自己肯定感とは? 意味と低いことでもたらす影響、高める方法をわかりやすく解説

自己肯定感とは、ありのままの自分を受け入れ、自己価値を認識する気持ちのことです。自己肯定感が低下すると、自信を失い、行動が制限されることがあります。コミュニケーション不足や人間関係悪化の悪化を招き、職場環境にも悪影響を及ぼす可能性も否定できません。

本記事では自己肯定感の概念、低い自己肯定感がもたらす影響、そして自己肯定感を高める具体的な方法について解説します。従業員のモチベーション管理に取り組む方は、参考にしてください。

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    自己肯定感とは|意味をわかりやすく

    自己肯定感とは、ありのままの自分を受け入れ、自己価値を認識する心の状態のことです。自分の弱さやネガティブに感じていることも認め、価値ある存在として受け入れる力ともいえます。

    自己肯定感が高いと、他人と比較せず自分自身を尊重し大切に思うことができるため、自分らしく過ごせます。自己肯定感は、心の安定をもたらし、充足感や幸福度、身体の健康にもよい影響を与えるでしょう。

    自己肯定感を構成する2つの要素

    自己肯定感は以下の2つに分類されます。

    1. 絶対的自己肯定感
    2. 社会的自己肯定感

    2つの違いは以下の通りです。

    特徴絶対的自己肯定感社会的自己肯定感
    定義自分自身を無条件に肯定する感覚社会や他者との関係において自分を肯定する感覚
    基盤内面的な自己評価外部からの評価や承認
    影響自己の価値観や信念に基づく他者の意見や社会的な評価に影響される
    安定性比較的安定している状況や他者の反応によって変動する
    自分の存在そのものを肯定する他者からの称賛や承認を受けて自己肯定感を感じる

    絶対的自己肯定感

    絶対的自己肯定感とは、自分の弱さやネガティブな側面も受け入れ、、自分自身を価値ある存在として認める力のことです。ありのままの自分を無条件に受け入れる特徴があります。

    幼少期の成功体験や、周囲から無条件に受け入れられた経験、自分の存在価値を認められた経験が絶対的自己肯定感の形成に影響しています。両親や兄弟などさまざまな人から、ありのままの自分を受け入れられた経験が多い人ほど、絶対的自己肯定感が育まれやすいのです。

    社会的自己肯定感

    社会的自己肯定感とは、仕事の成果や他人からの評価など、外的要因によって変動する自己肯定感のことです。絶対的自己肯定感とは違い、他人から評価されないと自分を肯定できない特徴があります。

    絶対的自己肯定感を持っていないと、他人からの評価に依存してしまい、自分の努力や達成感を感じにくくなります。始めに絶対的自己肯定感を感じることが重要です。

    自己肯定感と混同しやすい言葉との違い

    自己肯定感と混同しやすい言葉は以下の通りです。

    1. 自己効力感
    2. 自信
    3. 自尊心
    4. 自己評価
    5. 自分勝手

    それぞれ違いを解説します。

    自己効力感

    自己効力感とは、特定の状況において目標を達成するために必要な行動ができている、という自分自身への信頼感や信念のことです。

    自己肯定感は、自分自身を価値ある存在として受け入れる心の状態であるのに対し、自己効力感は特定の課題や目標に対して「上手くいく」「私ならできる」という前向きな見通しや確信を持つことです。

    自信

    自信とは、過去の経験や成功体験に基づき、特定の能力や状況において「自分はできる」と肯定的な自己評価を持つ自分を肯定できる状態のことです。

    特に根拠がなくても自分を肯定できる自己肯定感とは明確に異なります。

    自尊心

    自尊心とは、自分は価値のある人間であり、尊重されるべき存在であると感じる心の状態です。自尊心が高い人は、自分自身の価値観や信念を大切にし、他人の意見に左右されずに自分の道を進みます。

    一方で自己肯定感は自分の価値を受け入れる力です。自尊心が強すぎると自信に満ち溢れている様子がありますが、傲慢(ごうまん)な態度になりやすく、自己肯定感はよりバランスの取れた自己受容の感覚といえます。

    自己評価

    自己評価とは自分自身の能力、性格、行動などに対して、特定の評価基準や価値観をもとに判断している状態のことです。自己評価が高い人は、自分の能力や価値を認め、自信を持って行動できる傾向があります。

    自己肯定感とは、自分の評価にかかわらず、自分自身を価値ある存在として受け入れる心の状態であり、評価の高低に依存しないのが特徴です。

    自分勝手

    自分勝手とは他人のことを考えずに、自分の利益や都合だけを優先して行動する状態のことです。「わがまま」や「自己中心的」という言葉と類似していますが、自分勝手は、特に他者への配慮や責任感の欠如を強調する意味合いがあります。

    自己肯定感は、自分を受け入れる力であり、自分勝手な行動とは異なり、他者への配慮や共感を失ってはいません。

    たとえば、チームの目標よりも個人的な目標を優先したり、自分のミスを認めずに他人に責任転嫁したりする行動などが、自分勝手な行動にあたります。自分勝手な行動は周囲の信頼関係を損ない、チームワークを阻害する可能性があるため注意が必要です。

    自己肯定感が高い人に共通する特徴

    自己肯定感が高い人には、前向きな行動傾向が見られます。共通する特徴は以下の通りです。

    1. 自信を持って行動できる
    2. 失敗を恐れない
    3. 周りの評価に影響されない
    4. 他人の意見や価値観を尊重できる

    自信を持って行動できる

    自己肯定感が高い人は自分の価値を信じているため、失敗を恐れず新しいことや困難な状況にも積極的に挑戦できます。仕事がうまくいかなくても、改善点を洗い出して次の行動につなげる特徴を持っています。周囲の意見に左右されず、自分自身の判断を信じ、主体的な行動がとれるでしょう。

    失敗を恐れない

    自己肯定感が高い人は、失敗を成長の機会と捉えて学びを得て、前向きに改善につなげる特徴があります。チャレンジする際に成功したときの姿を想像して、挑戦する過程を楽しみ、前向きな気持ちで取り組めます。

    万が一、失敗したとしても、うまくいかなかった自分を受け入れ、新たな方法を考えて再び挑戦することができるでしょう。

    周りの評価に影響されない

    自己肯定感が高い人は、自分自身の価値を確信しているため、周囲の評価に一喜一憂しません。どのような評価も前向きに考えるという特徴を持ち、改善点として捉えることができるので成長につながるでしょう。

    他人の意見や価値観を尊重できる

    自己肯定感が高い人の特徴は、多様な考え方を受け入れて、他人の意見や価値観を尊重し、良好な人間関係が構築できることです。ありのままの自分を受け入れている人は、自分の意見を中傷しながらも、他人の意見や考えにも寄り添い建設的なコミュニケーションを取ります。

    自己肯定感が高い人は、ここまで紹介した特徴を通じて、仕事やプライベートで充実した日々を過ごしている傾向にあります。周囲の人々にもよい影響を与え、組織全体の活性化にも貢献できるでしょう。

    自己肯定感が低い人に共通する特徴

    自己肯定感が低い人に共通する特徴は以下の通りです。

    1. 承認欲求が強い
    2. 自己否定しやすい
    3. 失敗を恐れて消極的になりやすい
    4. 完璧を求めすぎる

    承認欲求が強い

    自己肯定感が低い人は、自分自身を認めることが難しいため、周囲の人からの評価や承認に依存する特徴があります。自分を認める力がないと、周囲に承認を求めます。

    承認を得るための過剰な努力や、自分をいつわってアピールしたりする可能性があります。他者からの評価に一喜一憂し、精神的に不安定になりやすい傾向も見られます。

    自己否定しやすい

    自己肯定感が低い人の特徴として、自分の能力や価値を過小評価し、「自分はダメな人間だ」や「人の役に立たなければ価値がない」といった否定的な考えに陥りやすいことが挙げられます。失敗やミスに対して、必要以上に自分を責めてしまい、自信を失いやすい傾向もあります。

    周囲から見れば十分に優秀な人でも、自己肯定感が低い特徴があると、他人と比べて劣等感を抱きやすく、その結果、自己肯定感がさらに低下する悪循環に陥ることがあります。

    失敗を恐れて消極的になりやすい

    自己肯定感が低い人は、失敗への恐れから新しいことへの挑戦を避ける特徴を持ちます。物事を否定的に捉える傾向があるため、チャンスを逃したり、成長の機会を逃したりする可能性があります。

    チャンスが訪れても「自分には何もできない」と考えてしまいやすいです。消極的な態度は、周囲から低い評価を受ける可能性があります。

    完璧を求めすぎる

    自己肯定感が低い人は、完璧主義になりやすく、常に高い目標を設定して少しでもミスがあると自分を責めがちです。仕事でミスをした際に「周囲からの評価が下がるのではないか」と過度なプレッシャーやストレスを感じやすい傾向や特徴があります。

    自己肯定感が低い人の完璧主義は、自分を守るための努力ともいえますが、仕事の効率が低下したり、燃え尽き症候群に陥ったりするリスクも高まります。

    自己肯定感が低くなってしまう原因とは

    自己肯定感が低くなってしまう原因は人それぞれですが、以下のような要因が考えられます。

    1. 国民性や学校教育
    2. 過去の失敗経験
    3. 家庭環境

    国民性や学校教育

    学校教育や国民性が自己肯定感の原因となり、影響していることは否定できません。

    日本の教育は謙虚さや協調性を重視する文化があり、自己主張や個性を表現することが難しい場合があります。個性を伸ばす教育よりも、集団行動や規律を重視する傾向があるため、自己肯定感を育む機会が限定される可能性があります。

    過去の失敗経験

    過去の失敗経験がトラウマとなり、現在の行動を制限して、自己肯定感にあらわれている可能性もあります。「自分にはできない」「あのときこうすればよかった」と悩んでいると、失敗に対する恐怖がさらに強まります。大きな失敗を経験したほど、回復に時間がかかり、自己肯定感が低くなってしまう人も少なくありません。

    家庭環境

    家庭環境は自己肯定感の形成に大きな影響を与えます。親からの愛情や承認が不足していたり、厳しい躾や否定的な言葉を受けて育ったりすると、自分の感情を抑えがちです。

    たとえば、テストで95点を取ったとき「よく頑張ったね」と褒められるか、「もっとよい点数を取れたはずだ」と叱られるかで、子どもの受け取り方は大きく異なります。

    家族との会話が少なかったり、自分の存在を否定されたりするような経験を重ねると、自己肯定感を低下させる原因となっています。

    自己肯定感の低さがもたらす影響

    自己肯定感が低い状態が続くと、新しいことへの挑戦や積極性に欠けます。些細なミスや失敗であっても、過度に気にしてしまい、自己否定に陥りやすい傾向があります。結果として、さらに自己肯定感が低下し、悪循環に陥る可能性も懸念されるのです。

    職場の場合コミュニケーションが減り、報告・連絡・相談といった基本的な業務遂行が滞る可能性もあります。

    自己肯定感が高いことで得られるメリット

    自己肯定感が高いと、仕事での成功や人間関係の構築がスムーズです。困難な状況を乗り越えたり、周囲と協力できたりするため、成果を出しやすくなります。周りは意欲的に仕事に取り組んでいる従業員を見ると頼もしく感じ、協力したいと思うようになるでしょう。

    周囲からよい印象を得ると、仕事での活躍に拍車がかかります。結果的に、自信がついてさらなる成果を出せるため、よい循環が生まれます。

    自己肯定感を高める方法4選

    自己肯定感を高める具体的な方法は以下の4つです。

    1. 過去の経験から生まれた思い込みと事実を区別する
    2. 思い込みを受け入れて許す
    3. 小さな成功体験を積み重ねる
    4. 肯定的な言葉に変換する

    過去の経験から生まれた思い込みと事実を区別する

    過去は変えられませんが、過去の出来事に対する捉え方を変えることで、自己肯定感を高められます。

    過去の経験から生まれた思い込みは、家庭環境や人間関係に大きく影響されています。自分ではコントロールできなかった出来事でさえ、自責の念に駆られることで自己肯定感が低下しやすくなります。

    思い込みと事実を適切に区別できるようになれば、自己肯定感を高められるでしょう。

    思い込みを受け入れ許す

    自分の思い込みを受け入れる方法で、自己肯定感を高めることができます。思い込みは誰にでもある自然な現象です。思い込みを「仕方のないこと」として受け入れると精神的な負担が軽くなります。

    ただし、自分の思い込みに気づくのは容易ではありません。そのため、日頃から「これは思い込みかもしれない」と意識する習慣をつけることが大切です。意識的になることで、徐々に自分の思い込みを受け入れられるようになるでしょう。

    小さな成功体験を積み重ねる

    成功体験を積み重ねる方法で、自己肯定感を徐々に高めることができます。成功体験とは、困難や課題を乗り越えた経験です。いきなり達成が難しい大きな目標を設定するよりも、達成可能な小さな目標を設定し、一つずつ達成していくことが重要です。小さな成功体験を積み重ねていくことで、徐々に自己肯定感を高められるでしょう。

    肯定的な言葉に変換する

    自身の思考や発言における言葉の使い方を意識的に変えることも、自己肯定感を高める方法として有効です。否定的な言葉を肯定的な表現に言い換えることで、物事の捉え方を変える「リフレーミング」という手法を用います。批判的な言葉遣いを、向上心を促すような言い方に変えると、相手にとってより受け入れやすいメッセージになるでしょう。

    まとめ

    自己肯定感とは、自分自身をありのまま受け入れる心の状態です。高い自己肯定感を持つ人は自信に満ちた行動をとり、失敗を恐れずさまざまな挑戦に前向きになれる傾向があります。一方で、自己肯定感が低い人は、他人の評価を過度に気にし、ささいなミスでも必要以上に落ち込みやすい特徴があります。

    周囲の人から見ると、自己肯定感の低い人はネガティブな発言が多く、自信がなく、コミュニケーションが取りづらいと感じることもあるでしょう。悪循環から抜け出すには、自分の感情に意識を向けて、なぜそのような感情を抱くのかを理解し、受け入れることから始めることが重要といえます。