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退職証明書とは? 記載事項や発行手続き、注意点を解説

退職証明書とは? 記載事項や発行手続き、注意点を解説

退職証明書とは、従業員が退職したことを確実に明示する書類です。退職する(した)従業員から請求があったとき、企業は退職証明書を発行する必要があります。本記事では、退職証明書の目的や発行のタイミング、正しい書き方や記載項目、作成時の注意点などについて解説します。

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    退職証明書とは?

    退職証明書とは、該当する従業員が在籍していた事実や期間を示し、辞めたことを証明する書類です。退職する(した)従業員から求められたとき、企業は発行しなければなりません。

    退職証明書の目的

    退職証明書の目的は、退職した従業員の転職先企業が、在籍当時の働き方を知るためです。企業によっては、新しく迎え入れる従業員の経歴や実務経験などを詳しく確認したい場合があるでしょう。

    そこで退職した自社にとっては元従業員に、当時の賃金や職務内容、退職理由が書かれた退職証明書の提出が求められるのです。「当該退職者が退職したこと」を証明する書類は、つまり「当該退職者が在籍していたこと」を証明する書類ともいえます。

    退職証明書の役割

    退職証明書は、公的手続きの代替書類としての役割があります。退職証明書は、離職票などと異なり、公文書として認められた書類ではありません。しかし、国民健康保険や国民年金の加入手続きの代替書類として使用できます。

    本来、退職にともなう健康保険や年金の切り替えには「離職票」が必要です。しかし離職票が手元にない場合は、退職証明書でも手続きが進められるため、公文書でなくても一定の役割を果たしているといえるでしょう。

    退職証明書を発行するタイミング

    退職証明書を発行できる期限は、原則として退職後2年以内です。退職から2年が経過すると、退職証明書を用意する法律上の義務はなくなります。

    ただし、期限内に申請を受けた退職証明書は「企業は遅滞なくこれを交付しなければならない」と法律で定められています。退職者に退職証明書を求められたら、速やかに発行しましょう。

    退職証明書と、離職票や離職証明書の違い

    退職証明書と混同してしまいがちな書類に、離職票や離職証明書があります。それぞれの違いや役割について、詳しく解説します。

    離職票との違い

    離職票とは、退職者が失業保険をもらうための書類のことです。正式名称は「雇用保険被保険者離職票」といい、ハローワークによって発行されます。

    離職票と退職証明書のもっとも大きな違いは、失業保険の申請手続きにおける使用可否です。退職証明書は国民健康保険や国民年金の代替書類になりますが、失業保険の手続きには使用できません。ただし、退職証明書でも失業保険の仮手続きは進められます。

    離職証明書との違い

    離職証明書とは、離職票を受け取るために提出する書類のことです。企業は、退職者から離職票の請求を受けた場合、ハローワークに離職証明書を提出する必要があります。

    離職証明書は3枚の複写式で構成されています。

    1. 離職証明書(ハローワークへの提出用)
    2. 離職証明書(会社側の控え)
    3. 離職票(退職者に渡す用)

    ハローワークが発行した離職票は、まず企業に送られます。そして、ハローワークから受け取った離職票を企業が退職者に送付するという流れです。

    退職証明書を発行しなかったら?

    退職者から請求された場合、企業は速やかに退職証明書を発行しなければなりません。企業側に、退職証明書が発行できない何らかの事情があった場合でも罰則はあるのでしょうか。

    退職証明書が用意できなかった場合の罰則や責任について解説します。

    退職証明書は請求があれば必ず発行が必要

    退職者から企業へ請求があったのなら、退職証明書は必ず発行しなければなりません。いかなる理由があっても、退職証明書の発行を拒否することは認められていません。ただし企業側が積極的に退職証明書を作成する必要はないと考えてよいでしょう。

    あくまでも発行義務は、退職者からの請求によって発生するものとされています。ただし、該当の従業員が退職してから2年以上が経過している場合であれば、企業は退職証明書の発行を拒否できます。

    退職証明書を発行しない場合の罰則

    退職証明書の発行は「労働基準法第22条1項」により義務付けられています。正当な理由なく退職証明書を交付しない場合は「労働基準法第120条1項」に基づいて30万円以下の罰金が科せられます。また、理由もなく発行を遅らせた場合にも同様の罰金が科せられるため、注意しましょう。

    参考:『労働基準法』e-Gov法令検索

    退職証明書の記載項目と適切な書き方

    退職証明書の正しい書き方を記載項目ごとに解説します。

    勤務期間

    退職者の勤務していた期間(=在籍期間)を記載します。「2015年4月1日~2022年3月31日」のように、具体的な年月日を記入しましょう。なお、勤務期間に試用期間を含めるかどうかは、企業の判断に任されています。

    業務の種類

    在籍中の仕事内容を記載します。「営業職」や「事務職」など、具体的な職業を記載しましょう。

    役職

    在籍中の最終的な役職名を記載します。「営業部長」や「経理課長」など、どの部署でどのような役職に就いていたかを記載しましょう。役職がない場合は「一般職」で問題ありません。

    賃金

    退職者にどのくらいの給与が支給されていたかを記載します。賃金の記載内容は退職者の希望によっても異なりますが「在籍中の最終的な基本給や手当金額」または「前年の収入」を記載するのが一般的です。なお月給を書くか、年収を書くかは、企業の判断に任されています。

    退職事由

    退職者が仕事を辞めた理由を記載します。離職票の内容をもとに、正しい退職理由を記載しましょう。退職事由は、退職の理由に応じて以下のように記載するのがおすすめです。

    退職者の個人的な理由自己都合による退職
    労働者が定年を迎えたことによる退職定年による退職
    雇用期間の満了による退職契約期間の満了による退職
    会社側が退職を促したことによる退職当社の勧奨による退職
    解雇した場合解雇(具体的には◯◯による)

    退職事由を記載するにあたっては「自己都合」なのか「会社都合」なのかが重要なポイントです。退職証明書に記載する退職事由は、離職票の内容と合わせる必要があります。

    離職票は失業保険の手続きに欠かせない書類なので、給付日数に影響する「自己都合」か「会社都合」かが大切です。これが退職証明書の内容と合っていないと、のちにさまざまなトラブルを招くおそれがあります。

    また解雇した場合は、万が一解雇に関する紛争に備えて、理由を具体的かつ詳細に記載しましょう。ただし、従業員が解雇理由の記載を希望しない場合は、退職証明書に解雇理由を記載してはならないと定められています。

    退職証明書の発行の手続き

    退職者から退職証明書の請求を受けたら、人事労務担当者が発行手続きを行います。退職証明書は公的証明書ではないため、決まった様式はありません。記載項目についても、法定記載事項の中から退職者が希望する項目のみを記載します。

    退職証明書の作成時の注意点

    退職証明書を作成する際は、以下の3つのポイントに注意しましょう。

    記載項目は退職者の希望項目のみ

    解雇理由をはじめ、退職者が望まない項目を記載することは労働基準法に違反します。退職証明書の発行申請を受けたら、まずは退職者に希望する記載項目を確認しましょう。退職者には、はじめに法的に記載すべきとされている項目を示し、その中から希望する項目を選択してもらうとスムーズです。

    利用用途は退職者が決定

    退職証明書の利用用途は、退職者に決定する権利があります。会社側が利用用途の制限はできず、また、用途によって発行拒否もできません。たとえば、退職者が転職先へ提出するための退職証明書を求めてきた場合、転職を阻止するために退職証明書を発行しないのは違法です。

    2年以内なら何度でも再発行が可能

    退職証明書を破損または紛失してしまった場合も、2年以内なら再発行が可能です。企業は、退職者から退職証明書の再発行を請求された場合、退職後2年間は依頼に応じる必要があります。また、退職証明書の発行回数の制限はないため、退職者が希望すれば何度でも発行しなければなりません。

    退職証明書以外で退職時に確認すべきこと

    退職した元従業員に対しては、雇用契約や就業規則の影響が及ばなくなります。自社の事業や利益を守るために、必要に応じて誓約書の提出を求めましょう。ただし、退職者に誓約書の提出を義務づけることはできず、あくまで任意です。

    秘密保持義務

    秘密保持義務とは、労働者が業務上知り得た秘密を第三者に漏えいしてはならない義務のことです。この場合の「秘密」とは、以下の要件を満たすものだとされています。

    • 企業が秘密として管理・取り扱いをしている
    • 秘密としての重要性・価値がある
    • 公然のものとなっていない

    たとえば、その企業独自の技術やノウハウなどが該当します。使用者(企業)の営業上の機密情報を保持するためのものなので、秘密保持義務は一般的に肯定される傾向があります。

    競業避止義務

    競業避止義務とは、使用者の利益に著しく反する競合を差し控える義務です。退職者が業務上知り得た知見や情報を持って競合他社に転職すること、または同じ業種やサービスの企業を設立することを防止できます。

    損害賠償条項

    「秘密保持義務」や「競業避止義務」に違反した場合に請求する損害賠償についての条項です。当事者らになんらかの違反行為があれば、相手に金銭を要求できます。

    基本的には、誓約書に以下のような内容を記載します。

    第◯条(損害賠償)
    甲又は乙は、本誓約に違反して相手方に損害を与えた場合、相手方に対し、その損害を賠償する義務を負う。

    退職証明書の請求には、速やかに応じることが大切

    退職証明書は、従業員が退職したことを証明するものです。国民健康保険や国民年金の手続きにおける代替書類として使用でき、転職先の企業から提出を求められることもあります。

    退職証明書の発行は、労働基準法に定められた企業の義務です。退職者に退職証明書を請求された場合は、速やかに応じましょう。人事労務の業務負担を軽減したいなら人事労務管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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