フレックスタイム制が抱えるデメリットと対策をわかりやすく解説|メリットや導入時の注意点も
フレックスタイム制は柔軟な働き方を実現する制度ですが、導入にはデメリットもあります。導入前の企業はデメリットを理解することが大切です。また、フレックスタイム制の運用が適切にできていない企業もあるかもしれません。
本記事では、フレックスタイム制のメリットや導入時の注意点に加え、デメリットとその対策について解説します。
フレックスタイム制とは? 概要と仕組み
「フレックスタイム制」とは、従業員が自身の始業時刻と終業時刻を柔軟に設定できる制度です。
会社が指定した勤務時間帯にしたがって働く固定時間制とは異なります。決められた総労働時間内で1日の勤務時間を決められるのが特徴です。
たとえば、出勤時間をずらして通勤ラッシュを避ける、早めに退社して子どもを迎えに行くなど、個々の生活スタイルや家庭の事情にあわせて時間を調節できます。
一般的にフレックスタイム制には、必ず出勤しなければならない「コアタイム」と、出退勤時間を自由に選べる「フレキシブルタイム」の2つの時間帯が設定されています。スーパーフレックスを除いて、完全に自由出勤できる制度ではありません。
コアタイム
「コアタイム」とは、従業員が必ず勤務していなければいけない時間帯です。つまり、コアタイムの時間帯に勤務していないと、遅刻や早退扱いになります。通常、1日の勤務時間内に設定し、企業と従業員との協定によって定められます。
フレックスタイム制においてコアタイムは必須ではありません。勤務時間のすべてを従業員に委ねるスーパーフレックス制を採用している企業もあります。
フレキシブルタイム
「フレキシブルタイム」は、従業員が自由に決められる勤務時間帯です。コアタイム以外のフレキシブルタイムとして定められている時間内で、調整をはかりながら決めることができます。
フレックスタイム制のデメリットと対策
フレックスタイム制の5つのデメリットと、それぞれへの対策を解説します。
- 取引先との連絡が取りづらい
- コミュニケーション不足に陥りやすい
- 出退勤管理に工数がかかる
- 自己管理能力が低いと生産性が低下する
- オフィスの光熱費がかさむ
取引先との連絡が取りづらい
フレックスタイム制の導入により、取引先とのコミュニケーションにおいて問題が生じるデメリットがあります。
たとえば、取引先から「電話してもつながらない」「返答が遅い」などの苦情が寄せられ、場合によっては信頼が低下してしまうかもしれません。
しかし、従業員が取引先の都合にあわせて無理に勤務時間を調整してしまうと、フレックスタイム制の本来の目的が失われてしまいます。
対策|業務体制のルールを設定する
複数人で担当して空き時間をつくらないようにする、曜日ごとに必ず出勤する時間を決めるといった業務体制のルールを新たに設けるとよいでしょう。取引先とスムーズに連絡しながらフレックスタイム制を利用することが可能です。
ただし、連絡漏れを防ぐため、部署内の連携を密にする必要があります。
コミュニケーション不足に陥りやすい
勤務時間が多様化することで打ち合わせの機会が減少し、対面コミュニケーションが取りづらくなる点もフレックスタイム制のデメリットです。
また、ふだんの何気ない会話から生まれる相互理解の機会も失われてしまいます。情報が共有されにくくなり、業務効率が低下するリスクもあるでしょう。
対策|コミュニケーションツールを活用する
コアタイムがないフレックスタイム制は、コアタイムを設定してその時間帯にコミュニケーションを活発化させましょう。
また、チャットツールやサンクスカードなどコミュニケーションツールも活用します。全員のスケジュールを各自が把握できるようにしておくとより円滑になります。
出退勤管理に工数がかかる
固定された勤務時間では、出退勤時刻に基づいた一律の管理が可能です。しかし、フレックスタイム制では一人ひとりの勤務時間が異なるため、勤怠管理が複雑になるでしょう。
特に残業に関して、発生基準を明確に定義しなければなりません。フレックスタイム制の運用では、勤怠管理の課題を乗り越える必要があります。
対策|勤怠管理システムを導入する
出退勤管理に工数がかかって困る場合、フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムを導入するとよいでしょう。
自社の勤怠管理にあわせて柔軟に設定できるサービスや、在宅勤務でもWeb打刻ができるサービスなどをおすすめします。すでに導入している勤怠管理システムを上手に活用できていない企業は、見直しが必要です。
自己管理能力が低いと生産性が低下する
フレックスタイム制は自律性の高い従業員にとっては理想的な働き方ですが、すべての人に適しているとは限りません。
自己管理能力が十分でない従業員の場合、過度の自由は生産性の低下を招く恐れがあります。規律にしたがうことで仕事とプライベートの切り替えがスムーズになり、効率的に業務に取り組めるともいえます。
対策|ほかの従業員との協力業務を取り入れる
生産性低下の対策として、業務を1人で進める作業と他の従業員と協力して進める作業をバランスよく取り入れましょう。
そこで上司は、部下の業務内容を把握し、適切に分配・依頼する必要があります。集中力を高め、時間を守るなどの自己管理も大切です。
オフィスの光熱費がかさむ
フレックスタイム制では従業員の勤務時間がバラバラであるため、オフィス全体の利用時間が長くなる傾向があります。その結果、照明や空調などの使用量が増え、光熱費の負担が大きくなることがデメリットです。
特に中小企業にとって、ランニングコストの増加が、経営に負担をかける可能性があります。
対策|ランニングコストを抑えるものへ切り替える
光熱費の増加を抑える対策として、人感センサーつきの照明や空調への切り替え、高性能な遮熱カーテンの使用をおすすめします。室内の温度上昇を防ぎ、空調負荷を軽減することで、無駄なエネルギー消費を防ぐことができます。
また、オフィスの利用状況を分析し、適切なスペース配分や共有スペースの有効活用を検討することもコスト管理に役立つでしょう。
フレックスタイム制のメリットは?
ここまでフレックスタイム制のデメリットや課題とその対策を紹介してきました。一方で、フレックスタイム制にはメリットも多くあります。
そこでフレックスタイム制の主なメリットを5つ取り上げて解説します。
- ワークライフバランスを実現しやすい
- 通勤ラッシュを避けられる
- 残業代を削減できる
- 業務効率や生産性が向上する
- 人材確保や離職率低下が期待できる
ワークライフバランスを実現しやすい
フレックスタイム制は、従業員のワークライフバランスを実現するための有効な制度です。
たとえば、介護や育児などの家庭の事情に応じて、柔軟に勤務時間を調整できます。体調不良の際も、早めに退勤してほかの日に時間を延長するなど、健康管理と仕事の両立がはかれます。
自律的に時間を配分することで、プライベートが充実し、業務への集中力も増すでしょう。
通勤ラッシュを避けられる
フレックスタイム制の大きなメリットの一つに、通勤ラッシュを避けられることが挙げられます。
特に大都市圏では、満員電車による肉体的・精神的な負担が大きな問題となっています。通勤のストレスは、仕事のパフォーマンスにも悪影響を及ぼしかねません。
フレックスタイム制を導入することで、従業員はより快適な通勤環境を選択でき、ストレスを軽減できます。
残業代を削減できる
フレックスタイム制では業務量を調整することで、ある日は短めに、別の日は長めに働くといった選択が可能です。
毎日一定の時間働く固定労働時間に比べて、自己の裁量により勤務時間を調整できるため、不要な残業を減らすことができます。
フレックスタイム制の清算期間を3か月まで延長すると、残業時間を繰り越せるため、残業代を削減できるメリットにつながります。
業務効率や生産性が向上する
フレックスタイム制の大きな特徴は、従業員に勤務時間の管理を任せることにあります。
自分で勤務時間を決められるようになると、自然と時間の使い方を工夫するようになるものです。無駄な残業を避け、集中して業務に取り組むことで、効率的に仕事を進める従業員が増えるかもしれません。
また、自律的に働く環境が整うと仕事に対する意識も変化します。個人の生産性向上だけでなく、チーム全体の業務効率化にもつながるでしょう。
人材確保や離職率低下が期待できる
フレックスタイム制の導入は、優秀な人材の確保と離職率の低下に貢献します。家庭の事情で通常の勤務体制では働けない場合も、柔軟な時間設定により、仕事と生活の両立が可能になるからです。
従業員の離職を防げることは、企業にとって大きなメリットです。
また、働き方改革が進むなか、多様な働き方へのニーズが高まっています。アイデアが求められる職種では、ある程度の時間的な裁量が必要な場合もあります。
フレックスタイム制は、従業員の能力を最大限に引き出すための環境整備の一環として有効です。たとえば、求人票にの際にフレックスタイム制を明示することで、自律的で柔軟な働き方を求める優秀な人材の獲得につながるでしょう。
フレックスタイム制を導入する際の注意点
フレックスタイム制を導入する際に注意すべきポイントを3つ取り上げて解説します。
- 残業代は発生する
- 就業規則への規定と社内周知を徹底する
- 労使協定を締結する
残業代は発生する
フレックスタイム制においても残業代の発生は避けられません。ただし、計算方法は通常の勤務体制とは異なります。
フレックスタイム制では、設定した一定の期間(清算期間)における総労働時間が基準です。
たとえば、清算期間1か月で暦日数が28日の月であれば、法定労働時間の総枠は160時間です。この清算期間内で180時間の労働があった場合には、超過した20時間が法定外残業となり、割増賃金の支払い対象に当たります。
1日単位や週単位ではなく、清算期間全体で労働時間が総枠を超過しているかどうかを判断します。
就業規則への規定と社内周知を徹底する
フレックスタイム制を導入する際は、就業規則への規定と社内周知の徹底が不可欠です。就業規則においては、始業および終業の時刻を従業員の決定に委ねる点を明確に記載する必要があります。
また、改訂された規則を社内に周知徹底し、円滑な制度の運用につなげることが重要です。
労使協定を締結する
フレックスタイム制を導入するには、労使協定を締結しなければなりません。企業と従業員の間で、以下の項目について協議して合意する必要があります。
- 対象となる労働者の範囲
- 清算期間
- 清算期間の起算日
- 清算期間における総労働時間
- 標準となる1日の労働時間
- コアタイムとフレキシブルタイム
清算期間が1か月を超える場合は、労働基準監督署長に届け出ることも義務づけられています。
フレックスタイム制に適している職種
フレックスタイム制は、すべての職種に適しているわけではありません。
フレックスタイム制との親和性が高いのは、個人の裁量で仕事を進められる職種です。
具体的には、企画や事務など、自分のペースで業務を遂行できる仕事に適しているといえるでしょう。アイデアを練ったり資料を作成したりする際に、集中できる時間帯を選べるのは大きなメリットです。
また、プログラミングやデザイン、ライティングなど、個人で作業する時間が長い職種も、フレックスタイム制との相性がよいと考えられます。クリエイティブ職にとって、能力を最大限に発揮できる環境は重要です。
柔軟な時間設定によってクリエイティビティを発揮しやすくなるでしょう。
まとめ
フレックスタイム制にはメリットがある一方、取引先との連絡不足や社内のコミュニケーション不足、出退勤管理に手間がかかりやすいといったデメリットもあります。
フレックスタイム制のデメリットを理解したうえで、あらかじめ対策を講じておくことが大切です。特に出退勤管理の煩雑さを解消するには、フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムの導入をおすすめします。
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