勤怠管理をDX化するためには? 手順やポイントを解説
勤怠管理とは、法律に基づいて従業員の労働時間や休憩など、就業状況を把握することです。従来の勤怠管理方法は出勤簿やタイムカードなどがありますが、近年ではシステムを導入している企業が増えています。勤怠管理をデジタル化しておくことで効率的な運用が実現します。
本記事では、勤怠管理をデジタル化するための手順やポイント、システムの選び方を解説します。企業の人事担当者や経営者は参考にしてください。
勤怠管理とは
勤怠管理とは、企業が従業員の就業状況を正確に把握して管理を行うことです。
主な目的は以下の通りです。
- 従業員の労働時間の正確な把握
- 適正な賃金の支払い
- 過剰労働の早期発見や防止
- 従業員の健康維持
従業員の健康に配慮し、法律に違反しないように労働時間を管理します。記録は使用者が従業員の出勤日を確認し、タイムカードやICカードなどの客観的なデータを見て登録しています。
勤怠管理の方法
勤怠管理の主な方法は以下の4種類です。
- 出勤簿(紙)
- エクセル
- タイムカード
- 勤怠管理システム
出勤簿やタイムカード、エクセルを用いた方法は、一見手軽に始められるように思えるでしょう。しかし、実際にはそれぞれに手間やコストがかかる側面があります。特に出勤簿やタイムカードは、データの入力や管理に時間が必要で、使いやすいとは一概にはいえません。
また、タイムカードに記録するシステムも導入時に多少のコストが発生します。
勤怠管理システムは、その他の方法より導入時に初期コストがかかりますが、なかには法改正に柔軟に対応するシステムもありメリットに感じられる点もあるでしょう。
DXとは
勤怠管理のDX化に関連して、DX(デジタルトランスフォーメーション)についてあらためて解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)
DX(デジタルトランスインフォメーション)とは、顧客や市場の激しい変化に対応しながら、デジタル技術を活用し、顧客のニーズに応えて他社との優位性を得る取り組みです。ビジネスモデルや業務プロセスの根本的な変革を目指します。
最終的な目的は、デジタル技術を社会に浸透させて、人々の生活をよりよくしていくことです。
IT化・デジタル化との違い
IT化とは、情報技術を活用して業務プロセスを効率化することです。デジタル化とは、アナログな業務や情報管理をデジタル形式に変換し、データの処理効率や共有の利便性などを高めることです。
IT化もデジタル化も、業務効率化に重点を置く取り組みですが、ビジネスモデルや組織内部の変革までは含まれません。
DX化は、デジタル技術を駆使してビジネスモデルや組織文化を根本的に見直し、新たな価値を生み出す概念です。IT化とデジタル化の先に、DX化が実現すると理解しておくとよいでしょう。
勤怠管理のDX化が必要な理由とは
さまざまなビジネス領域でDX化が叫ばれる昨今、勤怠管理においても例外ではありません。勤怠管理のDX化は、企業にとって迅速に対処したい課題の一つといえます。
勤怠管理のDX化が必要とされる理由は以下の通りです。
- 法改正に応じた勤怠管理ができる
- 業務効率化が実現できる
- 勤怠情報を正確に管理できる
- 多様な働き方に対応できる
- 勤怠管理にDXを導入するメリットがある
従業員にとってもメリットのある勤怠管理のDX化について順番に解説します。
法改正に応じた勤怠管理をするため
勤怠管理システムを導入すると、一部のサービスでは法改正に対応した仕組みへ自動更新されるため、容易に管理できるようになります。法改正に対応していない企業は、行政から指導を受ける可能性があるため、適切なシステムの選定が必要です。
厚生労働省が実施した『長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果』によると、調査対象である32,025の事業場のうち、10,986の事業場(34.3%)で是正と改善に向けた指導が行われたことが報告されました。
調査対象事業場数 | 32,025 |
---|---|
指導対象事業場数 | 10,986 |
参考:『長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和3年4月から令和4年3月までに実施』厚生労働省
紙やエクセル、タイムカードの勤怠管理では、法改正のたびに管理方法を見直さなければなりません。法改正に対応している勤怠管理システムなら、自動で更新され、担当者の手間を減らせるでしょう。働き方改革関連法によって厳格化された法令を遵守するためにも、勤怠管理のDX化は求められています。
業務効率化が実現するため
勤怠管理のDX化を進める過程で、業務効率化が実現します。リモートワークや時短勤務など多様な働き方が普及し、労働時間の管理は煩雑化しています。
そのような中で勤怠管理システムによって、労働時間の集計や分析にかかっていた作業時間を削減できれば、運用の抜本的な見直しにつながるでしょう。また、勤怠管理と給与計算を同期できるシステムなら、より効率化が進みます。
勤怠情報を正確に管理するため
勤怠管理のDX化で自動集計が行われると、手作業によるヒューマンエラーのリスクを低減できます。
打刻漏れや打刻入力のミスをカバーできるとともに、個々の従業員の勤務パターンや時間外労働を正確に追跡できるため、法律に準拠した管理につながります。従業員の過重労働防止にも役立つでしょう。
さらに、データ分析機能を備えた勤怠管理システムなら、勤務パターンの分析を通じて、業務効率化や人員配置の最適化につながる施策を検討できます。正確な勤怠管理を支援しつつ、生産性の向上が期待できるでしょう。
多様な働き方に対応するため
勤怠管理のDX化は、多様な働き方に対応するうえでも必要とされています。現代はテレワークや時短勤務、フレックスタイム制など従業員の働き方は多岐にわたるようになりました。
勤怠管理がDX化されていないと、多様な勤務形態に対して柔軟に対応できない場合がありますが、システム化を整備しておくとスムーズに対応できるでしょう。
たとえば、クラウド型勤怠管理システムの導入により、従業員はどこにいても勤務時間を記録でき、担当者はリアルタイムでデータを取得・確認できるため、テレワークの従業員も適切に管理できます。
勤怠管理にDXを導入するメリット
勤怠管理のDX化は、単にデジタルツールを導入すること以上に、組織全体の働き方改革を促進するメリットがあります。
勤怠データの一元管理
勤怠管理のDX化により、勤怠データをデジタル化して一元管理することで、情報が集約されます。従業員や管理者はいつでもどこからでも必要なデータにアクセスできるため、迅速に勤怠状況の確認や調整ができるでしょう。
属人化の防止
勤怠管理をDX化するためのデータのデジタル化とクラウド管理は、業務の属人化を防ぎ、業務の透明性を高めます。従来は社内に散らばっていたり個人で持っていたりした情報も、システム上で共有されるため、引き継ぎがスムーズになり、人材の異動や欠員が生じたときに困ることが減るでしょう。
労務管理の見直し
勤怠管理のDX化は、働き方や労務管理方法の見直しという点でも重要です。デジタル技術を取り入れることで、フレックスタイム制やリモートワークなど、多様な働き方に対応しやすくなります。従業員のワークライフバランスの改善や、労働生産性の向上が期待できるでしょう。
勤怠管理のDX化を進める手順
勤怠管理のDX化を進める手順は、以下の通りです。
- 勤怠管理のDX化による目的を明確にする目的を明確にする
- 勤怠管理システムを選ぶ
- システムを導入する
- 業務フローを改善してフィードバックする
導入までのフローを確認しておきましょう。
1.勤怠管理のDX化による目的を明確にする目的を明確にする
はじめに現在の勤怠管理で抱えている課題や、勤怠管理業務に携わる従業員から意見聴取を行うことでニーズを把握します。勤怠管理システムに求める機能を把握するため、業務の棚卸しをしましょう。経営層だけでなく、現場や事業部門とも意義や目的を共有します。
2.勤怠管理システムを選ぶ
勤怠管理システムには大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」があります。
クラウド型は、インターネット経由で提供元のサーバーを利用するため、低コストで導入まで時間がかかりません。自社サーバーのメンテナンスや更新が必要ないため、運用コストも低く抑えられます。ただし、インターネット接続に依存するため、安定的な接続環境を確保しなければなりません。
オンプレミス型は、自社内にサーバーを設置するため、セキュリティ性やカスタマイズ性が高いシステムです。企業の特定のニーズに合わせてカスタマイズでき、厳格なセキュリティ要件に対応しやすいでしょう。ただし初期投資が大きく、メンテナンスや更新にコストと労力が必要です。
どちらを選択するかは、導入目的や社内システムとの適合性などを考慮して決めましょう。
3.システムを導入する
勤怠管理システム導入のスケジュールや人員配置を決めます。その後、システムの操作方法を従業員に周知させるために研修を実施します。システムに抵抗感を持つ人にも受け入れられるように使いやすいUI(ユーザーインターフェース)のサービスを選びましょう。
4.業務フローを改善してフィードバックする
従業員から勤怠管理システムに対するフィードバックを取り入れます。PDCAを回し、業務フローやシステム運用の改善をはかりましょう。従業員がわからないことを気軽に相談できるような体制を整備しておくことが大切です。
勤怠管理でDXを進めるポイント
勤怠管理でDXを進めるポイントは以下の3つです。
- 新規システムは段階的に導入を進める
- DX人材を育成する
- 使いやすいシステムを選ぶ
順番に解説します。
新規システムは段階的に導入を進める
新しく勤怠管理システムを導入するときは、従業員に慣れる時間を与え、抵抗感や混乱を最小限に抑えましょう。一斉に運用を開始すると、トラブルや予想外の事態に社内が混乱します。
試験的に一部の部署で運用を始め、徐々に社内に浸透させることがポイントです。段階的な導入により、フィードバックを収集し、改善をはかったうえで運用範囲を広げましょう。
DX人材を育成する
高性能な勤怠管理システムを導入しても、適切に活用できなければDX化の実現は難しいです。そこで社内でDX人材を育成することも視野に入れましょう。
DX人材とは、経済産業省によって以下の通り定義されています。
自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材
引用:『DXレポート2(中間取りまとめ)』経済産業省
ITの活用や情報システムの導入を企画や推進、運用するIT人材とは異なり、継続的に学習する姿勢や変化を受け入れる柔軟性も、DX人材には求められています。
使いやすいシステムを選ぶ
従業員が直感的に使える勤怠管理システムを選びましょう。たとえば、ユーザーインターフェースがシンプルで、基本的な勤怠入力や休暇申請が数クリックで完了するようなシステムがおすすめです。
市場には自由にカスタマイズできるものから、最低限の機能を備えたものまでさまざまな種類があります。特にITリテラシーが高い従業員がいない場合は、複雑な設置が不要で、すぐに使い始められるシステムが適しています。
勤怠管理システムの選び方
勤怠管理システムの選び方は以下の5つが挙げられます。
- 自社の運用に適したシステムを選ぶ
- 既存システムと連携できるシステムを選ぶ
- クラウド・オンプレミスの最適な方を選ぶ
- 使いやすさで選ぶ
- 勤怠管理以外の業務のカバー範囲で選ぶ
順番に解説します。
自社の運用に対応したシステムを選ぶ
自社の就業規則や組織体系、雇用形態に対応した勤怠管理システムを選択しましょう。
具体的には以下の通りです。
- テレワークの有無
- 従業員の属性ごとの拠点や働き方
- フレックスタイム制や変形労働時間制のシフト
- 直行直帰の可否 など
さまざまな自社の決まりを反映できないと、システムを導入しても使いきれません。導入前に無料トライアル期間がある勤怠管理システムもあるので利用するとよいでしょう。
既存システムと連携できるシステムを選ぶ
すでに導入しているシステムとの連携は、新しい勤怠管理システムを選ぶ際の重要なポイントです。たとえば、給与計算システムと連携できると、勤怠データが自動で反映され、入力の手間が省けるため、ミスが減少します。
連携の可否は、検討の段階で早めにサービス提供元に確認しましょう。連携の方法は、クリック1つで完了する場合や新しく構築する場合があります。勤怠管理と給与計算の機能がまとまっており、リアルタイムでデータ連携ができるシステムを選ぶのも一案です。
クラウド・オンプレミスの最適な方を選ぶ
オンプレミス型はカスタマイズ性が高く、自社の勤怠管理システムに合わせた使い方が可能です。セキュリティ対策を強化できますが、サーバーの運用管理が必要なため、準備と時間がかかります。
クラウド型はシステム構築や管理が不要なので短期間で導入できます。導入費用を抑えられますが、カスタマイズ性は低くセキュリティ対策が必要です。
使いやすさで選ぶ
従業員にとって操作しやすいかは重要な選定ポイントです。せっかく導入しても使いにくく、従業員に定着しなければ意味がありません。最悪の場合、組織全体の業務効率の低下につながります。
無料トライアル期間を利用して、複数の従業員にさわってもらい、直感的に操作できるかなどを確認しましょう。スマートフォンなどのモバイル端末対応のシステムなら、外出先でも勤怠を登録できて便利です。
勤怠管理以外の業務のカバー範囲で選ぶ
勤怠管理システムを選ぶ際には、単に出勤と退勤の記録にとどまらず、その他の業務をカバーしているかを確認することも重要です。
たとえば、ワークフロー機能は、社内の申請と承認の流れを簡略化し、照合作業による手間と時間を省きます。紙の申請書や承認書類が不要になるため、管理コストも削減できるでしょう。
また、予実管理機能があると、月の半ばで労働時間が予測できるため、過重労働や時間外労働の超過に対して事前に対策を講じることができます。労働基準法の遵守や従業員の健康管理にも一定の役割を果たします。
まとめ
勤怠管理のDX化は、単にデジタルツールを導入して効率化をはかるだけでなく、組織の働き方改革や労務管理の抜本的な見直しにつながります。従業員の健康を守るためにも重要な施策の一環です。
DXを進めるには、目的を明確にし、自社に最適なシステムを選定しましょう。本記事でご紹介した選定ポイントを踏まえつつ、無料トライアルの機会を最大限に利用して検討してみてください。
また、DXを社内全体に定着させるためには、試験導入を行い、従業員のフィードバックをもとにサポート体制を整備する必要があります。
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