労働基準法における連勤のルールをわかりやすく解説| 法律上の上限日数や休日、違反しないためのポイント
連勤とは、勤務と勤務の間に休みを挟まずに連続で勤務することです。労働者の健康や労働条件の改善が求められる近年、連続勤務に関する問題は繰り返し注目されています。なかには「連勤日数の上限がわからない」「労働基準法に違反しないための休日の設定方法を知りたい」という方もいるでしょう。
そこで本記事では労働基準法における連勤のルールや、法律に基づいた連勤の上限日数、休日、違反しないためのポイントを解説します。連勤に関するルールの理解を深めたい企業の人事担当者やマネジメント層は、ぜひ参考にしてください。
連勤とは?
連勤とは「連続勤務」のことをいい、労働者が休日を挟まずに2日以上連続で勤務する状態です。連勤は労働基準法などで法律上定義される用語ではなく、連日労働する状態を表現する際に使用されます。
連勤に関する法律(労働三法)
連勤に関する法律には労働三法があり、以下の3つの法律のことです。それぞれの概要について解説します。
- 労働基準法
- 労働組合法
- 労働関係調整法
労働基準法
労働基準法とは、企業が守るべき最低限の労働条件や規則について定めた法律であり、働くすべての人が対象です。
労働者の労働時間や賃金、休息日、労働環境などに関する企業が守るべき最低限のルールが定められており、連勤に関するルールも労働基準法により規定されています。
労働組合法
労働組合法とは、労働者が結集して組織する権利を保障し、労働組合の設立や活動に関する基本的な原則を規定したものです。労働組合法は、労働者の組合活動を保護し、組合員の権利を確立することを目的としています。
労働関係調整法
労働関係調整法とは、労働者と事業者との間で生じる労働紛争を、公正かつ迅速に解決するための手続きや原則を規定した法律です。労働紛争の仲裁や調停、労使交渉などを円滑に進め、労働関係を安定化させることが目的です。
参照:『働く人の権利とは?|連合について』日本労働組合総連合会
労働基準法から考える連勤日数の上限
連続勤務日数の上限について、労働基準法では明確に定められてはいません。しかし、同法第35条の条文をもとに解釈すると、理論上の上限日数を算出できます。
労働基準法をもとにした連勤日数の上限を図を用いながら解説します。
連続勤務日数の計算方法
連続勤務日数の上限は、最大12日と考えられます。
労働基準法第35条では、休日は1週間に1日以上、または4週間で4日以上取得しなければならないと規定されています。そこで休日を1週間に1日とした場合、法律上では以下の通り最大12連勤が可能です。
連続勤務日数を超えた場合の罰則
連続勤務の上限日数を超えて従業員を働かせた場合、労働基準法第35条に違反します。
違反しすると、同法第119条により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。企業は労働者の権利を侵害しないように、労働基準法を遵守することが法的に求められています。
参照:『労働基準法 第35条、第119条』e-Gov法令検索
変形休日制における連続勤務日数
変形休日制のもとでは、連勤の数え方が異なります。変形休日制における連続勤務の上限日数を図を用いながら解説します。
変形休日制とは?
変形休日制とは、4週間に4日以上の休日を取得させる制度です。労働基準法第35条2項には「1週間に1日以上の休日を取得しなければならない」という規定がありますが、4週間のうち4日以上の休日を取得する労働者については適用されません。
閑散期と繁忙期の労働時間の差が大きく、労働時間を月単位や年単位で調整する職場では、変形休日制を取り入れていることがあります。
変形休日制の連続勤務は何日まで?
変形休日制を採用する職場の連続勤務日数は、理論上、以下の通り24日間まで可能です。
ただし、この連勤日数はあくまでも理論上であり、実際に連続勤務日数が24日も続くと、疲労やストレスが蓄積し、心身の健康が損なわれるリスクが高まるでしょう。
また、月をまたいで、1か月目の第1週目月曜から木曜までを4連休、2か月目の第4週木曜から日曜を4連休にすることで、理論上は48連勤も可能です。
当然ながら48日も現実的な連勤日数ではなく、理論上可能だからといって採用してよい働き方とはいえません。
連勤が原因で従業員がケガを負ったり病気になったりすると、労働災害(労災)と認定される可能性があります。
企業は連勤に関するルールだけでなく、安全配慮義務を果たさなければなりません。従業員の健康や働きやすさには、細心の注意を払いましょう。
【連勤とあわせて知りたい】労働基準法における休日とは
連勤の働き方に関連して、労働基準法における休日の定義について解説します。
労働基準法における休日の定義
労働基準法における休日は「労働者が労働契約において労働義務を負わない日」と定められています。休日には「法定休日」と「法定外休日」があります。
法定休日とは、労働基準法第35条により週1日以上もしくは4週で4日以上設けることが定められている休日です。
法定外休日とは、会社が任意に定めている法定休日以外の休日です。たとえば、週休2日制を採用している会社では、休日のうち1日が法定休日、もう1日が法定外休日とされます。
休日の種類
休日には、法定休日・法定外休日のほかに「代休」や「振替休日」などがあります。
代休とは、労働者が休日に勤務した際に、ほかの労働日を休みにすることです。
振替休日とは、労働者が休日出勤することが事前に明らかな場合に、前もってほかの労働日を休日に指定することをいいます。
休日と休暇の違い
「休日」と「休暇」は混同されがちですが、異なる意味を持ちます。
休日は、労働者が労働の義務を負わない日を意味し、労働基準法で定められた法定休日や法定外休日が該当します。
休暇は、労働の義務が生じている日であるものの、労働者が事前に申請することによって一時的に仕事を離れることができる期間です。年次有給休暇や特別休暇などが該当します。
また、労働基準法第39条において、企業は一定の条件を満たす労働者に対して年次有給休暇を付与することが義務づけられています。
休日だった日に出勤する場合の割増賃金
休日労働の割増賃金の支給は、法定休日に出勤したときのみ対象です。したがって、法定外休日やあらかじめ休日労働に対する振替休日が定められていたときは、休日割増賃金の対象外です。
休日労働に対する割増率は35%であり、以下の方法で休日手当が計算できます。
休日手当=1時間当たりの賃金×1.35倍×労働時間 |
たとえば、1時間当たりの賃金が1,500円である従業員が法定休日に5時間労働をした場合の休日手当は以下の通り計算します。
1,500×1.35×5=10,125(円) |
また、法定休日に深夜労働をした場合は、休日手当の35%と深夜手当の25%を合算した60%が割増率を適用する必要があるため注意しましょう。
参照:『法定労働時間と割増賃金について教えてください。』厚生労働省
連勤に関して企業が違反しないためのポイント
最後に、企業が連勤に関して労働基準法に違反しないためのポイントを解説します、
- 連勤日数の上限はすべての雇用形態に適用される
- 労働時間制によって連勤日数の上限が変わる
- 振替休日があるときは連勤日数を確認する
連勤日数の上限はすべての雇用形態に適用される
連勤の上限日数は、正規雇用だけでなくパートやアルバイト、派遣社員、契約社員に対しても適用されます。
休日が毎週異なる曜日に与えられるシフト制などの勤務形態においては、特に連続勤務日数が把握しづらい傾向にあります。知らず知らずのうちに連続勤務日数が上限を超えていたという事態になることも否定できません。
このような事態を避けるために、管理者が個人の勤務スケジュールを簡単に把握できるような仕組みづくりが重要です。
採用する休日の制度によって連勤日数の上限が変わる
労働基準法によって、企業は労働者に対して、原則として週に1日以上の休みを与えることが義務づけられています。
ただし、変形休日制度を採用している企業においては、4週間で合計4日以上の休日を確保する仕組みを認めています。そのため、繁忙期に週1日以上の休みを確保することが難しい職種でも、労働基準法に違反せず、労働者に休日を付与できます。
以上の労働基準法の規定を解釈すると、連勤の上限は、4週間の最初に連続して24日間勤務させたあと、最後に4日の休みをまとめて与えることも理論上は可能です。しかし、決して望ましい働き方とはいえないため、労働者の健康や作業効率を考慮し、労働と休暇のバランスを調整する必要があります。
連勤の考え方において「法律を最低限守る意識」を持つのではなく、従業員が心身の健康を維持しつつ、快適に働ける職場環境の整備を心がけましょう。
振替休日があるときは連勤日数を確認する
労働日と休日を振り替えた場合は、特に連勤の日数が上限に達していないか注意を払いましょう。
事前に振替休日を指定していても、連続勤務日数の上限を超えて働かせた場合や、週の労働時間が40時間を超える場合は、超過時間分について割増賃金を支払う必要があります。
まとめ
連勤とは「連続勤務」のことをいい、労働者が休日を挟まずに2日以上連続で勤務する状態です。労働基準法において定義されている用語ではありません。
雇用形態にかかわらず、連続勤務日数の上限を超えると、企業には罰金や罰則が課される恐れがあります。
特に、シフト制や変形労働時間制など個人の勤務状況が把握しづらい労働形態では、気づかぬうちに、連勤日数の上限を超えてしまい、法律に違反してしまう可能性も否定できません。
このような労務トラブルを避けるためにも、従業員一人ひとりの勤務スケジュールを把握し、適切な勤怠管理を行うようにしましょう。
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