年次有給休暇管理簿とは? 作成方法や保存義務、注意点も解説!
年次有給休暇管理簿は、企業において作成が義務とされており、年次有給休暇に関する記録を行い、適切に管理するためにも必要とされている管理簿です。
年次有給休暇は労働者の権利であり、付与された一部の取得が義務化されています。企業では確実に年次有給休暇を取得させるため、正しく年次有給休暇の取得状況などを把握し、適切に管理しなければなりません。
そこで本記事では、年次有給休暇の管理簿について書き方や作成方法などを解説しながら、効率化できるシステムについてもご紹介します。企業で年次有給休暇の管理を担当する方や労務担当者などはぜひ参考にしてください。
年次有給休暇管理簿とは
年次有給休暇管理簿とは、労働者の年次有休の状況を正しく把握するための管理簿のことを指します。とくに年次有給休暇の一部取得が義務化されて以降、確実に取得するためにも、管理簿の作成や管理が重要となっています。
年次有給休暇管理簿の作成義務
年次有給休暇管理簿は、対象者がいる場合、作成と保管が義務付けられています。罰則規定はないものの作成と保管をしていない場合、指導を受ける可能性があるため、注意しなければなりません。
年次有給休暇管理簿の対象者
年次有給休暇管理簿の対象者は、年に10日以上有給休暇を付与された労働者です。
年次有給休暇の取得義務化では、年次有給休暇を10日以上付与される労働者を対象に年5日の取得が義務付けられており、確実な取得をさせるために管理簿の作成と保管を行うことが求められているのです。
年次有給休暇管理簿の書き方
年次有給休暇管理簿では、書式に定めがないため自由に作成できます。ただし必須項目は決まっているため、漏れのないよう作成しましょう。
1.基準日
年次有給休暇管理簿に書く項目の一つに、基準日が挙げられます。基準日とは、労働者に年次有給休暇を付与する日付です。基準日は、雇用日によって異なるため、それぞれの労働者によって違いがあります。
たとえば、経験者採用などによってその年の途中に入社する場合、従業員によって雇用日が異なります。ただし、年次有給休暇を一斉付与している企業の場合は、一斉付与の日付を記載します。
2.日数
年次有給休暇管理簿に書く項目には、それぞれの労働者が取得する年次有給休暇の日数も挙げられます。ただし、新たに付与された日数からすでに取得した日数を差し引いて記載するため、ミスのないようにしましょう。
3.時季
年次有給休暇管理簿に書く項目として、労働者が実際に年次有給休暇を取得した日付(履歴)も書かなければなりません。労働者ごとに取得する日が異なるため、抜け漏れやミスのないよう、正しく把握し、記載しましょう。
年次有給休暇管理簿の保管期間
企業は、年次有給休暇の取得だけでなく、年次有給休暇管理簿の作成と保存も義務化されています。
管理簿の保存期間は5年間ですが、当面の間は経過措置として保存期間を3年間(年次有給休暇付与期間である1年の期間満了後の3年間)としています。(※令和5年12月現在)
年次有給休暇管理簿の作成方法
年次有給休暇管理簿の作成に特定の指定はないため、作成方法は自由ですが、一般的には
- 用紙で作成
- エクセルで作成
- システムで作成
の方法が挙げられます。それぞれの作成について、どのような特徴があるのか確認してみましょう。
用紙で作成
年次有給休暇管理簿を用紙に直接記入して作成管理する方法です。すぐに作成できるため、費用がかからない点がメリットといえるでしょう。
一方、記入や計算などを手動で行わなければならず、次年度には最初から書き直す必要があるなどの労力がかかる点や、用紙を紛失するリスクがデメリットとして挙げられます。
エクセルで作成
年次有給休暇管理簿は、エクセルで作成することもできます。基本的にはパソコンさえあれば作成・管理でき、計算なども効率化できる点がメリットでしょう。
一方で、入力を間違えたりすることで計算がズレてしまったりなどの人為的ミスが生じる可能性もあります。また、データの改ざんが起こる可能性もゼロではないため、徹底した管理が必要です。
システムで作成
年次有給休暇管理簿は、勤怠管理システムや年次有給管理システムなどのシステムを活用する方法もあります。一般的には、入力データから年次有給休暇管理簿を簡単に作成できる機能が搭載されているため大幅な業務効率化が見込めます。
また、勤怠管理システムなら従業員の勤怠管理も行えるようになり、有給消化状況などをすぐに確認したり把握したりすることにも役立つため、年次有給休暇の取得漏れを防止する効果も期待できるでしょう。
しかし、システム導入にはコストがかかるというデメリットがあります。
年次有給休暇管理簿に役立つシステムの機能
年次有給休暇管理簿を作成したり管理したりする方法としては、システムの活用する方法がおすすめです。システムによって搭載されている機能は異なりますが、一般的にどのような機能が搭載されているのかご紹介します。
年次有給休暇取得状況の確認機能
年次有給休暇を管理できるシステムには、取得状況を確認できる機能が搭載されています。年次有給休暇は労働者ごとに異なるタイミングで付与されるため、付与日数や残日数などもそれぞれ違います。
そのなかで確実に義務化された5日分を消化させなければならないため、システム上でいつでも簡単に取得状況を確認できる機能は魅力的といえるでしょう。
年次有給休暇の申請機能
年次有給休暇を管理できるシステムには、申請機能も搭載されています。
年次有給休暇を取得する際には、事前申請を原則とし、取得するというのが一般的な流れですが、申請をシステム上でできるようになれば、管理担当者も取得する従業員本人も作業を効率化できるでしょう。
用紙などを使用して申請する場合、申請の途中段階で用紙を紛失するリスクがあったり、承認に時間がかかったりする可能性もあります。システム上で行うことで、こうしたリスクも小さくできるでしょう。
年次有給休暇の通知機能
年次有給休暇を管理できるシステムには、通知機能を搭載しているものも少なくありません。
義務化されたことで確実に年次有給休暇を取得させなければなりませんが、多くの従業員を抱える場合、把握や管理の負担が大きく、抜け漏れや該当の労働者に逐一連絡しなければならないリスクがあります。
通知機能を活用すれば、取得すべき労働者について通知してくれるため、取得漏れの防止や業務効率化に効果的でしょう。
年次有給休暇管理簿の作成機能
年次有給休暇を管理できるシステムには、年次有給休暇管理簿の作成機能も搭載されているため、大幅な業務効率化が期待できます。
データを反映させた管理簿をシステム上で自動作成・保管できるため、作成する手間や紛失リスクなどを抑えて作成や管理ができるでしょう。
年次有給休暇管理簿をシステムで作成するメリットやデメリット
年次有給休暇管理簿をシステムを活用して作成・保管するメリットや注意点についてさらに詳しく確認してみましょう。
年次有給休暇管理簿の作成にシステムを活用するメリット
年次有給休暇管理簿の作成に勤怠管理システムを活用するメリットには、
- 管理簿を簡単に作成
- 年次有給休暇の把握や管理を効率化
- 年次有給休暇取得を促進(法令遵守)
- ほかシステムとの連携
などのメリットが挙げられます。労務管理や給与計算などほかシステムとの連携ができれば、データを共有できるため、さらなる業務効率化が期待できるでしょう。
年次有給休暇管理簿の作成にシステムを活用する注意点
年次有給休暇管理簿の作成に勤怠管理システムを活用する注意点には、
- コストがかかる
- 使い勝手(環境や操作性)
- 必要な機能
- セキュリティ対策
などが挙げられます。システムにはさまざまな種類があり、搭載されている機能や強みも異なるため、自社にあったシステムを選び、活用するようにしましょう。
年次有給休暇管理簿作成におけるポイント
年次有給休暇管理簿作成において、とくに抑えておきたいポイントについてご紹介します。あらかじめポイントを把握しておくことで、ミスのない管理簿作成につながるはずです。ぜひ参考にしてください。
記載ミスがないよう注意する
年次有給休暇管理簿では、各労働者の年次有給休暇の状況(必要項目)をミスなく記載する必要があります。記載内容にミスや抜け漏れが合った場合、年次有給休暇の取得漏れにつながり、労働基準法違反になりかねません。
管理簿の管理では、各労働者ごとの情報を記載しなければならず手間がかかるため、できるだけ効率化できたり、人為的ミスを防止したりする方法で作成するのがおすすめです。
年次有給休暇に関する情報も適切に管理する
年次有給休暇管理簿を作成する目的は、年次有給休暇の確実な取得のためです。そのため、労働日数や基準日など年次有給休暇に関する情報も正確に把握し、管理しなければなりません。
年次有給休暇そのものだけでなく、付与にかかわる情報などもあわせて適切な管理に努めましょう。
その他の法定帳簿と一緒に管理するのもおすすめ
年次有給休暇管理簿とともに、法定三帳簿である「労働者名簿」や「賃金台帳」などと一緒に作成・管理するのも効率化が進むため、おすすめです。
帳簿名 | 概要 | 記載内容 |
---|---|---|
労働者名簿 | 企業が雇用している労働者の情報を記載した書類 | 1.氏名 2.生年月日 3.性別 4.住所 5.業務の種類 6.履歴 7.雇用年月日 8.退職年月日と事由 9.死亡年月日と原因 |
賃金台帳 | 労働者の賃金や労働日数など給与支払い状況を記載した書類 | 1.従業員の氏名 2.従業員の性別 3.賃金の計算期間 4.労働日数(実際の労働日数) 5.労働時間数 6.時間外労働や休日労働、深夜労働の労働時間数 7.基本給や手当など、その他の賃金種類と金額 8.税金や保険料の控除内容とその金額 |
「労働者名簿」や「賃金台帳」には指定の書式などがないため、年次有給休暇管理簿とともに記載してもよいでしょう。
まとめ
有給休暇の管理簿は、義務化された年次有給休暇を確実に取得させるためにも重要な帳簿といえます。
管理簿には
- 基準日
- 日数
- 時季
の3項目が必須項目となっているため、正しく記載するようにしましょう。
また、管理簿の作成と保管の方法に指定のものはありませんが、システムを活用するのが便利です。業務効率化だけでなく、ミスなく管理し、年次有給休暇の確実な取得にも有効であるため、ぜひシステム活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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