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離職票の賃金支払基礎日数とは|計算方法と離職票の留意点についても解説

離職票の賃金支払基礎日数とは|計算方法と離職票の留意点についても解説

離職票を作成する際、基礎日数の計算に迷う方も多いのではないでしょうか。離職票の賃金支払基礎日数には必要な日数があるため、あらかじめ把握しておくことで、スムーズに業務が進められるでしょう。そこで本記事では、離職票の賃金支払基礎日数について詳しく解説します。混同しがちな離職証明書と退職証明書との違いや基礎日数の計算方法、離職票を扱ううえでの注意点についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

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    離職票と離職証明書と退職証明書の違い

    離職票と離職証明書、退職証明書は似ている言葉ですが、用途や提出先が異なります。それぞれの書類について、関連性と違いを解説します。

    離職票とは

    離職票の正式名称は「雇用保険被保険者離職票」です。失業中の退職者が、失業手当の受給申請をするときに提出しなければなりません。

    離職票の発行元は所在地を管轄するハローワークで、企業が受け取ったあと、退職者に渡します。再就職先や退職後の起業が決まっている従業員には、失業手当は給付されないため、離職票は不要です。

    離職証明書とは

    離職証明書とは、離職票の発行を申請するにあたって、企業がハローワークに提出する書類です。正式名称は「雇用保険被保険者離職証明書」といいます。特徴は3枚つづりの複写式になっている点です。

    離職票の3枚複写式の内容
    1.離職証明書(会社控え)
    2.離職証明書(ハローワーク提出用)
    3.離職票(退職者の控え)

    企業は、離職証明書と「資格喪失届(雇用保険被保険者資格喪失届)」をセットにして、提出しなければなりません。

    退職証明書とは

    退職証明書とは、退職者が確かに退職したことを明示する書類です。ハローワークが発行する離職票や、離職票の発行を申請するために用意する離職証明書とは性質が異なります。

    退職証明書は、厳密には公的な文書として認められていないのが特徴です。退職者が希望した場合に限って、企業から退職者に向けて発行されます。退職証明書は、すべての退職者に対して発行する義務はありません。

    離職票に必要な賃金支払基礎日数とは

    離職票に記載する賃金支払基礎日数とは、賃金や報酬の支払い対象になる労働日数をあらわします。失業保険の受給資格の有無を判断し、社会保険料の標準報酬月額を決めたりするときに必要です。労働日数は、雇用形態ごとに決められた給与体系によって数え方が異なります。

    主な給与体系(賃金体系)
    月給制1か月単位で賃金を固定
    日給制1日単位で賃金を固定
    時間給制労働時間×時給で賃金を設定
    日給月給制1日単位で賃金を固定し、遅刻・欠勤があった場合はその分を月額から減額

    正しい算出方法を理解しておきましょう。

    賃金支払基礎日数は最低11日必要

    正社員やパートなど、雇用形態は関係なく、離職の日以前2年間に「被保険者期間」が通算して12か月以上あることが、雇用保険の基本手当を受給できる要件の一つです。

    被保険者期間とは、賃金支払基礎日数をもとにして数えられます。具体的には、離職日から1か月ごとに区切った期間に、賃金支払いの基礎となる日数が11日以上の月を算定対象月として計算します。離職証明書に記載する際は、基礎日数が11日に満たない月については備考欄に「〇〇時間」と記入しましょう。

    ただし2020年に、日数だけでなく、労働時間による基準も補完的に設定するように見直されています。賃金支払いの基礎となる労働時間数が、80時間以上ある月も算定の対象とされることになりました。そのため日数だけでなく、勤務時間の確認も必要です。

    参考:『失業等給付の受給資格を得るために必要な「被保険者期間」の算定方法が変わります』 厚生労働省

    離職票にある賃金支払基礎日数と基礎日数の違い

    離職票および離職証明書には、賃金支払基礎日数を書く9欄、基礎日数を書く11欄があります。9欄は、8欄の「被保険者期間算定対象期間」から算出して「賃金支払基礎日数」を記入し、11欄は、10欄の「賃金支払対象期間」から算出して「基礎日数」を記入します。

    この場合、どちらの日数も有給休暇や半日出勤も1日として計上するのがポイントです。賃金支払基礎日数と基礎日数の違いはわかりづらいため、離職証明書の注意書きを参考にしながら記入するとよいでしょう。

    参考:『離職証明書記載例』厚生労働省

    離職票に必要な賃金支払基礎日数の計算方法

    続いて、賃金支払基礎日数の計算方法を賃金形態ごとに整理して解説します。

    完全月給制

    完全月給制とは、賃金が月単位で固定されている制度です。

    給与の計算単位が1か月であるため、たとえ従業員が休んだり、遅刻や早退をしたりしても減額することはありません。完全月給制において、賃金支払基礎日数は「月の暦日数」をそのままカウントします。従業員が休んだ日も含めて、暦通り各月の日数を賃金支払基礎日数と見なすのです。

    たとえば、4月16日から5月15日までの賃金支払基礎日数は30日、5月15日から6月30日まで賃金支払基礎日数は31日と計算できます。このように日曜日や祝日など、実際には働いていない日もすべて含めた日数を含めるのが、完全月給制における賃金支払基礎日数の考え方です。

    日給月給制

    日給月給制とは、賃金が月単位で固定されているものの、欠勤や遅刻・早退した日数分を減額する賃金形態です。

    給与の計算単位が1日である点が、完全月給制との大きな違いといえるでしょう。日給月給制における賃金支払基礎日数の計算方法は「実労働日数」です。就業規則や賃金規程などであらかじめ自社で定めている日数から、従業員が休んだ日数を差し引くことで、賃金支払基礎日数を算出します。

    たとえば、あらかじめ自社で定めている労働日数が20日の場合、対象月の1か月間に2日欠勤すると、賃金支払基礎日数は18日とカウントします。ただし、日給月給制の数え方は企業によってさまざまなため、まずは自社の就業規則を確認することをおすすめします。

    時給制や日給制

    時給制は、賃金が時間単位で決められており、従業員が稼働した時間数を掛け合わせて支払う賃金形態です。一方の日給制は、賃金が日単位で決められており、従業員が出勤した日数を掛け合わせて給与を算出します。

    時給制は「実労働時間」、日給制は「実労働日数」を賃金支払基礎日数として計算します。パートやアルバイトなどの雇用形態に多く見られ、従業員が働いた時間や日数分を賃金支払基礎日数としてカウントすると理解するとよいでしょう。

    なお、有給休暇も賃金が支払われる日として数に入れます。有給休暇も賃金支払基礎日数に加算されることも覚えておきましょう。

    離職票の賃金支払基礎日数を計算するときの留意点

    賃金支払基礎日数を算出する際は、休日の考え方や保険の取り扱いについて注意点があります。賃金支払基礎日数を計算するときに間違えやすかったり、理解しにくかったりする6つの留意点をご紹介します。

    土日祝日

    土日祝日は、賃金支払基礎日数のカウント方法に注意が必要です。1日を基準とする賃金形態と、月や週単位を基準とする賃金形態で、扱い方が異なってくるためです。

    日給制のように賃金を日単位で計算する賃金形態では、土日祝日に関係なく、従業員が働いた日数分を基礎日数に含めます。土日祝日であっても、従業員が出勤していれば換算し、休んでいれば換算しません。

    一方、月単位で賃金が固定されている完全月給制の従業員は、月の暦日数がそのまま賃金支払基礎日数として見なされるため、土日祝日に働いたか否かは影響しないのです。

    特別休暇

    有給休暇や慶弔休暇などの休暇の扱いにも注意しましょう。

    賃金が支払われる休暇は、労働した日として見なされるため、賃金支払基礎日数に含まれます。賃金支払いの対象日や期間内であれば、従業員が実際に働いたか否かは影響せず、賃金支払基礎日数として換算されます。

    休職期間や産休期間

    休職や産休の扱いについては、悩んでしまう方もいるかもしれません。

    賃金支払基礎日数は、給与を支払っているか否かが基準の一つとなっています。業務外で負った病気や事故による休職や産休は、賃金が支払われていないため、賃金基礎日数には含まれません。

    ただし、休業手当は労働基準法第26条により賃金の一種と規定されています。つまり企業の都合によって休業を余儀なくされている従業員の休業期間は、賃金支払基礎日数に計上されます。

    欠勤控除の適用

    欠勤控除が適用される場合についても注意が必要です。

    欠勤控除があると、暦日数を賃金支払いの基礎としている賃金形態であっても、計算方法が変わるためです。具体的には、就業規則などに基づいてあらかじめ決められている所定労働日数から、欠勤日数を引いて日数を算出することになります。

    基本的に暦日数で換算する完全月給制や週休制も、所定労働日数が基準となることを覚えておくとよいでしょう。

    所定労働日数に満たない

    所定労働日数に満たない従業員は、基礎日数をどのように計算すればよいのでしょうか。

    半日の欠勤や遅刻・早退が重なり、所定労働日数や時間を満たしていない場合、1時間でも勤務すると「1日」と計上されます。ただし、欠勤や育児休業、介護休業などで無給になったときは、支払基礎日数として換算されません。

    雇用保険の取り扱い

    雇用保険の扱いについても、確認しておきましょう。賃金支払基礎日数は、雇用保険の基本手当の支給要件に該当します。雇用保険の基本手当は、原則として離職日からさかのぼり2年間で、算定支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上必要です。

    また、2020年からは、離職日から1か月ごとに区切った期間に、賃金支払いの基礎となった労働時間が80時間以上あれば計上されるように、変更されています。賃金支払い日数が11日以上なくても被保険者期間として通算されるケースもあるため、担当者として認識しておくことが重要です。

    まとめ

    「賃金支払基礎日数」とは、失業保険の受給資格の確認する際などに必要となる、賃金や報酬の支払い対象労働日数のことです。

    雇用形態ごとに決められた給与体系によって、日数の数え方が異なるため、担当者はそれぞれにおける算出方法を把握しておく必要があります。離職日から1か月ごとに区切った期間のうち、賃金支払いの基礎となる日数が11日以上の月を算定対象月として計算し、雇用保険の基本手当の受給には原則として12か月以上が必要です。

    また、賃金支払基礎日数と基礎日数の違いについても理解しておくと、離職証明書にスムーズに記入できるでしょう。土日祝日や特別休暇などの扱いは、雇用形態ごとに結ばれている給与体系によって異なるため、注意点もしっかり押さえておきたいところです。

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