フレックスタイム制とは|ずるい? なぜ普及しない? 仕組みや注意点を簡単に解説

フレックスタイム制とは|ずるい? なぜ普及しない? 仕組みや注意点を簡単に解説

フレックスタイム制とは、従業員が決められた総労働時間の中で、自由に勤務時間を設定できる制度です。働き方改革や新型コロナウイルスの影響で注目が高くなりました。

しかし「フレックスタイム制の仕組みがよくわからない」「好きな時間に働けてずるい」と感じる人もいるかもしれません。

本記事では、フレックスタイム制の仕組みや普及が進まない理由、導入時の注意点などを解説します。勤怠管理の担当者や経営者はお役立てください。

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    フレックスタイム制とは

    フレックスタイム制とは、決められた総労働時間の中で、従業員が自由に働く時間を設定できる制度のことです。一般的にフレックスタイム制には、コアタイムとフレキシブルタイムがあります。

    コアタイム従業員が必ず出社して勤務しなければならない特定の時間帯。
    設定は義務ではない
    フレキシブルタイム従業員が自由に勤務できる時間帯。コアタイムの前後にある

    フレックスタイム制の目的

    フレックスタイム制を取り入れる目的にはどのようなものがあるのでしょうか。フレックスタイム制の目的を3つ取り上げて解説します。

    • ワークライフバランスの実現
    • 通勤ラッシュの緩和
    • 生産性の向上

    ワークライフバランスの実現

    多くの企業では、従業員の「ワークライフバランス」の実現を目的としてフレックスタイム制を導入しています。

    フレックスタイム制を取り入れると、フレキシブルタイムの範囲内で自由に働けるようになります。

    子育てや介護中の従業員や、急な用事が入った場合も勤務時間を調整しやすくなり、仕事と生活が両立できるのがメリットです。

    通勤ラッシュの緩和

    フレックスタイム制によって、通勤ラッシュの時間を避けて出退勤することができます。

    通勤ラッシュや渋滞の緩和を目的に取り入れている企業も多く、近年ではコロナ禍をきっかけに導入が増加したといわれています。従業員の心身の健康を守ることにもつながるでしょう。

    生産性の向上

    生産性の向上もフレックスタイム制の目的の一つです。

    フレックスタイム制を導入することで、従業員は業務の状況に応じて柔軟に勤務時間を調整できるようになります。

    たとえば、月末や月初めの繁忙期は集中して働き、閑散期には早めに退社するなど、仕事の状況に合わせて効率的に時間を使うことが可能です。このような業務の効率化によって、生産性の向上が見込めます。

    フレックスタイム制の仕組み

    フレックスタイム制の仕組みを「コアタイム」と「フレキシブルタイム」に分けて解説します。

    コアタイム

    コアタイムとは、従業員が必ず勤務しなければならない時間帯のことを指します。フレックスタイム制を導入する際、コアタイムの設定は必須ではありませんが、社内コミュニケーションの円滑化をはかるために設けるのが一般的です。

    一方、コアタイムを設けない「スーパーフレックスタイム制」を導入している企業もあります。

    コアタイムを設定する場合、労使協定で開始と終了の時刻を明確に定めなければなりません。企業は自由にコアタイムの時間帯を決めることができ、曜日によって設定することもしないことも可能です。

    また、コアタイムの時間帯を曜日ごとに変更することも認められています。

    ただし、コアタイムの時間設定には注意が必要です。長すぎるとフレックスタイム制の意義が失われ、反対に短すぎると従業員の業務効率が低下してしまう可能性があります。

    企業の目的や業種の特性を考慮し、バランスの取れた時間設定を行うことが重要です。

    フレキシブルタイム

    コアタイムとは対照的に、フレックスタイム制におけるフレキシブルタイムは、従業員が自由に勤務時間を選べる時間帯のことを指します。

    フレキシブルタイムを設定する際も、コアタイムと同様に労使協定によってその開始時刻と終了時刻を明確に定める必要があります。

    なぜフレックスタイム制は普及しないのか

    メリットも多いフレックスタイム制ですが、日本ではあまり普及が進んでいません。考えられる理由として以下の点が挙げられます。

    • 日本が働き方の変革に消極的である
    • 自己管理が上手にできないと生産性の低下が懸念される
    • 社内コミュニケーションが滞る
    • 勤怠管理や人事評価が複雑になる
    • 法律によって働き方がある程度制限されている

    フレックスタイム制が日本で今まで普及しなかった主な理由は、企業の働き方の変革に対する消極的な姿勢や生産性低下への懸念が挙げられます。コミュニケーション不足による業務の遅延や、勤怠管理・成果評価が複雑になることもあるでしょう。

    フレックスタイム制はすべての従業員にとって最適な働き方とはいえません。労働基準法や労働組合の規制による制約も影響しています。

    多岐にわたる要因が複合的に作用し、日本においてフレックスタイム制の導入が進まなかったと考えられます。

    フレックスタイム制の導入率

    平成31年から令和5年のフレックスタイム制採用企業割合は、以下の通りです。

    対象年企業全体1,000人
    以上の企業
    300~999人
    の企業
    100~299人
    の企業
    30~99人
    の企業
    平成31年5.0%26.6%12.5%6.6%3.1%
    令和2年6.1%28.7%13.8%9.0%3.7%
    令和3年6.5%28.7%15.6%8.7%4.1%
    令和4年8.2%31.2%17.0%8.4%6.6%
    令和5年6.8%30.7%17.2%9.4%4.2%

    参考:『就労条件総合調査:結果の概要』 厚生労働省

    企業規模が大きいほど、フレックスタイム制の導入率が高いことがわかります。また、コロナ禍が原因で増加したといわれていますが、令和5年になると減少しています。

    フレックスタイム制がずるいといわれる理由

    フレックスタイム制に対して「ずるい」いう声もあります。「不公平だ」と感じる人がいるのはなぜでしょうか。考えられる理由を3つ取り上げて解説します。

    • すべての職種に適しているものではない
    • 通常の労働時間制度と評価基準が異なる
    • コミュニケーション不足の解消が難しい

    すべての職種に適しているものではない

    フレックスタイム制は、すべての職種に適しているものではありません。

    同じ企業の中でも一部の部署に限られる場合があります。そのため、ほかの部署から「好きな時間に出社・退社できるなんてずるい」と受け取られる可能性も否定できません。

    フレックスタイム制が適している職種と適していない職種の例は以下の通りです。

    適している職種自身の裁量で業務を進められる職種
    例:プログラマーやエンジニア、デザイナー、ライター など
    適していない職種固定された時間で業務が必要な職種
    例:サービス業スタッフや工場作業員、医療スタッフ など

    通常の労働時間制度と評価基準が異なる

    フレックスタイム制を導入している企業では、固定労働時間制度とは異なる評価基準が適用され、不公平感が生まれる恐れがあります。

    たとえば、フレックスタイム制の従業員が早めに退社した日は、業務を効率的に終えたと評価されるでしょう。一方、固定労働時間制の従業員は、残業して業務を完了しなければならない場合があります。

    このような状況では、フレックスタイム制の従業員がラクをしているように見えてしまう可能性もあります。

    また、固定労働時間制の従業員よりも、フレックスタイム制の従業員の方が高い評価を得ると、不公平感が生まれる原因となります。

    コミュニケーション不足の解消が難しい

    フレックスタイム制を導入すると従業員の勤務時間がバラバラになるため、社内コミュニケーションが取りづらくなります。コミュニケーション不足が続くと、従業員間の連携が取りづらくなり、業務の効率性が低下します。

    一度「フレックスタイム制はずるい」と感じると、解消は難しいでしょう。

    さらに、コミュニケーション不足は従業員のモチベーションや満足度にも影響を与えます。同僚との交流が少なくなると孤立感を感じやすく、職場への帰属意識が薄れることがあります。問題が長引くと、生産性の低下につながる恐れがあります。

    フレックスタイム制のメリット・デメリット

    フレックスタイム制にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。主なメリット・デメリットは以下の通りです。

    メリット・仕事とプライベートのバランスがとりやすい
    ・残業時間を減らせる優
    ・秀な人材を確保しやすい
    デメリット・社内のコミュニケーションが不足する
    ・急ぎの業務に対応しづらい
    ・勤怠管理に手間がかかりやすい

    それぞれ詳しく解説します。

    フレックスタイム制のメリット

    フレックスタイム制を導入することで、従業員は仕事とプライベートのバランスを取りやすくなります。ライフスタイルにあわせて勤務時間を調整できるため、家事や育児、介護をこなしながら、キャリアを築く可能性が高まります。

    また、フレックスタイム制は残業時間の削減にも有用です。従業員が自分の裁量で勤務時間を決められるため、業務の優先順位を適切に管理し、効率的に仕事を進めることができます。その結果、不必要な残業の削減につながるでしょう。

    さらに、フレックスタイム制は優秀な人材の確保にも役立ちます。柔軟な働き方を求める人材が増えているなか、フレックスタイム制を導入している企業は魅力的な職場として見られやすいです。

    特に、高いスキルを持つ人や育児・介護中で働きづらい人を引き寄せることができ、多岐にわたる人材活用につながります。

    フレックスタイム制のデメリット

    フレックスタイム制は、従業員の働き方に柔軟性をもたらす一方で、デメリットも存在します。

    社内コミュニケーションの希薄化により従業員同士の連携が難しくなることに加え、急ぎの業務に対応しづらくなる傾向にあります。従業員によって勤務時間が異なるため、緊急の対応が必要なときに適切な人材が見つからない場合も考えられるでしょう。

    特に締め切りが厳しいプロジェクトやクライアントからの突発的な要求に対応する必要がある業務において課題があります。

    フレックスタイム制を導入すると、勤怠管理に手間がかかりやすくなるのもデメリットの一つです。従業員の出退勤時間が一定ではないため、正確な労働時間の把握が難しくなるからです。

    フレックスタイム制の従業員の勤怠を適切に管理するには、自社に適した勤怠管理システムの導入をおすすめします。

    フレックスタイム制の導入における注意点

    フレックスタイム制の導入における3つの注意点を解説します。

    • 労使協定を締結する
    • 就業規則への規定と社内周知を徹底する
    • フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムを導入する

    労使協定を締結する

    フレックスタイム制を取り入れるには、労使間で協定の締結が必要です。

    労使協定では、フレックスタイム制の適用対象となる範囲や清算期間、その期間内の総労働時間(所定労働時間)、1日の標準的な労働時間を明確に定めなければなりません。

    また、コアタイムとフレキシブルタイムについても任意で協定に盛り込むことができます。

    就業規則への規定と社内周知を徹底する

    フレックスタイム制を導入する場合、始業時間と就業時間を従業員の裁量に委ねることを就業規則に明記しなければいけません。

    また、フレックスタイム制に関する規定を設けた際は、従業員全員に周知する必要があります。社内周知を徹底するためには、説明会を開いたり、わかりやすいパンフレットを配ったりするなどの対応が必要です。

    フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムを導入する

    フレックスタイム制では、従業員の出退勤時間が明確でなくなることから、勤怠管理が難しくなる傾向があります。

    従業員一人ひとりの労働時間を客観的に把握するには、フレックスタイム制に適した勤怠管理システムを導入するとよいでしょう。情報共有がスムーズにできる機能がついていれば、従業員間のコミュニケーションも円滑になります。

    まとめ

    フレックスタイム制とは、従業員が定められた総労働時間の中で、自由に働く時間を設定できる制度のことです。ワークライフバランスが実現しやすいなどのメリットが多い制度といえます。

    しかし、同じ企業内であっても適した職種とそうでない職種があるため「ずるい」と感じる人も少なくありません。

    フレックスタイム制では、勤怠管理が煩雑になりやすいため、専用のシステムを導入して適切な運用を行うことが重要です。

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