退職者の年末調整の扱い|定年や年途中での退職における手続きを解説
退職者の中にも年末調整が必要な人と不要な人がいます。切り分けるポイントは、12月31日の時点で在籍しているかどうかです。ただし、例外的に、年末以外に退職した人でも、場合によっては年末調整が必要なことがあります。
本記事では、年末調整が必要な条件を解説します。退職者の中で、年末調整が必要かどうかを確認したい方は、ぜひ参考にしてください。
年末調整とは税金の精算
年末調整とは、源泉徴収した税額の年間の合計額と、年税額(所得税及び復興特別所得税)を一致させるための精算手続きです。
通常、毎月の給与から天引きされる源泉徴収税額はおおよそであり、正確ではありません。残業代や昇進などで給与が変動することもあり、年間を通しての正確な所得の算出が難しいためです。
年の終わりであれば、残業代や昇進なども含む総収入を正確に算出できます。税金に過払いや過不足があれば、還付や徴収の対応が取られます。
退職者の年末調整は基本的に不要
退職者の年末調整は、基本的に不要です。しかし、特定の条件下では、年末調整が必要です。年末調整の手続きで、慌てないためにも、対象となる人とそうでない人の違いをおさえておきましょう。
年末調整の対象者
12月31日まで在籍予定の従業員は、年末調整の対象者です。そのため、1年を通して勤務している人はもちろん、4月や8月など年の途中から入社してきた人も同様に年末調整の対象者です。
ただし、12月31日まで在籍していても、次のケースに該当するものは、年末調整の対象から外れます。
- 1年の確定給与額が2,000万円超えるもの
- 災害減免法の規定により、その年の年税額について徴収猶予や還付を受けたもの
また、年の途中で退職したものも、基本的に年末調整の対象になりません。
12月末で退職する場合
12月25日が給与支払い日で、年末までに退職した場合、年末調整の対象者です。退職時点で年間の総収入が確定しているためです。
たとえば、12月27日に退職して、12月28日に転職してもすぐに給与を受け取れません。退職前の会社側で、年間の給与所得を算出できるため、年末調整も必要です。
年内に再就職する場合
年内に再就職して転職先で給与を受け取る可能性のある場合は、前職では年末調整の対象外です。
再就職しないことが決まっている人のパターン
再就職しないことが決まっている人のパターンは次の3つです。
- 12月分の給与支給後に退職した人
- 年度内に死亡した人
- 著しい心身障害で退職した人
上記に該当する人は、年末調整の対象者です。それぞれのパターンを解説します。
12月分の給与支給後に退職した人
12月分の給与支給後に退職した人は、基本的に年末調整の対象者です。
再就職後の給与支払いは早くても1月以降です。そのため、基本的に年内の給与所得は変動しません。退職した会社側で1年間の給与所得を算出できるため、12月分の給与支給後に退職した人も年末調整の対象として扱われます。
ちなみに、年始に就職先が決まっている退職者であっても、会社で年末調整をする必要があります。
年度内に死亡した人
年度内に死亡した人は、再就職が不可能であるため、最後の給与支払い時に年末調整をする必要があります。
著しい心身障害で退職した人
うつ病や交通事故などによって心身障害を発症し、年中に再就職が不可能と認められており、なおかつ退職後本年中の給与が支給されないと決まっている人は年末調整の対象者です。
年末調整に関する退職者からの質問と対策
年末調整に関する、退職者からよくある質問は次の3つです。
- 転職先への入社が1月なので、年末調整をしてくれませんか?
- 再就職先が決まっていないので、年末調整をしてくれませんか?
- 源泉徴収票の再発行をしてくれませんか?
質問に対する対策をご紹介します。
転職先への入社が1月なので、年末調整をしてくれませんか?
12月には退職しており、転職先の入社が翌年の1月の場合、年末調整をする必要はありません。この場合は、年末調整ではなく、個人が行う「確定申告」の手続きが必要です。
確定申告とは、年末調整と同様に、税金の清算を行うための手続きを指します。確定申告と年末調整の大きな違いは、納税者本人が行うか会社が行うかです。12月には退職しており、転職先への入社が翌年の1月であれば「発行される源泉徴収票をもとに確定申告してください」と伝えましょう。
退職日が11月であっても給与が翌月12月に支払われ、給与金額が退職時に確定している場合、年末調整の対象として処理する企業もあるため、事前に確認する必要があります。
再就職先が決まっていないので、年末調整をしてくれませんか?
12月より前の退職者は、年末時点で在籍していないため、年末調整をする必要はありません。ただし、重度の心身障害を理由に退職した従業員などは、手続きが必要な場合もあります。
源泉徴収票の再発行をしてくれませんか?
源泉徴収票は、退職の日より1か月以内に発行する義務があるため、すでに発行している場合には再発行の義務はありません。しかし、再発行の手続きには応じることが無難です。応じない場合は、税務調査などに発展する可能性があります。
定年退職者は年末調整が必要か
定年退職者も年末調整が必要な人と不要な人で分かれます。年末調整の対象となる条件を解説します。
- 12月の定年退職者のみ
- 翌年の確定申告が必要
12月の定年退職者のみ
年末調整の観点でいえば、定年退職者の扱いは、通常の退職者と同様です。したがって、12月に定年退職した場合は、年末調整の手続きを行う必要があります。11月や1月など、12月以外の時期の定年退職者は年末調整の対象外です。
翌年の確定申告が必要
年末調整の対象者ではない定年退職者は、確定申告の手続きが必要です。源泉徴収票をもとに、手続しましょう。
12月より前の退職者は確定申告
12月より前に退職したが再就職が決まっていない場合、年末調整ではなく確定申告を行います。確定申告の時期は、基本的に、2月16日〜3月15日です。
「確定申告の方法がわからない」と悩んでいる人には、確定申告会場での手続きを進めるのも一つです。担当者のもとで確定申告できるため、安心して手続きできます。
年末調整を簡単に行う方法
国税庁の指導のもと2020年10月から年末調整手続きの電子化が行われています。電子化の導入により、年末調整の手続きにかかる手間が減りました。
以前までは、紙ベースでの手続きが必要でした。書類への記入や郵送など、紙ベースの手続きは何かと手間がかかります。しかし、電子化で行う年末調整は、特定のツールやソフト上で手続きが完結します。業務の手間が減るため、電子化を導入してみてはいかがでしょうか。
また、年末調整の業務がラクになるソフトも数多くあるため、活用してみるのもよいでしょう。
まとめ
退職者の年末調整は、基本的に不要です。しかし、12月末で退職したり、心身障害により年の半ばで退職するものの、同年に給与所得を受けなかったりする人は、年末調整が必要です。
対象の条件を見極めて、正確に年末調整の手続きを行いましょう。手続きの手間を省きたい人には、電子手続きもおすすめです。
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