エクスターンシップとは? 実施目的やインターンシップとの違いを解説
エクスターンシップとは、学生が企業で短期間の実務体験を行うプログラムです。特に、法律にかかわる領域で実施されます。
本記事では、エクスターンシップの概要やインターンシップとの違いなどについて解説します。法律に関する業務を行っており、人材の確保を検討している企業の担当者は、参考にしてください。
エクスターンシップとは
エクスターンシップとは、キャリア教育の一種で、大学生を対象に行われる短期就業体験プログラムです。主に、法科大学院の学生が実務体験を積むためのプログラムとして実施されています。
学生は、法律事務所や企業での仕事を直接体験することで実際の業務を理解し、職業選択に役立てられます。
エクスターンシップの内容
エクスターンシップでは、法律にかかわるさまざまな実務を体験できます。実際に間近で見られるため、法曹界の業務の流れを理解しやすいでしょう。
ただし、インターンシップとは異なり、期間が短いため「職業訓練」とまではいきません。職場の雰囲気や仕事内容を、肌で感じられる場にとどまります。
サマークラーク・ウィンタークラークとの違い
サマークラークやウィンタークラークは、就職活動の一環として、学生と事務所の相互評価が行われる体験プログラムです。
それぞれの特徴は、以下の通りです。
サマークラーク | 夏休み中に、大学生・法科大学院生が法律事務所での職務を体験するプログラム |
ウィンタークラーク | 予備試験合格発表後に、予備試験合格者が法律事務所での職務を体験するプログラム |
エクスターンシップに参加すると単位が認定される場合が多いです。一方で、サマークラーク・ウィンタークラークへの参加による単位認定はありません。しかし、エクスターンシップとは異なり、将来的な就職に直結する重要な機会になる可能性があります。
エクスターンシップの目的
エクスターンシップの目的は、学生が実際に職業を体験し、学業だけでは得られない実践的なスキルや業界の知識を深めることです。法律事務所や企業の法務部、公的機関などでの実務を知ることにより、自分に合った職業や分野を見極めやすくなります。
企業や受け入れ先にとっても、自社の魅力を学生に伝え、優秀な人材を発掘する手段として利用されています。
エクスターンシップとインターンシップの違い
エクスターンシップとインターンシップの違いを次の5つの観点から解説します。
- 目的
- 期間
- 就活との関係性
- 給与
- 企業の担当者
目的
エクスターンシップとインターンシップの違いは、目的にあります。エクスターンシップは、主に学生が学業の一環として短期間で実務体験を行い、職業の理解を深めるためのプログラムです。将来のキャリア選択に役立つだけでなく、学びの延長として実施されます。
一方、インターンシップは、企業が将来の採用候補として学生を評価する機会です。また、学生側にとっても、自分に合った企業を見極める場となります。
期間
エクスターンシップは、インターンシップに比べて短期間で実施され、最短1日から2〜3週間程度が主流です。一方、インターンシップは、より長期にわたって行われ、なかには数か月から1年以上続くものもあります。
インターンシップは、より深く業務に関与し、企業文化や仕事内容を理解するために長期間の体験となることが多いのです。
就活との関係性
エクスターンシップは学業の一環として位置づけられているため、就職活動に直接つながることはほぼありません。ただし、学生にとって、エクスターンシップでの経験が、将来的に職業選択で役立つ可能性は十分にあります。
インターンシップは就職活動に直結する場合が多く、企業側が学生を採用候補として見ることも目的の一つです。
また、学生にとってインターンシップへの参加は、就職後のミスマッチを防ぐための重要な機会とされています。
給与
エクスターンシップはキャリア教育の一環としての体験なので、基本的に無給で行われます。一方、インターンシップでは実際の業務に当たるため、報酬が支払われるのが一般的です。
企業の担当者
エクスターンシップでは、各職場の業務担当者や現場のスタッフが指導に当たることが多くあります。職場体験としての側面が大きいため、さまざまな部署の担当者がかかわるのが特徴です。
一方、インターンシップは採用活動の一環として実施されるため、人事部が主に担当します。企業にとって優秀な人材を見つけるための貴重な機会であり、学生の評価や採用に向けた対応が行われることが多くあります。
エクスターンシップの現状
国内のエクスターンシップの現状を、以下の3つを中心に解説しましょう。
- 募集されている数が少ない
- インターンシップとの区別があいまい
- 法科大学院での実施が多い
募集されている数が少ない
エクスターンシップは、国内ではまだ限られた数しか提供されておらず、インターンシップと比べると募集数がかなり少ないのが現状です。実施している学部も限られるため、学生が個人的に参加するには少し難しいといえるでしょう。
インターンシップとの区別があいまい
エクスターンシップとインターンシップは、どちらも学生が実務を体験するためのプログラムですが、目的や実施期間、報酬の有無などに違いがあります。しかし、現実には両者の区別があいまいになっており、明確には使い分けられていません。
特に、短期間のインターンシップはエクスターンシップと同じような内容になることが多く、双方の違いが学生にとってわかりにくい問題があります。
法科大学院での実施が多い
エクスターンシップは法務・税務関連や医療関係の大学院でよく導入されますが、特に法科大学院で多く実施されています。
法科大学院では、法律に関する知識だけでなく実務体験も積むことを重要視しているため、法律事務所や企業の法務部などでのエクスターンシップを推奨するケースが多くあります。
参加する学生側も、実務を通して法律の適用方法や法曹の役割などを理解し、将来のキャリア選択に役立てられるでしょう。
企業がエクスターンシップを実施するメリット
企業がエクスターンシップを実施するメリットを解説します。
- 早期に人材との接点を持てる
- ブランディングをはかれる
早期に人材との接点を持てる
企業がエクスターンシップを実施するメリットは、優秀な学生と早期に接点を持てることです。エクスターンシップの期間にアプローチすれば、通常の採用活動のタイミングよりも早く学生との関係を構築できます。
優秀な人材の確保が重要な法曹界や法律にかかわる業界では、競合に先んじるための大きな一手となるでしょう。
ブランディングをはかれる
エクスターンシップは、企業のブランディングを向上させる手段としても有効です。学生に対して企業の魅力や働きやすさを直接伝えることで、応募者数を増加させ、次年度以降の採用活動にも好影響を与える効果が期待できます。
実際にエクスターンシップに参加した学生からのよい口コミが広がれば、より多くの学生に興味を持ってもらえる機会が増え、企業の認知度や評判の向上にもつながるでしょう。
学生がエクスターンシップに参加するメリット
学生がエクスターンシップに参加するメリットを解説します。
- 志望する業界や職業とのミスマッチが防げる
- ビジネスマナーが身につく
志望する業界や職業とのミスマッチが防げる
学生がエクスターンシップに参加するメリットは、志望する業界や職業とのミスマッチを防げることです。
エクスターンシップは、職場での体験を通して、業界の実状や自分の適性を確認できる場です。自分に合う分野かどうかを見極められれば、就職活動を進めるうえで時間や労力を無駄にせずに済むでしょう。
ビジネスマナーが身につく
学生がエクスターンシップに参加するメリットは、ビジネスマナーが身につくことです。
実際の職場で業務を体験する中で、言葉遣いや名刺交換の仕方など社会人としての基本的なマナーを身につけられます。
少しでもビジネスマナーやオフィスに入った経験があれば、将来社会人になって働きはじめる際に緊張しにくく、スムーズに業務に対応できる力を養えるでしょう。
学生がエクスターンシップに参加する方法
学生がエクスターンシップに参加する方法を解説します。
大学のキャリア支援サービス
学生がエクスターンシップに参加する方法の1つは、大学のキャリア支援サービスの活用です。
エクスターンシップは、研修の場を提供する企業や組織と大学の協力によって実施されるケースが多くあります。大学に設置されているキャリア支援センターでは、エクスターンシップの募集情報の提供や、学生に適したプログラムの案内などをしてもらえます。
参加前後に必要なサポートやアドバイスも受けられるため、学生にとっても有益です。
人からの紹介
人からの紹介で、エクスターンシップに参加できることもあります。具体的には、学生がイベントへの参加や教授の伝手などを通して、エクスターンシップに関する情報を集めるケースが考えられます。
紹介による参加は個人的なつながりや信頼が基盤となるため、一般の募集よりも受け入れてもらいやすい可能性があるでしょう。
教育機関や非営利団体からの紹介
エクスターンシップは、大学だけではなく、教育機関や非営利団体からも紹介されることがあります。
考えられる機関の例は、以下の通りです。
- ロータリークラブ
- 商工会議所
- 非営利団体 など
エクスターンシップの活用も検討して人材を確保
エクスターンシップは、企業にとって優秀な人材を発掘するための有効な手段です。従来のインターンシップに加えて、短期間の実務体験の場を提供することで、学生と早期に接点を持てます。
学生にとっても、実際の業務を知り、企業の社風や仕事の進め方などを理解しやすくなり、就職後のミスマッチを減らせるメリットがあります。
エクスターンシップの導入を検討し、長期的な視点での人材確保が、企業の将来的な成長につながるでしょう。