出張時の勤務時間はどこまでを含むのかスケジュール例で解説|勤怠管理の注意点

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出張中の勤務時間はどこからどこまでを含むのでしょうか。新幹線の移動中、前泊・後泊、直行直帰、休日の対応など、判断に迷う場面は少なくありません。

「出張時の移動時間も勤務時間になる?」「残業代は請求できる?」といった相談を受けた経験のある担当者もいるでしょう。

企業としては、出張時の勤務時間のルールを整理して定めておくことが大切です。

本記事では、出張における勤務時間の基本的な考え方と判断基準、注意したい勤怠管理のポイントを、出張時のスケジュール例を交えてわかりやすく解説します。

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目次アイコン目次

    勤務時間と労働時間の違い

    出張時の勤怠管理について解説する前に、勤務時間と労働時間の違いを整理します。

    勤務時間会社が就業を求める時間(休憩時間を含む)始業時間から終業時間まで法的定義なし
    労働時間実際に業務に従事している時間(休憩時間を除く)勤務時間から休憩時間を引いた時間法的定義あり

    勤務時間とは、会社が従業員に「職場にいてください」と定めた時間帯です。就業規則や雇用契約書に明記されています。たとえば9時始業・18時終業で昼休憩が1時間ある場合、勤務時間は休憩を含めた9時間です。ただし、勤務時間は法律で定義された概念ではありません。

    一方で労働時間とは、勤務時間から休憩時間を除いた、実際に働いている時間で、労働基準法に定義されています。残業代の計算や労働時間の上限規制は、労働時間を基準に判断されます。

    労働時間を理解するうえで重要なのは、「使用者の指揮命令下にあるかどうか」です。自由に過ごせず、会社の指示で業務に従事している時間が労働時間に該当します。

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    勤務時間と労働時間の違いを正しく理解することで、出張時の対応や勤怠管理をより適切にできるようになります。

    出張時はどこからどこまでを勤務時間に含むのかスケジュール例で解説

    出張時の勤務時間管理では、どの時間帯が勤務時間に該当するかを、正確に判断する必要があります。

    通常勤務と異なり、出張では移動や自由行動などの時間も含まれるため、状況ごとに検討しなければなりません。

    本記事では、所定労働時間を「9:00〜18:00」と仮定し、1日の出張スケジュールに沿って勤務時間の取り扱いを解説します。

    スケジュール(原則)勤務時間に含まれるか(原則)労働時間に含まれるか
    【7:00〜9:00】始業前の移動含まれない含まれない
    【9:00〜10:00】始業後の移動含まれる含まれない
    【10:00〜12:00】出張先での労働(1)含まれる含まれる
    【12:00〜14:00】出張先での移動(自由行動)含まれない(所定の休憩時間は含まれる)含まれない
    【14:00〜18:00】出張先での労働(2)含まれる含まれる
    【18:00〜20:00】出張先での残業含まれる含まれる
    【20:00〜23:00】終業後の移動含まれない含まれない

    【7:00〜9:00】始業前の移動

    始業前の出張先への移動は、原則として勤務時間に含まれません。所定労働時間(本記事では9:00〜18:00)より前の時間帯であり、普段の通勤と同様に会社の指揮命令下になく、自由に過ごせるためです。

    移動中に読書や仮眠など自由に過ごせる状況であれば、勤務時間とはみなされません。

    ただし、移動中に会社から業務を指示された場合、勤務時間に含まれる可能性が高くなります。

    • 電車内で資料作成をする
    • 移動しながらオンライン会議に参加する
    • 出張先に重要な書類や機材の運搬などを任されている

    ポイントは「指揮命令下にあるかどうか」です。移動の目的や状況によって判断が変わることを覚えておきましょう。

    【9:00〜10:00】始業後の移動

    始業後の出張先への移動は、基本的に勤務時間であっても、実労働時間とはみなしません。

    所定労働時間(9:00〜18:00)内ではありますが、出張先への移動中は通常業務に従事していないため、原則として実際の労働時間には該当しないと考えます。

    ただし、給与計算の実務上、賃金は差し引かないのが一般的な運用です。会社の業務命令により移動しており、完全に自由な時間とは言い切れないためです。

    また、移動中であっても使用者の指揮命令下に置かれているケースは、労働時間になる可能性があります。

    実態に応じて柔軟に労務管理をする必要があります。

    【10:00〜12:00】出張先での労働(1)

    出張先で業務に従事している時間は、勤務時間として扱われます。所定労働時間(9:00〜18:00)内であり、会社の指示にしたがって仕事をしているため、当然ながら実労働時間にも該当します。

    たとえば、以下のような業務が該当します。

    • 出張先で顧客との商談・打ち合わせ
    • 現地作業の立会いや確認
    • 展示会や会議への出席

    短い休憩を挟んだとしても、業務が継続している場合は全体として勤務時間に含めて問題ありません。

    出張中は職場から離れているため、 出張報告書や業務日報などに、活動内容を具体的に記録してもらうと、勤怠管理や労務トラブル防止に役立ちます。

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    【12:00〜14:00】出張先での移動(自由行動)

    出張先で業務と業務の合間に発生する時間が、完全に自由行動であれば勤務時間には含まれません。

    たとえば、午前の商談と午後の打ち合わせの間に、現地を散策して過ごす時間が該当します。会社から明確な指示がなく、行動を自由に決められる状況にあるためです。ただし、従業員が休憩時間として昼食をとる場合は、勤務時間には含まれますが、実労働時間ではないことに注意しましょう。

    また、以下のように実質的に拘束されている場合の例外には注意が必要です。

    • 「次の業務まで指定の場所で待機して」と場所や時間に制限がある指示が出ている
    • 緊急時には対応するよう求められている

    業務と業務のつなぎの時間でも、会社の関与があるかどうかで判断が変わります。自由行動の範囲と制限について明確にしておくとよいでしょう。

    ▼労働基準法に基づく休憩時間のルールを詳しく知るなら、以下の記事よりご確認ください。

    【14:00〜18:00】出張先での労働(2)

    午後の業務時間も、午前と同様に勤務時間として扱われます。 所定労働時間(9:00〜18:00)内に行われる業務活動であり、会社の指示のもと動いているため、当然ながら実労働時間にも該当します。

    スケジュールが流動的になることもあるため、業務の終了時刻や対応内容を簡単に記録してもらうとよいでしょう。

    【18:00〜20:00】出張先での残業

    出張先であっても、所定労働時間(9:00〜18:00)を超えて行われた業務は残業時間として集計します。 勤務場所にかかわらず、通常の職場での残業と同じく、割増賃金の対象です。

    出張中にやむを得ず、所定労働時間が過ぎることはめずらしくないでしょう。出張中に残業が発生する場面としては、次のようなケースが考えられます。

    • 商談や会議が長引いた
    • 現地対応に予想以上の時間がかかった
    • 急ぎの報告書作成や社内対応が求められた

    ただし、出張先では上司や管理職の目が届きにくいため、事前の申請や事後報告のルールを整えておくことをおすすめします。

    残業の事実や理由を明確に記録しておけば、のちの未払い残業代請求を防げます。

    出張だからといって残業代を支払わなくてよいわけではありません。出張中でも、残業には適切な手当を支払えるよう、適切な管理体制を整えましょう。

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    【20:00〜23:00】終業後の移動

    終業後に出張先から帰る場合、その移動時間は原則として勤務時間に含まれません。業務がすでに終了しており、移動中は従業員が自由に過ごせる時間と考えられるためです。

    新幹線の中で休憩したり、スマートフォンで私用の動画を見たりするような状況であれば、会社の指揮命令下にはないと判断されます。

    ただし、以下のようなケースでは勤務時間とみなされる可能性があります。

    • 移動中に資料作成や業務指示への対応を行った
    • 書類や機材の運搬を業務として命じられている
    • 上司と同行し、移動中も業務的なやり取りが続いている

    移動が単なる「帰路」ではなく、実質的に業務の一部とみなされる場合は、勤務時間に含める必要があります。

    判断に迷うケースも多いため、移動中の指示や作業内容があったかどうかを明確にしておきましょう。

    出張時の前泊(前乗り)・後泊(帰り)は勤務時間に含まれる?

    出張の前泊や後泊にともなう移動や滞在時間は、基本的に勤務時間には含まれません。使用者の指揮命令下で働いておらず、自由に過ごせる移動や宿泊は通勤と同じ扱いとなるためです。

    休日である日曜日に前泊のため移動したとしても、業務指示がなければ、会社に休日手当や残業手当の支払い義務はありません。

    一方で、以下のように業務に従事していれば、勤務時間として扱われる可能性が高くなります。

    • 上司が同行しており、移動中に資料作成や業務指示が行われている
    • 車での移動を命じられ、運転が業務として行われている

    また、前泊や後泊が、業務上の必要性があると判断されると、勤務時間として扱われるケースもあるようです。

    • 出張当日の朝に移動しても始業に間に合わない
    • 深夜到着になってしまう

    なお、従業員の希望による前泊・後泊は、あらかじめ会社と合意し、勤務時間には含めない前提で調整することが一般的です。

    対応に迷うケースが想定されるのであれば、就業規則や出張旅費規程にルールを定めておくと安心でしょう。

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    出張時の時間外労働に残業代は支払われる?

    出張中であっても、労働時間が把握できる場合は、残業代の支払いが必要です。出張先で所定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて業務を行えば、通常勤務と同様に割増賃金が発生します。

    深夜や休日に働いた場合も同様です。 「出張中だから残業代を払わなくてもよい」ということはありません。


    ここまで解説してきたように、基本的に移動は労働時間に含まれませんが、業務指示を受けて資料を作成したり、対応をしていたりする場合は、労働時間にカウントされ、残業代の支払い対象となります。

    出張中の労働時間の管理は複雑になりがちです。労務トラブルを防ぐには、記録と客観的な方法での勤怠管理が不可欠です。

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    出張中の休日は勤務時間に含まれる?

    出張期間中であっても、休日は原則として勤務時間には含まれません。たとえ自宅を離れていても、業務指示がなければ、通常の休日と同じ扱いになります。

    企業には、労働者に週1回以上、または4週で4日以上の休日を与える義務があります。土日を挟むような長期出張でも、従業員が自由に過ごしている限り、休日出勤や手当の対象にはなりません。

    ただし、以下のようなケースでは、出張中の休日であっても勤務時間とみなされます。

    • 会議や商談など、休日に業務への参加を命じられた
    • 報告書作成など、明確な業務指示があった

    また、休日の移動時間についても、通常と同様に扱われます。業務に従事していなければ実労働時間には含まれませんが、指示に基づく作業や拘束があった場合は例外です。

    ▼労働基準法に基づく休日のルールを詳しく知るなら、以下の記事よりご確認ください。

    出張時の勤怠管理における注意点

    出張中は、通常の勤務と異なり、勤怠管理があいまいになりやすいのが実情です。しかし、どこで仕事をしていても、労働時間の把握と記録は企業の義務であることに変わりはありません。次のポイントに注意して、適切な勤怠管理を行いましょう。

    • 事業場外みなし労働時間制の適用条件を理解する
    • 事業場外みなし労働時間制でも残業代が発生するケースがある
    • フレックス社員の勤務時間は標準労働時間で考える

    事業場外みなし労働時間制の適用条件を理解する

    出張時には「事業場外みなし労働時間制」を適用することがあります。事業場外みなし労働時間制とは、労働時間の算定が難しい場合に、あらかじめ定めた所定労働時間を働いたものとみなす制度です。

    制度の適用に必要な要件は次の2点です。

    • 事業場外(会社以外の場所)で業務を行っている
    • 会社や上司から具体的な指示や時間配分がなく、労働時間を把握できない状況

    たとえば、従業員が自分の裁量でスケジュールを組んで動く場合は、制度が適用される可能性があります。一方で、上司が同行し指示を出している、詳細なスケジュールが事前に決まっているといった場合は、要件を満たさないことがあります。

    事業場外みなし労働時間制を運用するには、就業規則への規定と労使協定の締結も必要です。

    事業場外みなし労働時間制でも残業代が発生するケースがある

    事業場外みなし労働時間制が適用されると、原則として所定労働時間だけ働いたものとみなされ、残業代は発生しません。

    ただし業務を遂行するために「通常必要とされる時間」が所定労働時間を超えるなら、超過時間に対して残業代を支払う必要があります。深夜労働や休日労働が発生した場合も同様に、割増賃金の支払い義務が発生します。

    就業規則・労使協定が適切に整備されていないと、そもそも制度が適用されないため注意しましょう。

    フレックス社員の勤務時間は標準労働時間で考える

    フレックスタイム制を導入していても、出張中に労働時間の正確な把握が難しい場合は、事業場外みなし労働時間制の適用が可能です。この場合、労使協定で定めた「標準労働時間」を働いたとみなします。

    たとえば、標準労働時間が1日8時間と決められていれば、実際に働いたのが6時間でも10時間でも、8時間働いたものと処理します。

    注意したいのは、標準労働時間が法定労働時間(1日8時間)を超えて設定されている場合です。超過時間は、割増賃金の支払いが必要となります。

    フレックスタイム制と、事業場外みなし労働時間制を併用すると制度が複雑になりますが、適切に運用すれば、効率的な労務管理が実現するでしょう。

    不正打刻の防止に取り組む

    出張や直行直帰の多い働き方では、タイムカードや紙の出勤簿では正確な勤怠管理が難しいですよね。自己申告や代理打刻に頼ると、虚偽申請や打刻忘れといった問題も発生しやすくなります。

    課題の解決策として有効なのが、位置情報を取得できる勤怠管理システムの活用です。スマートフォンやタブレットで打刻する際に位置情報も記録できるため、「いつ・どこで打刻したか」を正確に記録できます。

    出張先や外出先での打刻が本当に現地で行われたかを確認でき、不正打刻やなりすましの防止にもつながります。勤怠データの信頼性が高まり、労務管理の精度も向上するでしょう。

    出張時に発生する費用

    出張では、通常勤務とは異なり、さまざまな費用が発生します。企業はかかる費用の考え方を明確にし、出張旅費規程を整備しなければなりません。一般的に企業が設けている出張費用の補填制度は以下のとおりです。

    • 宿泊費
    • 出張手当(日当
    • 交通費

    出張に宿泊がともなう場合、企業は費用を負担する必要があります。主な精算方法は実費支給と定額(一律)支給の2種類です。実費支給は無駄がなく一般的に採用されていますが、上限額を設定している企業もあります。

    出張手当(日当)は、出張中に発生する食事代や雑費、通常業務ではかからない負担への補填として支給されるものです。企業によって金額や支給条件は異なりますが、慰労や諸経費という意味合いでの概算支給が多いです。

    出張先への移動費用には、飛行機や新幹線、タクシー代が含まれますが、合理的な手段かどうかを支給の判断基準としましょう。

    出張旅費規程を定める重要性

    勤務時間の扱いを含め、出張旅費規程を整備しておくと、出張にともなう労務管理やコスト管理がしやすくなります。

    勤務時間の判断基準や費用、申請手続きをあらかじめ明文化しておけば、企業と出張の当事者、双方が迷わず対応できるでしょう。

    たとえば、交通費・宿泊費・日当の支給条件や上限額が明確であれば、出張者は合理的な手段を選択しやすくなり、担当者も申請内容のチェックや処理がスムーズに進みます。不正な申請やばらつきのある経費精算も防げます。

    出張が多い企業ほど、旅費規程を整備しておきましょう。

    まとめ|出張時の勤務時間を管理するには?

    出張時の移動時間は、原則として勤務時間には含まれません。しかし、状況によって勤務時間に含まれるかどうかが異なるため、実態に即した勤怠管理が重要です。

    出張先への移動中に業務指示があったり、資料作成などの作業をしていたりすると、実労働時間として適切に記録する必要があります。

    出張時の勤務時間の扱いを誤ると、あとで問題に発展するリスクもあります。記録方法や勤怠管理システムの整備を含めて、制度として明確化しておくとよいでしょう。

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