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従業員の残業理由|組織として問題を解決する方法を解説

従業員の残業時間が長くて悩んでいる企業は少なくありません。残業時間を減らすためには、従業員がどのような理由で残業をしているのか把握することが大切です。本記事では、残業が発生する際に考えられる主な理由や対処法などを解説します。残業時間を少なくするための方法も解説するため、役立ててください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

従業員の残業理由|組織として問題を解決する方法を解説
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    残業はどれくらい行われているのか

    厚生労働省の『令和4年版 過労死等防止対策白書』によると、週労働時間が49時間以上の日本人労働者の割合は15.1%です。うち、男性は21.7%、女性6.9%と性別により差はあるものの、日本が先進国の中では働きすぎなことに違いはありません。

    この数値からわかる通り、日本人男性の約5人に1人が働きすぎといえるでしょう。日本は、先進国で比較すると韓国の次に週労働時間が長い国です。年間平均労働時間が短いドイツと比較すると、日本は258時間多く働いている状態です。

    参考:『令和4年版過労死等防止対策白書(本文)』厚生労働省

    従業員が残業する理由とは

    従業員が残業する理由として考えられるのは次の9つです。

    • 膨大な業務量
    • 人手不足
    • 社風
    • 生活の維持
    • 業務体制
    • 特定の従業員への業務集中
    • 顧客の都合
    • 繁閑
    • 評価制度

    膨大な業務量

    定時内ではさばききれないほどの業務を抱えているため、残業して仕事を終わらせるケースです。莫大な業務量を抱えている理由は、退職による人数不足や事業拡大による仕事量の増加などさまざまです。従業員数が足りているかや、業務量を減らせないかなどを検討してみましょう。

    人手不足

    企業としては一度従業員を雇うと簡単に解雇できないため、採用に踏み切れない場合もあります。結果、人手不足の状態が長引いてしまうと、従業員の業務量増加の可能性があります。キャパ以上の業務を抱えていれば、残業する社員も出てくるのは時間の問題といえるでしょう。

    社風

    「残業をするのは当然」「残業はよいこと」などの社風が、半ば強制的に従業員に残業をさせているケースがあります。この状況では、本来発生しないはずの残業が生じる可能性もあります。あくまで残業は、必要な業務を終える手段にすぎません。人事評価制度などの根本から見直して、社風を変えていく必要があるでしょう。

    生活の維持

    生計を立てるために、残業手当が必要だと従業員が感じているケースです。特に基本給が低いケースで、残業が頻繁に発生する傾向があります。しかし、残業することを前提としているために時間をあるだけ使ってしまい、業務効率化できない可能性があるでしょう。

    これにはパーキンソンの法則が関係しています。パーキンソンの法則とは、与えられた時間に応じて、タスクを終えるまでにかける時間が拡大されるというものです。

    たとえば、1日の労働時間を残業込みで10時間と仮定しましょう。本来は7時間で終わる仕事に10時間使っています。残業前提で労働時間を考えてしまうと、業務を終えるまでに必要以上の時間を費やす可能性があります。業務効率化の測れていない残業は、企業の競争力の低下につながりかねません。

    業務体制

    部署として、残業前提で従業員に仕事を割り当てているケースです。毎日が厳しいとはいえ、定時退社を可能にするためには、業務量の調整や業務体制の再検討が必要かもしれません。

    特定の従業員への業務集中

    特定の従業員に仕事が集中してしまい、本人のキャパオーバーにより残業が発生しているケースです。優秀な従業員は作業スピードが速いため、積極的に仕事を割り当てていると、企業として危ない状況といえます。

    万が一、優秀な従業員が退職した場合、フォローできる人がいないためです。仕事を分散するためにも、ほかの従業員への資格取得やスキルアップを促しましょう。「教育訓練給付金制度」という、スキルアップを促すための助成金もあるため、活用してみるのも一案です。

    顧客の都合

    顧客満足度を向上させるために残業が発生してしまうケースです。たとえば、下請けで顧客の無理な要望を断れなかったり、急ぎの注文が頻繁に入ったりなどです。事業の継続が難しいほど残業が多くなっている場合は、顧客に協力を求めるなどの対応が必要でしょう。

    繁閑

    忙しい時期には、残業をしなければ仕事をさばけないケースもあります。この場合は、フレックスタイム制や変形労働時間制を導入するなどの対策が必要でしょう。

    変形労働時間制とは、月・年単位で労働時間を調整できる制度です。忙しくない時期は労働時間を短めに調整することで、繁忙期の労働時間が多少長くなっても残業扱いとならないケースがあります。繁閑により残業が発生している場合は、労働時間制度の導入を検討してみるのも一つの方法です。

    評価制度

    残業することが評価につながるケースです。また、従業員が、残業は評価につながると思い込んでいるケースもあります。必要に応じて人事評価制度を見直したり、従業員に周知したりすることが大切です。

    残業が多い企業におけるデメリットとは

    残業が多い企業におけるデメリットは次の3つです。

    • 従業員のモチベーションが低下する
    • 人件費が多くなる
    • ペナルティを受ける可能性がある

    従業員のモチベーションが低下する

    残業によってプライベートの時間が十分に確保できなかったり、疲労が蓄積したりすると従業員のモチベーション低下の恐れがあります。残業によりストレスが溜まると、退職する従業員も出てくるでしょう。

    残業が多い企業の従業員が退職すると、ほかの従業員の仕事が多くなりかねません。結果、残業時間が増えて、さらに従業員のモチベーション低下の可能性があります。多大なるストレスにより、最悪、みずから命を断つケースもあるため注意が必要です。

    人件費が多くなる

    2023年4月から中小企業を対象に、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、25%から50%に引き上げられました。従業員の残業が長時間にわたると、人件費の負担が大きくなり企業としても厳しい状態になりかねなません。

    さらに、従業員が退職すれば、人材採用や育成にかけるコストも発生します。業績の存続を守るために残業時間を多くしても、赤字になってしまうと本末転倒です。

    参考:『月60時間を超える時間外労働の 割増賃金率が引き上げられます』厚生労働省

    ペナルティを受ける可能性がある

    2020年4月以降は、すべての企業に「時間外労働の上限規則」が適用されます。これにより残業時間は、月45時間・年360時間と上限が定められました。特別な事情がない限り、時間外労働の上限規則を超えた残業は認められません。時間外労働の上限規則を守らなかった場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。

    参考:『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』厚生労働省

    残業時間が気になる場合に企業ができる対処方法とは

    残業時間が気になる場合に企業ができる対処法は次の6つです。

    • 残業申請のルールを明確にする
    • 「ノー残業デー」を導入する
    • 現状を把握し、労働時間を見直す
    • 従業員がスキルアップできる環境を用意する
    • 相談しやすい環境を整備する
    • 勤怠管理システムを利用する

    それぞれ解説します。

    残業申請のルールを明確にする

    残業が常態化しないよう、残業は申請制にしておくのがおすすめです。申請制にすると、労働時間と残業時間が明確に把握できます。また、残業許可のケースを明確にしておくと、不要な残業が少なくなるため、結果として人件費の削減にもつながるでしょう。

    残業申請には、紙ベースで申請・管理する方法とクラウドシステムで申請・管理する方法があります。使いやすい方を導入してみてはいかがでしょうか。

    従業員が申請なしで残業した場合

    従業員が申請なしで残業した場合でも、企業は残業手当を支払う必要があります。

    ただし、原則、申請なしの残業は認めない方がいいでしょう。無許可の残業が当たり前になると、申請制を導入する意味がなくなってしまいます。ルールを守れていない従業員には、必要に応じて面談や指導を行いましょう。

    「ノー残業デー」を導入する

    ノー残業デーとは、定時退社を奨励する日です。残業が日常的な職場でも、ノー残業デーの導入により、定時退社がしやすい環境に変化が期待できます。

    いきなりノー残業デーを導入するのに抵抗がある場合は、1週間に1回などの少ない頻度で取り入れてみてはいかがでしょうか。ノー残業デーの導入義務はありませんが、ワークライフバランスの実現を目指して多くの企業が取り入れています。

    現状を把握し、労働時間を見直す

    現状を把握するためにも、まずは自社における従業員の残業時間をチェックしましょう。

    その後、重要な業務や、それほど重要でない業務を洗い出して整理します。必要に応じて外注や業務を効率化するシステムの導入を検討するのも一つです。社内の負荷が軽減されると、残業が必要な日を減らせる可能性があります。

    また、残業が少ない部署から残業が多い部署に人材を送り込むといった解決方法もあります。莫大な業務量により残業が発生している場合は、部署内の負担軽減方法を考えると、よい解決策が見つかりやすいかもしれません。

    従業員がスキルアップできる環境を用意する

    従業員にスキルアップしてもらい、業務効率を上げてもらうことにより残業を減らす方法もあります。成果を得るには時間がかかるものの、長い目で見るとスキルアップを支援する仕組みづくり、勉強会の実施などは価値があります。

    また、一般的な業務スキル、たとえば資料作成やスケジュール管理などはテンプレートを用意しておくとよいでしょう。

    相談しやすい環境を整備する

    残業を減らすためには、従業員が残業についてどう考えているのか知ることも大切です。

    残業が多いことに不満を抱いていると、退職してしまう可能性もあります。上司や先輩社員、同僚などに相談しやすい環境を整えましょう。たとえば、人事部で相談窓口を設けたり、社内にカフェスペースを設けたりして気軽に話せる空間を整備します。

    また、匿名でアンケート調査を実施するのも有効です。従業員の本音を引き出しやすいため、職場環境を改善するヒントが見つかるかもしれません。

    勤怠管理システムを利用する

    残業時間の管理の手間を省くためには、勤怠管理システムを利用するのも一つです。従業員の残業時間の把握がスムーズになるでしょう。また、クラウド型で提供されている勤怠管理システムなら比較的、手間をかけずに導入できます。

    簡単に操作できたり、UI(ユーザーインターフェース)が優れていたりするものも増えています。トライアルで利用できる勤怠管理システムもあるので、この機会に利用を検討してもよいでしょう。

    まとめ

    日本は、先進国のなかでも残業時間が多い国です。理由には、人手不足や莫大な業務量などが挙げられます。また、企業風土の影響で定時退社が難しく、残業時間の増加につながっている場合もあるでしょう。

    残業が多いと、従業員のモチベーションの低下や退職などにつながりかねません。ワークバランスを実現するためにも、残業申請のルールを明確にしたり相談しやすい環境を整備したりして、残業を減らすよう心がけましょう。

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