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有給休暇と残業|減る場合の注意点と対策も

有給休暇と残業|減る場合の注意点と対策も

働き方改革関連法案の法改正が行われたことで、有給休暇の取得が義務化され、残業時間の上限規制が設定されています。正しい労働時間や残業代の計算のためには、両者の内容や関係性を正しく理解することが大切です。

また、法改正前に長時間の残業をしていた人には収入が減ることになり、モチベーションが低下する原因になります。

そこで本記事では、有給休暇と残業の関係性や残業削減に関する注意点もご紹介します。経営層や人事労務担当者はぜひ参考にしてください。

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    働き方改革で有給休暇の取得率向上が実現し、残業が減る?

    働き方改革が推進されていることで、これまで労働に関するさまざまな法改正が行われています。とくに2019年4月に施行された「働き方改革関連法案」では、有給休暇の取得義務化や残業時間の上限規制が行われるようになりました。

    有給休暇の取得義務化は、労働生産性の向上、ライフワークバランス改善を目的としています。残業時間の上限規制は、長時間労働のまん延の阻止や、ワークライフバランスの改善、女性のキャリア形成や就労促進などが目的です。

    どちらも「労働者の働きやすさ」を実現するためのもので、有給休暇の取得率向上や残業時間の削減を目指しています。

    ただし、法令を遵守するためには有給休暇と残業についてのルールや法改正の内容を正しく理解しておかなければなりません。そこで、まずは両者の概要をおさらいしましょう。

    有給休暇とは

    有給休暇とは、賃金が発生する休暇のことで、一定の条件を満たした従業員に対して法定休日や所定休日とは別に付与されます。具体的な概要を確認してみましょう。

    有給休暇が付与される条件

    フルタイムで働く従業員の場合における有給休暇の付与条件は、以下の通りです。

    • 雇い入れの日から6か月継続勤務
    • 全労働費の8割以上の出勤率(出勤日数÷全労働日)

    また、有給休暇は雇用形態に関係なく付与されるため、パートタイマーやアルバイトにも付与されます。ただし、以下の条件を満たす従業員は、所定労働日数に応じた「比例付与」の対象です。

    • 週の所定労働時間が30時間未満で、週の所定労働日数が4日以下
    • 1年間の所定労働日数が48日から216日まで

    上記の条件以上で労働している従業員は、フルタイムの基準で有給休暇が付与されると理解しておきましょう。

    有給休暇の取得義務化

    2019年の法改正により、年10日以上有給休暇が付与されている従業員は、年5日取得しなければならなくなりました。取得させなかった場合、企業は1人に付き30万円の罰金が科せられる可能性があるため、徹底した有給休暇の管理が必要といえます。

    また、有給休暇の取得義務化とあわせて、有給休暇管理簿の作成と保管も義務づけられています。

    参照:『年5日の年次有給休暇の確実な取得』厚生労働省

    残業とは

    残業とは、法定内残業と法定外残業がありますが、とくに注目されやすいのが労働基準法で定められた法定労働時間を超えて行う残業です。「時間外労働」と呼ばれ、法定労働時間を超えたぶんについて割増賃金率を支払わなければなりません。

    労働基準法により法定労働時間は「1日8時間・週40時間」とされています。どちらかの基準を超えて労働した場合は残業代の対象となるため、企業は労働時間や残業時間の管理を行わなければなりません。

    残業に関するルール

    時間外労働にまつわるルールにはポイントがあります。正しく理解して法令遵守を徹底しましょう。

    時間外労働をするには36協定の締結と届け出が必要

    企業が従業員に時間外労働をさせる場合、36協定を締結し届け出る必要があります。36協定では、時間外労働を「月45時間・年間360時間」と定めています。

    また、2019年の労働基準法改正によって、時間外労働の上限が規制され、時間外労働時間の上限を超過すると「6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦」が科されることになりました。

    参照:『労働基準法 第119条』法令検索e-GOV

    特別条項付き36条とは

    時間外労働に関連して、臨時的で特別な事情のもと、さらに多くの時間外労働が必要と判断される場合には、労使が合意したうえで特別条項付き36協定を結びます。

    特別条項付き36協定を締結しても、下記のような制限のもとで運用しなければならず、際限なく延長可能なわけではありません。

    • 時間外労働が年720時間以内
    • 月100時間未満、2~6か月がすべて平均80時間以内(時間外労働+休日労働)
    • 時間外労働が45時間を超えられるのは年6か月まで

    これらのルールに違反した場合は「6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦」が科されるため、注意しましょう。

    参照:『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』厚生労働省

    残業時間の上限規制

    残業時間は2019年の労働基準法改正によって上限規制が行われましたが、業務の特殊性などから一部の業務では適用が猶予されていました。具体的には、建設事業や自動車運転業務、医師などです。

    猶予期間が2024年3月31日で終了したため、対象とされていた一部の業務においても時間外労働の上限規制が適用されています。

    詳しい内容や猶予後の取り扱いについては、厚生労働省の最新情報を確認しましょう。

    有給休暇で残業代が減る? 両者の関係性

    有給休暇と残業|減る場合の注意点と対策も

    有給休暇は賃金の発生する休暇であるものの、実労働時間には含まれません。そのため、有給休暇を取得することで残業代や給与が減るというイメージを持つ人もいるかもしれません。残業代や給与を正しく計算するためにも、有給休暇と残業の関係性を正しく理解しましょう。

    有給休暇では残業時間を相殺できない

    労働基準法によって、36協定を締結した場合の残業時間の上限は45時間までとなっています。上限の45時間を超えて残業してしまった場合、労働基準法違反となり、罰則の対象になる可能性があるため注意しなければなりません。

    また、上限の45時間を超えてしまいそうな従業員に有給休暇を付与し、残業時間を相殺することも違法です。有給休暇は通常の賃金をもとに設定されており、本来なら割増率を乗じて支払わなければならない残業代で相殺することで、労働者の不利益となるためです。

    参照:『法定労働時間と割増賃金について教えてください。』厚生労働省

    ただし、以下の場合は残業を有給休暇で相殺できるケースがあります。

    • 時間単位や半日単位の有給休暇の日に残業した場合
    • 有給休暇を取得した週の所定休日に出勤した場合

    残業時間の上限規制で残業代が減る?

    残業時間の上限規制によって残業が減ると当然ながら残業代も減るため、収入が少なくなる従業員もいるでしょう。長時間の残業を行い、割増賃金によって収入を増やしていた場合、残業時間の上限が規制されることで、影響を受けます。

    残業が制限されても、一般的には業務量が変わらないことは少なくないでしょう。そのため、有給休暇を取得しにくくなったり、休日出勤をせざるを得なくなったりする悪循環が生じる可能性もあります。

    サービス残業が増える可能性もある

    残業時間が制限されることで、サービス残業が増える恐れもあります。

    サービス残業とは、退勤後や休憩時間に仕事することを指し、本来、実労働時間としてカウントされるべき労働であるにもかかわらず、そのぶんの賃金が支払われません。サービス残業をさせた場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰則規定が定められています。

    『労働時間に関する調査』では、サービス残業をせざるを得ないことがある人の割合が全体で42.6%と報告されています。残業時間の上限が規制されるようになり、さらにサービス残業が常態化してしまう可能性もあるでしょう。

    参照:『労働時間に関する調査』日本労働組合連合会(2015)

    管理監督者の負担が増える可能性もある

    管理監督者とは、単なる管理職とは異なり、労働基準法上の管理監督者は経営層や経営層に近い権限を持つ人を指します。

    管理監督者は労働基準法の時間外労働の上限規制が適用されません。36協定による「月45時間・年360時間」の規制も受けないため、基本的に残業時間に制限がなく、時間外労働の割増賃金の支払い義務もありません。

    そのため、残業時間の上限規制によって一般的な従業員の残業時間が制限されることによって、管理監督者の労働時間や残業時間が増えてしまう可能性があるのです。

    ただし、2019年4月より管理監督者の労働時間も把握することが義務化されました。時間外労働が月80時間以上となる管理監督者から申し出があった場合は、産業医の面接指導を受けさせるなどの対応が必要です。

    参照:『労働基準法 第41条』e-GOV法令検索
    参照:『改正労働安全衛生法のポイント』厚生労働省

    残業が減ることで起こり得る注意点を理解し対策を

    残業時間の上限規制が行われたことにより、残業時間が減ったというケースも少なくないでしょう。働きやすさにつながることはメリットといえますが、残業が減ることで問題点が生じる可能性もあるため注意が必要です。

    • 残業代が減ることによる収入減
    • サービス残業拡大の可能性
    • 管理監督者の残業が増加

    残業代が減ることで従業員のモチベーションが低下する危険性があります。残業代を削減したぶんを手当やボーナスとして従業員に還元するなど、従業員が納得できるような還元策を検討してみましょう。

    また、残業が制限される一方で業務量が変わらない場合は、業務の整理や工夫など、効率化を検討しなければなりません。従業員個人単位で考えさせるだけでなく、部署や組織として業務効率化を進めましょう。

    管理監督者に対しても、労働時間や残業時間を正しく把握するために、勤怠管理システムで漏れなく管理することも、法令遵守や従業員への安全配慮義務を果たすことにつながります。

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