保険・厚生年金の保険料の負担が軽くなる一方で、将来の年金額も少なくなる可能性があります。

    ただし、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」により、時短勤務前の標準報酬月額をもとに年金額を計算してもらえる制度もあり、将来の年金額を減らさずにすむ場合があります。

    とくに、フルタイム勤務からの切り替えや復帰のタイミングでは、事前の説明が重要です。復帰前、早めに本人と面談し、確認するようにしましょう。

    まとめ

    時短勤務制度は、子どもが3歳になるまで取得できる法律で規定された制度です。一方で、3歳以降の子どもを育てる従業員に対しての制度適用は、企業の判断に任せられています。

    企業が3歳以降も時短勤務制度を導入する場合は、就業規則で内容を明確に規定しておくことが重要です。利用できる対象者や条件、取得期間、申請手続きの方法などを、従業員が理解できるように記載しておくとよいでしょう。

    従業員の育児と仕事の両立を支えるために、時短勤務制度を正しく理解し、適切に運用することが求められます。

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