無断欠勤とは? 理由や企業の対応、解雇手順を解説

無断欠勤とは? 理由や企業の対応、解雇手順を解説

無断欠勤とは、従業員が企業に連絡を入れずに仕事を休むことです。無断欠勤は、チームにも迷惑がかかるため、企業の対応が重要です。

本記事では、無断欠勤について、企業が従業員に取るべき対応や防止策などをご紹介します。無断欠勤による解雇についても解説しますので、企業の人事労務担当者は参考にしてください。

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    無断欠勤とは

    無断欠勤とは、企業が規定する休暇申請などを用いず、連絡等もせずに勝手に欠勤することを指します。一般的に、体調不良などによって急遽仕事を休む場合は、上司や所属チームに連絡をすることが常識です。無断欠勤に関する法律上の定義はありませんが、会社に対して何の連絡もせずに休むことを無断欠勤と呼びます。

    無断欠勤をする理由

    企業において従業員が無断欠勤する理由にはいくつかの原因が考えられます。

    • 責任感や自己管理能力の欠如
    • 精神的な疾患の影響
    • ハラスメントに対する恐怖心
    • そのまま退職したいため
    • 事件や事故に遭遇

    責任感や自己管理能力の欠如

    従業員の無責任さや自己管理能力の欠如が起因し、寝坊などをしてしまうこともあります。寝坊などによる遅刻を隠すため、そのまま何の連絡もせずに無駄欠勤することが考えられます。寝坊などは自己管理能力の欠如からきています。また、上司からの叱責を逃れるためや遅刻の事実を周囲に知られたくないという無責任な思いが、無断欠勤につながります。

    精神的な疾患の影響

    精神的な疾患により、時間通りに起きられないことや体調が悪くなったりすることも原因の一つです。精神的な状況から連絡することができなかったり、タイミングを逃してしまう場合があります。精神的な疾患による無断欠勤が発覚した際は、従業員を過度に責めるのではなく、メンタルケアなども検討して対応しましょう。

    ハラスメントに対する恐怖心

    企業でハラスメントを受けている場合も無断欠勤の原因となります。たとえば、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントを受けている場合です。欠勤を連絡した際に、連絡を取る相手がハラスメントを受けている相手かもしれないと想像することで、恐怖心から連絡できないなどが考えられます。

    そのまま退職したいため

    退職の意向があり、直接伝えられないような場合も無断欠勤の原因として考えられます。無断欠勤をしたまま、音信不通となり、退職する流れです。たとえば、退職意思を伝えても引き留められることなどを不安に思い、無断欠勤につながります。

    事件や事故に遭遇

    無断欠勤では、事件や事故に巻き込まれたことで起こってしまうケースもあります。日頃から真面目に仕事をしていた従業員が無断欠勤の状況になっている場合は注意が必要です。特に、従業員が一人暮らしの場合、電話やメールなどで連絡が取れないようなときは、自宅を訪問するという対応も検討しましょう。

    無断欠勤への対処法

    無断欠勤に向けた企業側の対処法を解説します。

    1. 本人と連絡を取る
    2. 無断欠勤の理由を聞く
    3. 繰り返す無断欠勤には処分も検討する

    1.本人と連絡を取る

    無断欠勤をした従業員と連絡を取ることを試みる方法です。無断欠勤した従業員が直接話すことに抵抗を感じている場合、電話はつながりにくいかもしれません。電話がつながらないようであれば、手軽なメールやSNSなどを活用することで連絡が取れる可能性があります。

    また、直近の業務態度や様子をふまえて、誰がコンタクトを取るかという点にも注意しましょう。

    2.無断欠勤の理由を聞く

    無断欠勤をした従業員と連絡が取れたら、理由を聞き出します。理由について、会社側に原因(落ち度)がある場合は、改善に努めましょう。

    しかしどのような理由であっても、従業員の無断欠勤が引き起こす悪い影響を伝え、繰り返さないように伝えることが大切です。

    3.繰り返す無断欠勤には処分も検討する

    同一従業員による無断欠勤が複数回続いていれば、懲戒処分の対象にもなります。懲戒処分はトラブルにもつながるため、慎重に検討し、従業員との話し合いも必要です。

    無断欠勤は解雇理由にもなる

    無断欠勤は、一般常識で考えてみても、よいことではありません。理由によっても異なりますが、繰り返し無断欠勤をする従業員に対して解雇できることもあります。

    無断欠勤に対する解雇種類

    無断欠勤に対する解雇は「普通解雇」が一般的です。解雇の方法として即時的に解雇できる「懲戒解雇」もありますが、懲戒解雇は従業員が職場において重大な規律違反や不正行為を犯した場合に適用されます。無断欠勤はよくないことではありますが、数日程度の無断欠勤では、懲戒解雇をする理由には及ばないと考えられています。ただし、無断欠勤が2週間以上続く場合には、懲戒解雇が有効となるケースが多いです。

    無断欠勤に対する解雇処分は理由が重要

    無断欠勤する従業員の解雇処分を検討する際は、特に理由が重要です。ハラスメントや職場環境に対する不安を理由にした無断欠勤では、企業側の責任でもあるため、解雇はしにくく、組織環境改善への取り組みが求められます。精神的な疾患による無断欠勤も、解雇するに相当する理由にはならないでしょう。正当な解雇理由になるのは、従業員による身勝手な理由から繰り返される無断欠勤などが挙げられます。

    無断欠勤を繰り返す従業員を解雇する手順

    無断欠勤を繰り返す従業員に解雇処分を下すための手順をご紹介します。単純に無断欠勤を繰り返していることだけでは、解雇する正当な理由として認められにくい点にご注意ください。

    1. 従業員に連絡して出勤を促す
    2. 退職勧告をする
    3. 解雇予告をする

    1.従業員に連絡して出勤を促す

    無断欠勤を続けている従業員に対しては、まずは企業側が連絡を行い、出勤を促しましょう。企業側は、無断欠勤を防いだり解決したりするための努力義務があるためです。企業が努力義務を怠って解雇すると、不当解雇と見做される可能性があるため注意しなければなりません。無断欠勤を従業員に対する呼びかけは、少なくとも2週間程度を目安に継続しましょう。

    2.退職勧告をする

    従業員の無断欠勤が続くと、企業側は業務遅延や他の従業員のモチベーション低下など、悪い影響が生じます。そのため、解雇を検討する企業も少なくありません。しかし、企業側は単純な無断欠勤を理由にした解雇を行うと「不当解雇」と見做される恐れがあるため注意が必要です。企業側は、解雇の前に退職勧告を行い、従業員が自らの意思で退職する流れを提示してみましょう。

    3.解雇予告をする

    企業が無断欠勤を繰り返す従業員に対して解雇処分を下すには、労働基準法にのっとって手続きを行います。労働基準法第20条によると、企業が従業員の解雇を行う場合、30日以上前に予告しなければならないとしていますので、ご注意ください。

    参照:『労働基準法第20条』e-GOV法令検索

    解雇通知書を送付のうえ解雇する

    無断欠勤を続ける従業員を解雇する際は、トラブルを防ぐため、解雇通知書を自宅に送付します。従業員が欠勤している以上、手渡しできないため、確実な証拠を残すためにも内容証明で送付するのがポイントです。解雇通知書の発行は法律で定められているわけではありませんが、連絡が取れない従業員に対して解雇する場合は、証拠として残しておくことが大切です。

    無断欠勤する従業員に対する対応

    無断欠勤する従業員への対応であらかじめ意識しておきたい点をご紹介します。

    • 解雇する際は無断欠勤の証拠をとっておく
    • 無断欠勤に対する給与支払い
    • 解雇後の失業保険対応

    解雇する際は無断欠勤の証拠をとっておく

    無断欠勤を続ける従業員を解雇したい場合、無断欠勤したことを証明できる証拠をとっておきましょう。解雇を巡って従業員とのトラブルに発展した場合、企業側が勤怠状況を証明する必要があります。打刻システムの情報やタイムカードの記録のほか、従業員の業務態度に関する周囲の証言なども集めておくとよいでしょう。

    無断欠勤に対する給与支払い

    無断欠勤をした従業員に対して、企業は給与を支払う必要はありません。給与は労働者の労働対価として賃金を支払うことが労働契約法で規定されているためです。そのため、従業員が無断欠勤をして労働をしていない部分に対しては、企業は対価(賃金)を支払う必要がないといえます。

    参照:『労働契約法第6条』e-GOV法令検索
    参照:『農業版 労務管理のススメ~職業として選ばれる農業へ~』農林水産省

    解雇後の失業保険対応

    無断欠勤によって解雇した従業員も、条件を満たしていれば雇用保険における基本手当を受給できます。解雇した従業員が基本手当を受ける際は、企業が交付する離職票を提出しなければなりません。企業側は、一般的な退職手続きと同様に、解雇した従業員の離職票などの各種証明書や書類を、漏れなく準備し、速やかに交付することが求められます。

    参照:『Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~』厚生労働省

    無断欠勤の防止対策

    無断欠勤を防ぐために企業ができる対策をご紹介します。

    • 勤怠管理の強化
    • 企業側の問題点を把握する

    勤怠管理の強化

    無断欠勤の防止策には、勤怠管理の強化が欠かせません。企業側が杜撰(ずさん)な勤怠管理をしていると、従業員も出退勤の報告などを軽んじることにもつながります。また、無断欠勤した証拠や記録がないことで、トラブルに発展する恐れもあります。勤怠管理を強化するためには、勤怠管理システムやタイムカードを活用し、勤怠管理担当者が勤怠状況の把握をできるようにしましょう。

    企業側の問題点を把握する

    無断欠勤の理由として、ハラスメントや人間関係の悩みを持っている点も挙げられます。企業において、組織環境に問題がある場合は、状況を整理して対処することも大切です。まずは無断欠勤をした従業員の話を聞きましょう。ハラスメントが起こっていれば排除が必要です。人間関係の問題を解決するために、状況によって部署異動などの判断も選択肢の一つです。

    まとめ

    無断欠勤は、さまざまな理由から起こり得る人事課題の一つです。どのような企業でも、従業員の無断欠勤が生じる可能性があります。企業が無断欠勤を放置していると、業務の遅延や従業員のモチベーション低下にもつながります。

    無断欠勤が頻繁に起こったり、無断欠勤の状況が続いたりしている従業員に対しては、企業側が早急に対応を行いましょう。