【年末調整】仕訳や勘定科目を解説|パターン別に確認
年末調整は毎年行われていますが、制度や仕組みを理解していない方も多いのではないでしょうか。担当者として知っていなければならないケースもあります。
そこで本記事では、年末調整における仕訳の方法を解説します。具体例を用いた記載方法やQ&Aも紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
年末調整とは
年末調整とは、源泉所得税を精算する仕組みです。1年間の課税支給額から計算した所得税額を、多く徴収していた分は従業員に還付し、足りなかった場合は追加徴収します。
また、源泉所得税は一時的な預かり金であるため、1年間の課税所得によって所得税額は変動します。所得金額に応じた税率や控除額は、国税庁のサイトでご確認ください。
たとえば課税所得が400万円の人であれば、20%の所得税がかかります。毎月の源泉所得が1年間の課税所得に対して適切であるか確認するために、源泉所得額に応じて還付や追加徴収を行うのです。
年末調整の対象者
年末調整の対象者は原則、年末に勤務している従業員に対して行います。ただし、以下の条件に該当する場合は1年の途中に年末調整を行う必要があります。
□ | 海外支店などへの転勤で非居住者になった場合 |
---|---|
□ | 死亡による退職 |
□ | 12月の給与などの支払い後に退職した場合 |
□ | 心身の障害が著しいことが原因で退職した場合 (退職したあとに再就職をし、給与を受け取る見込みのある場合は除く) |
□ | 年間給与が103万円以下のパート労働者が退職した場合 (退職後その年にほかの勤務先から給与の支払いを受ける見込みのある場合は除く) |
対象となる給与
年末調整の対象は、1月1日~12月31日までに支払いが確定した給与や賞与に対して行われます。年末調整における支払いが確定するタイミングは2つあります。
支給日が定められている場合 | 給与支給日 |
---|---|
支給日が定められていない場合 | 給与を受け取った日 |
たとえば、12月勤務分の給与が1月20日に振り込まれる場合、年末調整の対象外です。
一方、12月支給分が12月中に支払われる場合は年末調整の対象となります。支給額が確定していても、年内に支給されない給与や賞与は年末調整の対象に該当しないことに注意しましょう。
年末調整書類の提出期限
年末調整書類の提出期限は翌年の1月31日です。必要書類をそろえたうえで、税務署に提出します。年末調整で必要な書類は以下の通りです。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
いずれも、扶養控除や保険料控除など給与取得者が控除の対象に該当するかを確認する書類です。
また、年末調整にかかる源泉徴収をした所得税および復興特別所得税は、翌年の1月10日までに納付する必要があります。支払い期限を過ぎたまま納付せずにいると、不納付加算税を徴収される可能性があるので早めに納めましょう。
年末調整で還付金が発生する理由
給与や賞与が増えたり、月の収入が変動したりする場合に還付金が発生します。毎月支払った源泉所得税額の合計より、年間の所得税額が少なければ還付金として戻ってきます。
ただし、すべての人が還付されるとは限りません。毎月の収入額に大きな差があり源泉所得額が異なる人は、還付金が発生しやすいでしょう。
源泉所得税の仕訳と勘定科目を解説
源泉所得税は正しい金額で仕訳を行う必要があります。金額を間違えると誤った税額を申告してしまうため、税務署から指摘されるかもしれません。
そこで、どのように帳簿付けを行えばよいかを解説します。
毎月の給与支払い時
たとえば、毎月の支払い時は以下のように記載します。
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
---|---|---|---|
給与 | 310,000 | 現金預金 | 246,000 |
預り金(源泉所得税) | 8,000 | ||
預り金(社会保険料) | 30,000 | ||
預り金(雇用保険料) | 1,000 | ||
預り金(住民税) | 15,000 |
社会保険料や雇用保険料などは「預り金」で処理しましょう。支払いサイクルにより「未払金」「未払費用」と記載する場合もあります。
毎月の源泉所得税納付時
源泉所得税は原則、毎月納付します。源泉所得税納付時の仕訳は以下の通りです。
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
---|---|---|---|
預り金(源泉所得税) | 50,000 | 現金預金 | 50,000 |
従業員から預かった源泉所得税を、翌月10日までに納付します。ただし、以下の条件を満たす企業の場合は半年に一度の納付で問題ありません。
- 従業員が常時10人未満
- 所轄の税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出している
毎月行う手続きの負担を軽減するための措置なので、該当する企業は申請をおすすめします。
また、報酬を支払う際に預かった源泉所得税もあわせて納付しましょう。業務委託契約を結んでいるライターなどに支払った報酬から徴収した源泉所得税が該当します。
年末調整時
年末調整時は、還付金があるか追加徴収が必要なのかによって仕訳が変わります。それぞれの状況にあわせて仕訳方法を解説するので参考にしてください。
還付ありの場合
給与と一緒に還付金を支払う場合は以下のように記載します。
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
---|---|---|---|
給与 | 310,000 | 現金預金 | 246,000 |
預り金(源泉所得税) | 50,000 | 預り金(源泉所得税) | 8,000 |
預り金(社会保険料) | 30,000 | ||
預り金(雇用保険料) | 1,000 | ||
預り金(住民税) | 15,000 |
還付金は預り金として処理します。また、給与は振り込みで還付金を手渡しにする場合は仕訳を分けて記載しましょう。
還付金を手渡しする場合は以下の通りです。別々で渡すので、項目を分けて記載してください。
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
---|---|---|---|
給与 | 310,000 | 現金預金 | 246,000 |
預り金(源泉所得税) | 8,000 | ||
預り金(社会保険料) | 30,000 | ||
預り金(雇用保険料) | 1,000 | ||
預り金(住民税) | 15,000 |
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
---|---|---|---|
預り金(源泉所得税) | 50,000 | 預り金(源泉所得税) | 50,000 |
追加徴収ありの場合
年末調整の結果、追加徴収する場合は以下のように記載します。還付金と同様に預り金と記載します。
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
---|---|---|---|
給与 | 310,000 | 現金預金 | 196,000 |
預り金(源泉所得税) | 8,000 | ||
預り金(社会保険料) | 30,000 | ||
預り金(雇用保険料) | 1,000 | ||
預り金(住民税) | 15,000 | ||
預り金(源泉所得税) | 50,000 |
給与は振り込み、追加徴収は現金で対応する場合は以下の通りです。給与と現金で渡す帳簿を別で記載して対応しましょう。
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
---|---|---|---|
給与 | 310,000 | 現金預金 | 246,000 |
預り金(源泉所得税) | 8,000 | ||
預り金(社会保険料) | 30,000 | ||
預り金(雇用保険料) | 1,000 | ||
預り金(住民税) | 15,000 |
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
---|---|---|---|
現金預金 | 50,000 | 預り金(源泉所得税) | 50,000 |
年末調整や仕訳に関するQ&A
年末調整や仕訳に関するQ&Aをまとめました。
年末調整の計算をしたときの仕訳は?
年末調整の計算をした時点で仕訳をする必要はありません。給与が確定したときや、過不足額を精算するときに仕訳を行います。
還付の場合でも納付書の提出は必要?
納付書の提出は必要です。正式名称は「所得税徴収高計算書」と言い、源泉所得税の不足金や還付金があるときに記入するための書類です。
納付書の記載方法
還付した金額は▲をつけて「年末調整による超過税額」に記入します。追加徴収した場合は「年末調整による不足税額」に記入しましょう。
源泉所得税の特例とは?
毎月納める源泉所得税を、半年に一度納めればよいという特例が存在します。対象は以下の通りです。
- 給与の支給人員が常時10人未満
- 所轄の税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出している
納期の特例を選択すると、毎月源泉所得税を支払わなくて済むメリットがあります。1~6月までに源泉所得した税金は7月10日に納めて、7~12月までの税金は翌年1月20日までに納付します。
毎月行う手間を半年に1回に減らせるので業務効率化につながるでしょう。該当する企業は必要に応じて申請を検討してみるとよいでしょう。
まとめ
年末調整は、1年間の所得税額を確定するための制度です。多く支払っていた人は還付されて、足りない人は追加徴収されます。年末調整の対象となる給与は1月1日〜12月31日に支給された給与です。12月勤務分の給与が1月に振り込まれる場合は対象外のため注意しましょう。
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