労働基準法での休憩時間の定義とは? 基本となるルールや注意すべきポイントを解説
労働基準法により、従業員が仕事の合間に取得すべき「休憩時間」のルールが定められています。企業は、労働基準法における休憩時間について把握し、従業員の働き方に合わせて適切な時間の休憩を与えなければなりません。
本記事では、労働基準法における休憩時間の基本やルール、管理するうえで注意すべきポイントを解説します。
労働基準法で定められている「休憩時間」とは?
休憩時間とは、労働時間と反対の意味で用いられています。労働基準法で定められている休憩時間の定義や目的について解説します。
休憩時間は労働基準法で決められている?
労働基準法によって、休憩時間に関するルールが細かく定められています。休憩時間は、使用者である企業が付与すべきものとして義務づけられているのです。従業員を雇用する企業は、労働基準法における休憩時間を正しく把握し、従業員に対して適切な休憩時間を提供しなければなりません。
休憩時間の目的をあらためて確認
休憩時間は、従業員にとって心身の疲労を和らげ、パフォーマンスを落とさずに仕事をするために重要な時間です。
必要な休憩時間を取らずに働き続けると、疲労によって集中力や作業効率が低下してしまい、事故やトラブルなどの労働災害が起こるリスクが高まります。従業員の生活の一部である職場において、社会的・文化的な生活を保障するという意味合いもあるのです。
このように休憩時間は労働を中断して肉体的・精神的疲労を回復させ、従業員の健康な生活の確保を目指すことを目的としています。
労働時間に対して必要な休憩時間
労働基準法において定められている休憩時間は、働く時間数によって大きく異なります。
労働時間に対して必要な休憩時間 | |
---|---|
6時間以内 | 休憩時間は不要 |
6時間を超えて8時間以内 | 45分間 |
8時間を超える | 1時間 |
上記の休憩時間は最低限の基準です。従業員に有利となるように、この基準よりも多くの休憩時間を与えることは問題ありません。
「6時間を超える労働」の際には45分間の休憩が必要
6時間を超える労働に対しては、45分間の休憩を与える必要があります。たとえば、7時間労働の場合は「3時間働いて45分間休憩し、そのあと4時間働く」という働き方が考えられるでしょう。
「8時間を超える労働」の際には1時間の休憩が必要
8時間を超える労働に対しては、1時間の休憩を与えなければなりません。6時間を超える労働と同様、定められているのは最低限の休憩時間なので、企業の判断で1時間を超える休憩時間を付与することも可能です。
「6時間ちょうどの労働時間」の場合には休憩時間は必要ない
6時間の労働時間に対しては、休憩時間を付与する必要はありません。そのため、休憩なしで働きたいパートやアルバイトの従業員の場合、6時間を勤務時間の上限としているケースがあります。
休憩に関する3原則について
労働基準法では「休憩に関する3原則」が掲げられています。
休憩に関する3原則 |
---|
・自由利用の原則 ・一斉付与の原則 ・途中付与の原則 |
この3原則には、休憩時間に関する基本的な概念やルールがまとめられています。ただし、一部例外となるケースもあるため、3原則の内容を十分に理解しておくことが大切です。自社の状況を考慮しながら、休憩時間の規定に対する理解を深めてください。
自由利用の原則について
自由利用の原則とは、休憩時間における従業員の行動を制限できないというルールです。労働基準法では次のように定められています。
第三十四条 ③ 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
引用:『労働基準法』e-Gov法令検索
休憩時間中は、従業員の過ごし方について企業側は干渉できません。たとえば、お昼休憩中に従業員自身の業務から切り離していたとしても、電話番や来客対応をさせる行為は原則として違法とされています。
ただし、別途休憩時間を与えたり、職場内で自由に休憩できる環境を整えたりしていれば、違法にならないケースもあります。
一斉付与の原則について
一斉付与の原則とは、休憩時間は労働者に一斉に与えるべきというルールです。労働基準法では、休憩を付与すべき従業員に対して、同じ時間に一斉に付与しなければならないと定められています。
第三十四条 ② 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。
引用:『労働基準法』e-Gov法令検索
特定の従業員にだけ別の時間に休憩を与える行為は、原則禁止されています。ただし、例外として、企業と従業員の間で労使協定を締結している場合は、休憩時間をずらして与えることも可能です。
また、以下のような特定の事業については、労使協定を締結しなくても従業員に交代で休憩を付与できると定められています。
- 坑内労働
- 運輸交通業
- 商業
- 金融・広告業
- 映画・演劇業
- 通信業
- 保健衛生業
- 接客娯楽業
- 官公署の事業
途中付与の原則について
途中付与の原則とは、休憩時間は労働時間内に与えなければならないというルールです。労働基準法では以下のように定められています。
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
引用:『労働基準法』e-Gov法令検索
「労働時間の途中」とは労働と労働の合間を意味するため、就業前後に休憩を与えるのは違反です。
労働基準法に適した休憩時間を提供するポイント
休憩に関するさまざまなルールや制限を踏まえて、労働基準法に適した休憩時間を付与するためのポイントを解説します。
従業員と休憩時間に関する情報を共有しておく
休憩時間については、労働時間によって付与すべき最低時間が異なるだけでなく、自由利用の原則や途中付与の原則などさまざまなルールが定められています。企業と従業員の間で休憩時間の定義にズレが生じてしまうと、トラブルの原因になりかねません。
従業員に労働基準法への理解を深め、休憩時間のルールに納得してもらえるような取り組みが求められます。従業員と休憩時間に関する情報を共有して、明確なルールを制定するよう心掛けましょう。
休憩時間は分割できる
休憩に関する3原則を守っていれば、休憩時間を複数回に分割して付与することも可能です。たとえば、従業員に1時間の休憩を与えるケースでは、1時間を30分ずつに分割したり、10分間の休憩を6回付与したりできます。
ただし、あまりにも小刻みの休憩は心身をリラックスさせるには不十分です。職場の環境やその日の業務状況に合わせて、従業員と休憩時間の取り方について相談してください。
休憩時間に関して企業側が注意すべきこと
従業員に休憩時間を与える際に、注意すべき3つのポイントを解説します。
パート・アルバイトでも休憩時間のルールに変わりはない
休憩時間は、雇用形態に関係なく同じルールのもと付与しなければなりません。パート・アルバイトや派遣社員など非正規雇用の従業員に対しても、労働基準法で定められた時間数を与える必要があります。
たとえば、本来最低でも45分の休憩時間を付与すべき7時間勤務のパート従業員に対して、30分の休憩しか付与しないのは違法行為です。雇用形態にかかわらず、労働基準法に定められた時間数以上の休憩時間を確保してください。
残業によって労働時間が延びた場合には休憩が必要になることも
残業によって労働時間が延びた場合、休憩が必要となるケースがあります。
たとえば、7時間労働で本来は45分の休憩を必要とする従業員が残業し、労働時間が8時間を超えた場合には、1時間の休憩を付与しなければなりません。残業によって追加された休憩時間を取るタイミングは、所定労働時間内でも残業時間内でも問題ありません。
休憩時間中に仕事を任せることは違法となる
休憩時間中の従業員に対して業務を課すことは、労働基準法に違反するため注意が必要です。「自由利用の原則」に基づいて、休憩中は従業員の行動を制限できません。たとえ休みながらでもできる簡単な仕事であっても、休憩中に働かせてはいけないのです。
また、上司などからの指示で労働に従事できる状態で待機させる「待機時間」も、労働時間と見なされ、休憩時間にはならないため注意しましょう。
労働基準法に違反した場合は罰則もある
休憩付与義務を怠った場合に、企業が科せられる罰則について解説します。
6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる
休憩時間に関する違反行為があった場合は、労働基準法で規定されている休憩時間を与えていないと判断され、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられてしまいます。企業だけでなく管理者や労務担当者が罰則の対象となるケースもあるため、十分注意しなければなりません。
労働基準法に関するよくある違反行為
従業員の休憩時間以外にも、労働基準法に対する違反行為にはさまざまな事例があります。
- 労働時間
- 残業時間
- 休日
- 有給休暇
- 残業代・休日手当・深夜手当
労働基準法に違反する行為が認められた場合、労働基準監督署による是正指導が入るほか、刑事責任を追及される恐れもあります。
さらには、従業員から損害賠償を請求されるリスクも考えられます。厚生労働省のホームページなどで違反法案の事例として公表されることもあり、掲載されれば社会的信用の損失は避けられません。
労働基準法は労働条件の原則や最低基準を定めたルールであり、遵守することは企業としての義務です。法律を守り従業員の健康を損なわないようにするためにも、休憩時間をはじめとした勤怠管理を徹底して行いましょう。
労働基準法における休憩のルールに沿った勤怠管理へ
企業が従業員に付与する休憩時間に関するルールは、労働基準法によって細かく定められています。労働時間に応じた休憩時間の付与は、努力義務ではなく法律上規定されていることであり、違反すると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるため注意が必要です。
近年は、働き方の多様化によって、従業員の勤怠管理が煩雑になりつつあります。毎年のように改正される労働に関する法律に適応するためにも、運用しやすい勤怠管理システムを導入して活用しましょう。
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