早出残業で残業代は支給される? 計算方法や請求できるケースを解説
早出残業を行った場合、一定の条件を満たせば、通常の残業と同様に残業手当の対象になることがあります。企業では、始業時間前の残業の労働時間についても理解しておかなければなりません。
本記事では、早出残業についてわかりやすく解説します。企業の人事労務担当者や経理担当者は参考にしてください。
早出残業とは
早出残業とは、始業時間よりも前に出勤することで発生した残業のことを指します。具体的には、早く出勤したことで法定労働時間(場合によっては所定労働時間)を超えた分を残業や時間外労働として扱います。
早出残業の具体例
たとえば、始業10時、終業19時(休憩1時間)を設定している企業の場合です。
始業時間 | 終業時間 | 所定労働時間(休憩1時間) |
---|---|---|
10時 | 19時 | 8時間 |
始業時間 | 終業時間 | 合計労働時間(休憩1時間) |
---|---|---|
9時(早出1時間) | 19時 | 9時間 |
1時間の早出出勤を行い、通常通り19時まで働くと、労働時間は9時間(休憩1時間)です。時間帯としては9時から18時までが通常の労働、18時から19時までが法定労働時間を超えた時間外労働ということになります。そのため、1時間分の早出残業が発生するのです。
早出残業における所定労働時間と法定労働時間の関係
注意したい点は、企業が設定する所定労働時間と法定労働時間に差がある場合です。一般的に、従業員が所定労働時間を超えて残業したとしても、法定労働時間内(法定内残業)であれば、時間外労働には該当せず、企業は残業代を支払う義務はありません。
以下で、所定労働時間を超えた場合の例を確認してみましょう。
始業時間 | 終業時間 | 所定労働時間(休憩1時間) |
---|---|---|
10時 | 18時 | 7時間 |
始業時間 | 終業時間 | 合計労働時間(休憩1時間) |
---|---|---|
9時(早出1時間) | 18時 | 8時間 |
上記のように、1時間の早出出勤をしても、合計の労働時間は8時間となり、時間外労働には該当しないため、残業代は出ないということです。ただし、就業規則等で所定労働時間を超えた分の残業規定を設けている場合はそれに従います。
早出出勤した分を通常の終業時間より早く退勤
早出出勤した時間分、早く退勤する場合は通常通りの8時間労働となります。時間外労働は発生しません。従業員が早出出勤をした分、所定の終業時間よりも早く退勤する例を以下でご紹介します。
始業時間 | 終業時間 | 所定労働時間(休憩1時間) |
---|---|---|
10時 | 19時 | 8時間 |
始業時間 | 終業時間 | 合計労働時間(休憩1時間) |
---|---|---|
9時(早出1時間) | 18時 | 8時間 |
上記の所定労働時間の場合、本来の終業時間は19時ですが、始業前に早出出勤として1時間分の労働をしています。この従業員が18時に退勤したとしても、労働時間は法定労働時間内(8時間)となるため、時間外労働には該当せず、残業代は出ません。
早出残業による残業代が出るケース
企業は、早出出勤で発生した残業時間に対して、残業代を支払わなければなりません。しかし、すべての早出出勤に対して残業代が発生するわけではありません。具体的にどのようなケースで残業代を支払わなければならないのか、紹介します。
- 企業や上司の指示で早出出勤する
- 会議や商談で早出出勤する
- 面接やオフィスの点検などで早出出勤する
- 着替えのために早出出勤する
このように、早出出勤による残業が認められるのは、企業の指示や業務上必要な場合です。つまり、会社の指揮管理下に置かれている時間が該当します。
早出残業による残業代が出ないケース
早出出勤をしても残業代が出ないケースもあります。具体的にどのようなケースの早出出勤が対象外になる可能性があるのか、紹介します。
- 始業時間に遅刻しないための早出出勤
- 始業までに余裕をもって過ごすための早出出勤
- 通勤ラッシュを避けるための早出出勤
上記の早出出勤に共通しているのは、自分の意思で早出出勤しているという点です。このように、会社からの指示や、業務上不可欠な事情による早出出勤でない場合、残業代は支払われません。
早出残業における残業代の計算方法
早出残業によって発生する残業代の計算方法をご紹介します。早出残業によって法定労働時間を超えた場合、時間外労働として扱います。そのため、通常の時間外労働の割増率を適用して、以下のように計算します。
1時間あたりの賃金×残業時間×割増率 |
時間外労働の割増率は以下の通りです。
種類 | 条件 | 割増率 |
---|---|---|
時間外手当 | 法定労働時間を超えた時間 | 25%以上 |
休日手当 | 法定休日に出勤させたとき | 30%以上 |
深夜手当 | 深夜時間帯に仕事をしたとき | 25%以上 |
上記のように、早出出勤をした日が、法定労働時間を超えて、さらに深夜時間帯に及ぶ場合、50%以上の割増率を適用させます。また、時間外手当について、限度時間を超えた場合はさらに割増率を適用させなければなりません。なお、法定労働時間を超えた労働が60時間超となった場合には、その部分について50%以上の割増率が適用されます。詳しくは、厚生労働省の詳しい情報を確認しておきましょう。
参照:『しっかりマスター労働基準豪ー割増賃金編ー』厚生労働省
早出残業させる場合も36協定の締結が必要
早出残業は、法定労働時間を超えた分となるため、時間外労働とみなされます。基本的に、企業が従業員に時間外労働をさせる場合は、36(サブロク)協定を締結しなければなりません。36協定を締結していない状態で、早出残業をさせることは違法になりますので、ご注意ください。
36協定とは
36協定とは、法定労働時間を超えて時間外労働や休日労働をさせる場合に締結しなければならない労使協定です。企業側は、労働組合などとの書面による協定を締結し、労働基準監督署長に届け出をしなければなりません。
また、36協定には上限規制が設けられています。36協定で認めているのは、時間外労働(休日労働は除く)は、月に45時間、年に360時間までです。
ただし、臨時的で特別な事情がある場合は、労使間の合意のもと、36協定の特別条項により、上限を超える労働が認められています。
参照:『36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針』厚生労働省
参照:『時間外労働の上限規制わかりやすい解説』厚生労働省
早出残業で起こり得るトラブル
早出残業をさせた場合、適切に残業代を支払わなければなりません。早出残業をさせたのに残業代を支払わなければ、従業員とのトラブルにもつながります。そこで、早出残業によって起こり得るトラブルをご紹介します。
- 残業代未払いにより従業員の不信感につながる
- 場合によっては訴えられることもある
残業代未払いにより従業員の不信感につながる
早出残業による残業代を支払わない場合、従業員は不信感を抱きます。従業員は、企業に対して残業代の確認や請求をすることになりますが、適切に支払われなかったことに対して不信感が募り、離職につながる危険性もあります。企業は、一般的な残業だけでなく早出残業についても把握し、残業代を支払いましょう。
場合によっては訴えられることもある
従業員が早出残業による残業代を請求したにもかかわらず、企業が残業代を支払わないまま放置している場合、訴訟を起こされる可能性もあります。企業側が早出出勤をさせたことによって発生する時間外労働に対しては、残業代を支払う義務があります。このようなケースで訴訟を起こされた場合、社会的信用も損なうことになるため、適切に残業代を支払いましょう。
まとめ
早出残業は、本来の始業時間よりも早く出勤し、発生する残業のことです。この残業によって労働時間が法定労働時間を超えた場合、企業は時間外労働として残業代を支払わなければなりません。
残業代の支払い義務が生じるかどうかは、早出出勤や早出残業の理由にもよります。企業側の指示や業務上必要な理由で早出残業となった場合は、適切に残業代を支払いましょう。
早出残業を適切に管理するためには、適切な勤怠管理が重要です。勤怠管理システムなどを活用し、従業員の労働時間や時間外労働を正しく把握しましょう。
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