月間の労働時間の上限とは? 月の平均所定労働時間や残業時間の上限を解説

月間の労働時間の上限とは? 月の平均所定労働時間や残業時間の上限を解説

月の労働時間は、労働基準法により定められており、企業は従業員の労働時間を適切に管理することが義務づけられています。とくに上限時間を理解しておくことは、労務トラブルを未然に防ぐためにも重要です。

本記事では、月の平均所定労働時間や残業時間の上限について詳しく解説します。適切な労働時間管理の実現に向けたポイントを確認しましょう。

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    月の平均所定労働時間とは

    月の平均所定労働時間とは、年間の所定労働時間を12で割って算出されるひと月あたりの平均的な所定労働時間です。所定労働時間は、各企業や事業所で定められています。

    法律を遵守した労働管理をするうえで、労働時間に関する理解は重要です。まずは以下の基本的な事項を解説します。

    • 所定労働時間と法定労働時間の違い
    • 月の平均所定労働時間の概要
    • 月の平均所定労働時間が重要とされる理由

    所定労働時間と法定労働時間とは

    所定労働時間とは、企業ごとに定められた労働時間です。

    たとえば、1日の所定労働時間が8時間、年間休日が125日の場合の年間所定労働時間は、1,920時間と計算できます。

    所定労働時間(日)年間休日所定労働時間(年)
    8時間125日(365日-125日)×8時間=1920時間

    一方で法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間です。「1日8時間・週40時間」と定められています。

    原則として、企業は法定労働時間を超えて従業員を働かせてはなりません。また、所定労働時間を設定する際も、法定労働時間内に収める必要があります。

    万が一、法定労働時間を超過する労働が必要な場合は、労使間で36(サブロク)協定を締結しなければなりません。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    月の平均所定労働時間とは

    月の平均所定労働時間とは、ひと月あたりの平均的な所定労働時間のことです。年間所定労働時間を12で割って算出します。

    たとえば、1日の所定労働時間が8時間、年間休日が125日の場合、月の平均所定労働時間は160時間です。

    所定労働時間(日)年間休日所定労働時間(年)平均所定労働時間(月)
    8時間125日(365日-125日)×8時間=1920時間1,920時間÷12か月=160時間

    月平均所定労働時間が必要な理由とは

    月の平均所定労働時間が重要な理由は、残業代の計算に直接的な影響を及ぼすためです。

    労働基準法では、法定労働時間を超える労働に対し、残業代として割増賃金を支払うように義務づけられています。

    割増賃金は、1時間あたりの基礎賃金を把握しなければ算出できません。

    月平均所定労働時間は「割増賃金」の算出に必要
    割増賃金の算出式→1時間あたりの基礎賃金×残業時間数×割増率

    以上のように、割増賃金の算出基礎となる「1時間あたりの基礎賃金」は、月の平均所定労働時間から計算するため、正確に把握する必要があります。

    なぜ労働日数でなく平均所定労働時間で基礎賃金を求めるのか

    そもそも基礎賃金は、なぜ「労働日数」ではなく「月の平均所定労働時間」から計算するのでしょうか。

    1時間あたりの基礎賃金の算出式
    1時間あたりの基礎賃金=基礎賃金(=月給など)÷平均所定労働時間

    暦日数は月ごとに異なるので、実労働日数で1時間あたりの基礎賃金を求めてしまうと、月によってばらつきが生じます。月によって1時間あたりの基礎賃金が異なると、残業代にもばらつきが出て、月々の給与計算業務が煩雑です。

    そのため、月の平均所定労働時間を用いて、基礎賃金や割増賃金を計算します。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    月の平均所定労働時間の上限とは?

    月の平均所定労働時間の上限は、計算によって変動する場合があります。いずれにしても、法定労働時間の上限を超えないように設定する必要があります。

    法定労働時間は「1日8時間・週40時間」と定められていますが、「月単位の法定労働時間」は具体的に定められていません。そのため、月ごとの所定労働時間を決める際は、1日8時間・週40時間を基準に考えます。

    月の法定労働時間の上限は「月の日数÷7日×40時間」で計算します。たとえば「1日8時間」で1日あたりの所定労働時間が固定されている場合、月の日数に応じて上限が変動するため注意しましょう。

    過労死にあたる労働時間とは

    月の所定労働時間を大幅に超える長時間労働は、従業員の心身を疲弊させてしまい、最悪の場合は過労死につながるリスクもあります。

    厚生労働省が定義する過労死のラインは、以下の2つです。

    • 発症前の1か月間に100時間以上の時間外・休日労働をしている
    • 発症前2〜6か月にわたって、ひと月あたり80時間以上の時間外・休日労働をしている

    以上の過労死ラインをオーバーすると「業務と発症の関連性が強い」と評価できるとされています。

    また、脳や心臓疾患に関する労災認定基準では、時間外・休日労働が週45時間を超えて長くなればなるほど過労死リスクが高まるとされています。

    長時間労働を防ぐためにも、適切な労働時間の目安を理解し、従業員の労働時間を正確に把握することが重要です。

    参照:『過労死等防止啓発パンフレット』厚生労働省

    法定労働時間を超える労働には36協定の締結が必要

    労働時間は、本来「1日8時間・週40時間」を超えられないものの、36協定を締結して届け出ることで「月45時間・年360時間」までの時間外労働が認められます。

    36協定の締結が必要なケースは、以下のとおりです。

    • 法定労働時間を超えた時間外労働を課す場合
    • 法定休日に休日労働を課す場合

    所定労働時間を超えて労働させても、法定労働時間内に収まる場合は、36協定の締結は必要ありません。時間外労働は36協定で定めた範囲内のみで認められます。

    時間外労働には、25%から最大50%以上の割増賃金が支給されます。

    参照:『知っておきたい 36 協定届』厚生労働省

    残業代の計算方法

    残業代の計算方法は、以下のとおりです。

    残業代=1時間あたりの基礎賃金×残業時間×割増率

    変形労働時間制など特殊な勤務体系でなければ、法定労働時間を超えると残業扱いとなります。

    1時間あたりの基礎賃金は「月給÷月の所定労働時間」で計算が可能です。月給には、以下の手当などは除外します。

    • 家族手当
    • 通勤手当
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

    残業代の計算に用いられる「割増率」は、残業代の対象となる労働の種類によって、以下のように異なります。

    割増賃金の種類割増率
    月60時間までの時間外労働25%以上
    月60時間を超える時間外労働50%以上
    休日労働35%以上
    深夜労働(22時〜翌5時)25%以上

    参照:『1. 時間外(法定外休日)労働の割増率』厚生労働省

    月の労働時間の目安

    企業の人事担当者は、従業員の月間労働時間が、法定労働時間を超えていないかを確認することが大切です。そこで、ひと月あたりの労働時間の適正値や目安を解説します。

    ひと月あたりの労働時間の適正値とは

    法定労働時間「1日8時間・週40時間」の上限をもとにすると、暦日数別のひと月あたりの法定労働時間は以下のとおりです。

    週の法定労働時間月の暦日数
    28日29日30日31日
    一般事業所(40時間)160.0時間165.7時間171.4時間177.1時間

    月の日数がもっとも少ない2月は「28日÷7日×40時間=160時間」が上限です。従業員の労働時間が、上限時間内に収まっている場合は問題ありません。

    残業込みの1か月の労働時間の目安

    1か月あたりの法定労働時間の上限を160時間とすると、残業時間を含めた労働時間の目安は、200時間程度が妥当といえるでしょう。これは毎日2時間程度の残業を実施している状態を意味します。

    しかし、ひと月の労働時間を200時間の中に収めても、毎日2時間の残業は、従業員にとって大きな負担となります。たとえ法定内の労働時間であったとしても、残業はなるべく減らすように努めましょう。

    年あたりの残業時間も考えなければならない

    36協定を締結した場合、月45時間という上限だけではなく、年間の上限時間も意識しなければなりません。原則として、従業員の残業時間は年360時間以内に収める必要があります。

    月45時間の残業を12か月繰り返すと、合計残業時間は540時間となり、上限を超えてしまいます。年間で360時間以内に収めるためには、1か月あたり30時間程度の残業にとどめなければなりません。

    ただし、特別条項を盛り込んだ36協定を締結すれば、年間の時間外労働の上限は720時間に拡大されます。

    人事担当者は、月単位だけでなく、年単位でも従業員の残業時間を把握・管理しましょう。

    参照:『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』厚生労働省

    2〜6か月の残業時間平均が80時間以内なら増減があっても認められる

    働き方改革関連法により、臨時的な特別の事情があって特別条項付きの36協定を締結すると、「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、かつ2~6か月の平均が80時間以内」というルールがが設けられました。

    また、月45時間を超える時間外労働が許されるのは「年に6か月まで」である点にも注意が必要です。

    参照:『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』厚生労働省

    上限を超えて従業員に残業をさせると法律違反で処罰される

    労働時間の上限ルールをまとめると以下のとおりです。

    • 月45時間・年360時間以内
    • 特別な事情がある場合は、年720時間以内
    • 特別な事情がある場合は、月100時間未満、かつ2~6か月平均80時間以内(休日労働を含む)
    • 特別な事情がある場合でも、月45時間を超えられるのは最大で年6回まで

    以上の時間外労働の上限を守らなければ、労働基準法違反とみなされます。

    ルールに1つでも違反した場合は、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金を科されるおそれがあるため、注意が必要です。

    ひと月あたりの労働時間を減らす取り組み

    月の時間外労働を削減するために、企業ができる取り組みを詳しく解説します。本記事では、以下の3つの対策を取り上げます。

    • 人事評価制度の見直し
    • ノー残業デー制度の導入
    • 勤怠管理システムの導入

    取り組みを通じて、労働環境の改善を目指し、時間外労働の削減に努めましょう。

    人事評価制度の見直し

    企業によっては「残業する人=仕事に熱心な人・仕事ができる人」という風土が浸透しています。従業員たちが「残業して成果を残せれば評価される」と認識してしまうと、長時間労働が常態化してしまいます。

    事態を回避するためにも、短時間で成果を上げる生産性を評価する人事評価制度の導入を検討しましょう。

    ノー残業デー制度の導入

    定時に退勤したくても、上司や同僚を気にしてなかなか帰れないという従業員も少なくないでしょう。対策として、残業をせず定時帰宅を促す「ノー残業デー」の導入が有用です。

    「定時に切り上げる」という意識を持つことで、従業員一人ひとりの生産性が自然に向上し、結果として残業時間の短縮につながります。

    勤怠管理システムの導入

    勤怠管理システムの導入も、長時間労働の是正につながる取り組みとして注目されています。

    勤怠管理システムとは、従業員の出退勤や労働時間、休暇の管理を効率的に実施するためのツールです。

    勤怠情報を自動で記録し、法改正にも随時対応できるサービスが多いため、人的ミスや管理工数の削減につながります。また、勤怠管理の担当者の労働時間も短縮できる可能性があるでしょう。

    紙や表計算ソフトで勤怠管理や給与計算を実施している企業は、検討してみてはいかがでしょうか。

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    月間の労働時間を管理して働きやすい職場環境へ

    大切な従業員の心身の健康を守るためにも、企業は月間の労働時間の上限やひと月あたりの労働時間の適正値を理解したうえで、従業員の労働時間を把握・管理することが大切です。

    従業員に残業をさせるときは、時間外労働の上限に関するルールを遵守しなければなりません。違法とみなされた場合は罰則の対象となるため、注意が必要です。

    本記事で紹介した取り組みを参考にしながら、従業員が働きやすい労働環境を整備していきましょう。