フレックスタイム制に労使協定の届出は必要? 不要? 導入手順や記載項目もわかりやすく紹介

フレックスタイム制に労使協定の届出は必要? 不要? 導入手順や記載項目もわかりやすく紹介

自由に始業時刻と終業時刻を設定できるフレックスタイム制には、さまざまなメリットがあり、導入を検討している企業もいるのではないでしょうか。

フレックスタイム制を導入する際には必要な手続きがあり、特に就業規則への規定と労使協定で所定事項を定めることが必須とされています。

本記事ではフレックスタイム制を導入するときの手続きを解説し、労使協定に定めるべき事項などを紹介します。フレックスタイム制と労使協定について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

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    フレックスタイム制とは

    フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、始業時刻と終業時刻を従業員自身で決められる制度です。多くの場合「コアタイム」と「フレキシブルタイム」の2つの時間帯が設定されます。

    フレックスタイム制は、始業時刻と終業時刻を自由に決定することで、本人の都合にあわせて毎日の労働時間を調整できます。ワークライフバランスの実現をはかりながら効率的に働けるのが特徴です。

    しかし、フレックスタイム制において、すべての時間が自由になるわけではありません。

    コアタイム

    フレックスタイム制におけるコアタイムは、必ず働かなければならない時間帯です。従業員同士が集合して話し合う会議やミーティングなどは、コアタイムに実施します。

    たとえば、コアタイムを午前10時から午後4時までと決めた場合、その時間は必ず勤務していなければなりません。

    フレキシブルタイム

    フレックスタイム制におけるフレキシブルタイムは、コアタイムの前後にあり、従業員が出勤・退勤時刻を自由に決められる時間帯です。フレキシブルタイムの中では、自分の都合に合わせて出勤や退勤ができます。

    フレックスタイム制の導入時に必要な手続き

    フレックスタイム制を導入する際に必要な手続きを順番に紹介します。

    1. 就業規則に明記する
    2. 労使協定を締結する
    3. 労働基準監督署長へ届け出る
    4. 従業員へ周知する

    1.就業規則に明記する

    フレックスタイム制を導入するには、就業規則等の社内規定の改定が不可欠です。

    具体的には、業務の開始時刻と終了時刻を従業員の裁量に委ねることを明文化する必要があります。

    就業規則への記載例
    従業員は所定の清算期間内において、各日の始業・終業時刻をみずから決定することができる

    就業規則への明記により、フレックスタイム制の法的根拠が担保されます。

    2.労使協定を締結する

    続いて、労使協定によってフレックスタイム制の基本的な枠組みを決定します。労使協定の締結もフレックスタイム制導入に必要な手順です。

    事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その同意を得たうえで、労使協定を結びます。労働組合がない場合は、従業員の過半数を代表する人との協定が必要です。

    労使協定は、清算期間が1か月を超える場合に限り、労働基準監督署長に届け出なければなりません。

    3.労働基準監督署長へ届け出る

    清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制の労使協定を締結した場合は、所轄の労働基準監督署長へ、労使協定届を提出しなければなりません。

    その際は、所定の様式(様式第3号の3)に記入し、労使協定の写しを添付します。届け出は直接持参、郵送のほか、オンラインでの手続きも可能です。令和3年4月からは使用者の押印や署名も不要になりました。

    4.従業員へ周知する

    フレックスタイム制を導入する際は、就業規則の変更内容を従業員に周知する義務があります。制度の詳細やその目的を丁寧に説明し、社内に浸透させることが重要です。

    周知の方法は、労働基準法で以下の3つが定められています。

    • 各職場の見やすい場所に掲示または備え付ける
    • 書面を従業員に直接配布する
    • デジタルデータを記録し、従業員がいつでも内容を確認できる機器を各職場に設置する

    従業員がいつでも確認できるよう、適切な方法で周知を行わなければいけません。周知の徹底は、フレックスタイム制の円滑な運用に不可欠です。従業員の理解と協力を得ながら、新しい勤務体制への移行を進めていく必要があります。

    参照:『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』厚生労働省

    フレックスタイム制に関する労使協定書の届け出は必要?

    フレックスタイム制に関する労使協定書の届け出については、清算期間の長さによって要否が異なります。

    清算期間が1か月以内なら届け出は不要です。しかし、1か月を超える場合は、労働基準監督署長への届け出が必須とされています。

    届け出は、所定の様式を用いて適切に行いましょう。届け出を怠ると法令違反とみなされ、最大30万円の罰金が科される可能性があるため、注意が必要です。

    参照:『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』厚生労働省

    フレックスタイム制に関する労使協定書の記載項目

    フレックスタイム制に関する労使協定書に記載するべき項目として、次の5つが挙げられます。

    • 対象となる労働者の範囲
    • 清算期間
    • 清算期間における所定労働時間
    • 標準となる1日の労働時間
    • コアタイムとフレキシブルタイム
    • (清算期間が1か月を超える場合)有効期間の定め

    清算期間が1か月を超える場合であれば、有効期間の定めも必要である点に注意しましょう。

    対象となる労働者の範囲

    フレックスタイム制の対象となる範囲は、自社の実情に応じて決めることができます。全従業員を対象とするのはもちろん、特定の職種の限定も可能です。

    また、個人や部署、チームなど、さまざまな単位で適用範囲を設定するのも問題ありません。

    ただし、受付や警備など、決められた時間に勤務する必要がある従業員は、フレックスタイム制にはなじみません。

    清算期間

    フレックスタイム制において、従業員が働くべき時間を定める期間を「清算期間」といいます。2019年3月までは、清算期間の上限は1か月でしたが、同年4月以降は法改正により3か月まで延長されました。

    清算期間を設定する際は、期間の長さだけでなく、いつから始まるのかという起算日も決める必要があります。

    清算期間における所定労働時間

    「清算期間における所定労働時間」とは、労働契約で定められた清算期間内で従業員が働くべき時間です。所定労働時間は、法定労働時間の範囲内でなければいけません。

    具体的には、以下の式で求められる時間内です。

    清算期間における総労働時間≦清算期間の日数÷7日×週の法定労働時間(40時間)

    参照:『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』 厚生労働省

    ただし、2つの例外があります。

    例外1:完全週休2日制で、清算期間が1か月のフレックスタイム制を適用した場合
    労使協定で清算期間内の所定労働日数に、8時間を乗じた時間数
    ※1日平均8時間の労働時間であっても、月によっては清算期間における総労働時間が上限の範囲を超えるため
    例外2:清算期間が1か月を超える場合
    1か月ごとに週平均50時間以内

    標準となる1日の労働時間

    「標準となる1日の労働時間」は、有給休暇を取得した際の賃金計算の基礎となる労働時間です。清算期間の総労働時間を、その期間の所定労働日数で割った時間を基準として定めます。

    フレックスタイム制の適用を受ける従業員が、有給休暇を1日取得すると「標準となる1日の労働時間」分だけ働いたものとして扱う必要があります。

    コアタイムとフレキシブルタイム

    コアタイムとフレキシブルタイムを設定する場合は、労使協定で定める必要があります。

    コアタイム

    従業員が必ず勤務するコアタイムの設定は、義務ではありません。しかし、導入する場合はその開始と終了の時刻を労使協定で明確に定めなければいけません。

    コアタイムの時間帯は自由に決められ、曜日によって設定時間を変えることも可能です。たとえば、月曜日と金曜日はコアタイムなしで、火曜日から木曜日は10時から15時までをコアタイムとするなどの運用ができます。

    所定労働日を定めていない場合、コアタイムを設けない日は、自由出勤の日となります。従業員は選択により休日または出勤日とできますが、すべての日を出勤日にすることも考えられます。

    一方、労働基準法は、週1日または4週を通じて4日の休日付与義務を定めています。コアタイムを設けない場合であっても、所定休日または清算期間内の休日数をあらかじめ設定しておく必要があります。

    フレキシブルタイム

    自分の裁量で勤務時間を決められるフレキシブルタイムの設定も義務ではありませんが、導入の際は、開始と終了の時刻を労使協定で定めることが重要です。

    時間帯についても、コアタイムと同様、自由に設定できます。業務の特性や従業員のニーズにあわせて柔軟に設定するとよいでしょう。

    また、フレックスタイム制であっても深夜労働をさせた場合は、割増賃金の支払いが発生します。フレキシブルタイムは、必要がなければ深夜労働時間帯(22時~5時)を避けて設定されることが多いです。

    参照:『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』 厚生労働省
    参照:『フレックスタイム制に関する労使協定書(参考例)』 厚生労働省

    労使協定書に任意で定めておきたい項目

    フレックスタイム制に関する労使協定書に、任意で定めておきたい主な項目を紹介します。

    • 休憩時間
    • 休日
    • 遅刻・早退・欠勤の取り扱い
    • フレックスタイム制の適用外時間
    • 実労働時間における超過・不足時間の取り扱い
    • フレックスタイム制の解除条件
    • 有効期間

    休憩時間

    フレックスタイム制を導入する場合でも、休憩時間については労働基準法の「一斉休憩の原則」が適用されます。

    よって、適用が除外されている業種(運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客・娯楽業及び官公署)以外では、コアタイムを設定し、その中で休憩時間を決める必要があります。

    一斉休憩の原則が適用される業種で、コアタイムを設けない場合は、労使協定で一斉休憩の除外を定めなければなりません。

    休日

    フレックスタイム制における休日の扱いについても任意で定めておくとよいでしょう。

    通常、土曜・日曜・祝日を休日とするケースが多いですが、ほかの曜日に設定しても問題ありません。休日出勤に関しても賃金などを記載しておくことをおすすめします。

    遅刻・早退・欠勤の取り扱い

    フレックスタイム制では、性質上、遅刻や早退、欠勤は生じません。

    ただし、コアタイムでの遅刻や早退、欠勤に対しては、戒告や減給などの制裁を設けておくと社内の秩序が保たれやすくなります。制裁を設ける場合も、あらかじめ就業規則と労使協定で定めておく必要があります。

    フレックスタイム制の適用外時間

    フレックスタイム制の適用外時間を定めることも可能です。

    たとえば、年末年始や夏季休暇など、フレックスタイム制が適用できない時期があれば、明記しておくとよいでしょう。また、深夜の時間帯を適用外時間として、深夜残業を防ぐのもおすすめの方法です。

    実労働時間における超過・不足時間の取り扱い

    フレックスタイム制の運用において、実労働時間が清算期間の総労働時間を超過あるいは不足することもあるでしょう。時間が超過や不足した場合の取り扱いについても明らかにしておく必要があります。

    不足時間は、次回に繰り越したり、不足時間分の賃金を控除したりすることが可能です。超過分を次回に繰り越すことはできません。

    フレックスタイム制の解除条件

    フレックスタイム制がスムーズに運用されない場合、労使協定に明記されていれば解除して定時制に戻すこともできます。フレックスタイム制を辞める場合の条件を明記しておきましょう。

    コアタイムの遅刻や早退が多い従業員については、フレックスタイム制の対象から解除する旨を記載しておくことも一考です。

    有効期間

    フレックスタイム制の有効期間に法律上の規定はありません。

    ただし、一般的には1年間とすることが多いようです。有効期間を設けておかないと、労使双方の合意なしに協定を解約できなくなるというリスクがあります。

    有効期間が設定されている場合、期間満了後に新たな協定を締結しなければなりません。自動更新を規定すれば手間が省けるでしょう。

    まとめ

    フレックスタイム制を導入するときは、就業規則への明記と労使協定の締結が必要です。また、清算期間によっては労使協定書の届け出も行わなければなりません。

    労使協定書には、対象範囲や清算期間などの記載が必要であり、各項目に注意事項があるため、あらかじめ確認することをおすすめします。

    また、先のトラブルを想定して労使協定に明記しておくことで、フレックスタイム制をスムーズに運用できるでしょう。

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