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パートの給与計算のやり方|必要書類や具体的な手順、注意点について解説

パートの給与計算のやり方|必要書類や具体的な手順、注意点について解説

パートタイムやアルバイトの給与計算は、労働条件に沿って正確に行われなければなりません。単に時給を掛けるだけではなく、必要な書類や情報を準備しておく必要があります。

一般の正社員と異なる部分もあるため、初めてパートタイム従業員を雇用する場合などは、気をつけたい重要なポイントを確認しておきましょう。

本記事では、パート従業員の給与計算に必要な情報や割増賃金の考え方、具体的な手順を解説します。混乱しがちな有給休暇の取得条件や注意点もご紹介するため、勤怠管理や給与計算担当者は実務にお役立てください。


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    パートの給与計算のやり方

    パートやアルバイト従業員の給与計算方法について解説します。

    パートの給与は一般的に「時給」で計算する

    パートやアルバイト従業員の給与は、雇用時に契約した時給と労働時間を用いて計算します。年俸制など例外はありますが、一般的に正社員の給料は月給制で「月給◯円」と固定されています。しかし、パートタイムの場合は「時給◯円」と働いた時間に応じた給料が支払われることが多いです。

    各種手当も計算して給与を計算する

    パートやアルバイト従業員の給与計算では、通勤手当や資格手当などの各種手当も加味する必要があります。具体的にどの手当が該当するのかは一人ひとり異なるため、あらかじめ確認しておくと安心です。

    パートの給与計算時に必要な書類・確認内容

    パートやアルバイト従業員の給与計算においては、勤怠管理や就業規則、給与規程の情報が必要です。必要な書類をそろえ、情報の抜け漏れがないように注意しましょう。

    勤怠管理の情報

    パートタイムやアルバイト従業員は、時給制で働いていることが多いです場合がほとんどです。

    給与は「時給×労働時間」で計算されるため、パート従業員が実際に何時間働いたのかを確認するには、個人の勤怠情報をそろえる必要があります。たとえば、タイムカードやシフト表などの資料を用意すると、パート従業員の労働時間を把握できるでしょう。

    就業規則・給与規程の情報

    就業規則や給与規程の情報を確認し、自社の給与計算における基準や方法を整理することも大切です。給与規程とは、従業員の給与に関する定めが増えた際に、就業規則と分けて作成するものです。

    給与規程の情報量が多い場合に作成されることが多いため、職場によっては就業規則があるのみで、給与規程を別途作成していないケースもあるでしょう。

    パートにも残業による割増賃金は発生する

    パート従業員に時間外労働を依頼した場合は、ルールにのっとって割増賃金を支払う必要があります。割増賃金とは、通常支給される給与に一定割合を増額することです。パート従業員に対する割増賃金のルールについて解説します。

    パートと正社員で残業代に違いはない

    残業代の支払いについて、パート・アルバイトや正社員など雇用形態による違いはありません。

    パート従業員に残業を依頼した際には、労働基準法や会社ごとの基本的なルールにのっとって残業代を支払う必要があります。残業が多い仕事をパート従業員に任せる場合は、そのぶんの割増賃金を計算しておくとよいでしょう。

    割増賃金の種類

    従業員の割増賃金については、労働基準法第37条に明記されています。条文の内容をまとめると、従業員には「時間外労働(残業)」「休日労働」「深夜労働」における割増賃金が適用されます。正社員だけでなく、パート・アルバイトの場合も同様です。

    時間外労働

    時間外労働とは、労働基準法に定められた「1日8時間・週40時間まで」という法定労働時間を超過した分の労働のことです。時間外労働に対しては、通常の賃金に25%以上の割増賃金を適用する必要があります。

    休日労働

    休日労働とは、法定休日に労働することです。労働基準法では、企業は従業員に対して「週1日以上」または「4週を通じて4日以上」の休日を与えなければならないと定められています。従業員に与えたこの法定休日に労働を依頼する場合、通常の賃金に35%以上の割増賃金を適用しなければなりません。

    深夜労働

    深夜労働とは、22時~翌5時までの労働です。従業員がこの時間帯に労働する場合、通常の賃金に25%以上の割増賃金を適用する必要があります。

    注意したいのは、割増賃金は重複することです。たとえば、パート従業員が法定休日に労働した際、労働時間の中に深夜労働が含まれる場合は、計60%以上の割増賃金を適用しなければなりません。

    参考:『労働基準法』e-Gov法令検索

    パートの給与を計算する手順

    パート従業員の給与計算において、基本の手順はおおむね次の通りです。

    1. 労働時間を計算する
    2. 控除の有無を確認する
    3. 支給額を給与として振り込む

    それぞれ詳しく解説します。

    1.労働時間を計算する

    パート従業員の給与は「時給×労働時間」で計算します。そのため、まずは一人ひとりの勤怠情報を確認しながら月あたりの労働時間を計算し、従業員が何時間働いたのかを明確にしましょう。

    そのうえで、時間外労働や休日労働、深夜労働の有無を確認し、割増賃金をプラスします。「1日8時間・週40時間」を超える労働があった場合は25%以上、法定休日の労働には35%以上、22時~翌5時までの労働には25%以上の割増賃金を適用してください。

    また、通勤手当や資格手当など各種手当の対象となるパート従業員がいる場合は、その金額も支給額に含みます。企業によって手当の種類やルールが異なるため、確認しておきましょう。

    2.控除の有無を確認する

    パート従業員の働き方によっては、給与から社会保険料や税金を控除するケースもあるため注意が必要です。パート従業員は家族の扶養範囲内で働いていることも多いため、給与から控除する金額がないかどうかチェックしましょう。

    そのほか、家庭を持つ従業員に対しては、配偶者控除や扶養控除などが適用される場合があります。

    3.支給額を給与として振り込む

    上記の手順で計算した支給額を、給与として振り込みます。必要に応じて源泉徴収を実施し、保険料や各種税金を納付しましょう。

    パートが保険料を支払うケース

    パート従業員も働き方次第では、雇用保険や社会保険の加入対象となる場合があります。従業員の雇用保険料や社会保険料は、企業と従業員がそれぞれ負担し、従業員の支払い分は給与計算の際に控除して企業がまとめて納付しなければなりません。

    給与計算の担当者は、パート従業員が雇用保険や社会保険に加入する要件も把握しておきましょう。

    パートが雇用保険料を支払う条件

    以下の条件を満たす従業員は、パートやアルバイトであっても雇用保険に加入させる必要があり、保険料を支払わなければなりません。

    • 1週間の所定労働時間が20時間以上あること
    • 31日以上の雇用見込みがあること

    なお「31日以上の雇用見込みがあること」とは、厳密には「31日以上雇用継続しないことが明確でないこと」を指します。従業員との雇用契約期間が31日未満であっても、以下の場合は雇用保険が適用されるので注意しましょう。

    • 契約内容に更新規定があり、31日未満で雇い止めすると明示されていない
    • 契約内容に更新規定はないが、同様の雇用契約により雇用された従業員が31日以上継続して雇用された実績がある

    パートが健康保険・厚生年金保険を支払う条件

    パートなどの短時間労働者であっても、一週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が通常の労働者(正社員)の4分の3以上であれば、健康保険や厚生年金保険に加入します。

    また、以下の条件を満たす従業員は、4分の3要件を満たさない場合であっても健康保険や厚生年金保険に加入させる必要があります。

    • 常時雇用する従業員数が101人以上
    • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
    • 月額賃金が8.8万円以上
    • 2か月を超える雇用の見込みがある
    • 学生ではない(定時制や夜間学部などは除く)

    社会保険の適用範囲は段階的に拡大されていく予定なので、常に最新の情報を確認しましょう。

    また、パート従業員が40歳以上の場合は、介護保険も加入対象です。扶養家族から外れたくない従業員については、その点を考慮してシフトを組むことも求められるでしょう。

    パートでも有給休暇は取得できる?

    給与計算には有給休暇の取得日数も関係しますが、パート従業員も有給休暇を取得することは可能なのでしょうか。

    パートでも有給休暇が付与される

    パート従業員も正社員と同様に、有給休暇の取得が可能です。勤続年数によって、取得できる有給休暇の日数が変動することも正社員と同様です。

    また、正社員よりも所定労働日数の少ないパートは、比例付与と呼ばれる制度の対象となる場合もあるため、付与される有給休暇の日数には注意しましょう。

    雇用から起算した勤続期間付与される有給休暇の日数
    6か月10日
    1年6か月11日
    2年6か月12日
    3年6か月14日
    4年6か月16日
    5年6か月18日
    6年6か月以上20日

    パートにも有給休暇の取得義務がある

    パート従業員であっても、年に10日以上有給休暇が付与される場合は、年5日間の有給休暇を取得させなければなりません。継続して雇用しているパート従業員には10日以上の有給休暇を付与するケースも多いため、取得義務に注意し、企業として従業員に有給休暇を取るよう促すことが大切です。

    パートが有給休暇を取得した際の給与の計算方法

    パート従業員が有給休暇を取得した場合の計算方法は、主に以下の3つに分けられます。

    • 「所定労働時間×時給」で計算する
    • 過去3か月の賃金を基にした平均賃金で計算する
    • 標準報酬日額で計算する

    企業は上記のいずれかの計算方法を選択し、従業員に不利益が出ないように賃金を計算しなければなりません。企業によってやり方が異なる場合があるため、あらかじめ確認しておくと安心です。

    パートの給与計算における注意点

    パート従業員の給与を計算する際は、以下のポイントに注意しましょう。

    給与計算時に生じた端数は切り捨てできない

    原則的に、給与計算時に生じた端数を切り捨てることはできません。この決まりは労働基準法第24条に定められた「賃金全額払いの原則」に基づくものです。

    参考:『労働基準法』e-Gov法令検索

    しかし、割増賃金の計算において生じた1円未満の端数に関しては、50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げて計算することが認められています。

    残業代は1分単位で計算する

    残業代などの割増賃金は、1分単位で計算しましょう。15分単位や30分単位などで切り捨てて計算することは労働基準法に違反するため、分単位で賃金を明確にする必要があります。

    まとめ

    パート従業員の給与計算方法は、正社員とそれほど大きな違いはありません。しかし、以下の点で正社員と異なるため、日頃の管理が重要です。

    • 時給制が多く、勤怠情報との紐づけが必要
    • 働き方によって社会保険の加入義務が発生する

    正社員のほかにパートタイムやアルバイト、契約社員など複数の雇用形態を雇用している企業は、運用を整備し、正確で早い給与計算を心掛けましょう。

    パートの給与計算を効率化する方法とは?

    複数の雇用形態を管理している企業では、給与計算や勤怠管理が煩雑になりがちです。すでに専用のソフトを導入している企業もいるかもしれませんが、情報が散らばっていたり、労働時間の把握に手間がかかったりしていませんか。

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