One人事
最終更新日:

【2024年版】人事労務領域の法改正と理解すべきポイント

2024年に予定されている人事労務領域の法改正には、さまざまな変更点があります。しかし、まだ詳しい内容を理解できていない人も少なくないでしょう。

2024年の法改正では「時間外労働」や「労働条件明示」など、企業と労働者双方に大きくかかわる内容が含まれています。

そこで本記事では、2024年から2025年にかけて予定されている人事労務領域の法改正について、領域ごとにわかりやすく解説します。経営層や人事労務担当者は、最新の法改正や変更点の理解を深めるために、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

【2024年版】人事労務領域の法改正と理解すべきポイント
目次アイコン 目次

    2024年主要な法改正一覧

    2024年に予定されている主要な法改正について、一覧でご紹介します。全体像の把握にお役立てください。

    法律改正内容時期
    労働基準法施行規則労働条件として明示する事項の追加2024年4月1日
    労働基準法施行規則裁量労働制の導入や継続手続きの見直し2024年4月1日
    労働基準法時間外労働の上限規制適用猶予事業も上限規制が適用2024年4月1日
    健康保険・厚生年金保険法社会保険の適用拡大2024年10月1日
    健康保険法マイナンバーカードと健康保険証を一体化2024年12月8日
    障害者雇用促進法等障がい者法定雇用率の引き上げ2024年4月1日
    労働安全性規則テールゲートリフターの教育を必須化2024年2月1日
    フリーランス保護法フリーランスと業者との取り引きにおける適正化、就業環境整備2024年秋ごろ

    2023年における人事労務領域の法改正

    2023年にも人事労務領域において複数の法改正がありました。2023年の法改正とそれにともなう変更点を簡単におさらいしましょう。

    法律と改正内容
    労働基準法月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に引き上げ
    ※大企業に続き中小企業でも割増賃金率が適用
    労働基準法施行規則給与のデジタル払い解禁
    ※労働者の同意と就業規則の追加、労働基準監督署への届け出が必要
    育児・介護休業法取得状況の公表義務化を義務化
    ※常時雇用する従業員数が1,000人を超える企業に年1回の公表を義務化

    【労働基準法施行規則】労働条件明示事項の追加

    労働基準法施行規則では、労働契約を締結する際に、一定の労働条件の明示を定めています。2024年4月の改正により、すべての労働者の労働契約締結時と更新時に、就業の場所と従事すべき業務の変更範囲の明示が必要となりました。

    雇用直後の就業場所や業務内容だけでなく、将来起こりうる配置転換について、就業場所や業務範囲などを明確にし、労働者が将来的に予測を立てやすくすることが目的です。

    有期契約労働者については、契約締結時と契約更新時において、更新上限の有無と内容の明示が必要となりました。さらに、労使間の認識相違によるトラブルを防止するため、最初に締結した契約以降に更新上限を新設や短縮する場合は、理由をあらかじめ説明しなければなりません。

    また、無期転換申込権が発生する更新ごとに、無期雇用契約への転換転換の申し込みができることの明示が義務化され、転換後は労働条件の明示も必要です。

    参照:「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」厚生労働省

    【労働基準法施行規則】裁量労働制に関する見直し

    労働基準法施行規則の改正では、裁量労働制に関する見直しも行われます。

    本改正以降、専門業務型裁量労働制の導入や継続の際には、労働者本人の同意を得る必要があります。同意を得られない場合にも、不利益な取り扱いをしない旨を労使協定に定めなければなりません。

    同意撤回の場合の手続きと、同意とその撤回に関する記録を保存することも労使協定や労使委員会の決議に定める必要があるため注意しましょう。

    また、専門業務型裁量労働制の対象業務として、銀行や証券会社などのM&Aアドバイザー業務が追加されることになりました。

    企画業務型裁量労働制の場合、労使委員会の運営規定に、以下の内容が追加されます。

    • 労使委員会に賃金・評価制度の説明
    • 労使委員会は制度実施状況の把握と運用改善
    • 労使委員会は6か月以内ごとに1回開催
    • 定期報告の頻度変更

    さらに決議には、以下の内容が追加されます。

    • 本人の同意取得と同意撤回の手続きの定め
    • 労使委員会に賃金・評価制度を説明する旨

    裁量労働制を導入・適用するまでに労働基準監督署に協定届や決議届の届け出を行うことが必要となりました(※継続導入する事業場では2024年3月末までに行う)。

    本改正は2024年4月1日以降、裁量労働制を導入・継続するすべての事業場が対象となったため、厚生労働省の情報を確認しておきましょう。

    参照:「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」厚生労働省

    【労働基準法】時間外労働の上限規制適用猶予期間の終了

    労働基準法では、時間外労働の上限規制が定められています。しかし、業務の特殊性などから一部の業務については上限規制の適用が5年間猶予されていました。

    この猶予期間が2024年3月31日で終了したため、対象とされていた一部の業務においても時間外労働の上限規制が適用されています。対象とされていた一部の事業は、建設事業や自動車運転業務、医師などです。

    ただし、猶予後の取り扱いについては詳細条件などが異なるため、以下を参考にしながら厚生労働省などの公的機関の情報を確認しましょう。

    業務と適用後の詳細
    建設事業災害復旧や復興の事業の除き、すべて適用
    ※災害復旧などの事業では、時間外労働と休日労働の合計は「月100時間未満」「2~6か月平均80時間以内」の上限は適用されない
    自動車運転業務原則すべて適用される
    ※特別条項付き36協定を締結する場合も年間の時間外労働上限は年960時間
    ※時間外労働と休日労働の合計は「月100時間未満」「2~6か月平均80時間以内」、時間外労働が月45時間を超えられるのは年6か月までとする規制は適用されない
    医師診療に従事する勤務医は年960時間を上限(A水準)
    ※研修や技能修得、地域医療確保など理由に応じて都道府県知事から指定を受けることで、上限を年1,860時間とすることが可能

    参照:「2024年4月、医師の時間外・休日労働上限規制がスタートします。」医師の働き方改革

    また、鹿児島県や沖縄県における砂糖製造業においても上限規制の適用が猶予されていましたが、2024年4月より上限規制がすべて適用されました。

    参照:「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」厚生労働省

    【健康保険法・厚生年金法】社会保険の適用拡大

    2024年10月からは、社会保険の適用が拡大します。2016年より段階的にパートタイマーやアルバイトを社会保険の加入対象としてきましたが、今回の拡大により適用される事業所の範囲がさらに広がります。

    具体的には、厚生年金保険の対象となる従業員数が51人以上の企業において、以下の条件を満たしたパートタイマーやアルバイトです。

    • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
    • 所定内賃金が月額8.8万円以上(基本給や諸手当が対象)
    • 2か月を超えて雇用する見込みがある
    • 学生ではない

    社会保険適用拡大の対象企業は、該当のパートタイマーやアルバイトに社会保険の被保険者になることを知らせ、説明を行いましょう。

    本改正によって、企業の保険料負担が増加し、対象の従業員には新たに保険料負担が発生します。そのため、社会保険適用によって起こり得る影響などを説明したうえで、必要であれば雇用契約の内容の見直しが必要です。

    参照:「従業員数100人以下の事業主のみなさま」厚生労働省

    【健康保険法】マイナンバーカードと健康保険証の一体化

    2023年6月に改正マイナンバーカード法が可決されました。

    それにともない、健康保険法の改正では、2024年の秋ごろから紙やカード形式の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として使用することが必須とされます。本改正が実施される前に発行された保険証は、有効期限がくるまでは従来通り使用できます。

    また、マイナンバーカードがない場合にも医療を受けられるようにする「資格確認書(有効期限は5年以内で保険者が設定)」の交付も予定されています。

    参照:「マイナンバーカードと健康保険証の一体化について」厚生労働省

    【障害者雇用促進法等】障害者の法定雇用率引き上げ

    民間企業における障害者法定雇用率が、2024年4月より現行の2.3%から2.5%に、さらに2026年4月には2.7%に、段階的に引き上げられます。

    これにより、2024年4月以降においては従業員数40人以上の企業、2026年7月以降は従業員数37.5人以上の企業が、1人以上の障害者を雇用する必要が生じるでしょう。

    障害者を雇用する場合は以下の届け出や取り組みを行う必要があるため、あらかじめ理解しておかなければなりません。

    • 毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告
    • 障害者の雇用促進と継続のため「障害者雇用推進者」を選任(努力義務)
    • 障害者を解雇しようとする場合、その旨をハローワークに届け出

    また、特定の業種において障害者雇用が難しい場合は「除外率制度」が設けられていますが、この制度も2025年4月に改定され、除外率が一律10ポイント低下します。

    参照:「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」厚生労働省

    【労働安全性規則】テールゲートリフターの教育を義務化

    労働安全衛生規則などの一部改正により、2024年2月以降はテールゲートリフターを使用する作業について、特別教育が義務化されます。

    特別教育の対象は、荷を積み下ろす作業を必要とする貨物自動車に設置されたテールゲートリフターの操作業務で、学科4時間と実技2時間を要します。

    今回、貨物自動車での荷の積み卸し作業における、事故や災害の発生リスクを防止するために法改正がされました。特別教育を行わなかった事業者などに対しては、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金など、罰則規定も設けられています。

    参照:「労働安全衛生規則等の一部改正のポイント」厚生労働省
    参照:「労働安全衛生法第119条、120条」

    【フリーランス保護法】フリーランスの保護

    2024年秋ごろに施行が予定されているのが新設されたフリーランス保護法であり、正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。

    フリーランス保護法では、以下の2つを目的としています。

    • フリーランスと発注業者における取り引きの適正化
    • フリーランスにおける就業環境の整備

    企業には以下のような一定の義務が生じることとなりました。

    義務内容と詳細
    書面などによる取引条件の明示書面などで取引条件を明示する
    報酬支払い期日の設定と支払い発注商品を受け取ってから60日以内の報酬支払い期日を設定し、期限までに支払うこと
    禁止事項法律に定める禁止行為をしないこと
    (納品物を受け取らない、発注時に決定した報酬額を減額など)
    募集情報の的確表示フリーランス募集に関する情報を掲載する際に虚偽などを行わないこと
    育児介護などとの両立に対する配慮フリーランスの申し出に応じて必要な配慮をすること
    ハラスメント対策にかかる体制整備フリーランスに対するハラスメント行為に関する体制整備などを講じること
    中途解除などの事前予告継続的業務委託の中途解除や更新しない場合は、原則30日前までに予告すること

    参照:『フリーランスの取引に関する新しい法律ができました』厚生労働省

    法改正による2025年の主な変更点

    【2024年版】人事労務領域の法改正と理解すべきポイント

    2025年には、高年齢者の雇用に関する法改正による変更が実施される予定です。高年齢者を雇用する企業ではさまざまな影響が予想され、取り組みも必要になるため、できるだけ早い段階から対応を検討しておきましょう。

    高年齢雇用継続給付金の縮小

    まず、雇用保険法の改正によって予定されている高年齢雇用継続給付金が縮小されます。

    具体的には、令和7年度から新たに60歳となる労働者への給付について、給付率を現行の15%から10%に縮小する内容です。そのため、60歳から65歳未満の雇用保険被保険者の社員における賃金は減ることになります。

    ただし、企業は賃金が減っても長く働き続けることのできる環境を整備するなど、賃金だけでなく雇用環境を見直し、整備しなければなりません。

    参照:「高年齢雇用継続給付の見直し」厚生労働省

    雇用確保義務の経過措置の終了(雇用確保義務化)

    高年齢雇用安定法によって雇用確保義務の経過措置が2025年3月末で終了し、以降65歳までは希望する従業員を定年後も全員雇用する義務が生じます。

    参照:「高年齢者雇用安定法改正の概要」厚生労働省

    まとめ

    2024年は、法改正により人事労務領域においてさまざまな変更が行われます。本記事では、以下の法改正と変更についてご紹介しました。

    • 労働条件における明示事項の追加
    • 裁量労働制の導入や継続手続きの見直し
    • 時間外労働の上限規制適用猶予期間が終了
    • 社会保険の適用拡大
    • マイナンバーカードと健康保険証を一体化
    • 障がい者法定雇用率の引き上げ
    • テールゲートリフターの教育を必須化
    • フリーランスの保護

    企業や労働者に直接的にかかわる内容が多いため、早い段階から法改正の内容や詳細を理解し、準備や対応に取り組みましょう。