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給与明細の発行は義務?出さない会社は違法?  記載項目やもらえない場合の対処法を紹介

給与明細の発行は所得税法第231条で義務づけられています。

万が一、給与明細の記載項目や支給金額を間違えると、従業員からの信頼を失ったり法律違反に該当したりするため、注意が必要です。しかし、給与明細書について詳しく理解していない人もいるのではないでしょうか。

本記事では、給与明細の発行方法や記入する項目、管理方法について解説します。

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    給与明細の発行は義務|法律別の解釈

    給与明細の発行は、法律によって義務づけられています。どの法律によって定められているのか確認してみましょう。

    所得税法

    所得税法第231条では「給与を支払う者については給与明細書を交付しなければならない」と明記されています。この条文を根拠に、企業には給与明細の発行が義務づけられています。

    参照:『所得税法第231条』e-GOV法令検索

    労働基準法

    労働基準法では、給与明細の発行は明文化されていません。

    ただし、労働基準法に関する行政通達によって、口座振り込みの対象となった労働者には、計算書を交付することが定められています。計算書とは、事業主が従業員の給与から差し引いた源泉徴収税を納付する際に必要な書類です。

    計算書に記載する項目は以下の通りです。

    • 基本給
    • 手当やその他賃金の種類ごとの金額
    • 源泉徴収税額
    • 社会保険料などの賃金から控除した金額がある場合は、その事項ごとの金額
    • 口座振り込みをした金額

    行政通達に法的拘束力はありませんが、特別な理由がない限りは従うのが望ましいとされています。

    給与明細を発行しない場合の罰則

    給与明細を交付しないと所得税法違反にあたり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

    従業員からの請求や税務署の指導に応じなかった場合は、より重い処分を受ける可能性が高まります。

    給与明細書の発行は法律で義務づけられているため、確実にもれなく実施しましょう。

    参照:『所得税法』e-Gov法令検索

    給与明細はいつまでに誰に発行する?

    そもそも給与明細は、いつまでに誰向けに発行するものと決められているのでしょうか。

    給与明細の発行について、以下の基本的な観点から解説します。

    • 給与明細の交付期限
    • 給与明細の発行対象者
    • 給与明細の発行が遅れた場合

    給与明細の交付期限

    所得税法施行規則第100条1項によると、給与明細は、給与支払いの際に、支払いを受ける者に交付しなければならないと定められています。

    給与の支払い日が20日の企業では、20日までに給与明細を交付する必要があるということです。

    参照:『所得税法施行規則』e-Gov法令検索

    給与明細の発行対象者

    給与明細は、給与を受け取るすべての人に発行しなければなりません。

    所得税法により、給与を受け取るすべての人に交付が義務づけられています。正社員やパート・アルバイトなど雇用形態は関係ありません。給与が発生したすべての従業員が対象です。

    給与明細の発行が遅れた場合

    修正した給与明細を交付したあとは、今後発行が遅れないためにどうするのかなどの対策を伝えることで、従業員からの信頼を失うのを阻止できるでしょう。

    万一、給与明細の発行が遅れた場合、すみやかに従業員へ謝罪し、いつまでに発行できるのか具体的な時期を示します。

    修正した給与明細を交付したら、今後同じような遅れが再発しないための対策を伝え、従業員からの信頼を維持することが大切です。

    給与明細の作成に必要な項目

    給与明細は主に以下の3項目で構成されています。。

    • 勤怠欄
    • 支給欄
    • 控除欄

    それぞれの項目で具体的にどのような内容を記載するのか順番に解説します。

    勤怠欄

    給与明細の勤怠欄には、勤怠に関係する以下の項目を記載します。

    • 出勤日数
    • 欠勤日数
    • 休日出勤日数
    • 有給消化日数
    • 有給休暇残日数

    勤怠欄に記載する範囲は、給与締め日までの1か月分です。会社によって締め日が異なるため、注意しましょう。

    支給欄

    給与明細の支給欄には、基本給や各種手当など、会社から支払われる総支給額を記載します。主な記載項目は以下の通りです。

    • 基本給
    • 残業手当
    • 通勤手当
    • その他の手当

    総支給額は、控除前の金額のため「額面」ともいわれます。

    控除欄

    給与明細の控除欄には、給与から天引きされる社会保険料や税金を記載します。主な記載項目は以下の通りです。

    • 健康保険料
    • 雇用保険料
    • 所得税
    • 住民税
    • その他の控除

    その他の控除とは、積立金や組合費、財形貯蓄などが該当します。

    給与明細の配布方法

    給与明細の配布方法には、主に紙とWeb給与明細の2種類があります。それぞれの配布方法についてメリット・デメリットなどを紹介します。

    紙の給与明細は、従業員にとってなじみ深い発行方法であり、利用している企業も多いかもしれません。

    所得税法第231条の「給与明細「書」を交付しなければならない」という表現から、給与明細は原則として紙で交付する必要があると考えられています。

    しかし、紙での給与明細の交付は、印刷用紙代やインク代、封入作業など、多くの手間とコストがかかります。そのため、従業員数が多い企業ほど、コストや人的ミスの増加などのデメリットが大きくなるでしょう。

    さらに、在宅ワークを導入している企業では、給与明細書の手渡しが困難です。従業員の自宅へ給与明細書を郵送する必要があり、郵送代の負担も増えます。

    Web給与明細

    Web給与明細は、給与明細をPDFにしてメールで送信したり、システム上で閲覧したりする方法です。

    与明細は紙での配布が一般的ですが、所得税法第231条では従業員の承諾があれば、電子化されたデータにより提供できると明記されています。ただし、従業員から請求があった場合は、紙の給与明細書を交付しなければなりません。

    給与計算システムにより計算から発行までを自動化して、給与明細書をWebで従業員に共有できれば、印刷代や封入作業などのコストがなくなり負担を減らせます。給与計算業務の効率化にもつながるでしょう。

    参照:『所得税法』e-Gov法令検索

    給与明細をもらえないときの対処法【従業員向け】

    ここからは従業員向けに、何らかの事情で会社から給与明細書をもらえなかったときの対処法を紹介します。主な対応は以下の通りです。

    1. 上司や人事に相談する
    2. 税務署や労働基準監督署に相談する

    詳しく解説します。

    1.上司や人事に相談する

    まずは給与明細が手元に届いていないことを、職場の上司や人事に相談しましょう。

    給与明細は、毎月の給与支給日までに配布する必要があります。給与支給日までに配布されていない場合は、交付されていない理由を会社に確認するとともに、いつまでに配布されるのか確認してみましょう。

    2.税務署や労働基準監督署に相談する

    上司や人事に相談しても、給与明細が発行されない場合は、外部機関への相談を検討します。

    まずは税務署に相談してみましょう。給与明細の不交付は所得税法違反にあたり、税務署の管轄です。

    税務署に相談するときは、「給与支払明細書不交付の届出書」を提出し、申請をします。無事に受理されれば、税務署から企業に指導があるはずです。

    税務署の指導を終えてもなお、給与明細を発行してもらえない場合は、労働基準監督署に相談します。

    労働基準監督署は、労働者の権利を保護し、企業が労働関連法令を遵守しているかを監視するために設置されています。必要に応じて改善・是正・指導する役割も果たしています。

    労働基準監督署で給与明細書の不交付を届け出る場合も申請書を提出します。所定の項目を記入したうえで、労働基準監督署へ提出しましょう。

    労働基準監督署に相談しても解決策が見つからない場合は、法的支援を求める手段もあります。労働問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。

    参考:『給与支払明細書不交付の届出手続』国税庁

    給与明細の保存義務はある?

    企業と従業員のどちらも、給与明細の保存義務はありません。

    しかし、従業員に未払い賃金が発生した場合、給与明細書は証拠となるため、保存しておいた方がよいでしょう。未払い賃金請求権の消滅時効は5年間です。

    ただし、経過措置期間中は3年間とされているため、3年間は給与明細書を保存しておくことをおすすめします。

    企業と従業員のいずれに対しても、給与明細の保存義務は法的に定められていません。

    しかし、未払い賃金が発生した場合、給与明細書は重要な証拠となるため、保存しておくことをおすすめします。未払い賃金請求権の消滅時効は通常5年間です。現在は経過措置期間中であり、3年間とされているため、3年間は給与明細書を保存しておくことが望ましいでしょう。

    参照:『労働者の皆さま未払賃金を請求できる期間などが延長されます』厚生労働省

    給与明細の再発行対応は義務?

    企業に対して、給与明細書の再発行は法的に義務づけられていません。給与支払い日までに給与明細書を交付すれば、それ以降の再発行に、法的な強制力はありません。

    しかし、従業員から再発行の依頼があれば対応する企業が大半です。従業員から給与明細書の再発行の依頼があれば、迅速に発行できる体制を整えておきましょう。

    給与明細の発行を確実に(まとめ)

    給与明細書の発行は、所得税法第231条によって義務づけられ、給与支給日までに対象の従業員へ配布する必要があります。

    給与明細書の不交付は所得税法違反となるため、注意が必要です。

    万が一給与明細書の交付が遅れた場合、従業員へ謝罪するとともに、同じミスを起こさないよう対策を伝えましょう。

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