雇用保険適用事業所設置届とは? 書き方や必要書類、手順を解説
雇用保険では、雇用保険の加入要件を満たす労働者を1人でも雇用していると、雇用保険適用事業所設置届を提出し、手続きをしなければなりません。
雇用保険適用事業所設置届を提出する際は、書き方や手順などのルールを確認しておく必要があります。また、手続きにあたっては、雇用保険への理解を深めておくことが大切です。
本記事では、雇用保険適用事業所設置届の概要や書き方、手続き手順などを解説します。雇用保険についても解説するので、企業の経営層や人事労務担当者はもちろん、これから事業を始めようと考えている方なども参考にしてください。
雇用保険適用事業所設置届とは
雇用保険適用事業所設置届とは、新しく雇用保険の適用を受ける事業所が提出する書類です。初めて雇用保険の対象となる労働者を雇用したときに提出する必要があります。
適用事業所とは、被保険者となる労働者を雇い入れ、雇用保険の適用を受けることになった事業所を指します。
初めて雇用保険被保険者を雇用する際は、労働者だけでなく、事業所も雇用保険適用事業所として手続きをする必要があり、設置届を提出しなければなりません。
事業所として注意したいのは、雇用保険適用事業所設置届の提出前に、労働保険における「保険関係成立届」を提出しなければならない点です。「保険関係成立届」を提出していないと、適用事業所設置届は受理されないので気をつけましょう。
雇用保険の適用事業所とは
雇用保険の適用事業所とは「雇用保険の適用を受ける事業所」です。雇用保険の加入要件を満たす労働者を雇用する事業所が該当します。
適用事業所には「強制適用事業所」と「任意適用事業所」の2種類があります。雇用保険における適用事業所と、健康保険や厚生年金保険の適用事業所では条件は異なります。
雇用保険における、強制適用事業所と任意適用事業所の違いは、以下の通りです。
強制適用事業所 | ダ従業員を雇用する任意適用事業所以外の事業所 |
---|---|
任意適用事業所 | 個人経営であり、常時雇用する従業員数が5人未満の農林水産業の事業所 |
アルバイトやパートも対象
雇用形態にかかわらず、要件を満たす人は雇用保険に加入しなければなりません。事業所で初めて雇用する人がアルバイトやパートタイム労働者だとしても、雇用保険の加入要件を満たすのであれば、雇用保険適用事業所設置届を提出する必要があります。
雇用保険とは
雇用保険とは、労働者への給付支援や能力開発、雇用維持を目的にした保険制度です。
雇用保険の被保険者は以下の通り、4種類に区分されています。
- 一般被保険者
- 短期雇用特例被保険者
- 高年齢被保険者
- 日雇労働被保険者
雇用保険は、労働者や企業に対してさまざまな支援やサポートを行っています。労働者に対する給付支援(失業等給付)もその一例であり、主な種類は以下の通りです。
概要 | |
---|---|
求職者給付 | 労働者が失業状態の際、生活安定と円滑な求職活動を行うための給付 |
就職促進給付 | 失業者が再就職するための援助や促進を目的とした給付 |
教育訓練給付 | 労働者の主体的な能力開発を支援し、 雇用安定と再就職促進を目的とした給付 |
雇用継続給付 | 労働者の職業生活を継続するための援助や促進を目的とした給付 |
雇用保険と社会保険の関係
雇用保険と混同しやすい言葉に「社会保険」という言葉があります。
社会保険は5つの公的な保険の総称です。社会保険は、要件を満たす労働者の加入が義務づけられている強制的な保険制度です。病気やけがなどに備えて、生活を保障する役割があります。
社会保険を構成する保険は、以下の5種類です。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労働者災害補償保険(労災保険)
雇用保険や労災保険も社会保険の一つです。ただし、狭義の社会保険は、健康保険・厚生年金保険・介護保険の3種類を指します。
雇用保険被保険者とは
雇用保険の加入要件を満たす労働者は、雇用される企業を通して加入しなければなりません。
雇用保険の加入要件は、以下の通りです。
- 所定労働時間が1週間に20時間以上
- 雇用見込みが31日以上
雇用保険は、区分によって細かい要件が設定されている場合もあります。
雇用保険適用事業所設置届の書き方
雇用保険適用事業所設置届の書き方を紹介します。項目によっては、事前に準備しておくべき内容もあるため、あらかじめ準備しておきましょう。
内容 | |
---|---|
法人番号 | 13桁の法人番号を記入 ※番号は国税庁からの「法人番号指定通知書」にて確認 |
事業所の名称 | 事業所の名称を記入 |
事業所の住所 | 事業所の住所を記入 |
事業所の電話番号 | 事業所の電話番号を記入 |
設置年月日 | 雇用保険被保険者となる労働者を雇用した日を記入 |
労働保険番号 | 14桁の労働保険番号を記入 ※労働関係成立届の控えや労災保険加入証明書にて確認 |
事業主の住所 | 事業主の住所を記入 |
事業主の名称 | 事業主の名称を記入 |
事業主の氏名 | 事業主の氏名を記入(役職も) |
事業の概要 | 事業内容を具体的に記入 |
事業の開始年月日 | 事業を開始した年月日(設立年月日)を記入 |
常時使用労働者数 | 1日に働く平均従業員数(見込み)を記入 |
雇用保険被保険者数 | 雇用保険に加入する従業員の人数を記入 一般:雇用保険被保険者における、 一般・高年齢・短期雇用特例被保険者の合計者数 日雇い:雇用保険被保険者における日雇労働被保険者数 |
賃金支払関係 | 賃金締め切り日と支払い日を記入 |
雇用保険担当課名 | 雇用保険に関する担当部署を記入 |
社会保険加入状況 | 該当するものを丸で囲む |
事業所への略図 | 最寄り駅や最寄りバス停から事業所までの略図を記入 |
参照:『雇用保険適用事業所設置届』ハローワークインターネットサービス
雇用保険適用事業所設置届のフォーマットは、ハローワークのホームページ上でダウンロードできます。書類の印刷には細かい規定があるので、詳細はWebサイトで確認しましょう。
参照:『帳票印刷のポイント』ハローワークインターネットサービス
雇用保険適用事業所設置届の提出方法と流れ
雇用保険適用事業所設置届の記入をしたら、必要な書類を提出します。
雇用保険適用事業所設置届を提出する前に、労働保険関係の書類を提出しなければなりません。流れや手順は以下の通りです。
- 労働基準監督署に必要書類を提出
- 雇用保険適用事業所設置届をハローワークに提出
- 受理もしくは不備内容の修正
- 雇用保険適用事業所設置届の控えを保管
各ステップの詳細を解説します。
1.労働基準監督署に必要書類を提出
まず初めに、労働基準監督署に以下の書類を提出します。
- 保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書
2つの書類を提出して発行される「労働保険番号」を、雇用保険適用事業所設置届に記載します。
2.雇用保険適用事業所設置届をハローワークに提出
雇用保険適用事業所設置届を管轄のハローワークに提出します。書類の提出は、ハローワーク窓口への持参や電子申請でも行えます。
提出期限は、雇用保険被保険者となる従業員を雇用した日の翌日から10日以内です。余裕を持って提出しましょう。
3.受理もしくは不備内容の修正
雇用保険適用事業所設置届が受理されると、手続き完了です。書類の内容に不備や記入漏れなどがあった場合は、速やかに修正し、再度提出します。
4.雇用保険適用事業所設置届の控えを保管
雇用保険適用事業所設置届が受理されたのち「雇用保険適用事業所届控(適用事業所台帳)」が郵送で届きます。控えを受け取ったら、事業所で大切に保管しておきましょう。万が一控えを紛失してしまった場合は、ハローワークでの再発行も可能です。
再発行には、ハローワークで用意する「雇用保険関係各種届書等再作成・再交付申請書」に、必要事項を記入して提出する必要があります。
この控えは、雇用保険の手続きなどで必要になることがあるため、紛失などがわかったら早めに再発行を手配しましょう。
雇用保険適用事業所設置届提出時の必要書類
雇用保険適用事業所届を提出する際は、ほかにも必要な書類があります。以下で紹介しますので、漏れのないように準備しましょう。
内容 | |
---|---|
雇用保険適用事業所設置届 | 必要事項を記入しておく |
雇用保険被保険者資格取得届 | 従業員が雇用保険に加入するために必要な書類 |
労働保険関係成立届の事業所控 | 労働基準監督署受理済のもの |
事業情報や社会保険の 加入状況を 証明できる書類 | 法人の場合、以下のいずれか証明できるもの ・登記事項証明書 ・事業許可証 ・工事契約書 ・不動産契約書 ・源泉徴収簿 ・ほかの社会保険の適用関係書類など |
労働者の雇用実態や 賃金支払い状況などを 証明できる書類 | 以下のいずれか証明できるもの ・労働者名簿 ・賃金台帳(雇い入れから現在まで) ・出勤簿またはタイムカード(雇い入れから現在まで) ・雇用契約書(有期雇用労働者の場合) |
参照:『雇用保険適用事業所を設置する場合の手続きについて』厚生労働省
まとめ
雇用保険適用事業所設置届とは、初めて雇用保険の被保険者となる労働者を雇用する際に提出する書類で、雇用保険の適用事業所として登録するための重要な手続きです。
雇用保険は、労働者の生活安定のために支援給付や能力開発を行ったり、企業の雇用維持のサポートをしたりする重要な役割を持った社会保険の一つです。
企業は、雇用保険を始めとした社会保険の手続きを不備なく進め、従業員が安心して働ける環境を整えましょう。