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源泉徴収簿を用いた年末調整を手順つきで紹介|準備する資料や注意したいポイントも解説

源泉徴収簿は、年末調整を行う際に役立つ書類です。しかし、源泉徴収簿の作成や提出は義務ではないため、そもそもどのような帳簿なのか知らない方も多いのではないでしょうか?また、名前のよく似た『源泉徴収票』と混同しやすいのも一因でしょう。

そこで本記事では、源泉徴収簿の作成方法や、源泉徴収簿を年末調整に活用する方法を紹介します。源泉徴収票との違いについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

源泉徴収簿を用いた年末調整を手順つきで紹介|準備する資料や注意したいポイントも解説
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    源泉徴収簿の役割とは

    源泉徴収簿の正式名称は、『給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿』といいます。文字通り、給与・賞与などの所得や社会保険などの控除額を記録し、源泉徴収を正確に行うための帳簿です。法的な作成義務はなく、あくまで企業が任意で作成するものです。

    源泉徴収簿と源泉徴収票、賃金台帳の相違点

    源泉徴収簿とよく似た名前の書類に、源泉徴収票があります。また、源泉徴収簿は「賃金台帳としても使用できる」と誤解されやすいですが、実はまったく別の書類です。それぞれの書類の違いや記載内容、役割などを解説します。

    源泉徴収票との違い

    源泉徴収票は、簡単にいえば所得税の証明書です。従業員に支払った1年分の給与の明細、源泉徴収した所得税・社会保険料などが記載されています。源泉徴収票は法定調書の一つであり、事業主は源泉徴収票を作成・提出する義務があります。

    一方、源泉徴収簿とは、源泉徴収票を発行するために作成する帳簿です。従業員に支払った月々の給与額や社会保険料などの控除額、徴収税額に加え、扶養控除などの申告や年末調整の状況が記載されています。

    賃金台帳との違い

    賃金台帳とは、従業員の賃金計算の基礎となる事項や賃金の額などが記載されている帳簿のことです。源泉徴収票と同じく法定帳簿の一つであり、事業主は賃金台帳を作成・保管する義務があります。

    記載内容が似ていることから、賃金台帳と源泉徴収簿のどちらでも利用できるフォーマットを作成して兼用している会社も多いでしょう。そのため、源泉徴収簿は賃金台帳の代わりになると思われがちですが、それぞれまったく別の書類です。たとえば、源泉徴収簿には社会保険料などの控除額や年末調整の状況といった情報も記載されています。

    源泉徴収簿の作成に必要な資料・書類

    源泉徴収簿を作成するためには、さまざまな資料や書類を用意する必要があります。今回は3つのカテゴリーに分けて、具体的な書類名をまとめました。

    従業員の情報が記された書類

    従業員の所属(部署など)や職名(役職など)、住所、生年月日といった基本的な情報から毎月の給与・手当などの総支給金額、社会保険料、扶養親族などの数、算出税額まで、源泉徴収簿に記載する情報がわかる資料を用意します。

    各種控除関係の申告書

    以下のように、控除に関する申告書を用意しましょう。

    • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(扶養控除等申告書)
    • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
    • 給与所得者の保険料控除申告書
    • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 など

    控除関係の申告書は従業員に作成してもらうものなので、早めに周知することが大切です。

    最新の源泉徴収税額表

    源泉徴収の際に用いる『源泉徴収税額表』は、ほぼ毎年のように改正されています。常に最新の源泉徴収税額表を手元に置き、正しい金額を計算しましょう。

    源泉徴収簿を作成する手順

    源泉徴収簿は、おおむね以下の手順で作成します。

    1. 従業員の個人情報を記入する
    2. 月々の給与情報を記入する
    3. 扶養家族の人数・算出税額を記入する
    4. 賞与について記入する
    5. 給与と賞与の合計金額を記入する
    6. 給与所得控除後の金額を算出する
    7. 扶養家族の情報を記入する
    8. 扶養家族についての控除額を計算する
    9. 保険料控除についての情報を記入する
    10. 住宅借入金等特別控除について記入する
    11. 今年度の算出所得税額を記入する

    それぞれのステップについて、以下で詳しく解説しましょう。

    1.従業員の個人情報を記入する

    まずは、収集した基本情報をもとに、従業員ごとに個人情報を記入します。

    記入項目は、所属する部署名や職名(部長・課長など)、住所、氏名、そして整理番号です。整理番号は確定申告をしている従業員に対して発行される番号で、ない場合は記入しなくても問題ありません。

    2.月々の給与情報を記入する

    従業員に支払った給与を1か月ごとに記入します。月ごとの給与明細を確認しながら、支給月日や総支給額、社会保険料の控除額、社会保険料控除後の給与などの金額を転記しましょう。

    3.扶養家族の人数・算出税額を記入する

    扶養家族がいる場合は、扶養家族の人数と算出税額を記入します。月々の給与情報と同様に、給与明細の内容を転記するといいでしょう。

    4.賞与について記入する

    賞与を支給している場合は、賞与の総支給額や社会保険料の控除、社会保険料控除後の金額を記入します。

    5.給与と賞与の合計金額を記入する

    1年間の給与額と賞与額を記入できたら、それぞれの合計金額を計算します。また、給与と賞与の合計金額を合算した総額も記入しましょう。

    6.給与所得控除後の金額を算出する

    本年度分の所得の合計が確定したので、給与所得控除後の給与と賞与の金額を算出します。なお、控除額は支給する給与によって変動し、計算方法も異なるため注意が必要です。

    7.扶養家族の情報を記入する

    扶養家族がいる場合は、扶養控除等の申告欄の「申告の有無」に丸印をつけます。扶養家族の人数や、配偶者の有無などの情報を記入しましょう。

    8.扶養家族についての控除額を計算する

    扶養家族の情報をもとに、控除額を計算しましょう。「配偶者控除額、扶養控除、基礎控除額及び、障害者等の控除額の合計額」の欄に、計算した金額を記入します。

    9.保険料控除についての情報を記入する

    従業員が提出した『保険料控除申告書』を確認しながら、保険料の欄に控除額を記入しましょう。控除の対象は、生命保険や地震保険、社会保険などです。

    10.住宅借入金等特別控除について記入する

    従業員が住宅借入金等特別控除を受ける場合に記入します。従業員から確定申告書を受け取っているはずなので、内容を転記するといいでしょう。

    11.今年度の算出所得税額を記入する

    すべての控除についての情報を記入したら、算出所得税額を計算し、金額を正しく記入しましょう。

    源泉徴収簿を用いた年末調整の計算方法

    源泉徴収簿には、年末調整の計算に使用する欄が設けられています。源泉徴収簿を作成し終えたら、年末調整計算の各欄はおおよそ埋め終わっているでしょう。ここまで記入した情報があると、以下の手順で今年度の年調年税額を計算できます。

    前年からの過不足税額を記入する

    前年の年末調整から繰り越した過不足税額がある場合は、税額と還付・徴収した月区分などを記入します。

    年調所得税額を計算する

    源泉徴収簿に記入した情報をもとに、年調所得税額を計算しましょう。1,000円未満の端数は切り捨てて記入します。基本的には、算出所得税額をそのまま年調所得税額として扱います。ただし、従業員が住宅借入金等特別控除を利用する場合は、差し引き後の金額を記入してください。

    年調年税額を計算する

    年調所得税額をもとに、年調年税額を計算します。年調年税額とは、従業員が最終的に納める税額のことです。年調所得税額に復興特別所得税分の2.1%を加えると計算できます。

    たとえば、年調所得税額(住宅借入金等特別控除を差し引いたあとの金額)が250,000円だった場合、最終的な年調年税額は250,000円×1.021 = 255,250円です。ただし、100円未満の端数を切り捨てるため、所定の欄には「255,200円」と記入しましょう。

    差引超過額または不足額の計算・精算方法

    扶養親族の増減や住宅ローンなどの控除申請により、最終的な年調年税額と源泉徴収税額に差額が生じることがあります。差額については超過額または不足額を選択するとともに、計算結果を所定の欄に記入しましょう。超過額または不足額は、年調年税額から「給与・手当・賞与に対する合計税額」を差し引くと計算できます。

    最後に、超過額または不足額の精算方法を選択し、金額を記入しましょう。超過額、不足額それぞれについて、以下のような精算方法を選べます。

    超過額の精算方法
    本年最後の給与から徴収する税額に充当
    未払給与にかかる未徴収の税額に充当
    差引還付(本年中に還付または翌年に還付)
    不足額の精算方法
    本年最後の給与から徴収
    翌年に繰り越して徴収

    年末調整に源泉徴収簿を使用する際の注意点

    年末調整に源泉徴収簿を使用する際は、以下の2点に注意しましょう。

    • 源泉徴収簿への記入漏れをなくす
    • 源泉徴収簿は7年間保管する

    それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。

    源泉徴収簿への記入漏れをなくす

    源泉徴収簿の内容をもとに年末調整を行う場合、そもそもの源泉徴収簿に記入漏れがあると年末調整が正確にできなくなってしまいます。また、源泉徴収については頻繁に制度改正が行われているため、前年度までのやり方がそのまま通じるとは限りません。

    常に最新のルールに則って処理するとともに、ダブルチェック体制など記入漏れを防ぐ仕組みを確立しましょう。必要な情報を漏れなく転記するために、書類や資料集めなどの事前準備を入念に行うことも大切です。

    源泉徴収簿は7年間保管する

    年末調整に使用する書類は、7年間保管する義務があります。源泉徴収簿を年末調整の根拠として使用したのであれば、同様に7年間保管しなければなりません。

    源泉徴収簿には、従業員の氏名や住所、給与といった個人情報が多分に含まれています。万が一、個人情報が外部に漏えいしてしまったら、企業の社会的信用が失墜する事態にもなりかねません。作成した源泉徴収簿については取り扱いのルールを明確化し、セキュリティ対策を万全にすることが大切です。

    源泉徴収簿を活用して年末調整を正確に

    源泉徴収簿は、源泉徴収票を発行するための準備として作成する書類です。源泉徴収簿に法的な義務はなく、作成するかどうかは企業の判断に委ねられています。しかし、源泉徴収簿には年末調整の欄が設けられているため、順を追って項目を埋めていけば従業員が支払うべき最終的な税額を計算できます。源泉徴収簿を上手に活用して、年末調整を正確かつスムーズに行える仕組みを整えましょう。

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