時差出勤制度とは【フレックスとの違い】意味ない? メリット・デメリットと法的注意点を解説

時差出勤制度とは【フレックスとの違い】意味ない? メリット・デメリットと法的注意点を解説

時差出勤制度とは、企業が定めた範囲内で従業員が出勤・退勤時刻をずらして働ける仕組みです。通勤ラッシュを避けられるメリットがあり、業務の効率化やワークライフバランスの実現にもつながると注目されています。

働き方改革や多様なライフスタイルへの対応などを背景に、時差出勤制度を導入する企業が増えてきました。しかし、よく似た制度に「フレックスタイム制」があり、違いが区別できておらず、検討をためらっている担当者もいるのではないでしょうか。

本記事では、時差出勤制度の基本やフレックスタイム制度との違い、導入のポイントや注意点までを解説します。メリット・デメリットも整理しているので、「自社に合った制度かどうか」の判断にもお役立てください。

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目次アイコン目次

    時差出勤制度とは?

    時差出勤制度とは、企業が設定した範囲内で、従業員が出勤・退勤時間を選べる制度です。たとえば、始業時刻を「8時~12時の間」と定めた場合、ある従業員は8時から16時、別の従業員は12時から20時と、それぞれ異なる時間帯で働けます。

    大きなメリットは、通勤ラッシュを避けられることで身体的・精神的な負担を軽減できることです。近年では働き方改革や感染症対策の一環として導入を検討する企業もあります。

    時差出勤制度の法律上のルール|就業規則の変更が必要

    時差出勤制度は、労働基準法をはじめ法律で定められた明確な規定はありません。具体的な運用ルールや時間設定は企業ごとに異なり、自社の業務内容や人員体制に合わせて設計する必要があります。ただし、新たに導入する場合は、就業規則の変更と従業員への周知が必須です。就業規則を変更する場合は、労働者の過半数で組織する労働組合、なければ労働者の過半数代表者の意見を聴取する必要があります。

    また、男女雇用均等法の第13条には、妊娠中・出産後の女性への配慮事項が設けられています。具体的には保健指導や健康診断が受けられるよう、勤務時間の変更したり労働負荷を軽減したりといった対応が企業には求められています。

    妊娠中や出産後の従業員から希望があれば、基本的に企業は時差出勤に応じなければならないと理解しておきましょう。

    時差出勤制度とフレックスタイム制度との違い

    時差出勤制度とフレックスタイム制度は、どちらも柔軟な働き方を実現する制度ですが、目的や運用方法に違いがあります。まずは以下の表で、主な違いを整理してみましょう。

    時差出勤制度フレックスタイム制度
    目的通勤混雑の回避・負担軽減労働時間の柔軟化・業務効率向上
    労働時間の自由度企業が規定した複数のパターンから選ぶ原則として自由に設定可能
    労働時間の管理方法所定労働時間を毎日勤務清算期間内で合計労働時間を調整
    コアタイムの有無通常なし設定する企業も多い
    就業規則への影響出退勤時刻の明示が必要、一斉休憩の付与除外の場合は労使協定が必要労使協定の締結が必要

    大きな違いである目的と労働時間の自由度について詳しく解説していきます。

    制度がつくられた目的の違い

    時差出勤制度は、ラッシュ回避やワークライフバランスの向上などを目的に、決まった範囲内で出退勤時刻をずらせる制度です。

    一方でフレックスタイム制度は、出退勤時刻だけでなく、労働時間そのものを柔軟に調整できる点が大きな特徴です。効率的に働ける時間帯を選び、パフォーマンスを最大化することを目的としています。

    労働時間の自由度の違い

    労働時間の自由度という点では、時差出勤制度より、フレックスタイム制度のほうが柔軟性は高いといえるでしょう。

    フレックスタイム制度では、「1日◯時間」といった日単位の決まりは設けられていません。月などの清算期間全体で、所定労働時間を満たす必要があります。日によって短く働いたり、長く働いたりといった調整が可能です。

    対して時差出勤制度は、1日ごとに所定労働時間を満たさなければならない点が大きく異なります。基本的に企業が就業規則で定めた勤務パターンから、希望する時間を選ぶことで適用できます。

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    時差出勤制度を導入するメリット

    時差出勤制度には、通勤の負担を減らすだけではなく、組織全体への好影響があります。企業にとっての代表的なメリットを3つ紹介します。

    • 組織の生産性向上につながる
    • 離職率の低減につながる
    • 従業員のワークライフバランス維持・向上につながる

    「働き方を見直したい」「従業員の定着率を上げたい」と考える企業にとっては大切なポイントです。一つずつ、現場での実感につながるかどうかという視点で確認していきましょう。

    組織の生産性向上につながる

    時差出勤制度を導入すると、従業員の集中力や業務効率が高まり、結果として組織全体の生産性向上につながります。通勤ラッシュ時に感じているストレスを軽減できるため、そのぶん業務に対して集中して取り組めるようになるでしょう。結果として、発想力が柔軟になって成果物の品質が高まり、事業全体の好影響が期待できます。

    また、時間外労働に頼らず効率的に業務を進められる点も大きなメリットです。「朝早い時間に作業に集中したい」「夜の時間帯で進めたい仕事がある」といった希望にも対応できます。働く時間の選択肢が広がることで、従業員のモチベーションも上がり、チーム全体の成果にも好影響があるでしょう。

    離職率の低減につながる

    時差出勤制度によって働く環境が改善されると、不満やストレスも減り、離職率の低減につながります。

    体への負担や家庭との両立といった悩みが軽減され、「この会社で働き続けたい」と思える人が増えるかもしれません。優秀な人材ほど、自分に合った働き方ができる環境を求めて離職を検討する傾向があるため、人材流出の抑止力になるでしょう。

    時差出勤制度は、感染症対策としても重要です。ラッシュ回避によって感染リスクを下げられるので心理的な不安が減り、企業への信頼感が高まるでしょう。

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    従業員のワークライフバランス維持・向上につながる

    時差出勤制度は、従業員のワークライフバランス維持・向上にもつながります。「早朝から働いて、夕方は子どものお迎えに行きたい」「親の介護があるので、少し遅めの出勤が助かる」といった声に応えられるのが、時差出勤制度です。

    従業員それぞれのライフスタイルにあわせた働き方が可能になり、生活と仕事のバランスを無理なく保ちやすくなります。働き続けるうえでの安心材料になり、定着率向上が期待できます。

    人手不足に悩んでいる企業ほど、時差出勤制度の導入を検討してみてもよいでしょう。

    時差出勤制度を導入するデメリット

    時差出勤制度は多くのメリットがありますが、一方で導入前に知っておきたい懸念点もいくつか存在します。

    制度がうまく機能するかどうかは、自社の業務特性や体制との相性にかかっています。導入後に期待はずれにならないように、以下の3つのポイントについて確認・対策をしておきましょう。

    • 実労働時間を把握しづらくなる
    • 業務内容によっては時差出勤が向かないケースもある
    • 朝礼やミーティングなどが実施しづらくなる

    実労働時間を把握しにくくなる

    時差出勤では従業員ごとに出退勤時刻が異なるため、労働時間の記録や管理が少し複雑になります。紙のタイムカードやエクセル管理では対応が追いつかない場合もあり、人事労務担当の負担が増える可能性があります。

    一人ひとりの勤務時間がずれることで、「誰が今働いていて、誰がもう退勤しているのか」がわかりにくくなる場面もあるでしょう。

    勤怠管理の煩雑さを軽減するには、打刻・労働時間の自動集計ができる勤怠管理システムの活用が現実的な対策です。ツールを活用することで、時差出勤を導入しやすくなります。

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    業務内容によっては時差出勤が向かないケースもある

    時差出勤制度は、すべての業務に適しているわけではありません。たとえば以下のような業務では、一定の時間に従業員がそろっている必要があります。

    • 営業先への訪問や電話対応など、対外的な時間調整が必要な職種
    • 店舗の開店・閉店時間が固定されているサービス業
    • 設備の点検や立ち合い業務など、時間指定で行う作業

    以上のような職種では、制度を一律に適用せず、部署や職種単位での導入可否を検討するとよいでしょう。

    朝礼やミーティングが実施しにくくなる

    時差出勤制度によって出勤時刻が分散されると、全員がそろって朝礼を行うことが難しくなります。とくにチーム単位での定例ミーティングや、業務開始前の情報共有などは、時間をあわせること自体が負担になるかもしれません。連携が取りにくくなり、チームの一体感が薄れといった声が上がる可能性もあります。

    時差出勤の制度導入後は、必ずしも全員同時に集まる必要があるのかを見直す機会と考えてもよいでしょう。ミーティングの開催時間をチームごとに柔軟に設定したり、朝礼の頻度や目的を再考したりしてみるのも一案です。業務に支障を出さずに新たなコミュニケーションスタイルを構築することも可能です。

    時差出勤制度を導入するために必要な準備

    時差出勤制度を社内に導入するためには、前もって準備を進めていかなければなりません。制度を整備する一連の流れを4つのステップで紹介していきます。

    1. 時差出勤の対象となる従業員と適用事由を設定する
    2. 出退勤時間や適用回数を設定する
    3. 就業規則を改訂する
    4. 従業員全体に周知する

    1.時差出勤の対象となる従業員と適用事由を設定する

    まず、時差出勤制度の対象となる従業員を決めます。

    • 全社員に一律で適用するのか
    • 一部の部署や、希望者のみに限定するのか

    「なぜ制度を利用するのか」という適用事由も必要に応じて定めましょう。たとえば以下のようなケースです。

    • 育児・介護との両立
    • 混雑時間を避けるため
    • 一時的な家庭事情

    目的と対象があいまいだと、制度の公正性や継続性に疑問が出やすくなるため、導入段階での整理が重要です。

    2.出退勤時間や適用回数を設定する

    時差出勤制度の軸となるのは、出退勤可能な時間帯・利用回数・申請フローの設計です。設定例は以下のとおりです。

    • 出社可能時間:8:00〜11:00の範囲で1時間単位
    • 利用可能頻度:週2回まで
    • 申請方法:前週金曜までに上長と人事へ申請

    適用ルールは、現場の実情や社員の声を踏まえて調整するのが理想です。現場の声を反映させる姿勢が、制度の定着にもつながります。

    3.就業規則を改訂する

    時差出勤制度を正式に運用するには、就業規則への反映が必要です。ポイントは以下の2点です。

    • 制度の目的・対象・適用条件などを明文化する
    • 出退勤時刻の例やフローも具体的に記載する

    あいまいな記載だと、社内トラブルや誤解の原因になるため、ステップ2で定義した内容を詳細に記します。

    ▼就業規則の変更手続きを詳しく知るには以下の記事をご確認ください。

    4.従業員全体に周知する

    最後に、時差出勤制度を導入して就業規則を変更した旨を従業員に周知する必要があります。どのような制度なのか明確に説明しておかなければ、実際に制度を利用する人もなかなか増えていきません。必要に応じて、説明会なども開催するといいでしょう。

    時差出勤の制度を整えても、周知不足では活用が進みません。就業規則を変更したことを、従業員に周知する必要があります。制度の背景や使い方を、従業員が納得感をもって理解することが重要です。

    時差出勤制度を導入する際の注意点

    時差出勤の制度導入にあたっては、ルール設計や運用体制だけでなく、労務管理・法令対応の観点でもおさえておきたいポイントがあります。見落としたまま導入してしまうと、あとで労務トラブルにつながる可能性もあるため、以下のような点にはとくに注意が必要です。

    • 深夜割増賃金を考慮しなければならない
    • 一斉休憩の適用除外を定める労使協定が必要である
    • 実労働時間の個別把握をする必要がある

    深夜割増賃金を考慮しなければならない

    時差出勤によって22時以降も勤務が発生する場合は、労働基準法に基づいて深夜割増賃金(25%以上)を支払わなければなりません。

    深夜帯を含める企業は少ないかもしれませんが、希望が出る場合は対応する必要があります。制度を定める際は、深夜勤務の可否や割増賃金の取り扱いについて、あらかじめ規定しておきましょう。

    ▼深夜手当の適用について詳しく知るには以下の記事をご確認ください。

    一斉休憩の適用除外を定める労使協定が必要である

    企業は労働者に対して、原則一斉に休憩時間を与える義務があります。時差出勤制度を導入すると、全員が同じ時間に休憩を取ることが難しくなるので、例外を設ける労使協定の締結が必要です。「一斉休憩の適用除外に関する労使協定」を締結し、就業規則に反映する必要があります。

    ▼一斉付与をはじめ、休憩の3原則について知るには以下の記事もご確認ください。

    実労働時間の個別把握をする必要がある

    時差出勤制度により出退勤時間が従業員ごとに異なると、労働時間の記録や残業代の集計も少し複雑になります。何時に出社し、何時に退勤したかを日ごとに正確に管理しなければなりません。労働基準法には労働時間・休憩・休日に関する記録の作成と、保存義務があります。今まで以上に注意を払う必要があるでしょう。

    作業をある程度自動化できる勤怠管理システムを活用すると、管理工数を減らせます。時差出勤制度をシステムに設定すれば、従業員本人の申請により、自動で労働時間の判定が可能です。

    導入後の運用が現場任せにならないよう、制度と運用の整合性を保てるように準備しましょう。

    時差出勤制度の管理には勤怠管理システムがおすすめ

    時差出勤制度は、通勤ラッシュを避けながら柔軟に働ける仕組みです。生産性の向上や離職防止、ワークライフバランスの実現といった効果が期待できます。

    ただし、従業員ごとに出退勤時間が異なるため、勤怠管理が煩雑になりやすい点には注意が必要です。課題に備えるには、勤怠管理システムの活用をおすすめします。打刻データの自動集計や勤怠申請の整備など、制度の円滑な運用にもお役立ていただけます。

    本記事で紹介した導入ステップや注意点を参考にしながら、自社に合った制度設計と管理体制を整えましょう。

    勤怠管理システム|One人事[勤怠]

    One人事[勤怠]は、多様な働き方に対応するクラウド型の勤怠管理システムです。フレックスタイム制の管理やシフト管理などにも役立つ機能が備わっています。

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