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年休(年次有給休暇)とは? 付与日数や時期、注意点なども解説

年次有給休暇とは従業員に有給の休暇を与える制度であり、労働者が働きやすい環境や休暇を通じてリフレッシュするなどの目的があります。年次有給休暇は、労働基準法の改正により年5日の取得が義務化されたことが記憶に新しいのではないでしょうか。

年次有給休暇の取得が義務化されたとはいえ、詳しく理解できていないケースや会社として注意しなければならない点に不安があるケースも少なくありません。

本記事では、年次有給休暇の付与日数や時期などの細かいルールや注意点をわかりやすく解説します。企業の経営層はもちろん、年次有給休暇を担当する人事担当者や勤怠管理担当者はぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

年次有給休暇とは? 付与日数や時期、注意点なども解説
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    年休(年次有給休暇)とは

    年次有給休暇とは、従業員に有給の休暇を与える制度です。労働基準法にも定められており、年次有給休暇を取得することは労働者の権利でもあります。

    年次有給休暇には法定のルールとして雇用期間と出勤日数の条件を設けており、これらを満たしている従業員なら雇用形態にかかわらず取得できます。

    年次有給休暇と通常の休みの違いは給与が発生するかどうかであり、年次有給休暇を取得して休んだ場合は給与が発生しますが、通常の休みでは給与は発生しません。

    また年次有給休暇は、有休や有給休暇、年休などと呼ばれることもありますが、すべて同じ意味と理解しましょう。

    有休取得が義務化

    年次有給休暇は、労働基準法の改正により有給休暇の取得が義務化されました。

    具体的には、年10日以上の年次有給休暇を付与している従業員には基準日から1年以内に5日以上の年次有給休暇を取得させなければなりません。そのため企業としては、年次有給休暇の管理強化がますます必要とされています。

    付与しなかった場合の罰則

    年次有給休暇を取得させなかった場合には、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

    ほかにも、従業員が希望する時季に年次有給休暇を取得させなかった場合は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため、注意しなければなりません。このように、年次有給休暇の取得が義務化されたことで、企業の担当者には正しい管理が求められます。

    年次有給休暇を取得させないことはもちろん、年次有給休暇の取得日数や希望時季に取得させないなどの問題が起こらぬよう、徹底した管理を行いましょう。

    参照:『年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説』厚生労働省

    年次有給休暇を付与する条件と使用期限

    年次有給休暇を付与するためには、条件を満たす必要があります。また、付与された年次有給休暇には使用期限がある点も覚えておかなくてはなりません。これらのルールをご紹介します。

    年次有給休暇の付与条件

    年次有給休暇を付与する条件とタイミングについては以下の通りです。

    • 雇い入れから6か月を経過した日(1年ごと)
    • 全労働日の8割以上出勤

    この条件を踏まえると、仮に雇い入れの日から6か月が経過したとしても、出勤率が8割未満の場合は年次有給休暇は付与する必要はありません。

    ただし、条件に満たしていない場合は付与を禁止するという意味ではないため、8割未満の出勤率であったとしても体調不良や家庭事情などを考慮し、年次有給休暇を付与することはできます。

    また、雇い入れの日から6か月を経過した日が基準日とされていますが、これは労働基準法上の基準日(最低基準)です。そのため、雇い入れの日から6か月を待たずに付与することもできるという点を理解しておきましょう。

    年次有給休暇のルールは企業によっても大きく異なります。自社が定める年次有給休暇付与や取得のルールをあらためて確認し、認識相違がないようにしておきましょう。

    参照:『労働基準法第39条』e-GOV法令検索

    年次有給休暇の使用期限

    年次有給休暇の使用期限は、2年とされています。そのため、付与されたタイミングから1年後である次の付与の際に、前回の年次有給休暇が残っている場合は繰り越しができます。

    さらに1年後の付与には、前々回に付与された年次有給休暇の使用していない分が消滅すると理解しましょう。

    有給付与日数の計算方法

    年次有給休暇の付与日数は、所定労働日数もしくは所定労働時間によって異なります。どのような場合にどれくらいの日数を付与しなくてはならないのか確認しましょう。

    通常の労働者

    通常の労働者における年次有給休暇の付与について、週の所定労働時間30時間以上・週の所定労働日数が5日以上(もしくは年間の所定労働日数が217日以上)であれば、基本の年次有給休暇日数が付与されます。

    基本の年次有給休暇日数は以下の通りです。

    年次有給休暇の基本付与日数
    勤務年数0.5年1.5年2.5年3.5年
    付与日数10日11日12日14日

    このように、基本的には1年単位で付与日数が増えていきますが、6.5年目以降については毎年20日ずつの付与としています。

    ただし、この付与日数については労働基準法上における最低限守るべきルールとして設定されているものであるため、この日数より多く付与することも可能です。

    フルタイムではない労働者

    年次有給休暇は、雇用形態にかかわらず付与すべきものとされているため、正社員かアルバイトかなどの雇用形態による違いはありません。しかし、所定労働時間や所定労働日数に応じて付与する日数が異なる「比例付与」を理解しておきましょう。

    比例付与について、週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の場合は以下の日数が付与されます。また、年次有給休暇の付与日数が10日以上になると、年5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。

    週所定労働日数(もしくは1年の所定労働日数)勤続0.5年勤続1.5年勤続2.5年勤続3.5年
    4日(169~216日)7日8日9日10日
    3日(121~168日)5日6日6日8日
    2日(73~120日)3日4日4日5日
    1日(48~72日)1日2日2日2日

    参照:『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』厚生労働省

    時間単位取得も可能

    年次有給休暇は一般的には1日単位で取得しますが、半日や時間単位で取得することも不可能ではありません。時間単位で取得するためには、会社側と労働者間で労使協定を締結する必要があり、年5日の範囲内で取得できます。

    労使協定では、時間単位で取得する労働者の範囲や時間単位年次有給休暇の日数(年5日以内)、年次有給休暇1日分の相当時間や1時間以外を単位とする場合の時間数について規定しなければなりません。

    ただし半日単位であれば、労使協定を締結しない場合でも両者の合意があれば取得できます。

    また、時間単位で年次有給休暇を取得する場合、年5日の年次有給休暇取得義務の日数に含めることはできないという点も覚えておきましょう。

    参照:『時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう!』厚生労働省

    年次有給休暇を取得させる方法

    年次有給休暇を取得させる方法について確認してみましょう。

    従業員が申請

    年次有給休暇を取得させる方法の1つめは、従業員が希望する日を申請して取得させる方法です。

    この方法は従業員の好きなタイミングで取得できるメリットがある一方で、従業員がバラバラに都度申請することになるため、取得義務である5日分を消化できているか管理を強化しなければなりません。

    使用者(会社側)が指定

    年次有給休暇を取得させる方法の2つめは、使用者(会社側)が取得する時季を指定するやり方です。

    時季を指定する場合は、従業員の希望を聞いたうえで、できるだけ希望に沿うように指定しましょう。また、取得義務のある5日を超える年次有給休暇を指定して取得させることはできないという点には注意しなければなりません。

    計画的付与制度

    年次有給休暇を取得させる方法の3つめは、全従業員が保有する年次有給休暇の5日を超える部分について、あらかじめ取得する日にちを決める計画的付与制度です。計画的付与制度を採用する場合、年5日は従業員の自由な意思で取得できるようにしておかなくてはなりません。

    計画的付与制度の場合、企業全体(もしくはグループ別・個人別)として指定日に年次有給休暇を取得することになるため、管理の手間も省けるでしょう。

    ただし、計画年休で年次有給休暇を取得させるには、就業規則への明記と労使協定の締結が必要です。

    参照:『年次有給休暇の計画的付与制度』厚生労働省

    年次有給休暇を管理するうえでの注意点

    年次有給休暇を管理する際の注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。あらかじめ注意点を把握しておき、管理の漏れやミスを防止しましょう。

    年次有給休暇管理簿の作成と保存

    年次有給の取得が義務化されたことにより、使用者(会社側)は年次有給休暇管理簿の作成と保存も義務化されました。管理簿の保存期間は期間満了後から5年間ですが、経過措置として当面の間は3年間を保存期間としています。

    年次有給休暇管理簿では、労働者ごとに基準日や取得日数などを記録し、取得漏れなどのミスがないように管理しなければなりません。

    保存に関する罰則はないものの、年次有給休暇の取得義務を果たすためには、徹底した管理が必要といえるでしょう。

    時季変更権を持つ

    年次有給休暇は、基本的には従業員の希望を尊重する必要がありますが、企業運営に支障が生じる場合などにおいては「時季変更権」の行使ができるようになっています。

    時季変更権は、従業員が希望した年次有給休暇の日にちを変更してほしいと要請する権利です。

    あくまで会社運営に支障をきたす場合に行使できる権利であるため、できるだけ従業員の希望に沿った年次有給休暇の取得ができるよう、組織体制を整えておきましょう。

    年次有給休暇の取得理由は問わない

    年次有給休暇を取得させる際、使用者(企業側)は取得理由を問わない点にも注意しましょう。労働者は年次有給休暇の取得について、その理由などを提示する義務はありません。

    そのため、上司が部下に対して年次有給休暇取得の理由についてしつこく聞いてしまわないよう、会社全体として理解を深めておきましょう。

    基準日の変更

    年次有給休暇の付与日について、従業員ごとにバラバラに管理する煩雑さを懸念して基準日を統一している企業もあります。この基準日を変更する場合は、本来の基準日よりも前倒しで年次有給休暇を付与しなければなりません。

    また、従業員からの要望があれば年次有給休暇を前借りさせることも可能です。しかしその場合、前借りした分の日数を差し引いて本来の付与日に残りの日数を付与することは違法とされているため、注意しなければなりません。

    たとえば、本来2024年1月10日に10日付与する予定であるものの、前借りとして2023年11月に3日分を付与した場合、本来の付与日である2024年1月10日には、予定通り10日付与しなければならないということです。

    そのため年次有給休暇の前借りをする場合は、

    • 基準日の変更(前倒し)を行う
    • 追加の年次有給を付与する
    • 特別休暇を与える

    などの扱いをしなければなりません。

    しかし、法律で定められている付与日数以上の年次有給休暇を企業が与えている場合、かつ前借りする日数がすべて法定の付与日数を上回った日数でおさまる場合には、単純な前借りとできます。

    このように、従業員は年次有給休暇を前借りできるものの、企業は応じなければならないわけではありません。管理の手間などを踏まえたうえで慎重に対応するようにしましょう。

    基本的には有給の買い取りはできない

    年次有給休暇の未消化分について、企業側が買い取ることは基本的にはできません。

    年次有給休暇は、従業員が年次有給休暇を取得し、十分に休んだりリフレッシュしたりすることを目的としているためです。

    ただし、法律で定められている年次有給休暇の付与日数以上に付与している場合については、法定上の日数を超えた分の買い取りができることもあるため、そのような企業は買い取りできる場合について把握しておきましょう。

    年次有給休暇はシステムによる管理がおすすめ

    年次有給休暇の付与や取得について、従業員ごとに基準日が異なっていたり、取得日数がバラバラであったりすることで、管理が煩雑になりがちです。

    そこで、正しい年次有給休暇の管理を行うためには、システムを活用するのがおすすめです。システムで管理を行えば、一人ひとりの年次有給休暇の取得状況などをスムーズに把握でき、取得漏れや認識の相違などを防げるでしょう。

    年次有給休暇を管理できるシステムとして、勤怠管理システムや有休管理ソフトなどが挙げられます。さまざまなサービスがあり、搭載されている機能もそれぞれ異なるため、自社に最適なサービスを検討してみましょう。

    まとめ

    年次有給休暇とは、従業員のリフレッシュや働きやすさの改善を目的とする有給の休暇制度です。

    労働基準法の改正により、法定の年次有給休暇が10日以上付与されているすべての労働者に、付与から1年以内に5日の年次有給休暇の取得が義務化されました。

    従業員のワークライフバランスを整えたり、十分な休暇によって心身の健康を守ったりするためにも、年次有給休暇の取得義務は果たさなければなりません。

    年次有給休暇の付与や取得についての知識や理解を深め、正しい管理を行いましょう。

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