従業員エンゲージメント向上させる7つの施策と取り組み事例を紹介! 目的や効果も

「従業員エンゲージメントを向上させたい」「従業員エンゲージメント向上につながる施策や取り組みを探している」
早期離職や生産性の低下に課題がある企業にとって、従業員エンゲージメントは欠かせない指標です。従業員エンゲージメントを高めようと、社内で具体的に取り組んでいる企業も少なくありません。
本記事では、従業員エンゲージメント向上の定義や目的から、施策、取り組み事例を解説しています。自社の課題にあわせた改善のヒントにしてください。
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目次
従業員エンゲージメント向上とは
従業員エンゲージメントとは、「従業員が会社にどれだけ前向きに貢献したいと思えるか」を示す指標です。「会社への愛社精神」「自発的に貢献したいと思う気持ち」という言葉に言い換えられます。
▼エンゲージメントを詳しく知るなら、次の記事もご確認ください。
つまり、従業員エンゲージメントの向上とは、従業員が企業のために、みずから行動する気持ちや愛社精神を育むことを意味するといえるでしょう。
従業員エンゲージメントが高いほど、組織は活性化し、定着率や生産性、間接的に業績にまで影響します。
しかし、ギャラップ社の調査によると、日本の従業員エンゲージメントはわずか6%。世界でも最低水準といわれています。
参照:『世界の職場の現状』GALLUP
参照:『日本の雇用主が直面する人材確保の課題』GALLUP
では、エンゲージメントが高いとはどんな状態でしょうか。企業によって異なり、明確で統一的な基準があるわけではありませんが、「企業のビジョンに共感し、職場環境や評価に満足し、日々の仕事で成長を実感できている」という共通点があります。
従業員エンゲージメント向上の目的・必要性
従業員エンゲージメントを向上させることは近年、なぜ重視されているのでしょうか。従業員エンゲージメントを高める目的や必要性について、背景となる3つの流れを解説していきます。
人手不足・人材の流動化
少子高齢化により人手不足は年々深刻さを増し、終身雇用制度の崩壊により人材の流動性も高まっています。採用してもすぐに辞めてしまうと悩む企業は少なくありません。
人材をいかに確保して、長く活躍してもらうことが、企業にとって課題の一つです。
また、労働者の価値観も変化しています。給与や安定だけではなく、仕事に「やりがい」や「働きがい」を求める声が強くなっているのです。会社が期待に応えられなければ、従業員はよりよい環境を求めて転職で離れていってしまうでしょう。
だからこそ、従業員が自社で働きたいと思える環境を整えることが重要です。エンゲージメント向上への取り組みが必要とされるのも、時代背景を映したものです。
多様な働き方への対応
近年の日本ではテレワークが広がり、時間や場所に縛られない柔軟な働き方が当たり前になりつつあります。
一方で、メールやチャットといった非対面コミュニケーションが主流になったことで、従業員同士の結びつきや組織としての一体感が薄れてしまったのも事実です。対面での交流が減ったため、情報共有が滞るという課題も指摘されています。
コミュニケーション不足の状態は、従業員エンゲージメントの低下につながります。個々のモチベーションを維持し、エンゲージメントを向上させるための仕組みづくりが求められているのです。
人的資本経営・開示の流れ
近年は、人材を「コスト」ではなく「資本」として捉える、人的資本経営への関心が高まっています。
2023年にはアメリカに続いて日本でも、上場企業を中心に人的資本情報の開示が義務化されました。
従業員エンゲージメントは、投資家が企業価値を評価するための重要な指標の一つです。
つまり、企業価値を維持して成長していくためには、従業員エンゲージメント向上への取り組みも欠かせません。

従業員エンゲージメント向上の効果・メリット
従業員エンゲージメントが高まると、組織にはさまざまな効果が生まれます。具体的には、生産性の向上、顧客満足度の向上、離職率の低下という3つの大きなメリットです。
生産性が向上する
従業員エンゲージメントが向上すると、まず期待できるのが生産性の向上です。
従業員一人ひとりが会社のために積極的に行動するようになれば、職場のコミュニケーションが活発になります。部署を越えた連携が進み、意見交換やアイデアの共有が自然と増えるでしょう。結果として、組織全体の生産性が高まり、業績にもよい影響をもたらします。
実際に、ある共同研究では、エンゲージメント向上が生産性や営業利益率を押し上げるという結果が示されています。
参考:『「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開』株式会社リンクアンドモチベーション
顧客満足度の向上にもつながる
従業員エンゲージメントが向上すると、間接的に顧客満足度も向上します。
エンゲージメントが高い従業員は主体的に業務へ取り組み、サービスや商品の品質も自然と向上する傾向があるためです。
たとえば営業や接客業では、以前より細やかな対応になり、顧客に寄り添った質の高い提案ができるようになるでしょう。
結果として、リピーターや紹介客が増え、顧客満足度の向上が、売り上げや業績の改善にもつながります。
離職率の低下・定着率の向上が期待できる
従業員エンゲージメントが向上すると、離職率の低下と定着率の向上が期待できます。
エンゲージメントが高い従業員は貢献意欲が強く、「長期的に会社で働き続けたい」という気持ちを持ち続けているのが特徴です。
エンゲージメント向上の施策を強化すれば、人材の流出を防ぎ、定着率を高めることが可能です。
結果として、人材確保にかかる採用・教育コストを削減しつつ、優秀な人材が長く活躍できる、安定した環境を整えられるでしょう。
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従業員エンゲージメントを高める要素
従業員エンゲージメントを高める要素を大きく分けると、職場環境や評価制度、キャリア支援の3つが挙げられます。さまざまな側面からの働きかけが欠かせません。
厚生労働省の調査報告書でも、次のような施策が実施されている企業ほど「働きがいがある」と答える従業員の割合が高いと示されています。
- 本人の希望をできるだけ尊重する配置
- 評価結果およびその理由の本人へのフィードバック・説明
- 定期的な配置換え(ジョブローテーション)
- 目標管理制度の導入
- 希望に応じた研修制度の導入
- 上司以外のメンターによる相談
- 各自に与えられた仕事の意義や重要性についての説明
- 会社のビジョンの共有
- 従業員への表彰や報奨の実施
- 作業環境の改善 など
いずれの要素も、従業員が「自分は会社から大切にされている」「成長の機会を与えられている」と実感できる取り組みです。その実感が、エンゲージメント向上につながっていきます。
参考:『働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書』厚生労働省
▼次の記事ではエンゲージメントを管理するマネジメント手法について解説しています。
従業員エンゲージメント向上施策・取り組み例
従業員エンゲージメントを向上させたいけれど、具体的に何から始めればよいのかわからないという方も多いでしょう。ここからは、実際に企業で取り入れられている7つの施策を紹介します。
| 施策 | 主な取り組み例 | |
|---|---|---|
| 1 | 人事評価制度の見直し | 公平な評価基準の設定、OKR、360度多面評価 |
| 2 | フィードバック文化 | 定期的な1on1ミーティング、リアルタイムフィードバックの導入 |
| 3 | 適材適所の人材配置 | スキル管理、社内公募制度による希望配属 |
| 4 | キャリア開発支援 | リスキリング、研修・eラーニング、相談窓口 |
| 5 | ワークライフバランス | テレワーク、フレックスタイム、家庭との両立支援、ノー残業デー |
| 6 | コミュニケーション活性化 | 社内SNS、飲食補助、社内イベント、サンクスカード制度 |
| 7 | 企業理念・ビジョン浸透 | 社長による発信、行動指針の掲示、理念を体現した社員の表彰 |
納得度の高い人事評価制度の見直し
従業員エンゲージメントを向上させるためには、人事評価に対する納得度を高めることが重要です。人事評価基準が明確で公平性が保たれている職場では、従業員が「自分も頑張れば努力が正当に評価される」という意識を持ちやすく、モチベーション向上につながります。
具体的な取り組み例は、以下のとおりです。
- 評価基準やプロセスの透明化
- OKR、MBOなど新たな目標管理制度の導入
- 360度評価の導入 など
人事評価制度の見直しにおいては、評価結果をどのように伝えていくかというフィードバックにも配慮が欠かせません。
フィードバック文化の構築
上司から部下への適切なフィードバックは、部下のモチベーション向上や成長につながります。
従業員エンゲージメント向上において大切なのは、単に成果を評価するだけでなく「個人として尊重されている」と実感できる伝え方をすることです。
たとえば、一人ひとりに合わせた目標を設定し、成長したポイントを具体的に褒めること。「○○さんの経験やスキルを信頼して任せます」と期待を伝えれば、働きがいや貢献意欲をいっそう引き出せます。小さな承認の言葉をかけ、仕事に面白さを感じてもらえるよう働きかけましょう。
具体的な取り組み例は、以下のとおりです。
- 定期的な1on1ミーティングの実施
- リアルタイムフィードバックの導入
成果や貢献をわかりやすく評価することで、自尊心を高められ、本人に成長の実感につながります。
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適材適所の人材配置
従業員エンゲージメントを高めるには、一人ひとりのスキルや経験、キャリアプランなどに合わせた人材配置が不可欠です。自分の強みを活かせる仕事や理想キャリアの実現につながる仕事に携われると、達成感や満足感を得やすくなります。
具体的な取り組み例は、以下のとおりです。
- スキルや適性を可視化する人材データベースの構築
- 本人の希望を伺うキャリア面談の実施
- みずからプロジェクトや職務に立候補できる社内公募制度の導入 など
強みを活かせる配置は本人の貢献意欲を生むと同時に、苦手分野も意識することで、長期的なキャリア開発に取り組む姿勢も促すでしょう。

自律的なキャリア開発の支援
従業員がみずから学び、成長していくための機会を提供することも、従業員エンゲージメントの向上につながります。「会社は自分のキャリア開発をサポートしてくれている」と感じられると、会社への帰属意識が高まりやすくなるためです。
また、キャリア開発の支援は求職者へのアピールポイントにもなり、優秀な人材の確保にもつながります。
具体的な取り組み例は、以下のとおりです。
- リスキリング支援
- 中長期的なキャリアプログラムの提供
- キャリアアドバイザーによる相談窓口の設置
- 社内研修やe-ラーニングなどの学習機会の提供
キャリアを後押しする会社は、キャリア安全性を高め、「長く働きたい」と思われやすくなります。
ワークライフバランスの整備
ワークライフバランスの充実により、従業員が心身ともに健康な状態で業務に取り組めるようになれば、従業員エンゲージメントは高まります。
また、働きやすい環境を整備するためには、労働条件やオフィス環境などの見直しも欠かせません。
具体的な取り組み例は、以下のとおりです。
- テレワークやフレックスタイム制の導入
- 育児や介護と仕事の両立支援
- ノー残業デーの導入
- 仮眠室やリフレッシュスペースの設置 など
心身の健康を維持しながら無理なく働けることで、従業員満足度も高まり、安心して働き続けられます。
社内コミュニケーションの活性化
従業員間のコミュニケーションが活性化され、社内に一体感が生まれると、会社に対する帰属意識や愛着心(エンゲージメント)が高まりやすくなります。
チームや部署の垣根を越えたコミュニケーションを促進し、同僚との関係性を深めることで、結びつきがより強化されるでしょう。
具体的な取り組み例は、以下のとおりです。
- 社内コミュニケーションツールの導入
- 懇親を目的とした飲食代の補助
- 社員旅行やクリスマス会などの社内イベントの充実
- サンクスカード制度の導入
交流の場を増やせば、リモートワークによるコミュニケーションの希薄化も和らぎます。個人が遠慮せずに、意見を言いあえる心理的安全性が高いチームになれば、イノベーションや新しいアイデアも生まれやすくなるでしょう。
企業理念・ビジョンの浸透
従業員エンゲージメントを向上させるためには、従業員と組織の方向性を一致させることがとても大切です。全体で目指す方向性を理解できると、個人個人が自分の仕事がどのように貢献しているのかを認識し、業務へのやりがいを感じるようになります。
企業理念やミッション、ビジョン、バリューを浸透させるには、組織のリーダーである社長がみずから発信することが重要です。
具体的な取り組み例は、以下のとおりです。
- 入社式や全社集会などで社長が理念やビジョンを共有
- 日常業務における行動指針を示し、従業員がいつでも確認できるよう掲示
- 理念やビジョンを体現する従業員の表彰
日々の仕事の先にある目的を共有することで、「自分の役割が会社の成長に貢献している」と実感できるでしょう。
従業員エンゲージメント向上に取り組む企業の成功事例
従業員エンゲージメント向上施策は、各企業の状況に応じて取り組むことがポイントです。では、実際にどのように実践されているのでしょうか。スターバックスコーヒージャパン株式会社の取り組みを紹介します。
同社では、あえて接客マニュアルを設けず、従業員の自発的な取り組みを重視しています。店舗スタッフのうち正社員は2割未満でありながら、質の高い接客サービスを実現できるのは、従業員エンゲージメントの高さが理由です。
従業員を「パートナー」と呼び、スターバックスの理念への共感を促進する取り組みに注力。会社が大切にしている価値観を共有し、従業員エンゲージメントを高めています。
スキルアップ研修を充実させたり、互いを称賛しあう「グリーン・エプロン・カード制度」を導入したりしています。
従業員エンゲージメント向上への取り組み方
最後に、従業員エンゲージメントの向上に取り組む方法を、基本の3ステップで解説します。
- 従業員エンゲージメントの現状を調査する
- 施策を決定する
- 再調査して改善を繰り返す
場当たり的に施策を導入しても成果につながりにくいため、取り組み方を理解してから進めましょう。
1.従業員エンゲージメントの現状を調査する
まずは、自社の現状を把握することが大切です。
「現在の業務内容に誇りを持っているか」「働くうえで重視する点は何か」といった質問項目を設けたアンケートを実施し、現状のエンゲージメントの高さを調べましょう。そして、調査結果を踏まえて、自社の課題を整理します。
エンゲージメントを測定する調査を「エンゲージメントサーベイ」「エンゲージメント調査」といいます。
エンゲージメントサーベイを実施するなら、タレントマネジメントシステムの活用もおすすめです。アンケート機能で調査を効率的に実施できたり、分析機能によって現状課題を可視化できたりと、従業員エンゲージメントの把握や向上に役立てられます。
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2.施策を決定する
自社の現状や課題を整理できたら、具体的な施策を検討しましょう。
たとえば、従業員のモチベーション低下が課題であれば「社内コミュニケーションの促進」や「人事評価制度の見直し」の施策が有効です。まずは思いつく限りの施策を洗い出し、そこから実際に行う施策を決めていくのがおすすめです。
施策を決めるのと同時に、最終的な目標設定も行いましょう。施策の実行後、どのような状態になっていたいのかを明確にすることで、施策の効果を高められます。
施策や目標を決定したら、実際に取り組みを始めます。従業員エンゲージメントはすぐに向上するものではないので、長期的な視点で取り組むことが重要です。
3.再調査して改善を繰り返す
施策の実行後は、定期的に振り返りの機会を設けましょう。エンゲージメントサーベイを再度実施し、施策の効果を分析します。
以前は有効と思われた施策も、時間の経過とともに重要度が下がっていく場合があります。定期的なサーベイで現状を把握し、そのときの状況に合わせた施策を検討・実行するというプロセスを繰り返すことが大切です。
このようにPDCAサイクルを回すことで、より有効なエンゲージメント向上施策を打ち出せるようになるでしょう。
まとめ|エンゲージ向上に取り組み企業価値を高める
従業員エンゲージメントの向上とは、企業と従業員との結びつきを強化し、従業員の貢献意欲や愛社精神を高めることです。
従業員エンゲージメントが向上すると、生産性の向上や離職率の低下など、企業にとってさまざまなメリットがあります。
従業員エンゲージメントの向上は、企業価値の向上に直結する重要な取り組みです。まずは自社の現状や課題を整理し、従業員エンゲージメントを向上させる施策を実施しましょう。
エンゲージメント向上を支援|One人事[タレントマネジメント]
One人事[タレントマネジメント]は、従業員の不満や意欲低下の原因など、現状や変化を把握して、エンゲージメント向上を支援するタレントマネジメントシステムです。テンプレートをもとに質問項目は自由に追加と削除ができ、オリジナルのサーベイを実施できます。
たとえば、エンゲージメントの高い従業員と低い従業員を、職種や残業時間などの項目で比較。傾向を分析することで組織改善に向けた具体的なアクションが見つけられます。
→詳しい活用イメージは【こちら】
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