退職証明書テンプレートとは|基本的に記載する5項目と注意点・具体例を解説
退職証明書は、退職した事実を証明するために企業が発行する文書です。退職証明書は公的な書類ではないものの、退職者が発行を求めた場合、企業は退職証明書を発行する義務があります。
公的文書である離職票のように定められた書式はありませんが、あらかじめ自社のテンプレートを用意しておけばスムーズに発行できるでしょう。
本記事では、退職証明書のテンプレートに記載すべき項目や具体的な書き方を詳しく解説します。退職証明書のテンプレートを作成する際の注意点もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
退職証明書のテンプレートに書いておきたい5つの項目
退職証明書とは、退職の事実を証明するために企業が発行する文書です。ただし、退職と同時に必ず発行しなければならないものではありません。退職者が希望した場合や要請があった場合に発行しましょう。
退職証明書は、失業手当の申請時にハローワークに提出する離職票のような公文書ではないため、企業によって書式はさまざまです。退職証明書のテンプレートに記載すべき5つの項目を詳しくご紹介します。ただし、退職者から記載を拒まれた項目は省く必要があるので注意しましょう。
使用期間
退職者が自社に在籍していた期間がわかるように、入社年月日と退職年月日を記載します。入社後の試用期間や研修期間が使用期間に含まれないケースもあるため、企業としてのルールをあらかじめ確認しておきましょう。
記載方法は、西暦か和暦どちらの書き方でも構いません。記入する際は、転職先の雇用契約開始日と自社の退職年月日が重ならないように注意してください。
退職時の役職
退職者が最終的に所属していた部署名と役職を記載します。入社当時から退職時までに担当したすべての役職を書く必要はありません。あくまで退職時の最終的な役職を記載するのが一般的です。
退職時の賃金
退職者の最終的な月収や年収を記載します。給与を記載する方法は、会社や業界により異なります。交通費や残業代などの手当も含めて記載する方法が一般的です。しかし、退職者の希望内容により、記載方法が異なります。求められた事項のみを記入しましょう。
経験した業務内容
退職者が経験していた業務内容を記載します。営業職や事務職など具体的な職種名のみを記載する場合もあれば、どのような業務を経験していたかを詳細に記載する場合もあります。複数の業務を兼任していた場合は、担当していた業務内容をすべて記載しましょう。
退職理由
退職者がどのような理由で退職したかを記載します。選択式で簡素化されている場合がほとんどで、企業によっては詳細な理由を記載する場合もあります。
契約の満了や定年による退職は会社都合でも問題ありません。会社都合で解雇されたと書いてしまうと、次の仕事を探すときに不利になるかもしれないため、注意しましょう。
転職先に退職理由を書くよう求められている場合であっても、退職者の希望があればあいまいな表現にして問題ありません。退職者の意向を確認したうえで、記載内容を考えましょう。
退職証明書のテンプレートで避けるべき項目
労働基準法第22条第3項により、退職証明書には、労働者が請求した項目以外を記載してはならないと定められています。特に記載してはいけない項目は、労働基準法第22条第4項に次のように記載されています。
使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。
引用: 『労働基準法』e-Gov法令検索
つまり、退職証明書には以下の事項は記入してはなりません。
- 国籍
- 信条
- 社会的身分
- 労働組合運動
退職者の就業の妨げとなるような事項を記入しないよう気をつけてください。
厚生労働省が公開している退職証明書のテンプレート
退職証明書には法的に定められた書式は存在しません。使用期間や退職時の役職、退職時の賃金、経験した業務内容、そして退職理由の5つの項目は基本的に記載しましょう。
厚生労働省はWordとPDFファイルで退職証明書のテンプレートを公開しています。ただし、厚生労働省のテンプレートはとてもシンプルで、使用期間と退職理由のみを記載するものです。
退職者が賃金や退職時の役職なども記載してほしいと求める場合があります。退職者が希望する項目を自社で追加しましょう。異なるテンプレートを入手しておくことも必要です。
退職証明書の具体的な書き方の例
続いて退職証明書の具体的な記載方法についてご紹介します。どのような文言で記載すべきか悩んだ場合は、ぜひ参考にしてください。
使用期間の具体例
使用期間を記載する場合は、入社年月日と退職年月日がわかるように具体的な期間を提示してください。
2010年4月1日〜2023年3月31日 |
退職時の役職の具体例
退職時の役職は、次のように具体的な職種を記載します。
- 営業部長
- 福利厚生課長
- 給与課係長
- 採用課主任
- マーケティング部チームリーダー など
記載する際は、どの部署でどのような役職に就いていたかがわかるようにするのがポイントです。役職がない場合は、一般職と記載します。
退職時の賃金の具体例
退職時の賃金の記載方法は、企業によってさまざまです。支給額には手取り額ではなく、社会保険料や税金を控除する前の総支給額を記載し、残業代や交通費も含まれます。
- 月収35万円
- 年収480万円 など
新しい勤務先から月収か年収かをあらかじめ指定される場合もあるため、どちらの方法で記載すべきかを事前に確認しておきましょう。
経験した業務内容の具体例
退職者が経験した業務内容の記載例は、次の通りです。
- 事務職
- 営業職 など
人事部一般職、経理部係長のように役職とあわせて記載する場合もあります。退職者が勤務期間中に異動を頻繁に経験した場合は、直近3年程度の所属部署や業務名を記載するのが一般的です。
退職理由の具体例
退職理由でよく使われるものは、次の通りです。
- 自己都合退職
- 定年による退職
- 労働契約期間の満了による退職
- 移籍出向による退職
- 当社の都合・解雇(別紙事由による)
- その他
退職理由として「その他」や「解雇」が該当する場合は、自社で具体的な理由を書く欄を設けます。ただし、退職者からの希望次第では未記入でも問題ありません。
退職証明書のテンプレートにかかわる4つの注意点
退職証明書のテンプレートを作成する際の4つの注意点を解説します。請求書の作成時や送付後に、トラブルにならないためのコツを紹介します。ぜひ参考にしてください。
退職者の希望しない内容を記載してはならない
退職者から退職証明書の発行を希望された場合は、まず退職者に対して記載を求める事項を確認してください。退職者の意思に反することを記載すると、トラブルの原因になります。
再就職できなかった人の中には「退職証明書の内容が原因だ」と主張する人もいます。退職証明書を作成するときは、テンプレートを参考にしましょう。一方で、テンプレートの記載通りに書かないこともできます。必要な記載事項は事前にチェックしておきましょう。
再就職先が求める内容を網羅しているか確認する
転職先が求めている記載項目が抜けていると、再度作成を依頼される場合があります。退職証明書は、退職から2年以内に退職者からの申し出があれば、再作成しなければなりません。
時間や手間を最小限に抑えるためには、転職先が求める内容の把握が大切です。退職証明書を作成するときは、離職票に記載されている内容と相違がないかを確認しながら行いましょう。
退職証明書の用途を限定してはならない
退職証明書の用途は退職者に任されるため、作成する企業は用途を限定できません。利用用途に応じて記載項目を変更したり、作成を拒んだりすること、さらには利用用途について確認する行為も禁止されています。
一般的に、退職証明書は次のような用途で使用されます。
- 転職先から提出を求められた
- 国民健康保険・国民年金の加入手続きをしたい
なお、失業保険をもらう際は公文書である離職票が必要です。退職者が「離職票が手もとにないから」という理由で退職証明書を失業保険の手続きに使うことはできません。あくまでも退職証明書は仮の書類であり、企業は離職票を速やかに発行する必要があります。
求められたら早急に発行する
退職証明書の発行期限内に申請を受けたら、早急に発行しなければなりません。退職証明書を遅延なく交付する義務は、労働基準法第22条第1項に次のように記載されています。
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
引用: 『労働基準法』e-Gov法令検索
退職証明書のテンプレートを事前に用意しておくと便利です。退職者と話し合い、記載内容を確認しておきましょう。書くべきでないことを間違って書く可能性も減ります。スピーディーに対応するためにも、事前に退職証明書のテンプレートを用意しておきましょう。
退職証明書の発行はクラウドサービスで自動化を
退職証明書は、退職者がその会社で働いていたことや退職したことを証明する書類です。新しい仕事に応募する際、この書類が必要になることもあります。退職後2年間は交付義務があるため、退職者から発行を求められたら早急に対応しなければなりません。
今回ご紹介したテンプレートや具体的な記載方法を参考にしながら、自社オリジナルのテンプレートを作成していきましょう。
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