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有給休暇引当金とは? 計算方法や考え方のポイントを解説!

有給休暇引当金とは? 計算方法や考え方のポイントを解説!

有給休暇引当金とは、企業が本来負うべき債務として計上する負債性引当金です。国際財務報告基準であるIFRSや米国基準ではこの引当金を債務として認識するとしていますが、日本では広く浸透しているわけではありません。

そこで本記事では、有給休暇引当金についてわかりやすく解説しながら、有給休暇引当金の計算や各項目の算定についてのポイントなどもご紹介します。企業の経営層はもちろん、財務担当者や労務担当者などもぜひ参考にしてみてください!

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    有給休暇引当金とは?

    有給休暇引当金とは、未払い有給休暇とも呼ばれ、決算時に算出される負債性引当金です。未消化の有給休暇の日数に日給を乗じて計算します。有給休暇引当金は、消化されていない有給日数分の金額を「本来企業が負うべき債務」とするものと理解しましょう。

    日本では未消化分の有給休暇に対する規定などはなく、会計処理として計上されていないため債務としては認識されませんが、日本でも2010年に任意適用が認められた国際財務報告基準(IFRS)や米国基準などの会計基準では「債務」として認識されています。

    ただし、今後日本においても海外同様に会計処理上計上しなければならなくなる可能性もあるため、基本的な部分だけでも理解しておくとよいでしょう。

    有給休暇引当金の計算

    有給休暇引当金を計算する場合は、決算期後に消化されるであろう有給休暇を金額として換算します。有給休暇引当金を求める計算式は、

    未消化分の有給日数×平均有給取得率×日給

    です。計算式だけで考えれば複雑ではありませんが、実際の計算においては、細かい部分でさまざまな検討が必要とされます。

    日本では有給休暇引当金を計上しない?

    日本では有給休暇を取得しないまま退職する人も少なくありません。従業員の有給未消化分を計算し、引当金として企業の負債として計上することで、より正しく企業の本来の債務状況として認識できます。

    しかし、現在の日本では有給休暇引当金は計上しなくてもよいとされているため、債務扱いにはならないのです。

    有給休暇引当金の算定根拠について

    有給休暇引当金を計算するうえで、根拠となる各項目の算定について解説します。さまざまな考え方があるため、自社の考え方やルールを明確化し、算定根拠として説明できるようにしておくとよいでしょう。

    有給休暇日数の算定について

    有給休暇引当金における「有給休暇日数」を算定する際は、次年度に繰り越される日数だけでなく、新たに付与される日数や消化期限によって失効となる日数も考慮します。

    有給休暇の基準日が4月1日で、未使用の有給休暇繰り越し分がある場合は、3月31日時点で残っている有給休暇(失効分を除く)と、新たに4月1日に付与される日数を足して算出します。

    繰り越し日数が15日、新たに付与される分が20日の場合、合計35日が有給休暇引当金における「日数」として算出できます。ただし、傷病休暇などの特別休暇をどのように扱うのかなどは検討しなければなりません。

    有給休暇取得率の算定について

    有給休暇引当金における「有給休暇取得率」については、一般的には繰り越された有休の取得率と新しく付与された有休の取得率に分けて算定します。

    企業によっては繰り越し分と新たに付与される分を分けずに計算する場合もありますが、より細かい見積もりを行うためには分けて計算するのがよいでしょう。

    ただし、消化率を求める際は、ほかにもさまざまな点を検討しなければなりません。

    • 個人別で求めるのかグループ単位なのか
    • 消化率の対象期間をどこからどこまでにするのか
    • 中途入社や退職予定者をどう扱うのか

    など、社内でも検討してみましょう。

    日給の算定について

    有給休暇引当金における「日給」については、単純に給与から計算すればよいわけではありません。企業では、労働者に給与以外にも残業代や福利厚生による手当などを支給している場合があるためです。そのため、どこからどこまでを日給に含めるのかを検討する必要があるでしょう。

    一般的には、勤務したことによって金額が変わらないものを軸にするとわかりやすいでしょう。たとえば勤務しているからこそ発生する残業代などは、有給休暇における計算には必要ないためです。

    このように軸を持つことで計算しやすくなりますが、まずは基本給や役職給などのほかに、各種手当や賞与などをどのように扱うのかを検討しなければなりません。

    日本で有給休暇引当金が導入されるとどうなる?

    有給休暇引当金とは? 計算方法や考え方のポイントを解説!

    日本において有給休暇引当金の導入は本格化されていませんが、今後導入しなければならなくなる日がくる可能性もゼロではありません。そこで、日本における有給休暇引当金の流れや今後導入された場合に考えられることをご紹介します。

    有給休暇引当金導入に関する経緯

    有給休暇引当金の導入については、2010年にIFRSの任意適用が認められていますが、日本において強制的な計上義務などはありません。IFRSでは、有給休暇引当金を企業の債務と捉えますが、日本では債務としての扱いはしていないという場合が多いでしょう。

    仮にIFRSを適用することになると、世界的に有給休暇取得率の低い日本の企業では、有給休暇引当金の金額が大きくなることが予想され、債務総額が増えれば自己資本比率の低下にもつながりかねません。

    有給休暇引当金が導入されると取得率が上がる

    有給休暇の引当金は、未消化分を焦点にしたものであるため、有給休暇の取得率が上がれば上がるほど、引当金の金額も少なくなります。

    引当金の金額が少ないということは、企業の債務として計上する金額も少なくなります。企業の債務は当然少ない方がよいため、日頃から有給休暇の取得率を向上させるために取得を促進する必要があるともいえそうです。

    有給休暇の取得率を上げるには?

    有給休暇の取得率を上げるためには、労働者に有給休暇の取得促進を行うことが挙げられますが、具体的にはどのような方法で取得を促進できるのでしょうか。

    有給休暇取得計画表を作成する

    労働者が有給休暇を確実に取得するためには、計画表を作成することも大切です。1年単位が難しければ半年や四半期単位など、期間ごとに計画表を作成し、あらかじめ労働者各自で取得希望日を指定することで、スムーズな有給休暇の取得につながるでしょう。

    雇用者が時季指定を行う

    企業は、年間で10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、その日数のうち5日について時季を指定して取得させなくてはなりません。

    ただし、労働者がすでに5日以上取得している場合であれば、指定は不要です。時季指定にあたって、企業は労働者の意見聴取を行い、その意思を尊重することが求められています。

    計画的付与制度の導入

    年次有給休暇の計画的付与では、労働者が保有する年次有給休暇日数の5日を除いた分について、取得する日にちをあらかじめ決める制度です。

    交替制付与方式

    計画的付与における交替制付与方式とは、班やグループごとに交代で年次有給休暇を付与するものです。各チームや現場の状況を踏まえて休む日を設定できるメリットがあります。

    一斉付与方式

    計画的付与における一斉付与方式とは、会社や事業場全体として有休の休みを設定する方式です。休みを全体で合わせられるメリットがありますが、有給休暇の付与対象でない労働者への扱いには注意しなければなりません。

    個人別付与方式

    計画的付与における個人別方式とは、計画表などを用いて労働者個人別に付与する方式です。

    企業では、誕生日や記念日などをメモリアル休暇として推奨するケースも少なくなく、記念日などはあらかじめ決まっている日であるため、計画や見通しが立てやすいというメリットがあるでしょう。

    計画的付与制度を導入する場合は、就業規則への明記と労使協定の締結をしなければなりませんが、確実な有給休暇取得につながるでしょう。

    参照:『年次有給休暇の計画的付与制度』厚生労働省

    半日単位での年休消化を認める

    有給消化を促進するためには、半日単位の有給取得を認めるという方法も効果的でしょう。業務が忙しくて1日取ることができなくても、半日単位なら取りやすいという場合もあるでしょう。会社や部署、労働者本人の状況に応じて柔軟な対応を取ることも大切です。

    システムを活用する

    有給消化を促進するために、システムを活用するのも方法の一つです。

    たとえば勤怠管理システムや有給管理システムには、有給休暇の取得状況を確認できる機能や有給消化が進んでいない従業員に通知してくれる機能が搭載されているものが少なくありません。

    こうしたシステムを活用することで有給休暇の管理を効率化するだけでなく、取得促進にも効果を期待できるでしょう。

    まとめ

    有給休暇の引当金とは、未消化分の有給休暇日数を日給で金額換算し、債務として計上した金額のことです。

    日本ではIFRSを任意適用としているため有給休暇の引当金の計上も広く浸透しているわけではないものの、今後計上しなければならなくなる可能性もあるでしょう。

    有給休暇の引当金の計算では、金額を算出するにあたって各項目についてどのような定義付けをするのか判断が分かれるところですが、まずは概要や仕組みだけでも理解をしておくとよいでしょう。

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