パルスサーベイとは? 意味や導入メリット、質問項目や活用シーンも解説

パルスサーベイとは? 意味や導入メリット、質問項目や活用シーンも解説

パルスサーベイとは、従業員の「今」を素早くつかむための調査手法です。週1回~月1回の短期間で繰り返すことで、心の動きや現場の温度差に早めに気づけます。

パルスサーベイは、新入社員のオンボーディングのフォローやメンタルヘルスの定点観測にも活用されています。年1回の大規模調査だけでは拾いきれない変化の兆候を、脈拍(パルス)のように定点で測るイメージです。

本記事では、パルスサーベイの特徴や目的、具体的な活用シーンを整理し、各調査との違いや質問項目例まで解説します。実施を検討している企業はもちろん、従業員の満足度に課題がある企業は参考にしてください。

パルスサーベイ実施を効率化「One人事」資料を無料ダウンロード

目次アイコン目次

    パルスサーベイとは

    パルスサーベイ(Pulse Survey)は、企業や仕事に対する意識や心身の状態を、短い間隔で定期的に測る調査です。一般的に、設問は5〜15問程度のシンプルな設計で行われます。

    パルスサーベイは高頻度で実施するため、回答者への負担に配慮する必要はありますが、変化を素早く捉え、打ち手を検討しやすいのが大きな強みです。

    パルスの意味

    パルスサーベイ(Pulse Surve)の「パルス(Pluse)」は、「脈拍」を意味します。

    パルスサーベイは、脈拍測定のように短いスパンで、組織の状態をこまめに測るという比喩から名づけられています。

    短く、繰り返し、変化を見るというのがパルスサーベイの特徴です。

    パルスサーベイと混同しやすい言葉

    パルスサーベイは従業員向けの調査手法の一種ですが、ほかの調査と実施頻度や質問数、目的、調査項目に違いがあります。次の表で違いを確認してみましょう。

    種類実施頻度質問数目的
    パルスサーベイ週1回~月1回5~15問・従業員の意識変化を迅速に把握
    ・組織環境の改善
    エンゲージメントサーベイ年1~2回30問~50問・企業に対する愛着心や貢献意欲を測定
    ・信頼関係の向上や組織改善
    ストレスチェック年1回57項目もしくは80項目(状況によって23、120項目でも可)・メンタルヘルス対策(法的実施義務あり)
    エンプロイーサーベイサーベイの種類ごとに異なるサーベイの種類ごとに異なる・企業側が立てた仮説の検証
    ・人事施策の立案や計画
    モラールサーベイ年1~2回39~95問(実施方式によって異なる)・長期的な組織課題の発見
    ・従業員のパフォーマンス向上
    センサスサーベイ年1~2回50~150問・組織状況や組織風土の把握
    ・データを多角的に抽出
    社内アンケート年1~2回10~20問・組織状況の把握
    ・長期的な戦略策定
    従業員満足度調査年1~2回30問~50問・従業員の満足度を調査
    ・詳しい組織状況や課題の把握

    ※実施頻度や質問数は、企業によって異なる

    エンゲージメントサーベイとの違い

    エンゲージメントサーベイは、年に1~2回程度実施され、質問数が30問~50問と多めで構成されています。愛着や貢献意欲を測る設問が多く、組織全体の信頼関係を強化し、長期的な改善策に活かすことが目的です。

    パルスサーベイは課題解決への迅速な対応に、エンゲージメントサーベイは信頼関係の強化を目的としている点に違いがあります。

    ストレスチェックとの違い

    ストレスチェックは年に1回程度、従業員のメンタルヘルス不調を防ぐ目的で実施されます。

    パルスサーベイとの違いは、法的な実施義務の有無です。

    従業員が50名以上いる事業場では、労働安全衛生法により、ストレスチェックを必ず実施しなければなりません。さらに2028年以降は、50名未満を含むすべての企業で、実施が義務づけられる予定です。

    参照:『ストレスチェック制度導入ガイド』厚生労働省

    エンプロイーサーベイは、企業が立てた仮説を検証し、人事施策や組織改善に活かすために、従業員全員を対象にした包括的な調査です。

    「エンプロイー(Employee)」は「従業員」を意味し、従業員の満足度や意識を幅広く測る調査全般を指しています。パルスサーベイはエンプロイーサーベイの一種です。

    モラールサーベイとの違い

    モラールサーベイは、数か月に一度から年に一度程度の頻度で実施され、従業員の士気や意欲を測定する調査です。組織の課題を把握し、中長期的な職場環境の改善とパフォーマンス向上につなげることを目的としています。

    パルスサーベイとの違いは、実施頻度と捉える変化の範囲です。

    パルスサーベイは短い間隔で繰り返し、施策の影響やコンディションの変化をタイムリーに把握します。一定期間ごとに、部署や組織の傾向を広い視点で捉え、中長期的な改善に活かしていくモラールサーベイとは異なります。

    参照:『モラールサーベイ(NRK方式)診断の質問内容について~日本労務研究会(NRK)』日本労務研究会
    参照:『厚生労働省方式・社員意識調査(NRCS)診断員の養成~日本労務研究会(NRK)』日本労務研究会

    センサスサーベイとの違い

    センサスサーベイは年に1回程度実施され、質問数が50問から150問におよぶ大規模な調査です。組織の状況や風土を把握するために行われます。

    パルスサーベイとの違いは、実施頻度と質問数です。

    パルスサーベイは、週1回や月に1回程度の短い間隔で実施され、質問数はセンサスサーベイほど多くありません。

    社内アンケートとの違い

    社内アンケートの実施頻度は、年に1~2回程度です。組織全体の状況を把握し、長期的な戦略を立てるために利用されます。

    企業が従業員の意識変化にいち早く気づくために、高頻度で実施されるパルスサーベイとは異なります。

    従業員満足度調査との違い

    従業員満足度調査の設問は、包括的に組織状況を把握する内容が中心で、長期的な課題発見や戦略策定に役立ちます。実施頻度は年に1~2回程度です。

    パルスサーベイと従業員満足度調査の違いも、実施頻度と質問数、目的、調査項目にあります。

    パルスサーベイは、週1回や月1回の頻度で実施される、質問数が少ない簡易的な調査です。直近の状態や変化を捉える設問が多く、従業員の状況をタイムリーに確認し、迅速に改善へつなげることを目的としています。

    パルスサーベイの目的

    パルスサーベイは、従業員の満足度や意識をリアルタイムで把握する調査です。主な目的は次の3つです。

    • 社内課題の把握と改善に素早く対応するため
    • 従業員エンゲージメントを向上させるため
    • 調査コストを削減するため


    目的があいまいなまま、やみくもにパルスサーベイを実施するのはおすすめしません。自社の課題や取り組みと合致しているかを確認したうえで取り入れましょう。

    社内課題の把握と改善に素早く対応するため

    パルスサーベイの第一の目的は、社内課題を早期に発見し、スピーディーに改善へつなげることです。短い間隔で繰り返し実施するため、従業員の意識や満足度の変化をリアルタイムに捉えやすいのが特徴です。

    年1回など実施間隔が長い調査では、変化に気づくのが遅れ、対応が遅れてしまいます。

    従業員エンゲージメントを向上させるため

    パルスサーベイには、従業員エンゲージメントを高める目的もあります。定期的に状況を把握し改善策を打ち出すことで、従業員の不満や不安が解消されるためです。悩みや困りごとが解消されれば、会社に対する信頼感や感謝の気持ち、貢献意欲も生まれやすくなります。

    調査コストを削減するため

    パルスサーベイは、コスト面でもメリットがあります。大規模な調査は、従業員の回答に負担がかかるうえ、膨大なデータ分析にリソースを確保しなければなりません。社内人材や外部委託費用の手配が必要です。

    対してパルスサーベイは、シンプルな設問を短い周期で繰り返す形式で実施されます。自社内で設計から分析まで完結しやすく、負担や運用コストを抑えられるでしょう。

    パルスサーベイは意味がないといわれる理由

    パルスサーベイを実施しているものの、意味がないと感じたことはありませんか。

    • 社員が本音で答えてくれない
    • 結果を活かして改善ができていない

    以上のような不安を抱いた経験のある方もいるかもしれません。

    パルスサーベイが意味ないと感じられるのには理由があり、運用次第で解消できる場合もあります。代表的な2つの理由を紹介し、対策のヒントを解説します。

    マンネリ化によって従業員の回答が惰性になる

    パルスサーベイは、短い間隔で繰り返し実施されるため、従業員が調査に慣れてしまう可能性があります。

    慣れが積み重なると回答が惰性的になり、正確な回答をしてもらえません。結果として、調査の信頼性が下がり、意識の変化を捉えられず、改善策も的外れになってしまうでしょう。

    パルスサーベイの回答のマンネリを防ぐには、以下のような対策が挙げられます。

    • 毎回同じような質問の繰り返しにならないよう質問内容に変化をつける
    • 定期的なフィードバックや改善策を提示する
    • 回答のタイミングを従業員に任せず、全社一斉に実施する

    対策は一例です。自社の状況にあわせて工夫を重ねましょう。

    実施頻度が多いため課題に対する対応が手薄になる

    実施頻度の多いパルスサーベイは、対応が追いつかず、改善策の実行が遅れてしまいがちです。調査結果に基づいた対応が後回しになると、調査自体「意味がない」とみなされてしまうでしょう。

    まずはパルスサーベイの実施計画を練り、運用体制を整える必要があります。

    • 専任担当者には業務を減らしてリソースを調整する
    • 特定の人に任せきりにせず、チームや持ち回りで順番に対応する

    以上のような工夫で、改善までやりきるPDCAサイクルを回しましょう。

    パルスサーベイのメリット

    パルスサーベイは、適切に運用体制を整えられれば多くのメリットがあり、意味のある施策です。主なメリットは次の4点です。

    • 従業員の状況をタイムリーに把握できる
    • 企業の施策を効果検証する機会になる
    • 新入社員のフォローアップにつながる
    • 従業員が内省する機会を設けられる

    従業員の状況をタイムリーに把握できる

    パルスサーベイは、従業員の状況をタイムリーに把握できるのがメリットです。短期間で繰り返し実施されるため、過去の回答結果と比較しやすく、小さな変化も捉えやすくなります。企業がこうした変化を早めに察知し、スムーズに改善策を講じられれば、不満やストレスの解消につながります。

    企業の施策を効果検証する機会になる

    パルスサーベイは、人事施策の効果を検証する手段としても活用されます。サーベイを通じて施策に対する従業員の声を集め、実行前と実行後で結果を比較すると、施策がどの程度効果を発揮したかを把握できます。結果をもとに、改善点を見つけたり、次の施策に活かしたり役立つのはメリットです。

    新入社員のフォローアップにつながる

    パルスサーベイは、新入社員のフォローアップにも有効です。新入社員は緊張や慣れない業務による不安を抱きやすく、放置すると早期離職につながるおそれがあります。パルスサーベイで不安やストレスの状況を把握し、迅速にサポートできれば、新入社員は安心して働けて、離職率の低下にもつながります。

    従業員が内省する機会を設けられる

    従業員自身が内省する機会を持てるのも、パルスサーベイ実施のメリットです。質問に答える過程で仕事や意識を見直すきっかけが生まれ、普段の忙しさのなかでは気づきにくい変化にも目を向けられます。

    短い間隔で定期的に実施すれば、内省が習慣化し、本人の課題発見や成長を後押しするでしょう。

    パルスサーベイのデメリット

    パルスサーベイにはメリットがありますが、運用の仕方によってはデメリットも生じます。主な注意点は次の3つです。

    • 従業員の負担になる可能性がある
    • 従業員の状況を詳細に把握できないこともある
    • 具体的な改善策を実行できないと形骸化してしまう

    企業は注意点を理解し、運用方法を工夫することで影響を抑えましょう。対処法とあわせて解説していきます。

    従業員の負担になる可能性がある

    パルスサーベイは、短期間に繰り返し実施されるため回答頻度が高く、回答者である従業員の負担になる点に配慮しましょう。

    通常業務に加えて対応が必要になると、業務時間が圧迫されてしまいます。時間を取られて仕事が遅れたり、多少の残業が増えたりする可能性もあります。

    パルスサーベイを運用する企業は、できるだけ短時間で答えられるシンプルな質問を用意し、実施頻度に問題ないかを適宜見直すことが大切です。

    従業員の状況を詳細に把握できないこともある

    パルスサーベイは質問数が少なく、簡易的な設計になっているため、従業員の状況を深く把握できるわけではありません。表面的な回答にとどまり、本質的な課題が見えにくいという課題もあります。

    調査結果をもとにフィードバック面談を実施したり、必要に応じてエンゲージメントサーベイなどを併用するのがおすすめです。

    具体的な改善策を実行できないと形骸化してしまう

    パルスサーベイは、調査結果をもとに改善策を実行してこそ意味があります。対応が遅れて改善が行われないと、従業員は「調査しても何も変わらない」と不満を持ち、制度自体が形骸化してしまいます。

    改善策を確実に実行できるように、担当者の負担も考慮しながら、スケジュールを立てましょう。

    パルスサーベイの実施を効率化し、分析まで実施して改善につなげるならタレントマネジメントシステムの活用をおすすめします。

    タレントマネジメントシステム|One人事[タレントマネジメント]の特長はこちら

    パルスサーベイの活用シーン

    パルスサーベイは、従業員の状況変化を把握するための調査ですが、実際にはさまざまな場面で活用できます。

    • 新入社員のオンボーディング
    • 従業員のコンディションやメンタルの定点観測
    • 企業による施策や制度の効果検証
    • 人事異動に対するフォロー

    それぞれのシーンで、どのように役立つのかを見ていきましょう。

    新入社員のオンボーディング

    パルスサーベイは、新入社員の定着や活躍を支援するツールとして有効です。入社後のフォローや、配属先での適応状況を確認するのに役立ちます。対象は新卒だけでなく、中途採用の新入社員も含まれます。サーベイを通じて不安や悩みを把握し、早めにフォローすることで、新入社員の意欲向上や早期の即戦力化につながるでしょう。

    従業員のコンディションやメンタルの定点観測

    定期的に実施されるパルスサーベイは、従業員のコンディションやメンタルを継続的に観察するのに向いています。

    厚生労働省のデータによると、職業生活で強いストレスを感じている労働者は82.2%(2022年)にのぼります。

    強い不安やストレスはメンタル不調や離職を引き起こす原因です。定期的に状況をチェックし、職場環境の改善に努めることが大切です。

    参照:『職場におけるメンタルヘルス対策の現状等』厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 労働衛生課

    企業による施策や制度の効果検証

    パルスサーベイは、施策や人事制度の効果検証にも活用されます。

    不満や問題点を感じていても、直接的に指摘しない従業員がほとんどです。人事評価に不公平感を抱いていても、「意見を出せば、さらに評価が下がりそう」と懸念する人は少なくありません。

    施策や制度に関する効果検証は、匿名調査で本音を吸い上げることが重要です。

    パルスサーベイを通じて、個別のニーズをもとに、より効率的で実態にあった制度運用や改善が実現します。

    人事異動に対するフォロー

    パルスサーベイは、人事異動に対するフォローやサポートにも活用されます。人事異動で新しい部署に移った従業員も、新入社員と同様に不安やストレスを抱えやすいものです。

    パルスサーベイを実施すれば、異動後の適応状況やストレス度合いを把握できます。

    とくに人事異動が集中する時期は、個別面談だけで全員をフォローするのが難しい企業もありますが、サーベイを使えば効率的に確認が可能です。

    サーベイ結果で不安や負担が見つかった場合は、面談で詳細を聞いたり、業務量を調整したり、具体的な対策を取りましょう。

    パルスサーベイの質問項目例

    パルスサーベイでの質問項目は、企業の課題や調査目的にあわせて設定します。とくにパルスサーベイの運用で設定されやすい項目は、以下の3領域です。

    • 従業員満足度に関する質問項目
    • 経営理念に関する質問項目
    • 業務内容に関する質問項目

    職場を改善するには、個人に関するテーマだけでなく、企業や組織に対する意識を把握することも大切です。それぞれの質問項目における具体例を以下で紹介します。

    従業員満足度の質問項目例

    従業員満足度に関する質問項目は、仕事に対する満足度や働きがいを測るために有用です。具体的には、以下の質問が挙げられます。

    質問内容
    ・仕事にやりがいを感じていますか。
    ・仕事を通して自分の成長を感じられますか。
    ・今後も働き続けたいと感じますか。
    ・友人や知人に自社を勧めたいと思いますか。
    ・自分が活躍できている実感はありますか。
    ・仕事で嬉しかったことはありますか。
    ・ワークライフバランスは保てていますか。

    満足度や幸福度を測る質問は、従業員のモチベーションやエンゲージメントを測る指標としても役立ちます。従業員満足度に関する項目のスコアが低いと、従業員の離職リスクが高まるため注意が必要です。

    経営理念に関する質問項目例

    経営理念に関する質問項目で、企業が掲げる方針や目標がどれほど従業員に浸透しているかを測ります。具体的には、以下の質問です。

    質問内容
    ・経営理念や目標は理解していますか。
    ・経営陣の意思決定は健全だと思いますか。
    ・経営陣は現場の声に耳を傾けていると感じますか。
    ・企業の方針や方向性に共感できていますか。
    ・企業の経営陣は、経営理念を達成するための努力をしていると思いますか。
    ・企業理念やビジョンに基づいた目標設定ができていますか。

    従業員が経営理念や目標を理解・共感できているかは、組織力に影響します。スコアが低ければ、一体感が欠け、全体のパフォーマンス低下につながるおそれがあるため、強化策の検討が必要です。

    業務内容に関する質問項目例

    業務内容に関する質問項目では、業務そのものだけでなく、仕事に関する人間関係の満足度

    も測れます。具体的には、以下のような質問内容です。

    業務内容に関する質問では、仕事そのものだけでなく、人間関係やキャリア形成に満足しているかも把握するために設定します。具体的な質問例は、次のとおりです。

    質問内容
    ・業務に対する不満はありますか。
    ・自分の知識やスキルを十分に活かせていますか。
    ・自分が活躍できていると感じますか。
    ・人間関係の不安はありますか。
    ・上司や同僚とのコミュニケーションは、円滑に取れていますか。
    ・未来のキャリアは描けていますか。

    業務や人間関係に不安があると、従業員のモチベーションは下がりやすく、生産性の低下やメンタル不調にもつながっていきます。とくに注意して定点観察していきたい質問項目です。

    パルスサーベイの実施方法

    パルスサーベイの実施方法を、5つのステップに分けて手順を解説します。

    1. パルスサーベイの目的を明確化
    2. 質問項目を設定
    3. パルスサーベイを実施
    4. 調査結果の集計や分析
    5. 課題抽出と改善策の実行

    パルスサーベイを効果的に実施するには、実施後の分析や改善策の実行がとくに重要です。

    1.パルスサーベイの目的を明確化

    最初に「なぜパルスサーベイを行うのか」という目的を明確にしましょう。たとえば「離職防止のために従業員の不安を把握したい」「施策の効果を検証したい」といったゴールを具体化します。目的がはっきりすれば、適切な質問項目を設定でき、従業員にも調査の意義が伝わりやすくなります。

    2.質問項目を設定

    パルスサーベイの目的が固まったら、質問項目を設定します。偏りを避けて多角的に分析するため、複数のテーマを組み合わせるのがおすすめです。

    回答形式は一般的に5段階評価が採用され、選択肢が複数あれば回答者は自分に近い答えを選択しやすくなります。質問や回答は、シンプルで答えやすくなるように調整するのがポイントです。

    3.パルスサーベイを実施

    質問項目が整ったら、実際にサーベイを実施します。回答期限や方法をあらかじめ周知し、従業員に質問票を配布します。回答率を上げるには、始業時にメールで通知したり、締切前にリマインドを送ったりフォローが必要です。

    ▼パルスサーベイの配付やリマインドを自動化するなら、タレントマネジメントシステムなどの活用がおすすめです。システム上で完結し、担当者の効率化を支援します。

    パルスサーベイをシステムで自動化|「One人事」資料を無料ダウンロード

    4.調査結果の集計や分析

    パルスサーベイの回答を回収したら、すみやかに集計と分析を行います。フィードバックが遅れると従業員の関心は薄れてしまうため、できるだけ短期間で結果をまとめて伝えることが大切です。

    5.課題抽出と改善策の実行

    最後に、パルスサーベイで見つかった課題を抽出して改善策を実行します。もし改善策が実行されなければ、従業員は「答えても意味がない」と感じ、調査自体が形骸化してしまいます。

    課題を放置せずスピード感を持ってPDCAサイクルを回すことが重要です。改善策に着手する際は、スコアが低かった項目や優先度の高い課題から取り組み、従業員一人ひとりの声を反映させましょう。

    パルスサーベイ実施の注意点

    パルスサーベイを効果的に運用するためには、いくつかの注意点があります。

    • 頻度や内容によっては十分な効果が得られない可能性がある
    • 実施目的を常に意識する
    • 結果の共有範囲を事前に伝える
    • 効果的な質問項目を設定する

    事前に意識しておけば失敗を防ぎ、調査を有効に活かせるため、一つずつ確認していきましょう。

    頻度や内容によっては十分な効果が得られない可能性がある

    パルスサーベイは、ただ頻繁に実施すればよいわけではありません。調査の回数が多くても、その後改善策が実施されなければ、従業員にとって負担でしかなくなります。

    担当者は、調査の頻度に改善策の実行が追いついているかを常に意識し、最適な間隔で実施しましょう。

    実施目的を常に意識する

    パルスサーベイの実施目的を忘れないことが大切です。実施者が目的を見失うと、課題を正しく把握できず、改善策も機能しなくなります。

    よくある失敗例は、サーベイを実施するという手段が目的になってしまうケースです。効果的な運用を続けるためには、常に「何のために行うのか」目的を意識し続けましょう。

    結果の共有範囲を事前に伝える

    パルスサーベイの実施前に、調査結果がどの範囲で共有されるかを従業員に伝えておくことも重要です。共有範囲が不明確だと、誰に見られるかわからないと不安を感じ、本心を答えにくくなります。課題の発見や改善策の実行には、従業員の正直な回答が必要です。

    次のようなルールを明確にして周知しましょう。

    • 回答は人事部のみが閲覧する
    • 個人が特定されない形で集計する

    効果的な質問項目を設定する

    パルスサーベイの質問項目の内容も工夫する必要があります。同じような質問ばかりが並ぶと、従業員の回答が雑になり、精度が落ちてしまいます。

    同じテーマであっても、より深く実態を把握するために、角度を変えて複数の切り口から質問を用意しましょう。

    パルスサーベイの導入事例

    パルスサーベイは、さまざまな企業で導入されています。今後導入を予定している企業は、すでに実施して、効果を発揮している2社の導入事例を参考にしてみましょう。

    ソフトバンク株式会社

    ソフトバンク株式会社は、年1回の「従業員満足度調査」と、同社が独自開発したパルスサーベイを併用しています。

    独自開発のパルスサーベイは、「仕事」や「生活」、「健康」の分類に対して、多角的な質問で構成されているのが特徴です。

    サーベイは人事部管理のもと、上司と部下のコミュニケーション活性化にも活用されています。

    参照:『なぜ、ソフトバンクの人事本部はゼロからパルスサーベイを開発したのか?|ビジネスブログ』ソフトバンク株式会社

    株式会社三井住友フィナンシャルグループ

    株式会社三井住友フィナンシャルグループは、従業員エンゲージメントの向上を目的にパルスサーベイのプラットフォームを導入しています。

    DE&I や人権を重視する同グループでは、サーベイを通じて従業員の多様な声を収集しています。

    得られた多面的なデータを活用し、よりよい組織づくりに取り組んでいる好事例です。

    参照:『SMBC グループ 10 万人を対象に Wevox の新プランを導入〜人的資本投資を通じて、価値創造を支える組織づくりを強化〜』株式会社三井住友フィナンシャルグループ

    パルスサーベイを実施できるツール

    パルスサーベイは頻繁に実施するため、そのたびに質問設計や分析が必要になり、担当者の負担が大きくなりがちです。そこで効率的にサーベイを作成・実施できるツールの活用をおすすめします。

    パルスサーベイ専用ツールは、シンプルにサーベイだけを実施したい場合には便利です。しかし、結果を分析して人事施策への活用を考えるなら、タレントマネジメントシステムが役立ちます。スキル管理や評価制度とデータを一元管理でき、分析機能も充実しているため、パルスサーベイの結果を組織改善や人材育成に活かしやすくなります。

    パルスサーベイを効率化|One人事[タレントマネジメント]

    One人事[タレントマネジメント]は、パルスサーベイの実施も効率化するクラウド型タレントマネジメントシステムです。

    従業員の不満や意欲低下の原因など、現状や変化を把握するのにお役立ていただけます。サーベイはテンプレートをもとに、質問項目は自由に設計が可能。ダッシュボード機能で、調査後の分析もしやすくなります。

    →詳しい活用イメージは【こちら

    詳しい活用方法を聞いてみたい場合は、当サイトよりお気軽にご相談ください。専任スタッフが貴社の課題に応じて、ご提案いたします。

    当サイトでは、サービス紹介資料に加え、人事労務のノウハウに関する資料を無料でダウンロードできます。トライアルも無料でご利用可能です。「まずは画面を見てみたい」という方も、お気軽にお問い合わせください。

    One人事」とは?
    人事労務をワンストップで支えるクラウドサービス。分散する人材情報を集約し、転記ミスや最新データの紛失など労務リスクを軽減することで、経営者や担当者が「本来やりたい業務」に集中できるようにサポートいたします。

    まとめ

    パルスサーベイは、短い間隔で繰り返すことで従業員の小さな変化を可視化し、素早い打ち手につなげられる意味の大きい施策です。適切に運用すれば、従業員満足度や従業員エンゲージメントの向上だけでなく、離職リスクの低減や生産性向上といった組織成果にも影響します。

    ただし、パルスサーベイの実施が目的化すると形骸化します。効果を最大化するには、迅速にPDCAを回しきることが重要です。頻度や質問量は対応可能な範囲に抑え、結果の共有範囲を事前に示しましょう。分析やほかの人事施策との連携まで見据えるなら、タレントマネジメントシステムの活用をおすすめします。