離職票への休職期間の書き方は? 基礎日数の算出方法や具体的な書き方も解説
離職票の記載内容は、雇用保険の被保険者資格や失業手当の受給資格を確認するための重要な情報です。そのため、企業の担当者は離職票を正確に作成する必要があります。しかし、離職票の内容を記入する際、休職期間の取り扱いについて悩むことも多いでしょう。
そこで本記事では、退職者に休職期間がある場合の離職票の書き方を解説します。作成上の注意点もご紹介するので、ぜひお役立てください。
退職者に休職期間がある場合の離職票の書き方
退職者に休職期間がある場合において、離職票の書き方のポイントは以下の2つです。
- 1か月すべて欠勤している月は省略できる
- 休職経歴を備考欄に記入する
それぞれの内容を詳しく解説していきましょう。
1か月すべて欠勤している月は省略可
雇用保険の被保険者期間算定対象期間や賃金支払対象期間は、休職期間も含めて算定されます。ただし、その月の労働時間がゼロ、つまり1か月まるまる休職していた月は省略が認められています。
具体的には、30日以上賃金の支払いがなかった月については、離職票の被保険者期間算定対象期間や賃金支払対象期間、賃金額欄への記入は不要です。
休職経歴を備考欄に記載する
被保険者期間算定対象期間から賃金額までの記載が不要な代わりに、備考欄へ記入が必要です。
記入例 |
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令和3年11月1日から令和3年12月15日まで45日間、疾病のため賃金支払いなし |
このとき、期間・日数・理由の3点がいずれも欠けることのないよう注意しましょう。雇用保険の受給資格を確認するうえで対象期間や日数は重要な情報となるため、当該欄への記入が不要な代わりに備考欄に詳細を記すイメージです。
賃金支払基礎日数とは?
賃金支払基礎日数は、労働に対して支払われる報酬を計算するための基礎となる日数のことです。賃金支払基礎日数は、給与形態によって数え方が異なります。多様な働き方を導入している企業では、従業員の給与形態に応じた適切な対応を心がけましょう。
賃金支払方法別の賃金支払基礎日数の算出方法
続いて給与形態ごとの賃金支払基礎日数の算出方法について掘り下げていきます。完全月給制や日給月給制、時給制・日給制の考え方を解説するので、ぜひ参考にしてください。
完全月給制の数え方
完全月給制とは、1か月単位で固定の賃金を設定する給与形態です。月ごとに給与が決まっているため、欠勤や遅刻、早退をしたときにも満額が支払われます。完全月給制で働く従業員については、賃金支払基礎日数を暦日数で計算します。
歴日数とは、カレンダー上の日数のことです。従業員が休んだ日に関係なく、カレンダーそのままの日数を計上します。たとえば、6月は30日、7月は31日と記入します。
日給月給制の数え方
1か月の給与額があらかじめ決められている給与形態を日給月給制といいます。完全月給制との違いは、「欠勤や遅刻、早退をしたときは、固定の月給からその分が減額される」という点です。
一般的に、日給月給制で働く従業員の賃金支払基礎日数は、以下のように算定されます。
日給月給制の賃金支払基礎日数=就業規則などに定められた日数-欠勤日数 |
なお企業によっては、所定労働日数の月平均に応じて賃金支払基礎日数を計算することもあります。
時給制・日給制の数え方
時給制や日給制は、1時間または1日あたりの給与単価があらかじめ決められている給与形態です。一般的に、パートやアルバイトの従業員に対しては、時給制や日給制が採用されます。時給制や日給制で働く従業員の賃金支払基礎日数は、実際に出勤した日数をカウントしましょう。
ケース別の賃金支払基礎日数計算の算出方法
賃金支払基礎日数を計算するうえで、土日祝日や有給休暇などはどのように取り扱うのでしょうか。それぞれの考え方を詳しく解説します。
土日祝日の数え方
完全月給制の賃金支払基礎日数は歴日数で算定するため、土日祝日に働いたかどうか関係なく、その月の日数を計上します。また、日給月給制で働く従業員についても、土日祝日は考慮せず、会社の規定日数をベースに考えましょう。
一方、日給制や時給制では「実際に出勤した日数」が重要なので、平日・土日祝日関係なく、実際の出勤日をカウントします。
有給休暇や特別休暇の数え方
基本的に、年次有給休暇や特別休暇は賃金支払基礎日数として計上されます。賃金支払基礎日数を数えるポイントは、労働の有無ではなく「賃金支払い対象の日であるかどうか」です。有給休暇や給与の支払われる特別休暇は休んでいる間も賃金が支払われるため、基礎日数に含めて算定します。
欠勤控除が適用される場合の数え方
欠勤控除とは、従業員が労働しなかった日数分または時間分の賃金を給与から差し引くことです。欠勤控除では、歴日数ではなく、所定労働日数から欠勤日数をマイナスした日数を算定します。
欠勤控除が適用されるのは、さまざまな理由から有給休暇を取得できないときです。たとえば「インフルエンザで1週間欠勤したが、有給が残っていなかった」という場合は欠勤控除の対象です。また、子どもの急な発熱でお迎えが必要な場合など、突発的な早退も欠勤扱いとなる可能性があります。
休職・産休期間の数え方
労災以外の病気や怪我、事故などによって休職を余儀なくされた場合は、賃金の支払いが発生しません。また、会社の就業規則により産休は無給と定められている場合も同様です。
賃金支払基礎日数は「賃金を支払うかどうか」が重要なので、休職・産休期間は含めず算定します。なお、産休の前後に有給休暇を取得した場合、有給休暇分は基礎日数としてカウントされます。
所定労働日数(時間)の数え方
基礎日数をカウントする際「遅刻や早退でほとんど労働していない日はどう扱えばよい?」という疑問を持つ方は多いでしょう。遅刻や早退によって労働時間が所定労働日数(時間)に満たない場合であっても、1時間でも労働した事実があれば、算定上は給与支払基礎日数に含まれます。
注意したいのが、労働時間が所定労働時間の半分でも0.5日分とはならない点です。仮に出勤後1時間で体調不良により早退した場合でも「+1日」という扱いです。
途中入社した従業員の数え方
一般的に、途中入社した従業員の初月給与は日割りで計算されます。給与の日割り計算に関して法的な決まりはないため、会社の就業規則にしたがって計算しましょう。
なお、給与計算の締め日によっては、たとえ年度始まりの4月1日に入社した場合でも、初月給与が満額支給されない可能性があります。
パートやアルバイトの数え方
時給制や日給制で働くパート、アルバイトの場合は、「実際に出勤した日」をベースに算出します。ただし、パートやアルバイトの標準報酬月額を算出する際は注意が必要です。
標準報酬月額とは |
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社会保険料の計算を容易にするため、従業員のひと月あたりの報酬を一定範囲ごとに区分したもの |
通常、標準報酬月額を求める際は、4月から6月までの3か月間において、賃金支払基礎日数が17日以上ある月の平均額を計算します。しかし、アルバイトやパートの標準報酬月額を計算する際、4月から6月の3か月間の賃金支払基礎日数がいずれも17日未満だった場合は、以下のように扱われます。
4月から6月の間に賃金支払基礎日数が 15日以上17日未満の月がある場合 | その月の報酬額の平均を計算する |
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当てはまる月がない場合 | 従前の報酬月額で計算する |
離職票への具体的な書き方
個別のケースごとに「被保険者期間算定対象期間」と「賃金支払基礎日数」を整理しましょう。
被保険者期間対象期間は離職票の「⑧ 被保険者期間算定対象期間」に、賃金支払基礎日数は「⑨ ⑧における賃金支払基礎日数」の欄にそれぞれ記入します。
休職期間満了における退職の注意点
病気や怪我、育児や介護などによる休職期間を終えても出勤が困難な場合、そのまま従業員が退職するケースもあるでしょう。休職期間満了後の退職には、さまざまなトラブルがつきものです。
トラブルを未然に防ぐためにも、以下の5点に注意しましょう。
- 不当解雇のトラブルを避ける
- 退職金の支払期限や退職理由を把握する
- 休職期間が勤続年数に含まれるか確認する
- 退職理由のズレをなくす
- 退職や解雇の通知を適切に行う
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
不当解雇のトラブルを避ける
休職期間満了後の退職勧奨や解雇は、不当解雇と判断される可能性があります。不当解雇のトラブルを避けるためには、休職期間満了後の退職や解雇について就業規則に明記しておくことが大切です。
就業規則に記載さえあれば、休職期間満了後に企業側から退職を促しても、多くの場合は「適法」と判断されます。休職期間満了後の退職や解雇が適法であるか否かのポイントは「当該従業員が復職が可能な状況か、適切に判断がなされたか」です。
一方で、休職期間の長さは適法性の判断材料にはなりません。そのため、長期休職後も復職が困難な従業員に対して「これだけ休職が長引いているのだから」という理由で退職勧奨や解雇をするのは、トラブルのもとと考えましょう。
退職金の支払期限や退職理由を把握する
休職期間満了による退職に際し、退職金についての規定を就業規則に設ける場合は、その支払い時期を定める義務があります。
(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
引用:『労働基準法第89条』e-Gov法令検索
なお、退職金の支払時期についての規定がない場合は、労働基準法第23条により、従業員からの請求後7日以内に支払いを済ませる必要があります。
休職期間が勤続年数に含まれるか確認する
ほとんどの会社では、退職金を計算する際に勤続年数を考慮します。つまり、退職金の支払いにあたっては、退職する従業員の勤続年数を正確に把握することが必要です。そこで問題となるのが「休職期間は勤続年数に含まれるのか」です。
退職金制度は企業が任意で設置するものなので、休職期間の扱いについて法的な決まりはありません。休職期間を勤続年数に含めるかどうかは、自社の就業規則や退職金規定から個別に判断する必要があります。なお、特に記載がない場合は、休職期間も含めて退職金額を計算する方が無難です。
退職理由のズレをなくす
離職票に記載する「退職理由」は、雇用保険の失業手当の受給申請をするうえで重要な項目です。退職理由が自己都合なのか、会社都合なのかによって、失業手当の支給日数や最大支給額などに大きな差が生まれます。
休職期間満了による退職または解雇の場合、自己都合として扱うのか、会社都合として扱うのか、会社の退職金規定や就業規則を入念に確認する必要があります。
退職金規定や就業規則に記載がなく、休職の理由がハラスメントや過重労働など会社側の過失でなければ、基本的には「自己都合」として扱うとよいでしょう。
退職や解雇の通知を適切に行う
休職期間満了後も復職できない場合、就業規則に定めがあれば退職勧奨または解雇が可能です。しかし、退職ではなく休職を選択しているということは、従業員側は「できれば退職はしたくないが、休職せざるを得ない状況」である場合がほとんどです。
健康不安や家庭の事情など、センシティブな問題をはらんでいることも多いため、退職や解雇を通知する方法やタイミングには十分気を配ってください。
退職扱いか解雇扱いのどちらになるかは、会社の就業規則によって異なります。それぞれの就業規則の記載例をご紹介します。
退職扱いの場合 |
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休職期間満了までに復職できない者は、退職扱いとする。 |
就業規則に上記のように記載されている場合は、休職期間の満了をもって当該従業員は退職となります。
解雇扱いの場合 |
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休職期間満了までに復職できない者は、解雇する。 |
就業規則に上記のように記載されている場合は、解雇の30日以上前に解雇予告通知を出す必要があります。なお、30日以上前に解雇予告通知を出せなかった場合は、30日に満たない分の解雇予告手当を支給しなければなりません。
ケース別の要点をおさえて、休職期間の基礎日数を正しくカウントしましょう
離職票に記載する「賃金支払対象期間」や「被保険者期間算定対象期間」は、休職期間も含めて算定されます。また「賃金支払基礎日数」は、有給休暇や特別休暇、欠勤控除などケース別の要点をおさえることが重要です。
休職期間満了による解雇や退職ではトラブルが起こりやすいため、やり方やタイミングに十分配慮して通知を行いましょう。従業員の退職や解雇における書類作成や通知など、人事労務の負担を軽減するなら「One人事」がおすすめです。
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