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キャリア安全性とは【わかりやすく】心理的安全性との関係や高めるための施策を解説

キャリア安全性とは、キャリアが長期間安定していると感じられる状態をあらわす尺度です。「このままこの会社にいて大丈夫だろうか」と不安に思われてしまうと、離職や休職につながるため、人事労務担当者としても無視できない概念といえます。

企業として、個人のキャリアの不安を取り除き、キャリア形成を尊重する職場環境を整える必要があるといえるでしょう。

本記事では、キャリア安全性について意味や測定する指標、心理的安全性との関係を解説します。個人のキャリア安全性を保つための施策も紹介するので、従業員満足の向上や離職率改善に取り組みたい担当者は、ヒントにしてください。

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    キャリア安全性とは?

    キャリア安全性とは、自分のキャリアが長期間安定している状態を認識できていることを指します。個人のスキルや経験が市場で評価され、組織内外から必要とされ続けていると認識している状態です。

    キャリア安全性は、1999年にハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・C・エドモンドソン教授によって提唱されました。

    キャリア安全性が高い状態であると、従業員は自信を持って仕事に集中して取り組み、モチベーションやエンゲージメントを維持できます。従業員満足度の高さにも影響する概念です。

    キャリア安全性が求められる理由

    キャリアの安全性は、転職が一般化した労働市場の変化を理由として注目されています。

    終身雇用が一般的だった以前は、1つの会社での地位や評価が重視され、年功序列によって安定的なキャリア構築が可能でした。

    しかし現在は、転職を通じてキャリアアップすることが一般化し、個人の自己実現が重視されています。自分のキャリアに責任を持ち、自律的にキャリアを形成していく姿勢が求められています。

    さらに、変化が激しいビジネス環境では、先が読めないため、安定したキャリアアップが難しくなり、不確実性が増しています。その結果、キャリアの安全性への個人の関心が高まっているのでしょう。

    特に若手社員はコロナ禍をきっかけに、キャリア安全性を重視しているといわれています。もし自社で働く中でキャリア安全性が脅かされていると感じると、離職を考える可能性があるため、担当者としても無視できない要素です。

    キャリア安全性を測るための3つの視座

    キャリア安全性は、3つの視座から構成されています。

    時間視座市場視座比較視座
    概要キャリアパスが長期的に安定しているか従業員のスキルや経験が外部市場でも通用するか従業員が同業他社やほかの職場と比較してキャリアの安定性が優れているか

    時間視座

    時間視座とは、従業員のキャリアが「長期的に」安定しているかを測る指標です。

    将来の目標に向かって今の仕事が役に立っているのか、自分のスキルが変化に対応できているのかという視点で、キャリア安全性を評価します。

    時間視座を持つ人の特徴は、以下の通りです。

    • キャリアプランが明確である
    • 将来のために積極的な自己学習や研修に参加している
    • 目標達成へ向けて行動が一貫している
    • 自分の強みや弱みをわかっている
    • 仕事の成果や評価を振り返っている
    • 情報収集が得意である

    時間視座を持つこと、計画性のあるキャリアプランを作成でき、キャリア安全性を高められるでしょう。

    市場視座

    市場視座とは、スキルや経験を「社会」と照らし合わせる指標です。自分のスキルがほかの企業や業界でも求められているのかという視点で、キャリア安全性を評価します。

    市場視座を持つ人の特徴は、以下の通りです。

    • 仕事の意義や目的を理解している
    • 市場の動向をつかめている
    • 需要のあるスキルを持っている
    • 競合分析が得意である
    • 市場価値を評価できる

    市場視座により、業界のトレンドを敏感に察知し、情報収集能力を発揮します。自分の市場価値が高く、認められると判断できるのであれば、キャリア安全性が高いといえるでしょう。

    比較視座

    比較視座とは自分のキャリアを他者と比較する指標です。

    比較視座を持つ人の特徴は以下の通りです。

    • 仕事に対するモチベーションや目的を持っている
    • 仕事に楽しさや喜びを感じている
    • 他者の成功事例を研究している
    • 自己ブランディングに力を入れている
    • 成果を重視している
    • 他者からのフィードバックを求めている

    比較視座により、競争心の強さや自己評価の高さを認識し、他者の優れている点を研究して自己改善につなげられます。他者と比べて、自分のキャリアが優れていると判断できるのであれば、キャリア安全性が高いといえるでしょう。

    キャリア安全性と心理的安全性の関係

    キャリア安全性は、近年注目されている心理的安全性と密接な関係があり、両者は職場環境を構築するうえで、相互に補完し合っています。キャリア安全性と心理的安全性の関係を確認してみましょう。

    心理的安全性とは?

    心理的安全性とは、従業員が意見やアイデアを自由に表現してもよいと安心感を持てる状態のことです。心理的安全性が高いと、職場にn積極的なコミュニケーションが生まれ、イノベーションの創出につながります。

    心理的安全性が高い職場では、従業員同士の信頼関係が強まり、チームワークの強化にもつながります。反対に心理的安全性が低いと、従業員は失敗や批判を恐れて意見を控えるようになるでしょう。結果的にコミュニケーションが減少して生産性の低下を招きます。

    心理的安全性を高めるには、まずは社内で積極的なコミュニケーションを心がける必要があります。さまざまな意見を受け入れる企業文化を形成していくことで、心理的安全性の強化につながるでしょう。

    従業員満足度を高めるには2つの両立が重要

    自社の従業員満足度を高めるためには、キャリア安全性と心理的安全性の両立が重要と考えられています。いずれも高い状態であるほど、従業員は安心してキャリア構築ができるでしょう。

    ある調査によると、キャリア安全性と心理安全性の両方が高い状態にあると、人は働きがいのある職場であると評価して満足度が高まるという結果が出ています。

    心理的安全性
    高い低い
    キャリア安全性高い満足度が高い(成長機会あり/負荷が大きい
    低いキャリアプランが不明確危機

    キャリア安全性のみが高いと成長機会には恵まれますが、大きい負荷がかかります。心理的安全性のみが高いと、将来のキャリアプランが不明瞭で不安が大きいです。キャリア安全性と心理的安全性がともに低いと、二重の危機がせまっているといえます。

    人材不足の中、優秀な人材に定着してもらうには、個人のキャリア安全性に配慮しながら、従業員満足度を高める施策が必要といえるでしょう。

    出典:『大手企業における若手育成状況調査報告書』リクルートワークス研究所

    参考:『「ゆるい職場」と若手の研究』リクルートワークス研究所

    キャリア安全性を高める具体的な施策

    従業員のキャリア安全性を高め、モチベーションや満足度を維持するには、人事労務担当者として何ができるのでしょうか。考えられる具体的な施策は以下の通りです。

    • 上司との1on1ミーティング
    • キャリア研修
    • 社内公募制度
    • ジョブローテーション
    • キャリアコンサルタントとの面談

    上司との1on1ミーティング

    上司との1on1ミーティングは、キャリア安全性を高めるための重要な機会です。キャリアプランや業務内容について具体的に相談することで、今後の進むべき方向性が明確になり、キャリアの安定性が向上します。

    定期的な1on1ミーティングを通して、キャリア安全性をより高めるには、話した内容を振り返ることが大切です。毎週決まった時間に実施し、互いに進捗を確認しながら、本人のキャリア計画をサポートしましょう。

    キャリア研修

    キャリア安全性を高めるためには、キャリア研修も有効な施策の一つです。研修を通じて、従業員が将来のキャリアパスを描きやすくなると同時に、安心感を持って働けるようになるでしょう。

    研修後は、フォローアップを実施し、学んだ内容が実際の業務で活かされているか確認します。サポートの継続により、従業員の成長とキャリア安全性の向上が期待できます。

    社内公募制度

    社内公募制度は、従業員が希望するポジションに挑戦する施策で、キャリア安全性を高めるためにも役立つでしょう。希望が通れば、自身のキャリアに合ったポジションでの成長機会を得られるため、本人の将来に対する安心感が増します。

    社内公募制度では選考基準を明確にし、公平性を保ちながらフィードバックを実施することが大切です。新しい部署で得た経験は、キャリアの幅を広げ、キャリア安全性をさらに強化するでしょう。

    ジョブローテーション

    異なる部門や業務を経験するジョブローテーションも、キャリア安全性を高める施策といえます。複数の異動により従業員は多彩なスキルを身につけ、さまざまなキャリアの選択肢を得ることができます。

    企業として個人のキャリア安全性にも配慮するなら、ローテーション後の新しい業務に適応できるよう、サポートやフィードバックを実施することが大切です。キャリアの不確実性に対応できる柔軟性が身につけられると、従業員のキャリア安全性は強化されます。

    キャリアコンサルタントとの面談

    キャリアコンサルタントとの面談も、キャリア安全性を高めるための手段です。専門的なアドバイスを受けることで、従業員は自分の強みや市場の動向に基づいた具体的なキャリアプランを立てられます。

    キャリアコンサルタントからのフィードバックをもとに、長期的なキャリアパスを形成することで、従業員は安心感を持ってキャリアを構築できるようになるでしょう。市場のトレンドを踏まえたキャリア戦略は、キャリア安全性の向上につながります。

    キャリア安全性を高めて従業員満足度の向上へ(まとめ)

    キャリア安全性とは、変動する労働市場やビジネス環境において、個人が安定してキャリアを継続できる能力や保障を指します。個人のキャリアが、5年先10年先でも安定している状態を認識できていることです。

    転職が当たり前になっている現代では、個人はキャリアを戦略的に考える必要性にせまられています。

    キャリア安全性は、従業員満足度を高めるためにも、企業として無視できない要素です。個人がキャリアに対して安心感を持ち、心理的にも安全な環境で働けることで、全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。

    従業員満足度・エンゲージメントを測るには?

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