源泉控除対象配偶者とは? 年収要件や申告ポイントもわかりやすく解説

源泉控除対象配偶者の適用には、年収など一定の条件があります。たとえば、最近よく耳にする「年収150万円の壁」という基準が一つのポイントです。源泉控除対象配偶者の判定基準を理解することで、適切な申告が可能となり、余計な税負担を避けられます。
本記事では源泉控除対象配偶者とは何かについて基本的な内容と、いわゆる「〜の壁」とされる配偶者の年収要件について解説します。


源泉控除対象配偶者とは?
源泉控除対象配偶者とは、納税者の配偶者で、以下の基本条件を満たす人です。
- 納税者の合計所得が900万円(給与収入のみで年収1,095万円)以下
- 納税者と生計を一にしている
- 配偶者本人の合計所得金額が95万円以下
- 青色事業専従者として給与の支払いを受けていない人、または白色事業専従者ではない
以上の条件を満たすと、源泉控除対象配偶者に該当します。
源泉控除対象配偶者の条件のなかで、とくに注意したいのが、令和2年(2020年)に改正された「配偶者本人の所得金額95万円以下」というものです。
源泉控除対象配偶者になることで、配偶者控除や配偶者特別控除を受けられ、所得税が節税できます。

源泉控除対象配偶者に該当するケースと該当しないケース
源泉控除対象配偶者に該当するか否かは、さまざまなパターンがあります。それぞれ主な例を挙げて解説していきます。
源泉控除対象配偶者に該当するケース
源泉控除対象配偶者に該当するための条件は以下の3つです。
- 納税者の所得金額が給与収入のみで年収1,050万円
- 配偶者が青色申告の適用を受ける個人事業主で、所得金額が145万円(青色申告特別控除適用後、90万円)
- 配偶者と納税者が同居して生計を一にしている
源泉控除対象配偶者に該当するためには、該当する3条件のすべてを満たさなければなりません。
配偶者の所得金額は145万円ですが、青色申告の適用を受ける個人事業主として青色申告特別控除を適用すれば、所得は90万円になります。
仮に納税者か配偶者のどちらかが条件を満たしていても、どちらか一方が条件を満たしていなければ、控除の適用は受けられないと覚えておきましょう。
源泉控除対象配偶者に該当しないケース
源泉控除対象配偶者にならない人の主な例を3つ取り上げます。
- 納税者が給与収入のみで年収1,100万円
- 配偶者が青色申告の適用を受ける個人事業主で所得金額が200万円(青色申告特別控除適用後、145万円)
- 配偶者と納税者が同居して生計を一にしていない
納税者の給与収入が、基本条件である「1,095万円」を超えていて、配偶者の所得も基本条件の「95万円」を超えているため、源泉控除対象配偶者に該当しません。
控除対象配偶者や同一生計配偶者との違い
源泉控除対象配偶者と混同しやすい言葉に、控除対象配偶者や同一生計配偶者という言葉があります。それぞれの意味や違いを整理しましょう。
控除対象配偶者
控除対象配偶者とは、同一生計配偶者のうち、納税者の所得金額が1,000万円以下の配偶者を指します。具体的な適用要件は以下のとおりです。
- その年の年末時点で納税者と生計を一にしている
- 納税者の所得が1,000万円(給与収入で1,195万円)以下である
- 配偶者の年間合計所得金額が48万円(給与収入だと103万円)以下である
- 青色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていない又は白色申告者の事業専従者でない
控除金額は、納税者本人と配偶者の年齢によって異なります。
さらに、配偶者が障がい者である場合は、配偶者控除のほかに障害者控除などを受けられます。
配偶者の年齢は、当年の年末時点において、一般の控除対象配偶者が70歳未満、老人控除対象配偶者が70歳以上の方を指します。
参照:『【確定申告書等作成コーナー】-配偶者控除とは』国税庁
同一生計配偶者
同一生計配偶者は、納税者と同一生計で生活していることを基本としています。源泉控除配偶者との違いは、納税者本人の所得金額は関係がないことです。
同一生計配偶者の具体的な適用要件は以下のとおりです。
- 当年の年末時点で納税者と生計を一にしている
- 配偶者の年間合計所得金額が48 万円(給与収入だと103万円)以下である
- 青色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
同一生計配偶者の場合、住民税の非課税限度額が高くなり、市区町村民税の均等割が軽減される場合があります。
さらに、配偶者が障がい者である場合は、配偶者控除のほかに障害者控除などを受けられます。

源泉控除対象配偶者が受けられる控除のメリット
源泉控除対象配偶者になると、配偶者控除や配偶者特別控除を受けられます。控除を受けられると、所得税を減税できるため、従業員にとって重要な制度といえます。それぞれの控除のメリットを詳しく確認していきましょう。
配偶者控除
配偶者控除とは、納税者に一定の条件を満たす配偶者がいる場合に受けられる所得控除です。配偶者控除では、以下の金額を控除できます。
納税者の所得金額 | 控除額 (一般の控除対象配偶者) | 控除額 (老人控除対象配偶者) |
---|---|---|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超~950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超~1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
配偶者特別控除
配偶者特別控除とは、納税者の配偶者に48万円を超える所得がある場合に適用できる所得控除を指します。
配偶者控除では、48万円を超える所得があると控除適用外となってしまうため、一定の条件を定め、所得が基礎控除を超えても控除を受けられる制度です。
配偶者特別控除における控除金額は以下のとおりです。
配偶者の所得金額 | 納税者の所得金額900万円以下 | 納税者の所得金額950万円超950万円以下 | 納税者の所得金額950万円超1,000万円以下 |
---|---|---|---|
48万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
130万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
源泉控除対象配偶者に適用されるためのデメリット
源泉控除対象配偶者になるためには、納税者と配偶者それぞれが所得条件を満たす必要があります。
合計所得金額条件 | |
---|---|
納税者 | 900万円(給与収入のみで年収1,095万円)以下 |
配偶者 | 95万円以下 |
控除を受けるために、働く時間を制限したり、所得を調整したりする人もいるでしょう。
たとえば、「もっと働きたいのに、収入が増えるとかえって損をしてしまうから働けない」と感じるパート従業員もいます。一方で事業主は「もっと働いてほしい」という思いがあっても、従業員が一定の収入を超えないように抑えるため、思うように働いてもらえないというジレンマが生まれています。
源泉控除対象配偶者に関係する年収の壁
源泉徴収対象配偶者の条件を満たすために、とくに注意したいのが配偶者の年収です。控除や社会保険料に影響するため、「年収の壁」と呼ばれ、近年ニュースでもよく取り上げられています。年収の壁の種類と影響を紹介します。
103万の壁
配偶者の年収が103万円を超えると、所得税の課税対象となるため、「年収103万の壁」と呼ばれています。
配偶者に収入があっても、基礎控除48万円、給与所得控除55万円(合計103万円)を受けられます。103万円以内の収入であれば、課税所得が0円になるため、所得税の課税対象となりません。しかし、103万円を超える収入があると、所得税が発生してしまいます。
106万と130万の壁
会社員の配偶者であっても、一定以上の収入がある場合、社会保険に加入します。社会保険に入ると、毎月の保険料を負担しなければなりません。収入があっても実際の手取り額が減ってしまうという問題があるため、「106万の壁」や「130万の壁」と呼ばれています。
年収130万円を超えると、すべての人が社会保険上の扶養から外れ、みずから社会保険に加入しなければなりません。
2016年10月からは年収106万円を超え、一定の条件を満たす場合には社会保険への加入が義務づけられました。
参照:『パート・アルバイトで働く「130万円の壁」でお困りの皆さまへ』厚生労働省
150万の壁
配偶者の年収が150万円を超えると、配偶者特別控除額の満額適用がされないため、「年収150万の壁」と呼ばれています。
配偶者特別控除を満額(38万円)で受けるためには、配偶者の所得上限金額95万円、給与所得控除55万円(合計150万円)でなければなりません。150万円を超えてしまうと、控除額が満額ではなくなり、38万円未満になります。
ただし、配偶者特別控除額は、配偶者だけでなく納税者の所得金額によっても影響します。
201万円の壁
配偶者特別控除には控除そのものを受けられるかどうかが変わる「年収201万の壁」もあります。配偶者控除を受けられる配偶者の所得金額上限133万円、給与所得控除額68万円(合計201万円※)を指しています。
配偶者の所得が増えると、配偶者控除額が少なくなったり、受けられなくなったりすることを理解しておきましょう。
※厳密には、201万6千円の壁です。
源泉控除対象配偶者の申告ポイントと書類の書き方
源泉控除対象配偶者について年末調整で申告する際は、『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』に、必要事項を記入して申告します。
必要事項 |
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源泉控除対象配偶者の氏名(フリガナ)個人番号生年月日所得の見積額住所 |
申告書の書き方を詳しく知るには以下の記事もご確認ください。
また『給与所得者の配偶者控除等申告書』の提出も必要です。
必要事項 |
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給与の支払者の名称所在地氏名住所配偶者の氏名 |
『給与所得者の配偶者控除等申告書』は、配偶者控除や配偶者特別控除を受けるために必要な書類です。控除を受ける場合は必ず提出しましょう。
申告書の書き方を詳しく知るには以下の記事もご確認ください。
参照:『《記載例》令和6年分扶養控除等申告書』国税庁
参照:『≪記載例≫令和6年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書兼所得金額調整控除申告書』国税庁
まとめ
源泉控除対象配偶者とは、所得税の軽減につながる控除制度の対象者のことです。配偶者がいる納税者にとっては家計の負担を軽減する助けとなります。
源泉控除対象配偶者は、年収要件や適用の基準が細かく設定されており、従業員本人だけでなく担当者も正確な理解が必要です。従業員が申告に必要な情報を漏れなく提出して控除が受けられるようサポートするため、年末調整にかかわる用語や仕組みについて理解を深めましょう。
