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給与支払報告書は退職者も対象? 提出不要な場合はある? 提出先や書き方、住所不明時の対応を紹介

給与支払報告書は退職者も対象? 提出不要な場合はある? 提出先や書き方、住所不明時の対応を紹介

給与支払報告書とは、企業が支払った給与額を従業員の居住する市区町村に報告するための書類です。給与支払報告書は、在籍する従業員だけでなく退職者の分も作成しなければなりません。

本記事では、退職者の給与支払報告書の作成方法や注意点を詳しく解説します。人事労務担当者はぜひ参考にしてください。

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    給与支払報告書は退職者も対象|提出不要な場合はある?

    給与支払報告書とは、企業や個人事業主などの給与支払い者が従業員へ支払った金額を報告するための書類です。提出先はそれぞれの従業員が居住する市区町村で、給与支払報告書に記載された給与額をもとに住民税の金額を決定します。

    給与支払報告書を作成すべき対象は、給与などの支払いを受けている従業員全員です。正社員や役員、パート・アルバイトなど雇用形態に関係なく、すべての従業員が対象です。

    また、退職した従業員も例外ではなく、条件を満たす退職者の給与支払報告書を作成し、提出しなければなりません。

    ここでは、給与支払報告書の提出が必要なケースと、提出を省略できるケースを詳しく解説します。

    給与支払金額が30万円を超えるなら提出は義務

    次の2つの基準を満たしていると、退職者であっても給与支払報告書を提出する必要があります。

    • その年の1月1日時点で給与などの支払いを受けている
    • 給与支払い金額が30万円を超えている

    給与支払報告書の作成は、1月1日時点で給与や賞与などを支払う従業員が対象です。給与支払い金額が30万円を超える場合に、在職者・退職者問わず給与支払報告書の提出が義務づけられています。

    給与支払い金額とは、1年間に従業員に支払った金額の総額です。具体的には以下のものが該当します。

    • 毎月の給料
    • 賞与
    • 各種手当 など

    給与支払い金額が30万円以下は省略できる

    給与支払い総額が30万円以下の退職者については、給与支払報告書の提出を省略できます。ただし、法律上提出を省略できるに過ぎません。

    多くの市区町村では、正しい住民税を算出する目的で、給与支払い金額に関係なく給与支払報告書の提出を求めるケースがあります。

    退職者への給与支払い金額が30万円以下であっても、給与支払報告書を作成・提出するルールを作成しておくと、スムーズに手続きできるでしょう。

    また、在職者の場合は給与支払金額が30万円以下であっても、給与支払報告書の提出が義務づけられているため、混同しないように注意してください。

    退職者の給与支払報告書の提出先

    退職者の給与支払報告書の提出先は、退職者本人がその年の1月1日時点で住んでいる市区町村です。

    退職者の給与支払い金額が30万円以下でも、その市区町村では提出が義務づけられているか否かを事前に確認しておきましょう。

    退職者における給与支払報告書の作成ポイント

    給与支払報告書は、次の2つの書類で構成されています。

    • 個人別明細書
    • 総括票

    個人別明細書とは、従業員の氏名や住所、給与額、保険料控除などの個人情報を詳細に記載する書類です。従業員1人につき1枚ずつ作成しなければなりません。

    総括票とは、個人別明細書の表紙のような役割を持つ書類です。従業員が居住する市区町村ごとに1枚作成する必要があります。

    退職者の給与支払報告書の記入方法は、在籍者と少し異なります。退職者のものと判別できるよう、正しい形式で記載しなければなりません。

    個人別明細書の書き方

    退職者の給与支払明細書に記載が必要な項目と書き方は、以下の通りです。

    項目記載方法
    住所欄従業員の退職時の住所
    支払金額退職した年中に支払いが確定した給与などの総額
    給与所得控除後の金額退職時の『年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表』によって算出した「給与所得控除後の給与などの金額」
    所得控除額の合計額・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除・障害者控除・寡婦(寡夫)控除・勤労学生控除・配偶者控除(または配偶者特別控除)・扶養控除・基礎控除
    上記の控除額の合計※年末調整をしない場合は空欄のまま提出
    源泉徴収税額源泉所得税および復興特別所得税の合計額
    その他控除額労使協定で合意した控除項目
    ・寮や社宅費・組合費 など
    中途就職・退職者欄退職の年月日
    摘要欄扶養親族の氏名(控除扶養親族や16歳未満の扶養親族が5人以上の場合)

    在職者と退職者を区別するためには「中途就職・退職者欄」の記載が必要です。記入し忘れのないように注意してください。

    参照:『「給与所得の源泉徴収票」の「住所又は居所」欄の記載方法』国税庁
    参照:『令和5年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表』国税庁

    総括票の書き方

    総括票は、個人別明細書に比べると金額の計算が少なく、記載項目もシンプルな点が特徴です。

    項目記載方法
    給与の支払期間欄報告人数に対して給与を支払った期間
    受給者総人数支払い期間内に給与を受け取ったすべての従業員数
    報告人数市区町村へ報告する人数
    特別徴収対象者:一般従業員数普通徴収対象者(退職者):退職した従業員数
    提出区分いずれかの区分に丸印をつける
    年間分:1月1日現在の在職者と前年の退職者分を提出する場合
    退職分:前年の退職者分のみ提出する場合

    総括票には、報告人数の内訳を記入する項目が設けられています。在籍する従業員の人数は「特別徴収」の欄に、退職者の人数は「普通徴収」の欄に記載することで、退職者の人数を明確にしましょう。

    また、提出区分にも注意が必要です。在職者と退職者の個人別明細書をまとめて提出する場合は「年間分」に、退職者のみの個人別明細書を提出する場合は「退職分」に丸をつけてください。

    退職者の給与支払報告書の提出時の注意点

    退職者の給与支払報告書を提出する際に注意すべきポイントを解説します。

    提出期限を守る

    給与支払報告書は、法人や個人事業主など事業形態を問わず、従業員に給与を支払うすべての事業者が作成しなければならない書類です。

    提出期限は、給与の支払いがあった年の翌年の1月31日です。1月31日が土曜日・日曜日の場合は、2月の第1月曜日が期限となるため注意しましょう。

    万が一、給与支払報告書の提出を怠った場合や提出期限を過ぎてしまった場合は、事業主や事務担当者に対して1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。期限内に提出するよう準備を進めましょう。

    参照:『地方税法』e-Gov法令検索

    自社に適した提出方法を選択する

    給与支払報告書を提出する方法には、大きく分けて次の3つがあります。

    • 窓口持参
    • 郵送
    • eLTAX

    窓口は、自治体の市民税課に直接持参して提出する方法です。従業員1人につき1枚で対応できるケースがほとんどですが、自治体によっては1人につき2枚提出しなければならないこともあります。提出前に必要枚数を確認しておきましょう。

    郵送での提出方法も同様に、必要な書類枚数を把握しなければなりません。期限に余裕をもって送付しましょう。

    eLTAXとは、インターネット上で地方税の申請手続きができる電子システムです。事前に利用者IDを取得すれば、作成したcsvファイルをアップロードするだけで対応できます。余計な手間を省いて手続きしたい方におすすめです。

    自社に最適な方法で、効率よく手続きを進めていきましょう。

    退職者の給与支払報告書作成に関する疑問

    退職者の給与支払報告書を作成する際によくある疑問を紹介します。

    退職者と連絡が取れないときはどうする?

    円満退職する従業員もいれば、トラブルを抱えたまま職場を去る従業員も存在します。ある日突然出社しなくなり、なかにはそのまま音信不通となってしまうケースもあるでしょう。

    たとえ退職者に落ち度があっても、雇用主は給与を支払うのはもちろん、給与支払報告書を提出しなければなりません。

    離職手続きのために退職者とやり取りをする必要がある場合は、まず退職者本人の携帯電話や登録されている緊急連絡先に連絡しましょう。電話での連絡が取れなければ、書面での連絡を試みます。郵送する際は、文書が確実に相手に届いたことを確認できる内容証明や特定記録郵便を利用するのがおすすめです。

    それでも連絡が取れない場合は、従業員が居住している市区町村の相談窓口に問い合わせましょう。退職してしまったからといって放置していると、給与支払報告書の提出義務を怠ったとみなされて罰則の対象となる可能性があるため、無責任な対応にならないように気をつけましょう。

    退職後に引越し、住所不明の場合はどうする?

    退職者が退職後に引っ越しをしてしまい、住所がわからなくなってしまうこともあるでしょう。しかし、給与支払報告書に記載すべき住所は、従業員が退職する前の1月1日に居住していた市区町村です。在職時に把握していた市区町村の自治体に提出します。

    退職者のマイナンバーは必要?

    マイナンバー制度の導入により、2017年度の給与支払報告書から、従業員をはじめ配偶者や扶養親族などのマイナンバーの記載が必要となりました。

    マイナンバーの記載が不要になる特例はないため、在職中の従業員はもちろん、退職者のマイナンバーの情報も記載しなければなりません。ただし、従業員がマイナンバーの提出を拒否した場合のみ、記載しなくてもよいとされています。

    万が一、退職者にマイナンバーの提出を拒否されたら、マイナンバーの記載が国税通則法や所得税法などで定められた義務であることを説明したうえで、提出を求める働きかけが必要です。

    それでも提出を拒否されたら、企業側の義務違反ではないことを証明するためにも、マイナンバーの提出を求めた経緯を記録し、提出先の自治体に相談しましょう。

    退職者における給与支払報告書についてルール規定を

    退職者に対して一定額以上の給与を支払っていた場合は、給与支払報告書の作成・提出が必要です。提出を省略できるケースもありますが、なかにはすべての従業員を対象として提出を求める自治体も見られます。

    在職者と退職者の区別がつくように、正しい記載方法で給与支払報告書を作成するのがおすすめです。各自治体のルールに従って、適切に手続きしていきましょう。

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