深夜労働における年齢制限【何歳から?】労働基準法上の保護規定や注意点、違反した場合の罰則を解説
深夜労働とは、22時から翌5時までの労働です。深夜残業と呼ばれることもあり、通常の賃金とは別に割増賃金を支給する必要があります。
深夜労働自体は違法ではありませんが、年少者の健全な育成という観点から年齢制限が設けられています。基準に満たない年齢の労働者に深夜労働をさせると法律に抵触し、最悪の場合は罰則を科せられる恐れもあるため、十分な注意が必要です。
本記事では、深夜労働における年齢制限について詳しく解説します。例外的に年少者の深夜労働が認められるケースや注意点なども紹介しているので、参考にしてください。
深夜労働とは
労働基準法では、22時から翌5時までの労働を「深夜労働」と定めています。多くの場合、深夜労働は時間外労働に該当するため「深夜残業」と呼ばれることもあります。ただし、勤務形態によっては、もともとの所定労働時間に深夜帯が含まれている労働者もいるでしょう。
深夜帯は日中働いている人であれば、自宅で休息や睡眠を取る時間なので、通常の賃金とは別に割増賃金が適用されます。一般的に深夜手当などと呼ばれ、25%以上の割増賃金を適用する決まりとなっています。
たとえば、通常の時給が2,000円の場合、深夜労働の時給は「2,000円×1.25=2,500円」です。深夜労働が時間外労働や休日労働でもある場合は、割増賃金を上乗せする必要があります。
深夜労働の年齢制限|何歳から?
労働基準法における深夜労働には、年齢制限が設けられています。同法第61条1項による規定は、以下の通りです。
(深夜業)
第六十一条 使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によつて使用する満十六才以上の男性については、この限りでない。
引用:『労働基準法』e-Gov法令検索
以上より、深夜労働は満18歳以上から可能と解釈できます。
なお厚生労働大臣からの許可を得た場合は、地域または期間を限って、年少者を使用してはならない時間帯を23時から午前6時とすることが可能です。ただし、満18歳未満の年少者の深夜労働は原則禁止であることに変わりはありません。
年少者の深夜労働が規制されているのは、子どもの健全な育成によくない影響を与えるためです。非常災害の場合を除き、基本的には年少者を深夜に働かせるべきではないと理解しておきましょう。
参照:『労働基準法のあらまし(最低年齢、深夜業の禁止、年少者・妊産婦等の就業制限 ほか)』茨城労働局
18歳未満でも深夜労働できる場合
18歳未満の深夜労働は原則として禁止されています。しかし、以下のいずれかの条件に当てはまる場合は、例外として18歳未満の労働者にも深夜労働をさせることが可能です。
- 満16歳以上の男性であり交替制で働く場合
- 労働基準監督署長の許可を得て交替制で働く場合
- 災害などの非常事態により労働基準監督署長の許可を得た場合
- 農林水産業・保健衛生業、電話交換業務の場合
それぞれのケースについて、以下で詳しく解説します。
満16歳以上の男性であり交替制で働く場合
労働基準法第61条では、18歳未満の深夜労働を禁止するとともに、以下の但し書きが添えられています。
(深夜業)
ただし、交替制によつて使用する満十六才以上の男性については、この限りでない。
引用:『労働基準法』e-Gov法令検索
交替制で働く満16歳以上の男性には、深夜労働をさせることが可能です。交替制とは、日勤と夜勤を入れ替えながら勤務する働き方を指します。一定期間ごとに日勤と夜勤に交代で就くため、一般的な働き方と比べると変則的です。
日勤と夜勤を入れ替えながら働く形態であれば、深夜労働による疲労を回復させやすいと考えられます。そのため、満16歳以上の男性に限り、例外的に深夜労働が認められているのです。
なお交替制で働く満16歳以上の従業員であっても、「女性」の場合は深夜労働が認められないので注意しましょう。
労働基準監督署長の許可を得て交替制で働く場合
労働基準法第61条3項より、行政官庁(労働基準監督署長)の許可を得て交替制で働く場合は、22時30分まで未成年者を使用できます。
労働基準監督署長の許可を得ていれば、満16歳以上の男性でなくても、交替制で深夜労働をさせることが可能です。
ただし交替制とは、そもそもが2交替制や3交替制の事業のみです。
また、厚生労働大臣の許可を得て、深夜労働の時間を23時から翌6時としている場合、交替制であれば午前5時30分からの使用ができます。
災害などの非常事態により労働基準監督署長の許可を得た場合
労働基準法第33条1項により、災害などの非常事態により臨時の必要がある場合は、労働基準監督署長の許可を得れば、労働時間の延長や休日労働をさせることが可能です。
また、労働基準法第61条4項により、労働基準法第33条1項を適用した労働については、深夜労働の制限は課されないと定められています。
そのため、非常事態下であり労働基準監督署長の許可も得ている場合は、18歳未満の労働者の深夜労働が認められる可能性があるでしょう。
たとえば、被災した事務所を片付けて復旧させる必要が生じた際は、年少者を深夜に使用できます。
農林水産業・保健衛生業、電話交換業務の場合
労働基準法第61条4項により、農林水産業や保健衛生業、電話通信業務などについては、業務の性質上、18歳未満の労働者の深夜労働が認められています。
ただし、業務の性質上仕方がないものであっても、深夜労働は法定時間外労働として扱い、割増賃金を支給しなければなりません。
18歳未満の深夜労働における労働基準法上の保護規定
年少者の保護の観点から、18歳未満の労働者を雇用する場合は、以下のポイントに注意する必要があります。
- 深夜手当は正しく支払う
- 時間外労働や休日出勤をさせてはいけない
- 危険有害業務をさせてはいけない
- 雇用契約には親権者の同意が必要
それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。
深夜手当は正しく支払う
年少者に限った話ではありませんが、22時から翌5時までの労働に対しては25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。労働者が18歳未満であってもこの原則は変わらず、時給換算した賃金の1.25倍以上の給与を支給する必要があります。
たとえば、労働者が19時から23時まで働いた場合、22時から23時までの1時間分には割増賃金が必要です。
時間外労働や休日出勤をさせてはいけない
労働基準法第60条により、18歳未満の年少者の時間外労働や休日出勤は禁止されています。
時間外労働とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働のことです。
また、労働基準法では労働者に「週1回または4週に4回」の休日を付与しなければならないと法定休日が定められています。法定休日の労働を休日出勤(休日労働)といいます。
労働者に時間外労働や休日労働を依頼するためには36協定を締結する必要がありますが、18歳未満の従業員には適用されません。たとえ本人が同意したとしても、18歳未満であれば時間外労働や休日労働をさせることは違法となります。
危険有害業務をさせてはいけない
労働基準法第62条により、18歳未満の労働者の危険有害業務は禁止されています。禁止業務は全部で50種類ほどあり、代表的な業務は以下の通りです。
- 坑内における労働
- 有害物や危険物を扱う業務
- 感電の危険性が高い業務
- 高温もしくは低温な場所での業務
- 足場の組み立て業務
- クラブやバーなどにおける業務
雇用契約には親権者の同意が必要
18歳未満の年少者と雇用契約を結ぶには、親権者の同意が必要です。これは、18歳未満は法律上未成年にあたり、契約などの法律行為が制限されているためです。
未成年者を雇用する場合は、雇用契約書に本人だけでなく親権者の署名・押印を求めるようにしましょう。
ただし、親権者が年少者に代わって雇用契約を結ぶことは禁止されており、契約はあくまで年少者本人との間で取り交わす必要があります。また、雇用する企業は、年少者の年齢を証明する証明書を事業場に備えつけることが必要です。
深夜労働を高校生にさせる際の注意点
18歳以上や18歳未満でも一定の条件を満たせば深夜労働は可能ですが、高校生を深夜に働かせる場合は注意が必要です。校則で深夜労働を禁止している高校は多く、学校や親の許可がないまま夜遅くに働かせてしまうと、トラブルに発展する恐れがあります。
また、学校や親が許可していても、高校生の本分は勉強です。深夜労働によって眠気で授業に集中できなくなったり、遅刻や欠席が増えたりすることはあってはなりません。
高校生を深夜に働かせる場合は、まず学校や親の許可を得たうえで学業に支障が出ないよう配慮しましょう。
深夜労働の年齢制限に違反した場合の罰則
深夜労働の年齢制限に違反して年少者を働かせた場合は、労働基準法第61条の違反により6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。
罰則を免れたとしても、事実が明るみに出れば企業イメージの低下は避けられません。
年少者に深夜労働をさせる場合は、例外のケースに当てはまっているかどうかを必ず確認しましょう。
深夜労働は原則満18歳以上から可能(まとめ)
労働基準法により、満18歳未満の年少者の深夜労働は原則として禁止されています。しかし、災害などの緊急事態や、交替制で働く16歳以上の男性など、いくつか例外となるケースもあります。
ただし、18歳未満の年少者や高校生は肉体的にも精神的にも成長途中であり、社会に保護されるべき存在です。法的な問題がなくとも、年少者を深夜に働かせる場合は健康状態や学業に悪影響を及ぼさないか、十分に注意する必要があります。
たとえ本人が深夜労働を希望したとしても、法律が優先されるので、必要に応じて年少者本人の理解を促すことも必要です。また、トラブルを避けるためにも、親権者や学校の同意を得たうえで深夜労働をさせるのが無難です。
法律上のルールを把握したうえで、年少者の健康や学校生活に配慮するよう心がけましょう。
深夜労働の規則を守るためには、年少者を含む従業員の労働時間を適切に管理することが大切です。労働時間の管理に課題を抱えているなら、勤怠管理システムの導入を検討してはいかがでしょうか。
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