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給与から社会保険料はどのぐらい引かれる? 計算方法や注意点を解説

給与から社会保険料はどのぐらい引かれる? 計算方法や注意点を解説

社会保険の種類によって、従業員に支払う給与から差し引かれる社会保険料は異なります。本記事では、社会保険料の概要や具体的な社会保険料についてわかりやすく解説します。人事労務担当者や経営者は、ぜひ参考にしてください。

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    社会保険とは

    社会保険は、疾病や介護、失業などさまざまなリスクに対する公的保険制度です。一定の条件を満たした企業は、社会保険に加入する義務があります。社会保険料のうち「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」「雇用保険」は労働者と企業の両者が負担しますが、労災保険に関しては企業のみが負担します。

    社会保険の種類

    各社会保険についてご紹介します。

    健康保険

    健康保険とは、業務外で病気やけがをしたときに保障される保険です。疾病によって働けなくなり、収入の減少に備えるための社会保険制度でもあります。被保険者やその被扶養者が出産したときや、被保険者の死亡により受け取れる給付金も存在します。

    参照:『出産手当金について | よくあるご質問 』全国健康保険協会 
    参照:『ご本人・ご家族が亡くなったとき | こんな時に健保 』全国健康保険協会

    厚生年金保険

    厚生年金保険とは、企業の従業員や公務員が年金として受け取れる公的年金です。老齢や障害、死亡に対して本人やその遺族に年金が支払われる仕組みです。毎月従業員と企業で負担する厚生年金保険料には国民年金保険料も含まれています。

    参照:『厚生年金保険』日本年金機構 

    介護保険

    介護保険は、被保険者に介護が必要と認定されたときに介護サービスを受けられる保険で、40歳以上の従業員が対象です。介護サービスの内容は、居宅介護サービス・施設サービス、介護予防サービス・地域密着型介護サービスなどがあります。

    参照:『介護保険制度の概要』厚生労働省

    労災保険

    労災保険とは、業務中または通勤中の出来事に起因する怪我や病気、障害や死亡などに際し、従業員や遺族に必要な給付を行う保険を指します。

    労災保険料は、健康保険や厚生年金保険などと異なり、企業が全額を負担します。企業で働く従業員は、自動的に労災保険が適用されます。

    参照:『労働保険について』厚生労働省 

    雇用保険

    雇用保険とは、働く意欲があるものの仕事に就けない人の生活を保障するための保険です。雇用保険における従業員と企業の負担割合は、業種によって異なります。雇用保険によって、求職者給付・就職促進給付や育児休業給付金、介護休業給付金などの保障を受けられます。

    参照:『雇用保険制度』厚生労働省 

    社会保険の意味|広義と狭義

    社会保険は広義の社会保険と狭義の社会保険に分けられます。広義の意味では、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つの保険によって構成されています。このうち、会社員や公務員が加入対象である「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の3つの社会保険は、狭義の意味での社会保険と呼ばれます。

    社会保険料の算定基準となる標準報酬月額とは

    標準報酬月額とは、社会保険料を算定する際に基準となる報酬額を指します。賃金や残業代など、労働者が受け取る報酬の合計額を基に決定されます。社会保険料は、この標準報酬月額の等級によって金額が決まります。

    給与から引かれる社会保険料の計算方法

    それぞれの社会保険料の計算方法について具体的に解説します。

    健康保険料の計算方法

    健康保険料は「標準報酬月額×健康保険料率」で計算できます。都道府県単位で異なる保険料率が設定されていますが、保険料率の全国平均は約10%程度です。

    たとえば、報酬月額が356,000円の従業員(東京都内で勤務、40歳)は、標準報酬月額は360,000円で25等級であり、健康保険料率は10%(令和5年度3月以降)のため、健康保険料は以下の通りです。

    健康保険料=360,000×10%=36,000円

    参照:『令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表』全国健康保険協会

    厚生年金保険料の計算方法

    給与の厚生年金保険料は「標準報酬月額×厚生年金保険料率」で、賞与は「標準賞与額×厚生年金保険料率」で求められます。厚生年金保険料率は、全国一律18.3%となっています。たとえば、報酬月額が356,000円の従業員は、標準報酬月額は360,000円で22等級であり、給与の厚生年金保険料は以下の通りです。

    給与の厚生年金保険料=360,000円×18.3%=65,880円

    参照:『令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)』日本年金機構

    介護保険料の計算方法

    介護保険料は「標準報酬月額×介護保険料率」で計算します。介護保険料率は毎年変動するため、改定の度に保険料率をチェックする必要があります。たとえば、報酬月額が356,000円の従業員は、標準報酬月額は360,000円であり、令和5年度の介護保険料率は1.82%のため、介護保険料は以下の通りです。

    介護保険料=360,000×1.82%=6,552円

    参照:『協会けんぽの介護保険料率について』 全国健康保険協会 

    雇用保険料の計算方法

    雇用保険料は「賃金総額×雇用保険料率」で計算します。雇用保険料率は事業の種類によって異なり、変更されることもあります。令和5年度の雇用保険料率は、以下の通りです。

    1.労働者負担2.事業主負担1+2.雇用保険料率
    一般の事業6/1,0009.5/1,00015.5/1,000
    農林水産・清酒製造の事業7/1,00010.5/1,00017.5/1,000
    建設の事業7/1,00011.5/1,00018.5/1,000

    たとえば、一般の事業で月収25万円の人の雇用保険料は、以下の通りです。

    1.労働者負担250,000×0.006=1,500円
    2.事業主負担250,000×0.0095=2,375円
    1+2.雇用保険料1,500+2,375=3,875円

    参照:『令和5年度雇用保険料率のご案内』厚生労働省

    給与から社会保険料はどれくらい引かれる? 具体例を紹介

    以下の条件における社会保険料を給与額ごとに計算します。

    条件
    ・東京都内で一般の事業に該当する企業に勤務中
    ・40歳
    ・2023年7月時点

    給与が20万円の場合

    上記の条件で、給与が20万円である場合、社会保険料はそれぞれ以下の通りです。

    健康保険料200,000円(標準報酬月額)×10%=20,000円
    厚生年金保険料200,000円(標準報酬月額)×18.3%=36,600円
    介護保険料200,000円(標準報酬月額)×1.82%=3,640円
    雇用保険料200,000円(給与額)×1.55%=3,100円

    給与が30万円の場合

    上記の条件で、給与が30万円である場合、社会保険料はそれぞれ以下の通りです。

    健康保険料300,000円(標準報酬月額)×10%=30,000円
    厚生年金保険料300,000円(標準報酬月額)×18.3%=54,900円
    介護保険料300,000円(標準報酬月額)×1.82%=5,460円
    雇用保険料300,000円(給与額)×1.55%=4,650円

    給与から引かれる社会保険料|知っておきたいポイント

    社会保険料率は、健康保険料や介護保険料、雇用保険料など、定期的に改定されるものがあります。また、2022年10月の法改正によって、社会保険の適用範囲が拡大されました。

    適用範囲は、2022年10月からは従業員数が101人以上、2024年10月からは従業員数が51人以上の企業に順次拡大されていきます。保険料の改定や法改正をこまめにチェックし、どの従業員がどの保険の対象であり、いくら支払うべきなのかを把握しておきましょう。

    まとめ

    社会保険は、種類ごとに保険料率が異なるうえ、多い時には年に2回改定が行われるため、毎月の保険料が正しく徴収できているかどうかよく確認する必要があります。計算に間違いがあると、従業員に迷惑をかけるだけでなく、再計算の手間がかかり、給与計算担当者の負担が増大してしまいます。この機会に、給与計算システムを見直してみてはいかがでしょうか。

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