フルフレックス制のメリット・デメリットと残業・中抜け・評価の扱い、導入方法を解説

フルフレックス制のメリット・デメリットと残業・中抜け・評価の扱い、導入方法を解説

フルフレックス制の導入や運用で悩んでいませんか。

フルフレックス制は、従来のフレックスタイム制よりも柔軟な働き方が可能になる一方で、勤怠管理や評価制度、社内ルール整備の難しさから、現場で混乱が生まれやすい制度でもあります。

本記事では、フルフレックス制度の基本からメリット・デメリットを紹介します。実務で押さえるべきポイントとして、残業や中抜けの対応方法、導入時の注意点もわかりやすく解説しています。

社員が安心して働ける制度設計と、企業が無理なく運用するためのヒントが得られるはずです。
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目次アイコン目次

    フルフレックス制とは? フレックスタイム制との違いは?

    まずはフルフレックス制の概要と、単なるフレックスタイム制との違いを解説します。

    フルフレックス制とフレックスタイム制は、コアタイムの有無や働き方の自由度に違いがあります。

    フルフレックス制フレックスタイム制
    コアタイムなしあり
    出退勤時間自由に決定コアタイムを含むように調整
    業務の自由度高い(自己裁量で調整)やや高い。コアタイムで一部拘束あり

    フルフレックス制とは

    フルフレックス制とは、所定の期間内に決められた総労働時間を満たせば、労働者が自由に就業時間を決められる働き方です。「スーパーフレックス制」「完全フルフレックス制」とも呼ばれています。

    フルフレックス制の「フレックス」は、物事を柔軟に扱う様子を表す英語の「flex」に由来する言葉です。企業によって異なるものの、1週間単位や1か月単位で期間を設定するケースがあります。

    ただし、決められた総労働時間があるため、完全に自由な働き方ができるわけではありません。ある日に6時間しか働かなかった場合、ほかの日に8時間以上働かなければ、大抵の場合、最終的に決められた総労働時間を下回ってしまいます。勤務時間が足りないと、欠勤や給与カットの対象となる場合もあるため注意が必要です。

    フレックスタイム制との違いは

    フレックスタイム制も、従業員が一定の時間枠内で自由に働ける制度ですが、フルフレックスとの大きな違いはコアタイムの有無です。

    コアタイムとは、勤務しなければならない時間帯のことです。たとえば、10時から15時までがコアタイムに設定されている場合、全員必ずその時間帯に働いていなければなりません。一般的にコアタイムは、打ち合わせや会議の時間に使われます。

    コアタイムの前後をフレキシブルタイムといい、出勤・退勤時間を自由に調整できるのはフルフレックスと共通しています。

    フルフレックス制ではコアタイムの縛りがないため、より柔軟な働き方が可能です。

    裁量労働制との違いとは

    フルフレックス制と裁量労働制は、まったく別の仕組みです。

    裁量労働制とは、実際に働いた時間とは関係なく、労使間で定めた時間を働いたとみなす働き方です。たとえば「1日8時間働いたことにする」と決めれば、実際に7時間でも9時間でも8時間分の給与が出ます。

    労働時間を自己の裁量によって決められるため、コアタイムのないフルフレックス制との違いがわからない方も少なくないでしょう。

    フルフレックス制との違いとして、裁量労働制には次のような特徴があります。

    • 対象となる業務と職種が限られている(法律の定めあり)
    • みなし労働時間分働いたとみなされる

    フルフレックス制には業務や職種の制限がないものの、裁量労働制には認められる業務や職種が法律によって限定されています。また、フルフレックス制ではみなし労働時間が設定されませんが、裁量労働制ではみなし労働時間が設定されます。つまり、たとえ実際その時間に働いていなくても、働いたものとして賃金が支払われるのが大きな特徴です。

    参照:『裁量労働制の概要』厚生労働省

    ▼フレックスタイム制と裁量労働制の違いは以下の記事で詳しく解説しています。

    フルフレックス制を導入するメリット

    フルフレックス制は、従業員一人ひとりの働き方を柔軟にしながら、生産性・エンゲージメント・採用力の向上にもつながる制度です。導入することで得られる3つの効果を紹介します。

    • 柔軟な働き方を実現できる
    • 業務効率の向上につながる
    • 優秀な人材を確保しやすくなる

    柔軟な働き方を実現できる

    フルフレックス制では、一定の総労働時間さえ満たせば、始業と終業の時間を従業員自身が自由に決められます。

    たとえば以下のように、ライフスタイルや仕事量にあわせて柔軟な働き方が可能です。

    • 今日は子どもの送り迎えがあるため10時出社
    • 明日は朝7時から集中して働いて、15時に退勤

    繁忙期には勤務時間を増やし、閑散期にはプライベートの時間を確保するといった調整もできるため、体調や家庭の事情に応じてメリハリある働き方も実現できるでしょう。

    業務効率の向上につながる

    フルフレックス制を導入すると、従業員はもっとも集中できる時間帯に合わせて働けます。

    コアタイムがないため、「朝型で午前中に一気に進めたい人」や「夜間の静かな時間に集中したい人」も、それぞれの生活リズムに沿って業務に取り組めるようになります。無理なく業務に集中しやすい環境が整うことで、安定したパフォーマンスが発揮できるでしょう。

    また、通勤ラッシュを避けられることも、効率的な働き方につながるポイントです。移動によるストレスや疲労を抑えられ、仕事に向かうコンディションを保ちやすくなります。

    優秀な人材を確保しやすくなる

    フルフレックス制は、多様な働き方を求める人材から選ばれる会社になるための要素の一つです。

    育児・介護など、時間の制約がある人でも無理なく働けるため、長く働けると思ってもらいやすくなります。

    また、働き方の自由度が高いことで、従業員の自律性が高まり、エンゲージメント定着率の向上も期待できます。

    フルフレックス制を導入するデメリット

    フルフレックス制は柔軟に出退勤時間を決められる制度ですが、運用を誤ると現場が混乱し、生産性や信頼関係にまで影響を与えるリスクもあります。導入前に知っておきたい注意点や課題を整理しておきましょう。

    • 社内コミュニケーションが減少する
    • 適切な業務管理をしにくくなる
    • ワークライフバランスが崩れてしまう
    • 勤怠管理が複雑になる

    社内コミュニケーションが減少する

    フルフレックス制で、社員同士の勤務時間がバラバラになると、コミュニケーション不足が懸念として挙げられます。コアタイムがないため、通常のフレックスタイム制以上にその傾向は強まるでしょう。

    「話しかけたいときに相手がいない」「確認したいことが後回しになる」といった日常のズレが起きやすくなります。

    小さな遅れが積み重なり、プロジェクトの進行が遅れたり、誤解が生まれるリスクも考えられます。とくにリモート環境下では「誰が今稼働してるのか見えない」という不安も増えるため、意図的にチーム内のコミュニケーションを増やす工夫が欠かせません。

    適切な業務管理をしにくくなる

    フルフレックス制は自由度が高いぶん、チームの進捗を把握するのが難しくなり、上司が指示を出すタイミングを逃すこともあります。それぞれがしっかりとした自己管理のもと、総労働時間の枠内で業務を遂行する必要があります。

    また、「取引先からの連絡が行き違いになっている」「依頼したけど反応が遅い」といったやり取りが増え、信頼の低下にもつながりかねません。

    自由な制度であるほど、見えないマネジメントが求められる難しさがあります。

    ワークライフバランスが崩れてしまう

    フルフレックス制では勤務時間を調整できるぶん、働きすぎてしまう従業員があらわれる可能性もあります。

    成果を求めて無理な長時間労働が続いた結果、ワークライフバランスを崩し、心身の不調につながってしまうケースもあるでしょう。

    フルフレックス制を導入する場合は、定期的に業務負荷を確認するなど、よりていねいなマネジメントが求められます。

    勤怠管理が複雑になる

    社員ごとに出社する時間が異なるフルフレックス制では、正確な勤怠管理が難しくなります。

    出退勤の打刻時間を確認するだけでは、残業や深夜・休日労働をすぐに把握できません。働き過ぎを見逃さないためにも、残業管理が重要です。

    また、制度における残業代の扱いも少し複雑なため、勤怠管理の負担が大きくなるでしょう。

    フルフレックス制を導入する場合は、企業の実態と制度に対応した勤怠管理システムを活用する必要があります。

    ▼フレックスタイム制全般の残業の扱い方は以下の記事でご確認ください。

    ▼労働時間の管理方法に不安がある方は以下の資料もご活用ください。

    フルフレックス制が向いている企業

    フルフレックス制はどのような業種・業界・企業と相性がよいのでしょうか。導入には自社の業務や組織の特性に適しているかを検討しなければなりません。

    フルフレックス制の導入に適している企業には3つの共通点があります。

    • 1人で完結しやすい業務内容である
    • 職場やチームの構成員数が多い
    • 繁忙期と閑散期がある

    フルフレックス制では、他者と連携する機会が少なく、1人で裁量をもって自律的に進められる業務ほど向いています。

    また職場やチームを構成する人数が多いほど、メンバーの勤務時間がずれていても、互いに補完できる体制が整っているため、業務に支障が生じにくいでしょう。

    そのほか季節ごとに繁忙期と閑散期がある場合も、時期に応じて勤務時間を調整できるフルフレックス制のメリットが活かされます。

    主な業界例主な職種例
    IT業界、Web業界、人材業界ライター、エンジニア、デザイナー、データアナリスト

    フルフレックス制の導入方法

    フルフレックス制は、自由度の高い働き方を実現できる一方で、適切に設計・運用しなければ、混乱やトラブルにつながるおそれもあります。

    導入時に必要なステップを4つに分けて解説するとともに、制度を機能させるためのポイントを紹介します。

    1. 対象となる部署や社員を決める
    2. 就業規則に規定を定める
    3. 労使協定を締結する
    4. 社員に周知徹底する

    1.対象となる部署や社員を決める

    まずは、フルフレックス制の対象とする部署や職種を明確にします。すべての業務・部門が制度の導入に適しているとは限りません。業務内容の特性やチーム体制、顧客対応の有無などを踏まえて慎重に判断する必要があります。

    導入前には、各部門の管理者やキーパーソンと制度の概要を共有しましょう。実運用に支障がないか、連携が必要な業務への影響がないかといった点をすり合わせ、最終的な導入可否を検討します。

    2.就業規則に規定を定める

    導入が決まったら、フルフレックス制についてのルールを就業規則に記載しなければなりません。労働基準法第32条によって法的に義務づけられているためです。

    具体的には、以下のような内容を規定する必要があります。

    • 始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨
    • 適用労働者の範囲
    • 清算期間
    • 総労働時間

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    ▼就業規則の変更について詳しく知るには、以下の記事でご確認ください。

    3.労使協定を締結する

    フルフレックス制を導入する際は、就業規則に加えて、労使協定の締結も必要です。

    労使協定には以下の事項を必ず明記します。

    • 対象となる労働者の範囲:全社員または一部
    • 清算期間:上限3か月
    • 清算期間における総労働時間(精算期間における所定労働時間)
    • 標準となる1日の労働時間

    フルフレックスの場合、通常のフレックスタイム制で必要なコアタイムやフレキシブルタイムの記載は必要ありません。

    清算期間が1か月を超える場合は、労使協定を所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。未届出のまま運用を開始した場合は、労基法違反で30万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。

    参照:『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』厚生労働省

    ▼フレックスタイム制導入で必要な労使協定の届け出については以下でご確認ください。

    4.社員に周知徹底する

    フルフレックス制についての事項を就業規則に定めたら、決定した内容を社員に周知します。社員に周知して初めて、就業規則の変更が有効となります。

    フルフレックス制の導入に至った経緯や目的、メリット、注意点も伝えて新しい試みに対する理解を促しましょう。

    「自由に働ける制度」という印象だけが先行すると、誤解や運用トラブルにつながりやすいため、制度の自由と責任のバランスを伝えることが重要です。

    フルフレックス制の導入を成功させるポイント

    フルフレックス制は自由度が高い反面、導入後の運用次第で課題がいくつも生まれてしまう可能性があります。制度を機能させるには、どのような工夫が必要でしょうか。

    とくに注意したい3つの制度を支える仕組みとポイントを紹介します。

    • 評価基準を決めておく
    • コミュニケーションできる機会を積極的に設ける
    • 勤怠管理システムを導入する

    評価基準を決めておく

    部署やチームの実態にあわせて、社員一人ひとりが納得できる評価基準をあらかじめ定めておきましょう。

    フルフレックス制では、社員ごとに働く時間が異なるため、勤務時間ではなく「成果」で評価する基準づくりが重要です。

    すべての業務が定量化しやすいわけではないため、定性的な貢献も含めた評価の基準を定めておく必要があります。

    成果が見えにくい間接部門やプロセスが重視される業務では、従業員が納得できる評価方法の設計が欠かせません。

    コミュニケーションできる機会を積極的に設ける

    Web会議ツールや社内チャット機能のようなコミュニケーションツールの見直しを検討しましょう。

    • 定期的なオンラインミーティングの開催
    • 社内イベントの開催
    • ニュースレターなど情報発信をこまめにする

    フルフレックス制で社員同士が対面する機会が少なくなると、関係性が希薄になりがちです。制度導入後は顔合わせが減ることを前提に、あえて定期的な交流機会を設けることが重要です。チーム内の進捗状況が把握しやすくなり、スムーズな業務遂行にもつながります。

    勤怠管理システムを導入する

    フルフレックス制を導入すると、勤怠管理が煩雑になります。そのため、フルフレックス制を含む柔軟な勤務形態に対応する勤怠管理システムの活用をおすすめします。

    勤怠管理システムの活用で、労働時間の集計と管理が自動化され、残業・休暇の申請もまとめて運用が可能です。

    フルフレックス制で働く従業員の労働状況の把握にも役立ちます。制度の導入にあわせて自社に適した勤怠管理システムの活用を検討してみるのも一案です。

    クラウド勤怠管理システムOne人事[勤怠]

    フルフレックス制を導入して働きやすい環境を整えましょう

    フルフレックス制は、従業員一人ひとりの働き方に柔軟性を持たせ、自律性が求められる働き方です。通常のフレックスタイム制とは違ってコアタイムの設定がなく、自由度がより高くなっています。

    しかし、フルフレックス制を導入した場合、評価や勤怠管理、コミュニケーション設計といった制度を支える仕組みがなければ、行き詰まってしまう可能性もあります。

    自由が社員の働きやすさが成果に結びつくよう、設計と運用の両面から慎重に検討し、自社に適した導入方法と管理体制を整えましょう。なかでも勤怠管理の徹底は法的責任を果たすうえでも重要です。勤怠管理システムの活用も視野に入れる必要があります。

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