ずさんな勤怠管理を放置する7つのリスク|今からできる対処法を解説
勤怠管理は企業にとって重要な業務の一つです。しかし、なかには勤怠管理をおろそかにしている企業もあるかもしれません。ずさんな管理は法律違反に該当して罰則を受ける可能性があります。本記事では、ずさんな勤怠管理が招く7つのリスクや対処方法を解説します。
勤怠管理の業務内容や目的
勤怠管理の業務内容や目的について解説します。
勤怠管理の業務内容
勤怠管理とは、企業が従業員の勤怠状況を管理することです。従業員の労働時間や休憩時間、有給休暇の取得状況などを管理して、法律的に問題ないかどうか確認しています。
勤怠管理の主な目的
勤怠管理の主な目的として、以下があります。
- 適切な勤怠管理を実現するため
- 従業員の健康を守るため
- 正確な給与を支給するため
- コンプライアンスを徹底するため
従業員の健康を考えたり、会社が法律違反しないようにしたり、適切な組織運営のために欠かせない業務です。
勤怠管理がずさんな企業が抱える7つのリスク
勤怠管理がずさんな企業が抱える7つのリスクは以下の通りです。
- 法令違反による罰則
- 不払いの残業代の遡及支払い命令
- 従業員からの訴訟
- 企業イメージの低下
- 不正の早期発見が困難
- 長時間労働の把握遅延
- ハラスメントの温床
法令違反による罰則
勤怠管理の方法が適切でないと、労働基準法や労働安全衛生法で定められた義務やルールを守れなくなる場合があります。労働基準監督署からの是正勧告の対象になるほか、罰則が科せられるので注意が必要です。
たとえば、労働基準法第32条では、従業員の労働時間の上限を「1日8時間、週40時間以内」と定めています。違反すると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
不払いの残業代の遡及支払い命令
勤怠管理が適切に行われていないと従業員の労働時間を正確に把握できません。残業代の未払いがあると「不払い残業代の遡及(そきゅう)支払い命令」を受ける可能性があるため、注意しなければなりません。
不払い残業代の遡及支払い命令とは、支給日に支払われなかった賃金をさかのぼって支給する仕組みです。2020年より賃金請求権が2年から5年に延長されており、未払いがあった場合は支払い対象に該当します。
従業員からの訴訟
残業代の不払いが原因で、従業員から訴訟を起こされるリスクがあります。遡及(そきゅう)支払いに応じなかったり、長時間労働が原因で従業員の健康状態が悪化したりした場合は、損害賠償請求の可能性もあるでしょう。
企業イメージの低下
従業員による訴訟やマスコミ報道により、世間にコンプライアンス違反が知れわたると、企業イメージが大幅に低下します。一度ついたイメージを払拭(ふっしょく)するには長い時間がかかることもあります。よくないイメージが定着すると、取引先との関係が悪化したり、採用において人材が集まりにくくなったり、ダメージは計り知れません。
不正の早期発見が困難
勤怠管理がずさんだと、遅刻の隠ぺいや無断欠勤など従業員の不正を見過ごしてしまう恐れがあります。従業員から「気づかれない」と思われてしまうため、さらなる不正が行われる可能性も捨てきれません。残業の水増しにも気づかないと、賃金を余計に支払っていることになるでしょう。
長時間労働の把握遅延
勤怠管理が適切に行われていないと労働時間を正確に把握できないため、長時間労働の実態を知るまでに時間がかかります。結果的に、適切な対応が取れず、従業員の健康を損ねたり、生産性が低下したりするリスクが高まるでしょう。長時間労働により従業員の生産性やモチベーションが低下すると、業績悪化にもつながるので注意が必要です。
ハラスメントの温床
ずさんな勤怠管理ではコンプライアンスへの意識が希薄になり、ハラスメントが横行しやすくなる可能性があります。勤怠管理は職場秩序を保つための枠組みです。しかし、管理を怠ると、上司による長時間残業や休日出勤の強制など、ハラスメントが起こりやすい環境をつくってしまうかもしれません。
労働基準監督署による不払い残業代の是正結果
2021年度に行われた労働基準監督署の監督指導において、指導対象となった企業を以下の表にまとめました。
不払い残業代に対する指導対象となった企業 | 1,069企業 |
1,000万円以上の割増賃金を支払った企業 | 115企業 |
支払われた割増賃金の合計額 | 65億781万円 |
不払残業代に対する指導対象企業のうち、1割以上が1,000万円を超える割増賃金を支払っています。不払い残業代を指摘されて支払うケースが多くあるため注意しましょう。
出典:『監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)』厚生労働省
勤怠管理をずさんにしないために企業が遵守すべきガイドライン
厚生労働省は勤怠管理において企業が遵守すべきガイドラインを策定しています。
企業が守るべきガイドラインは以下の通りです。
□ | 使用者には労働時間を適正に把握する責務があること |
□ | 労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たること |
□ | 業務に必要な学習などを行っていた時間は労働時間に該当すること(例:業務上参加が義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示など) |
□ | 使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること |
□ | 賃金台帳を適正に調製すること |
ずさんな勤怠管理を是正するための対処法
ずさんな勤怠管理を是正するための対処法は以下の通りです。
- 就業規則や勤怠管理のルール整備
- 勤務実態の調査
- 長時間労働の是正
- 従業員への周知徹底
- 勤怠管理システムの導入
順番に解説します。
就業規則や勤怠管理のルール整備
まずは自社の就業規則を見直し、法令にのっとった労働条件を定めます。労働条件を変更するためには原則として従業員の同意が必要です。なぜ変更するのか、理由と内容を説明したうえで従業員に個別に同意を取ります。説明ができたら、労働条件変更同意書の作成を忘れないようにしましょう。
勤務実態の調査
従業員による自己申告制を採用している場合は、勤務実態との乖離(かいり)を調査します。勤怠状況は客観的な記録が求められるため、自己申告制はおすすめできません。しかし、何かしらの理由で自己申告制を採用していたら、勤務実態が調査されます。
参照:『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』厚生労働省
長時間労働の是正
36協定を結んでいても、時間外労働の上限は月45時間、年360時間が原則です。調査によって無理な長時間労働が発覚した場合は、ただちに是正に向けて取り組みます。たとえば以下のような改善が求められます。
- 勤怠管理の徹底
- ノー残業デーの促進
- 社内の意識改革
長時間労働を是正するために、さまざまな仕組みが必要です。
従業員への周知徹底
就業規則や勤怠管理の方法を見直したあとは、従業員にも周知しましょう。従業員に法令遵守や勤怠管理の重要性を理解してもらうことが大切です。説明会の開催を含め、新しい勤怠ルールやシステムに対する理解を促します。
参照:『就業規則を作成しましょう』厚生労働省
参照:『労働基準法』e-Gov法令検索
勤怠管理システムの導入
勤怠管理の正確性を高める方法として、勤怠管理システムの導入がおすすめです。労働時間や休憩時間を自動で集計できるため、正確な勤怠情報を手間なく把握できるでしょう。給与計算と連携できるシステムなら、残業代の計算もミスなくスムーズに進められる可能性があります。給与計算の効率化や月末の労働時間の集計に課題を抱えている企業は、検討してみてください。
勤怠管理システムを導入するメリット
勤怠管理システムを導入するメリットは以下の通りです。
- 自社に合わせた勤怠管理を整備できる
- 労働時間を正確に把握できる
- 勤怠管理業務を効率化できる
- 各種法令を遵守できる
- 正確な給与を計算できる
順番に解説します。
自社に合わせた勤怠管理を整備できる
勤怠管理システムは、自社の勤務形態や雇用形態に合わせて細かな設定ができるサービスが多いです。そのため、自社の実態に即した勤怠管理を実現できるでしょう。
労働時間を正確に把握できる
システム上で打刻・集計するので、入力ミスや集計ミスなどが起こりにくいです。生体認証システムやGPS機能などが搭載されたタイプもあり、不正打刻の防止につながります。
勤怠管理業務を効率化できる
勤怠のアナログ管理はタイムカードを集めて抜け漏れを確認したり、手作業で入力・集計したりするなど手間がかかります。勤怠管理システムを導入すると、勤怠管理における各種業務を自動化できるため、業務効率がアップします。そのため、担当者の負担を減らすことにつながるでしょう。
各種法令を遵守できる
法改正時の更新に対応しているサービスも多く、最新の法令に即した勤怠管理を実現できます。労働時間をリアルタイムに把握できるため「時間外労働の上限を超過しそう」という場合にも、事前に的確な対応を取れるでしょう。
また、勤怠管理システムは「客観的な記録」に該当するため、ガイドラインを遵守できます。
正確な給与を計算できる
給与計算システムと連携できる勤怠管理システムなら、毎月の給与計算の負担を軽減できます。時間外や深夜労働の割増賃金を自動集計できるとともに、アナログ管理による計算ミスを防げるため、手間なく正確に従業員への給与支払いができるでしょう。
まとめ
従業員の勤怠管理がずさんだと、残業代の支払命令が出たり、訴訟を起こされたりする可能性があります。さらに企業イメージが低下して、採用において人材が集まりにくくなるなどのリスクがあるため、多方面への影響が懸念されます。自社の運用に適した勤怠管理システムの導入により、人事労務業務の効率化を目指しましょう。
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