給与支払報告書にマイナンバーは必要? 不要? 拒否やない場合の対応と注意点
給与支払報告書とは、住民税の支払いの根拠となる書類です。マイナンバー制度の導入によって、企業が作成する書類にもマイナンバーの記載が求められるようになりました。給与支払報告書も同様に、マイナンバーの記載が必要です。
本記事では、給与支払報告書にマイナンバーが必要な理由を解説します。従業員にマイナンバーの提出を拒否された際の対処法や取り扱う際の注意点も紹介するので、経営層や人事担当者はぜひ参考にしてください。
給与支払報告書にマイナンバーは記載すべき?
給与支払報告書とは、1年間に事業者が従業員へ支払った給与をまとめた書類です。給与支払報告書の内容をもとに、各従業員の住民税額が算出されます。
マイナンバー制度の導入により、給与支払報告書にもマイナンバーの記載が必須となりました。ここでは、給与支払報告書にマイナンバーを記載すべき理由と、記載が不要なケースがあるのかについて解説します。
マイナンバーの記載は法律上の義務
マイナンバーとは、住民票を持つ国民に与えられる12桁の番号です。社会保障制度をはじめ、税制や災害対策など、法令・条例によって定められた事務手続きにおいて使用します。
マイナンバーは、住民票を持っていれば、中長期在留者や特別永住者等の外国籍であっても同様に付与されています。ただし、2015年10月5日時点で国外に在住し、現在まで引き続き海外で勤務している人には付与されていません。
マイナンバー制度は、『行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)』により、2016年1月1日に導入されました。
不要な場合はある?
マイナンバーの記載は法律で定められた企業側の義務なので、原則として記載が不要なケースはありません。
2016年に制度が導入されたことを受け、2017年から給与支払報告書にもマイナンバーの記載が義務づけられました。給与を受け取る従業員本人と、扶養家族分のマイナンバーを記載する必要があります。
給与支払報告書のほか、源泉徴収票や扶養控除等(異動)申告書にもマイナンバーの記載が求められます。
マイナンバーを記載する給与支払報告書について
給与支払報告書は、地方自治体が給与支払者に提出を義務づけている書類です。経営者や事業主、法人などの給与支払者は、前年中に支払った給与や賞与などの金額を、従業員が住む市区町村に申告しなければなりません。
給与支払報告書の作成対象者や期間などの詳細は、以下の通りです。
対象者 | 前年の1月1日~12月31日の間に給与を支払った従業員 |
---|---|
給与支払対象期間 | 前年の1月1日~12月31日 |
給与支払報告書の届出締切日 | 原則としてその年の1月31日 |
提出先 | 1月1日時点で従業員の住所がある市区町村 |
給与支払報告書の作成対象者は、給与を前年の1月1日から12月31日までに支払われたすべての従業員です。
給与支払報告書は、次の2つの書類で構成されています。
- 個人別明細書
- 総括票
それぞれの書類について詳しく解説します。
個人別明細書
個人別明細書とは、従業員の個人情報をまとめた書類で、従業員1人に対して1枚作成します。個人別明細書に記載する主な内容は、以下の通りです。
- 氏名
- 住所
- 生年月日
- マイナンバー
- 給与額(賞与額)
- 保険料控除額
源泉徴収票とほぼ同一内容を記載しますが、源泉徴収票の提出先が税務署なのに対し、個人別明細書は従業員の住む市区町村である点が異なります。
総括票
総括票とは、個人別明細書を提出すべき市区町村ごとに作成する書類です。総括票の主な記載内容は、以下の通りです。
- 給与の支払期間
- 受給者総人員
- 報告人員
- 提出区分
総括票は、従業員の居住地がある市町村別に1枚ずつ作成しなければなりません。
給与支払報告書に必要なマイナンバーの提出を拒否されたら?
担当者が従業員にマイナンバーの提示を求めたとしても、プライバシーの保護を理由に断る人もいるかもしれません。
企業には給与支払報告書にマイナンバーを記載するよう義務づけられている一方、従業員にはマイナンバーを提出する法的義務がないためです。就業規則でマイナンバーを提出させるようルールを定めることはできますが、同じ理由で法的な拘束力はありません。
マイナンバー法には従業員の提出について規定がないため、従業員が提出を拒否したとしても本人に違法性はなく、無理やり提出させることができないのです。
万一、提出を拒否されたら、まずは事務手続き上の目的や、国税通則法や所得税法をはじめとする企業側の法的根拠を従業員に説明しましょう。丁寧に説明を尽くして、理解を得ることが大切です。
それでも従業員がマイナンバー提出を拒む場合は、給与支払報告書の提出先の市区町村に相談のうえ、記載しないことが認められています。
ただし、故意にマイナンバーの記載を怠ったわけではないと証明できるよう、従業員に提出を拒否された際には一連の経緯を記録しておきましょう。
参照:『国税通則法』e-Gov法令検索
参照:『所得税法』e-Gov法令検索
給与支払報告書に記載するマイナンバーはアルバイトや退職者も必要?
給与支払報告書を提出する際には、マイナンバーの記載が必要です。マイナンバーの記載は、雇用形態や役職を問わないため、役員やパート・アルバイトも対象です。
ただし、年の中途に退職した従業員で給与支払い額が30万円以下の場合は、個人情報の収集が難しいことを理由に給与支払報告書の提出を省略できます。
給与支払報告書は、適切に住民税を徴収するという観点から、基本的に提出が推奨されています。
給与支払い額にかかわらず、提出が義務化されている自治体もあるため、それぞれの市区町村のホームページを確認しましょう。
給与支払報告書に必要なマイナンバーの収集・管理について
給与支払報告書をはじめ、各種保険や年末調整の手続きには、雇用形態に関係なくすべての従業員のマイナンバーが必要です。経理や総務の担当者が行う必要のあるマイナンバーの収集方法や管理方法を解説します。
取得・収集
従業員からマイナンバーを取得する際は、事前に利用目的を明示します。従業員に対して、給与支払報告書に記載するという目的を通知したうえで、マイナンバーの提出を依頼しましょう。
マイナンバーを収集する際は、本人確認とマイナンバーの番号確認を行います。
保管・管理
マイナンバーは、原則として社会保障や税などの手続きをする場合に限って収集や保管が認められています。保管期間や破棄すべきタイミングは法律で定められていませんが、不要にもかかわらず長期にわたって保管しないよう注意してください。
マイナンバーを保管する際は、マイナンバー法が定める安全管理措置に基づいて、個人情報の漏えいや紛失を防ぎましょう。
給与支払報告書におけるマイナンバーの取り扱い注意点
マイナンバーは、給与支払報告書や源泉徴収票など、さまざまな書類に記載すべき大切な個人情報です。マイナンバーを取り扱う際の注意点を3つ解説します。
事前に本人確認のうえ取得する
マイナンバーは、事前に本人確認をしたうえで取得する必要があります。
マイナンバーカードがある場合は本人確認と番号確認を同時に行えますが、ない場合は運転免許証やパスポートなど、顔写真付きの身分証明書を使って本人確認を実施します。
番号確認を行うための書類 | 本人確認を行うための書類 |
---|---|
・マイナンバーカード(個人番号カード) ・マイナンバー通知カード ・住民票など個人番号が記載された書類 | ・顔写真付きの身分証明書(運転免許証、パスポートなど) ・顔写真つきの身分証明書が提出できない場合は、健康保険証 ・年金手帳・印鑑登録証明書などを2点以上 |
拒否された場合は経緯を記録する
マイナンバーに対する理解が不足していたり、個人情報の流出を懸念したりする従業員の中には、提出を拒否する人も一定数います。
丁寧に説明して何度か提供を依頼しても拒否された場合は、従業員に提供するよう求めた経緯を細かく記録しておくとよいでしょう。会社側が提供を求めた事実が確認できれば、違反ではないことを証明できます。
記録した内容を行政機関に提示し、指示を仰ぎながら必要な手続きを進めましょう。
源泉徴収票との違いを理解しておく
給与支払報告書と似たような書類として、源泉徴収票があります。源泉徴収票とは、1年間の収入と納付した所得税が記載された書類であり、年末調整の際に作成します。
給与支払報告書と源泉徴収票の違いは、作成目的と提出先です。
給与支払報告書 | 源泉徴収票 | |
---|---|---|
作成目的 | 住民税を算出するため | 年収や所得税額を算出するため |
提出先 | 従業員が居住する各市区町村 | 税務署・従業員 |
源泉徴収票は、税務署に提出するだけでなく、従業員に対しても発行する必要があります。税務署に提出する源泉徴収票にはマイナンバーの記載が必要ですが、従業員に渡すものには記載は不要と覚えておきましょう。
給与支払報告書にマイナンバーを正しく記載
給与支払報告書とは、従業員の給与をもとに住民税の金額を算出するための書類です。給与支払報告書は、個人別明細書と総括票の2つの書類で構成されています。
マイナンバーは給与支払報告書をはじめ、社会保険や税の手続きの際に必要となるため、適切な方法で収集・管理しなければなりません。また、従業員にマイナンバーの提出を拒否された場合には、経緯を記録しておくことが重要です。
従業員の大切な個人情報であるマイナンバーを万全に管理するためにも、専用の管理システムの導入も一案です。
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