休職期間満了後に解雇できる? 退職扱いや解雇する際の注意点を解説

「休職期間が終わる従業員がいるが、復職の目処が立たない。このまま解雇して問題ないだろうか」そんな悩みを抱えていませんか。
休職期間が満了したあと、会社が取り得る選択肢は、復職・休職の延長・退職・解雇のいずれかです。どの対応を選ぶかは就業規則に基づいて慎重に判断する必要があります。対応を誤ると、不当解雇とみなされ、法的トラブルに発展するおそれもあるため注意が必要です。
本記事では、休職期間と満了後の対応、さらに解雇前に検討したいことや不当解雇と判断されるケースを、企業側の視点で解説します。自社でどのような対応を取るべきか迷っている方は、お役立てください。
▼まずは休職制度をおさらいするには、以下の記事をご確認ください。
休職制度とは【人事向け】設計方法から復職対応まで必要手続きを解説
目次

休職期間とは?解雇との関係
休職期間とは、雇用契約を維持したまま、年次有給休暇とは別に労働義務を免除する特別な期間です。従業員が病気やケガなどで長期間働けない従業員に、会社は「休職」という措置を取ることがあります。
休職制度によって、従業員は治療や回復に専念でき、会社としても、すぐに退職や解雇といったリスクの高い判断を避けることが可能です。
▼「休職」に似た言葉として「欠勤」や「休業」があります。次に読み進める前に違いを確認するには、以下の記事をご確認ください。
主な休職の事由
休職は、休職する理由によって分類され、大きく分けると「私傷病休職」と「私傷病以外の休職」があります。
私傷病休職とは、労働災害以外の病気やケガを理由とする休職です。業務上の病気やケガで働けなくなった場合は、休職ではなく労災扱いとなるため間違えないようにしましょう。
私傷病以外の休職には、次のようなものが挙げられます。
休職の種類 | 内容 |
---|---|
自己都合休職 | 家庭や個人の事情で一定期間仕事を休む場合に認められる休職 |
事故欠勤による休職 | 逮捕や勾留など傷病以外の理由による長期休職 |
留学による休職 | 自己都合による留学をする際に認められる休職 |
公職就任による休職 | 公職に就いた場合に取得する休職 |
起訴による休職 | 刑事事件で起訴されたときに適用される休職 |
組合専従による休職 | 労働組合業務のために取得する休職 |
出向による休職 | グループ会社や提携先会社などへの出向時に、勤務先を休職扱いにすること |
どのような休職事由を認めるかは、それぞれの会社の任意で決められます。ただし、従業員によって、対応を変えることは当然ながらあってはなりません。休職制度を就業規則に明記したうえで、ルールに沿って判断していきましょう。
休職期間の上限の目安
休職期間の上限も会社ごとに異なり、一般的には3か月、長くても3年までと定められているケースが多いようです。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、「6か月超から1年まで」と定めている会社がもっとも多く、全体の75%の会社が2年以内の上限期間を定めているという結果が出ています。
正社員数が多い会社ほど、休職期間の上限が長くなる傾向にあるものの、実際には勤続年数や休職事由によって個別に判断することも少なくありません。
休職制度を運用するうえでは、「いつまで休職できるのか」「復職の見通しが立たない場合は解雇も辞さない対応をとるのか」といった基準を明確にしておくことが大切です。
参照:『メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の 両立支援に関する調査』独立行政法人労働政策研究・研修機構
休職期間満了時の4つの対応方法|解雇はできる?
では、休職期間が満了したあとも復職できない場合、会社は解雇してよいのでしょうか。一定の条件を満たせば解雇は可能です。ただし、対応を誤ると不当解雇とみなされ、法的なトラブルに発展するおそれもあるため、慎重な判断が求められます。
休職にはあらかじめ「いつまで」という期限が設けられています。期間が終わった時点で、会社は雇用を継続するかどうかを判断しなければなりません。
原則として、休職期間満了時には次の4つの選択肢があります。
対応策 | 判断のポイント | 注意 |
---|---|---|
復職を認める | 回復し、就業可能と判断される場合 | 業務内容や勤務時間の調整、リハビリ出勤の活用など段階的にサポート |
休職期間を延長する | 回復の見通しがあり、規則上延長が可能な場合 | 延長の条件・期間・給与の有無を明確にし、書面で確認を取る |
自然退職にする | 規定により自然退職とできる場合 | 満了前に退職扱いになる旨を通知。離職理由や手続きの遅れに注意 |
解雇にする | 就業規則に基づき、復職困難と判断される場合 | 解雇予告や解雇予告手当の支給が必要。不当解雇とならないよう慎重に判断 |
どの手段を選択するにしても、法的ルールを理解したうえで、従業員の権利も尊重しなければなりません。会社の就業規則に基づいた慎重な決定が求められます。とくに「解雇」を選ぶ場合は、法的な制限やリスクがあるため要注意です。それぞれの対応方法について詳しく解説していきます。
仕事ができそうな場合は復帰に向けて支援する
復職が可能と判断できる場合は、従業員の状態や希望を踏まえて、復職支援をしていきます。まず第一に、体調が回復し、無理なく業務を遂行できることが前提です。
体調が回復していても、復帰直後は大きなストレスを抱えやすいものです。いきなり元の業務に戻すのではなく、リハビリ出勤や短時間勤務、業務量の調整、部署異動を検討する必要があります。
無理なく職場に戻れるよう、復職プランを個別に設計し、段階的にサポートをしていきましょう。
休職期間を延長する
復職の見通しが立ち始めている場合は、休職期間を延長するのも一案です。延長を認める場合は、就業規則に申請方法や再休職の延長期間の上限を、あらかじめ定めておく必要があります。また、延長時に以下のような項目について、書面を取り交わしておくことをおすすめします。
- 延長する期間
- 復職の条件
- 復職できなかった場合の取り扱い
- 休職中の給与の有無
感情的な対応ではなく、あらかじめ決められたルールに沿った判断が必要です。
従業員を退職扱いにする
「休職期間満了=自然退職」とする就業規則を定めている会社もあります。規定があれば、退職扱いとする場合、法律で規定される解雇予告を通知する義務はありません。ただし、労使間トラブルを回避するためにも、退職扱いとなる旨を休職期間満了前に通知することをおすすめします。
自然退職は、原則として自己都合退職となるため、雇用保険に関する退職手続きが必要です。万が一手続きが遅れてしまうと、本人への失業手当の給付も遅くなるため注意しましょう。
▼自己都合と会社都合の判断に迷ったら、以下の記事もあわせてご確認ください。
従業員の解雇を検討する
休職期間を満了しても復職が難しい従業員には、就業規則の定めに基づいて解雇することも可能です。ただし、労働基準法にしたがって次の対応をする必要があります。
- 少なくとも30日前に解雇予告通知を実施する
- 予告が間に合わない場合は、解雇予告手当(30日に満たない日数分の平均賃金)を支払う
たとえば、解雇日の10日前に解雇予告をする場合は、20日分の解雇予告手当を支払わなければなりません。
解雇の判断は慎重に進めましょう。手続きに不備があると「不当解雇」と判断されるケースもあるため注意が必要です。
▼退職手続き全般に不安があるなら、以下の資料をご活用ください。
休職満了後の対応が不当解雇と判断されるケース
休職期間が満了したからといって、安易に解雇することはできません。以下のようなケースでは、不当解雇と判断される可能性があります。
- 休職した原因が業務にある場合
- 医師が復職可能と判断している場合
休職した原因が業務にある場合
業務中の病気やケガなど、原因が業務にある場合、休職中と復帰後30日間の解雇が禁止されています。次のようなケースは「業務に原因がある」とみなされると考えられるでしょう。
- 長時間労働による心身の不調
- パワハラ・セクハラによる精神疾患
- 退職強要による精神的ダメージ
業務と傷病に何かしらの因果関係がある場合、休職期間満了理由として解雇や退職扱いとすると、労働者側から無効を主張されるリスクがあります。
医師が復職可能と判断している場合
医師が復職可能と診断しているにもかかわらず、会社が復職を認めずに休職期間を満了させてしまうと、不当解雇とみなされるおそれがあります。
ただし、主治医の診断に疑問を持つことがないとは限りません。業務内容や職場環境を踏まえて気になることがあれば、会社指定の医療機関を受診させるか、産業医の指示を仰ぎましょう。
判断を急がず、復職判断を第三者の意見を踏まえて客観的に検討することが大切です。
▼退職手続き全般に不安があるなら、以下の資料をご活用ください。
休職満了後の解雇前に会社が検討すべきこと
休職期間が満了しても復職が難しい場合、解雇を検討することは可能です。しかし、いきなり解雇に踏み切るのではなく、段階を踏んだ対応がポイントです。以下のような支援策を検討したうえで、最終的に判断しましょう。
- リハビリ出勤制度を活用させる
- 復職後の就業について配慮する
- 産業医に面談を依頼する
リハビリ出勤制度を活用させる
リハビリ出勤制度とは、職場復帰を希望する従業員に対し、少しずつ勤務に慣れてもらう制度です。法的に義務づけられている制度ではないため、導入は会社の任意で決定できます。
リハビリ出勤制度の具体的な内容としては、次のような取り組みが挙げられます。
- 復職支援プログラムを実施する
- 通勤訓練として、自宅と職場を往復してもらう
- 午前中のみ勤務してもらう
復職対象者の希望を聞いて、柔軟に対応することが重要です。職場全体にリハビリ出勤制度について周知し、理解を得ておくと本人も安心できるでしょう。
復職後の就業について配慮する
復職を希望する従業員に対しては、本格的に復帰したあとも、働き方への配慮が必要です。以下のような調整を検討しましょう。
- 軽作業や定型作業への配置転換、責任の軽減
- 労働時間の短縮
- 残業や深夜労働の禁止
- 通勤ラッシュの時間帯を避けた出社時間の設定
復職者にいきなり従来と同じ業務に戻すのは、とてもリスクが高いことです。業務の質・量を軽減して、少しずつ負荷を上げていくようにしましょう。
産業医に面談を依頼する
復職可否の判断が難しい場合は、産業医の意見を取り入れることも重要です。
主治医は病状に詳しくても、業務内容や職場環境までは十分に把握しているとはいえません。ある程度、職場の実態を理解している産業医の判断をあわせて確認することで、より客観的な判断ができます。
休職期間が満了した従業員を解雇する際の注意点
休職期間が満了し、最終的に解雇の判断をする場合は、以下の点に注意が必要です。
- 就業規則の規定に沿って、退職または解雇通知をする
- 雇用保険の手続きを迅速に進める
- 退職金の支給額・支払日を明確にする
就業規則や法手続きに沿った対応を徹底することで、トラブルを防げます。一つずつ確認していきましょう。
就業規則の規定に沿って、退職または解雇通知をする
休職期間満了後に解雇扱いとする場合は、まずは就業規則に解雇の要件や手続きが明記されているかどうかを確認します。
解雇は労働基準法により、休職期間満了の30日前までに解雇予告の通知が必要です。通知をしていない場合は、解雇予告手当を支給しなければなりません。
自然退職と解雇では取り扱いが異なるため、就業規則に条件を記載するなら、両者の違いをよく整理したうえで規定事項を考える必要があります。
雇用保険の手続きを迅速に進める
休職期間満了時の退職後、従業員がスムーズに失業給付を受け取れるように、雇用保険の離職手続きは早めに取り掛かりましょう。
とくに、離職理由の記載ミスや手続きの遅れは、トラブルの原因になります。 「自然退職で自己都合退職」か「会社都合退職」か、実態に即した離職理由を適切に記載することが重要です。
▼雇用保険の喪失手続きを詳しく知るには、以下の記事もあわせてご確認ください。
▼離職票の発行手続きを詳しく知るには、以下の記事もあわせてご確認ください。
退職金の支給額・支払日を明確にする
就業規則で退職金制度を設けている場合は、休職期間満了後による退職でも従業員に退職金を支払わなければなりません。
退職金の額は勤続年数に応じて計算され、休職期間を年数に含めるか否かは、あらかじめ就業規則で定めておく必要があります。
退職金の支払期日が定まっていない場合は、労働者から請求があった日から7日以内と労働基準法で定められています。対応が遅れないよう、社内の処理体制も整えておきましょう。
退職金は高額になることもあり、就業規則で30日以内などの支払期日を定めておくことをおすすめします。
▼解雇時の退職金について知るには、以下の記事もご確認ください。
まとめ|休職期間満了後の解雇は慎重に
従業員が休職期間満了後に復職できない場合、会社が選択できる対応は、復職・休職期間の延長・退職扱い・解雇のいずれかです。どの方法を選ぶかは、就業規則に沿って判断する必要があります。
判断を誤れば不当解雇とされ、法的トラブルに発展する可能性も否定できません。
トラブル回避のためにも就業規則を整備し、休職制度や満了後の取り扱いをルール化しておきましょう。
休職満了時の解雇について今一度、規定を見直してみてはいかがでしょうか。解雇の判断に迷ったときは、外部の専門家に相談し、慎重な判断を心がけましょう。
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