精勤手当とは?皆勤手当との違いやメリット、導入のポイント、廃止の注意点を解説

「精勤手当と皆勤手当の違いは?」「どちらを導入すべき?」と迷っていませんか。
精勤手当は、単に出勤日数だけでなく、日々の誠実な勤務態度や仕事への取り組み姿勢を評価する制度です。皆勤手当とは似ているようで、支給条件や評価するポイントが異なります。
本記事では、精勤手当の基本的な意味や皆勤手当との違いから、導入する際のメリット・注意点、さらに廃止のリスクまでを詳しく解説します。制度の見直しや新規導入を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次

精勤手当とは?
精勤手当とは、出勤日数だけでなく、遅刻や早退の少なさ、日頃の勤務態度までを客観的に評価して支給を決める手当です。労働者の「誠実に働く姿勢」を評価対象に含める点が大きな特徴です。
精勤手当は、支給の有無や条件、金額を会社ごとに自由に設定できます。実際、厚生労働省の調査によれば、精勤手当や類似する皆勤手当を設けている企業は、全体の約25.5%にとどまり、規模が小さいほど割合が少し高くなります。
精勤手当導入の主な目的は、従業員のモチベーションを高め、欠勤や遅刻を減らすこと。勤怠の改善と職場の安定運営の両方を狙った仕組みといえるでしょう。
精勤手当の支給条件
精勤手当の支給条件は、自社の方針で決められます。法律で支給が義務づけられている手当ではないため、導入しなくても違法にはなりません。
多くの企業では、以下のような数値基準の範囲内で支給するのが一般的です。
- 欠勤は月1日以内
- 遅刻・早退は合計◯回まで
精勤手当は、ボーナスのような一時金ではなく、一般的には毎月の給与に上乗せして支給する手当です。だからこそ、以下の項目を就業規則や賃金規定で明確にし、周知しておくとトラブルを防げます。
- 支給条件(欠勤・遅刻・早退のカウント方法/有給の扱い)
- 金額(固定額/段階制)
- 支給時期(毎月/一定期間ごと)
精勤手当に限らずどんな手当も、基準が明確で、誰が見ても同じ判断になることが公正さと納得感を生みます。
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精勤手当と皆勤手当の違い
精勤手当と皆勤手当は、どちらも勤怠状況を評価して支給される手当ですが、支給基準や評価ポイントに違いがあります。
精勤手当 | 皆勤手当 | |
---|---|---|
目的 | 欠勤・遅刻の抑制+勤務態度の評価 | 完全出勤 |
評価軸 | 勤怠の良好さを総合評価(姿勢・協調性等を含める設計も可) | 出勤実績を定量判定 |
支給条件の厳しさ | ゆるやか:軽微な遅刻・早退、1〜2日の欠勤を許容する設計が多い | 厳格:一度でも遅刻・早退・欠勤があれば不支給が一般的 |
基準設計の自由度 | 高い | 低め |
メリット/注意点 | 基準設計の自由度が高い/ルールの整備・明文化が重要 | 支給判定がわかりやすい/従業員規模が大きいほど人件費が負担に |
皆勤手当は、決められた期間内で「無遅刻・無早退・無欠勤」を満たした従業員に支給します。わかりやすい基準ですが、原則1回のミスで対象から外れるのが特徴です。
一方の精勤手当は「勤怠の良好さ」が幅広く評価されます。1〜2日の欠勤や数回の遅刻・早退であれば支給対象となる場合が多く、皆勤手当よりも条件がゆるやかです。そのため基準の明文化が欠かせません。
また、皆勤手当と精勤手当を組みあわせた「精皆勤手当」を設ける企業もあります。たとえば、精勤基準を満たしたら基本額、皆勤達成で加算されるという制度設計です。
▼皆勤手当も基本も確認しておきたいなら、以下の記事をご覧ください。
精勤手当の相場はいくら?
精勤手当の金額相場は会社によってさまざまですが、厚生労働省が行った「令和2年就労条件総合調査」によると、精勤手当・皆勤手当・出勤手当を含めた平均支給額は1人あたり月額9,000円です。
企業規模別では、従業員数30〜99人の企業が平均11,200円、1,000人以上の大企業では平均6,400円となっています。中小企業ほど支給額が高くなる傾向が見られます。
精勤手当は毎月の給与に上乗せして支給されるのが一般的です。注意したいのは、残業代(割増賃金)の計算基礎にも含める必要があるため、賃金規程で定めておかなければなりません。
精勤手当の金額を検討する際は、ほかの手当や基本給とのバランスも考慮しましょう。
精勤手当を導入するメリット
精勤手当の導入は、企業と従業員の双方にメリットをもたらします。主な効果は、遅刻や欠勤の抑制、モチベーションと生産性の向上、離職率の改善の3つです。
精勤手当のメリットや、導入の影響を理解しておくことで、制度導入の意義や活用方法がより明確になるため、確認していきましょう。
従業員の遅刻や欠勤を減らせる
精勤手当は、勤怠改善のための有効なインセンティブとなります。「遅刻や欠勤が一定回数以内」という条件を設ければ、日々の出勤や勤務態度に対する意識が自然と高まるでしょう。
シフト制や少人数で運営している職場では、1人の欠勤で、シフト調整を余儀なくされるなどの影響があります。
精勤手当の導入によって、人員不足のリスクを減らし、安定した業務運営が実現しやすくなるでしょう。
モチベーションや生産性の向上につながる
精勤手当の支給を目指す従業員が増えると、日々の勤怠や勤務態度が安定し、職場全体のパフォーマンスが底上げされることがあります。
個々の小さな努力が、目に見える形で評価されるため、従業員がやる気を保ちやすくなるのも利点です。
個人のモチベーションとともに全体の士気が高まれば、生産性も向上し、業績にも好影響が期待できるでしょう。職場に好循環が生まれ、少しずつ前向きな風土が根づくイメージです。
離職率の改善を目指せる
精勤手当は、従業員の頑張りを報いる制度として、安心して働ける職場づくりを実現できるという点で、企業にとってもメリットです。
勤怠や勤務態度を正当に評価する精勤手当があると、従業員に安心感を与えやすくなります。安心感が、長く働きたいという気持ちにつながる場合も大いにあるでしょう。
もちろん精勤手当だけで離職率が大きく変わるわけではありませんが、評価制度の一つとしてプラスに働く要素になるでしょう。
▼離職率にお困りなら【対策がわかる】以下の離職率改善ガイドをご活用ください。
精勤手当を導入する際のポイント
精勤手当のメリットは理解できても、いざ整備するとなると、具体的にどう設計すればいいのかわからないという担当者もいるでしょう。
設計次第で、精勤手当の制度が機能するかが変わってきます。運用上、とくに重要なポイントは、次の3点です。
- 支給条件の明確化
- 適切な金額設定
- 運用ルールの周知
ルールを整備することで、公平性と納得感が高まり、制度の効果を実感できるはずです。
支給条件を明確化する
精勤手当の支給条件を明確に設定することが大切です。あいまいな基準では、不公平感や混乱を招きます。「欠勤が月1日以内」「遅刻・早退は合計3回まで」など、誰が見ても同じ判断になる数値基準を設定しましょう。
また、有給休暇は法律で認められた従業員の権利です。有給取得により精勤手当の支給要件から外れるのは原則として違法とされています。有給取得を支給除外である欠勤とみなさない旨を、就業規則に明記しましょう。
適切な金額を設定する
精勤手当の金額は、会社の規模や財務状況、ほかの手当や基本給とのバランスを考慮して決定します。高すぎると経営負担が大きくなり、低すぎると制度の効果は薄れるため注意が必要です。
厚生労働省の令和2年における調査では平均支給額は月額9,000円程度ですが、業種や規模により適正金額は異なります。
段階的な金額設定や、簡潔なルールで運用することもポイントです。複雑な制度は管理や計算が煩雑になりやすいため、シンプルな仕組みを心がけましょう。
実務的な観点からも、給与計算が煩雑にならないよう、シンプルな算定方法を心がけましょう。「欠勤ゼロは満額」「欠勤1回で〇〇円減額」など、簡潔な金額設定をおすすめします。
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運用ルールを周知する
精勤手当の設計が固まったら、就業規則や賃金規程に、内容・条件・金額・評価基準を明記し、全従業員に周知します。 ルールが明確なら、従業員が理解しやすく、誤解や不満を防ぎやすくなります。
精勤手当に限らず、就業規則の変更をともなう制度改定時は説明会を開催するのも一案です。制度の趣旨や運用方法を説明し、疑問や不安は早めに解消することも大切です。 必要に応じて外部講師や専門家を招くと、第三者視点の説明が加わり、信頼感がさらに高まります。
▼就業規則の変更手続きについて詳しく知るなら、以下の記事をご確認ください。
精勤手当に関するよくある質問
精勤手当は、運用や計算の仕方によって、法令違反や従業員トラブルにつながる場合があります。ここでは、現場からよく挙がる質問とその回答をまとめました。制度設計や運用時のチェックリストとしてご活用してください。
精勤手当は毎月支給する必要がある?
基本的に月単位で評価して、精勤手当を支給する企業が多いようですが、必ずしも毎月とは限りません。
四半期・半年ごとなど一定期間まとめて支給する方法も可能です。繁忙期やプロジェクト完了時にまとめて支給する事例もあります。
重要なのは、精勤手当の支給サイクルと評価基準を、就業規則や賃金規程に明記し、周知することです。自社の業務形態や従業員の働き方にあわせ、調整がつくタイミングを検討しましょう。
精勤手当は割増賃金(残業代)の計算に含まれる?
精勤手当は、割増賃金(残業代)の計算基礎に含める必要があります。労働基準法では、毎月決まった金額で支給される手当は、原則として割増賃金の算定基礎に含めると定められています。
労働基準法が定める割増賃金の計算基礎から除外できる手当は、家族手当・通勤手当・住宅手当など、個人の生活状況や実際にかかった費用に応じて支給されるものだけです。
精勤手当を除外して残業代を計算すると、法令違反となるおそれがあるため注意が必要です。
制度を新しく導入したり改訂したりした場合は、給与計算システム(ソフト)に忘れずに正しく反映させましょう。
▼割増賃金の算定基礎について詳しく知るには、以下の記事をご確認ください。
精勤手当は最低賃金の計算に含まれる?
最低賃金の計算においては、精勤手当は含めずに算出します。最低賃金法では、精勤手当や通勤手当、家族手当などは最低賃金の算定基礎から除外すると明記されています。
最低賃金の判定は、基本給や職務手当など「通常の労働の対価」部分のみで考慮しなければなりません。
精勤手当を含めて最低賃金を満たしていると誤認すると、法令違反になるリスクがあります。
精勤手当を除いて最低賃金を下回る場合は、基本給やほかの手当の見直しが必要です。最低賃金の改定にも注意し、適切な給与管理を徹底しましょう。
有給休暇を取得した従業員にも精勤手当を支給するべき?
有給休暇を取得しても、精勤手当は変更なく支給されます。有給取得を理由に、精勤手当を減額・不支給とするのは、原則として違法です。
年次有給休暇は、労働基準法で認められた「休んでも給料が支給される正当な権利」です。
労働義務があるのに、その義務を果たさない「欠勤」とは異なり、使ってもペナルティを与えることはできません。
就業規則や賃金規程に「有給取得は欠勤扱いにしない」旨を明記し、従業員が安心して有給を取得できる環境を整えましょう。
▼欠勤の意味を確認するなら、以下の記事もご確認ください。
精勤手当は廃止できる?
精勤手当の廃止は可能ですが、合理的な理由と慎重な判断が必要です。
精勤手当の廃止は労働者にとって不利益変更となるため、経営状況の悪化や制度全体の見直しなど、客観的かつ合理的な理由が求められます。
廃止を進める場合は、説明会や個別面談の時間を設定して理由と今後の対応を説明し、理解を得ましょう。一方的な廃止は労使トラブルを招き、企業と従業員の信頼関係が崩れる可能性があります。
まとめ|精勤手当を正しく運用し、負担を減らすには?
精勤手当は、勤怠の改善や従業員のモチベーション向上など、企業にもメリットがある制度です。自社の方針や現場の実情にあわせた柔軟な運用が可能ですが、有給休暇や残業代との関係を正しく理解したうえで、法令に沿った設計・運用が欠かせません。
精勤手当の支給条件や評価基準は、勤怠管理システムで判定後、給与計算システムへ自動反映できる仕組みにすれば、現場の運用負担も軽減できるでしょう。
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