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パートの離職票の書き方は? 正社員との違いや基礎日数の算出方法、注意点を解説

パートの離職票の書き方は? 正社員との違いや基礎日数の算出方法、注意点を解説

自社で雇用するパートタイム労働者が退職するときの離職票について「正社員とは書き方が違うの?」「特別に気をつけるべき点はある?」という疑問を持っている人もいるかもしれません。パートタイムで働く従業員も正社員も、離職票の記入方法は基本的に同じです。しかし気をつけなければならない注意点があります。

本記事では、パートタイム労働者が退職するときの離職票の書き方を詳しく解説します。基礎日数の算出方法もご紹介するので、ぜひお役立てください。

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    正社員とパートの離職票の書き方の違い

    離職票の書き方は、正社員とパートでそれほど大きな違いはありません。たとえば、正社員やパートという雇用形態に関係なく、賃金支払基礎日数の最低ラインは同様です。

    しかし、正社員とパートでは賃金支払基礎日数の数え方が少し異なります。正社員は完全月給制など給与形態によっては歴日数でも認められるのに対し、パートタイム労働者は実際の出勤日数から算出することが多いでしょう。

    そもそも基礎日数は、雇用形態そのものではなく、雇用形態に紐づいた給与形態に応じて算出の考え方が異なります。正社員かパートかではなく、その雇用形態がどんな給与形態であるかを踏まえて、違いを理解するようにしましょう。

    パートの離職票を書く際に準備する書類

    パートタイム労働者の離職票を作成する際は、以下の3点を準備しましょう。

    雇用保険被保険者離職証明書離職票の申請手続きに必要
    退職者の賃金台帳退職日までに支払った賃金を確認するために必要
    タイムカードなど出勤日数を数えるために必要

    雇用保険被保険者離職証明書は、管轄のハローワークで受け取るのが一般的です。なお、紙の用紙ではなく、総務省の電子申請総合窓口「e-Gov」で電子手続きを行うこともできます。

    パートの離職票の記入項目について

    パートについての離職票の記入項目は、以下の14箇所です。

    1.被保険者番号

    退職するパートタイムで働く従業員の被保険者証を確認しながら、被保険者番号を記入します。

    雇用保険の被保険者番号は、基本的には「4桁-6桁-1桁」の計11桁です。ただし、退職者が1981年7月6日より前に雇用保険に加入している退職者は「6桁-10桁」の計16桁が記載されている可能性があります。その場合は最後の1桁を空欄として、下段の10桁を記入しましょう。

    2.事業所番号

    雇用保険制度では、事業所ごとに11桁の番号が付与されています。自社の事業所番号は、以下のような書類で確認可能です。

    • 適用事業所台帳(雇用保険適用事業所設置届事業主控え)
    • 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)

    3.離職者氏名

    離職者の氏名をフリガナ付きで記入します。

    4.離職年月日

    離職年月日の欄には「雇用保険被保険者資格喪失届」と同じ年月日を記入します。

    雇用保険被保険者資格喪失届とは
    退職や役員への昇格などにより、雇用保険の資格を喪失したことを届け出る書類。
    離職証明書とともにハローワークへ提出する。

    5.事業所名、所在地、電話番号

    自社の事業所名と所在地、電話番号、代表者の情報を記入します。現在は事業主の押印欄は廃止されているため、代表者氏名を記入すれば問題ありません。

    6.離職者の住所または居所

    離職者の住所や居所は、退職時点のものを記入します。なお、居所とは住民票のある住所とは異なり、主に一時的にそこにいる場合に用いられるものです。

    居所を記入する場合の例・単身赴任先にとどまっている場合
    ・親族の家などに一時に身を寄せている場合
    ・病気やけがなどで、病院に長期入院している場合 など

    失業手当の手続きは「離職者が居住する地域の管轄のハローワーク」で行う必要があります。離職後の引っ越しが決まっており、本人からの希望がある場合は、転居先の住所を記入しましょう。

    7.離職理由

    離職理由は、大きく6種類に分かれています。

    1. 事業所の倒産などによるもの
    2. 定年によるもの
    3. 労働契約期間満了などによるもの
    4. 事業主からの働きかけによるもの
    5. 労働者の判断によるもの
    6. そのほか(上記のいずれにも該当しない場合)

    さらにそれぞれ小分類が設けられており、全20パターンの中から該当する離職理由を一つ選択します。そして「具体的事情記入欄」に個別のケースに対する具体的な内容を記載しましょう。

    8.被保険者期間算定対象期間

    離職者が雇用保険の資格を有していた期間を算定するための項目です。通常は、一般被保険者と高年齢被保険者はA欄、短期雇用特例被保険者はB欄に記入します。

    一般被保険者・雇用保険の加入資格を持つ従業員
    高年齢被保険者・65歳以上の雇用保険加入者
    短期雇用特例被保険者季節的に雇用される者のうち次のいずれにも該当しない従業員
    ・4か月以内の期間を定めて雇用される者
    ・1週間の所定労働時間が30時間未満である者

    参照:『第4章 被保険者について』厚生労働省

    9.被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数

    被保険者期間算定対象期間を考慮して、賃金支払いの対象期間を記入します。なお、対象期間内に疾病や出産などの理由から、継続して30日以上賃金を渡していない期間がある場合は、該当月を「被保険者期間算定対象期間」の欄に記載する必要はありません。

    10.賃金支払対象期間

    賃金支払対象期間のはじめの行には、退職日直前の給与締め日の翌日から退職した日までの期間を書き入れます。たとえば、締め日が25日、退職した日が10月31日の場合は「10月26日~離職日」です。そして、それ以下の行に1か月ずつ、賃金締め日までの期間を記入していきます。

    11.賃金支払対象期間における基礎日数

    賃金支払いの基礎となる日数のことです。完全月給制の場合は期間中のすべての日数、日給月給制であれば基礎となる労働日数から欠勤日数を控除した日数、時給制や日給制の場合は実際の勤務日数を記入しましょう。

    パートは時給制で働く人が多いため、基本的には出勤日数を基礎日数とします。この際、有給休暇の取得日、休業手当の対象日を含めて記入する点に注意してください。

    12.賃金額

    月給制や週給制など一定期間ごとに決まった賃金を支払っている場合は、Aと書かれている欄に期間中の賃金をすべて記入します。ただし、ほとんどのパートは時給制で働いているのが一般的です。

    このように労働日数や時間によって賃金が変動する場合は、Bと書かれている欄に実際の賃金額を記入します。なお、通常の賃金のほかに月極の手当がある場合はA欄に記入し、A欄・B欄を合算した金額を「計」の欄に記入しましょう。

    13.備考

    未払い賃金がある場合は、備考欄に参考額とともに記入します。

    14.賃金に関する特記事項

    通常の賃金とは別に「3か月以内の期間ごとに支払われる賃金」がある場合は、特記事項として賃金の名称や支払い日、支給額を記入します。

    基礎日数とは?

    基礎日数は、何らかの条件に当てはまる日数を数えるときに用いられます。たとえば、離職票に記入する「賃金支払基礎日数」は、賃金や報酬の支払い対象となる日数のことです。

    離職者が雇用保険の失業手当を受け取るためには「賃金支払基礎日数が11日以上または賃金支払いの基礎となった労働時間が80時間以上の月が、2年間のうち12か月以上ある」という条件を満たす必要があります。

    つまり、賃金支払基礎日数は、失業手当の受給資格を確認するための項目でもあるのです。

    離職票へのパートの基礎日数の書き方

    離職票に記載する「被保険者期間算定対象期間」と「賃金支払対象期間」について、それぞれの基礎日数の書き方を詳しくご紹介します。

    被保険者期間算定対象期間の基礎日数の書き方

    被保険者期間算定対象期間は、退職日から1か月ごとにさかのぼって書き入れます。退職者の出勤表やタイムカードを用意し、それぞれの期間内の出勤日数を数えましょう。このとき、歴日数ではなく実際の出勤日を記入する点に注意してください。

    雇用保険の受給資格を確認する大切な項目なので、以下の記入例を参考に、正確に記入しましょう。

    ⑧ 被保険者期間算定対象期間
    ⑧の期間における
    賃金支払基礎日数
    A 一般被保険者等B 短期雇用特例被保険者
    離職日の翌日4月1日
    3月1日~離職日16日
    2月1日~2月28日14日
    1月1日~1月31日16日
    12月1日~12月31日15日
    11月1日~11月30日15日
    10月1日~10月31日16日

    賃金支払対象期間の基礎日数の書き方

    賃金支払対象期間は、「賃金の締め日の翌日から次の締め日まで」の1か月間の出勤日数を書き入れます。被保険者期間算定対象期間と同様に、ひと月単位で書き入れましょう。

    期間ごとの出勤日数は、賃金台帳で確認可能です。なお、賃金が月末締めで、パートが月末に退職した場合は、被保険者期間算定対象期間と賃金支払対象期間がイコールになります。

    月末締めの場合の記入例をご紹介します。

    ⑩賃金支払対象期間
    ⑩の基礎日数
    ⑫賃金額⑬備考
    AB
    3月1日~離職日16日153,600
    2月1日~2月28日14日134,400
    1月1日~1月31日16日115,200
    12月1日~12月31日15日144,000
    11月1日~11月30日15日144,000
    10月1日~10月31日16日153,600

    変則的な事項がある場合の基礎日数の書き方

    有給休暇や欠勤など、変則的な事項がある場合の基礎日数の記入方法を解説します。

    有給休暇の基礎日数の書き方

    有給休暇は「賃金が支払われる休暇日」のことなので、その日は出勤日と同じとみなされます。そのため、基礎日数は有給休暇を含んだ日数を記入しましょう。たとえば、出勤日が20日で有給休暇を1日使った月は、賃金支払対象期間の基礎日数は「21日」です。

    会社都合の休業の基礎日数の書き方

    経営難や業務量減少など、会社都合による休業日は基礎日数に含まれます。たとえば、会社都合で2週間休業させられていた場合、通常の出勤日に加えて2週間(14日分)の基礎日数を加算します。

    なお、会社都合で従業員が休業を余儀なくされた場合、企業は従業員に対して休業手当を支払う義務があります。

    看護休暇や介護休暇の基礎日数の書き方

    看護休暇や介護休暇は「賃金が発生するかどうか」で扱いが変わります。有給休暇の場合は基礎日数に含み、無給休暇の場合は基礎日数から除いて算定しましょう。

    欠勤の基礎日数の書き方

    看護休暇や介護休暇と同様、基礎日数に含むか否かは「賃金が発生するかどうか」が鍵です。そのため、賃金の発生しない欠勤日は基礎日数に含まれません。ただし、完全月給制の場合は歴日数がそのまま基礎日数になるため、欠勤があっても基礎日数は据え置きです。

    労災の基礎日数の書き方

    業務中に被った怪我などで休業している場合も、基礎日数には含まれません。労災による休業では休業補償給付や休業給付を受け取れますが、これはあくまで労災保険から支給されたものなので「賃金が発生している」とはみなされないのです。

    パートの離職票を書く際の注意点

    退職にまつわる手続きには、なにかとトラブルがつきものです。パートの離職票を作成する際は、以下の2点に注意しましょう。

    会社と退職者で離職理由を一致させる

    離職票の項目で、ひときわ重要なのが「離職理由」です。離職理由は失業手当の支給額や期間などに影響するため、会社側と離職者側で認識が一致していないとのちのちトラブルを招きかねません。

    実際に、離職票のトラブルで最も多いのは離職理由に関するものとされています。両者の間で認識の齟齬がないよう、離職者の同意を得たうえで離職理由を記入しましょう。

    離職理由が会社都合は場合助成金が支給されない可能性も

    従業員の離職理由は、「自己都合」と「会社都合」に大別できます。実は、離職理由は退職者だけでなく企業側にとっても重要な項目です。というのも、数年以内に会社都合で退職した従業員がいる場合、雇用関係助成金を受給できない可能性があるのです。

    雇用関係助成金の例
    ・キャリアアップ助成金
    ・トライアル雇用助成金
    ・中途採用等支援助成金
    ・人材確保等支援助成金
    ・人材開発等支援助成金

    上記のような助成金は、雇用の安定や労働者の待遇改善を促すための制度です。会社による雇い止めや上司からのハラスメントなど会社都合による退職は制度の趣旨に反しているため、支給対象から除外されてしまう可能性があります。

    パートの離職票の正しい書き方を理解しましょう

    パートの離職票の書き方は、正社員の場合とおおむね同じです。しかし、被保険者期間算定対象期間や賃金支払対象期間など、正社員とは算定方法が異なる項目もあります。

    離職票の記載ミスは大きなトラブルに発展しかねないため、正しい書き方をおさえておきましょう。離職票の作成をはじめとする人事労務の負担を軽減するなら「One人事」がおすすめです。

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